2021年6月26日土曜日

6月書評の4

やっと追いついた。自家製レモンシロップに、やや焦げケーキ、ドーナツはミスド。

クッキーが血尿で病院。これまでのような病気ではなく、複合的な症状を引き起こすクッシング症候群のよう。すぐに危険になることはないが、熱が高めで、活力がない。

レオンも夏バテで食欲がなくなったり、さらに動かなくなって夜徘徊が酷かったり、よほどのことがないと目覚めない私もしばしば不眠にさせられた。食べても戻してしまうので点滴を打ちに行ったりしている。いまはまだ気温も上がりきらず、夜は涼しい。真夏はやはりエアコンさんのお世話になるかな。2頭とも老齢やけんねえ。



◼️ 守山実花
「食わず嫌いのためのバレエ入門」

まずは見ること。クマテツの十八番「ドン・キホーテ」観よう。

熊川哲也のバレエカンパニーの舞台「ドン・キホーテ」が映画館で上映される。 SNSの告知で興味を持ち、またバレエの先生の友人、娘さんのバレエを見守る母親さんの友人から話を聞いたりして、観てみる気になっている。

なんにも知識がない私にはまず入門編だと借りてきた。ふむふむ。

代表的な作品は「ラ・バヤデール」「海賊」「ドン・キホーテ」・・やばい。前2作は演目の名前も知らなかった。

ドン・キホーテは文学的大作のダイジェストではなく、ある一部を拡大したものらしい。
ドンとサンチョ・パンサが立ち寄った街・セビリアが舞台の、アクティブな恋物語。

それぞれモテ男、モテ女の恋人同士、床屋のバジルと宿屋の娘キトリ。キトリの父はバジルを嫌い、金持ちの息子・ガマーシュに嫁がせようとする。ドン・キホーテはキトリを見るなり憧れのドルネシア姫と思い込み、てんやわんやの騒動の中逃げ出すバジルとキトリ。

追いかけた先で観た人形劇を現実と混同したドン・キホーテ、風車を悪者と思い込み、飛びかかったが風車の羽根にひっかかって地面に叩きつけられ、昏倒して夢を見る。ドルネシア、森の妖精、キューピッドたちと出会う夢。ドルネシアはキトリの二役らしい。

一方父に見つかりガマーシュとの結婚を迫られるキトリ、バジルはやおら床屋の動画、剃刀を取り出して自らの腹に突き立てる。嘆くキトリはドン・キホーテを巻き込んで父に嘆願。しぶしぶ父が許すとバジルは跳ね起きて2人は結婚する。盛大な結婚式を見届けて、ドン・キホーテは旅を続ける。

という話らしい。ふむふむ。楽しそうだ。ラテン気質が垣間見える。

いわゆるクラシックバレエは19世紀末にロシアで確立されたものを指すようで、この本では後に出てくる。高度な様式美を備えた古典という扱いのようだ。おカタいものを後にするこの順番が、食わず嫌いのための入門編を意識している?笑

チャイコフスキーの楽曲に乗る「眠れる森の美女」「白鳥の湖」「くるみ割り人形」。

クラシックファンとしてはこの辺興味があるなあ。でも内容はほとんど知らなかったやっぱり。

「白鳥の湖」スワンレイクの主人公は王子ジークフリートと悪魔により白鳥にされたオデット。

話は飛ぶが、私はだいぶ前にフィギュアスケートの全日本選手権を観に行った。優勝した村主章枝のフリーの舞がスワンレイクだった。ソルトレイクシティオリンピックで5位に入った年。安藤美姫は15歳、浅田真央ちゃんは12歳の特別出場。女王村主は圧巻の演技で優勝。

バレエ組曲はCDも抜粋が多く、フリーの4分、断片的で印象的なメロディをその後発見できてなかった。いまこの本を読んでフル動画を観ている。また巡り会えるだろうか。

さて、本の構成だが、最初に、バレエを食わず嫌いになっている理由をいくつも挙げて、一つ一つに熱い答え?説得材料?を述べている。バレエは女の子の習い事でしょ、と捉えられがちというのはバレエの先生も言っていた。

面白おかしくというよりは自虐的に見えるのがちょっと笑える。それから劇場でのマナーほか代表的な演目の紹介、トップダンサーの紹介などあるのだが、どうも過ぎたものがあるような。

最初に観に行くのは、海外の大バレエ団公演で、に違和感。食わず嫌いが初めて行くには、はっきり言って高額だ。劇場マナーも音を立てることに異常に神経質に思える。また海外のオペラハウスも含め、ドダダーっと情報と専門的知識の羅列。これホンマに初心者向け?と思ってしまった。熱い、好き度の高さはよく分かるのだが、熱さが空回りしてますな。

海外のオペラハウスはどこも興味がある。とりわけイギリス、コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラハウスはシャーロック・ホームズにも出てくるからちょい嬉しい。

また、かつて感動した「リトル・ダンサー」という映画で、主人公の少年の将来の姿として出演していたバレエダンサーがアダム・クーパーという逞しいトップダンサーだったと知って思わず微笑みが。彼のオススメの演目はスワンレイクだそうだ。

そもそも2003年の本なので、挙げられているトップダンサーも齢を重ねている。いまのトップダンサーは・・?とりあえずドン・キホーテの映画館、日本のトップダンサーを観ることから始めよう!

◼️藤沢周「武曲Ⅱ」

入りこみました。かなり良かった。剣の道。自分を掘ること。

藤沢周はかつて芥川賞の「ブエノスアイレス午前零時」を読み、ふうん、芥川賞ってやっぱよく分かんない、となっていた。

大学まで剣道部にいらした私の文芸師匠の女史に、この作品が最も自分が体験した世界に近い、と教えていただいたのが「武曲」で、時を経て藤沢周と再び相対した。

ラップ好き、リリックを作るのが好きな高校生・羽田融がふとしたきっかけから剣道をやる事になり、「滴水滴凍」など剣道で重んじられる言葉に惹かれ、さらに剣道を通じて自らに潜む姿に気づくー。一方で、稽古中のアクシデントで剣士だった父を植物人間状態にしてしまった30代の警備員・矢田部研吾はアルコールに溺れ、乱れた生活を送り、自分に似たものを持つ羽田と出逢う。

2017年に映画化されていて、「武曲Ⅱ」はそのタイミングで発売されたようだ。

後日談のようなエピソードが3つ。主人公は羽田、矢田部、羽田で次期は飛ばず秋から冬の連作の形でまとめてある。舞台は、大船、鎌倉

高校3年生の秋、羽田は受験勉強をしながらも毎日道場に出ていたが、古希を過ぎた大師匠・米邑雪峯(みつむらせっぽう)と立ち合っている最中に光邑が脳卒中となり、羽田のメンを受けた後に昏倒し救急車で運ばれる。羽田は自分の中の獣性ともいうべきものを恐れ、落ち込むのだったー。(アルデバラン)

武道の言葉にはどこかしら惹かれるものがある。黒光りしているようなイメージが心に湧く。高校の授業で武道をしていた講堂の、どこか神聖な感じ。世阿弥や吉田兼好が引用されるのも好ましい。受験に絡めていて上手い。

突然ヘンな話だが、子供と「侍戦隊シンケンジャー」を観てたころ、言葉やシチュエーションに他のテーマの戦隊とは違った広がりを感じたものだ。やはり武道の言葉がどこか腹落ちするのは、和だからかな。もちろんエイジングもあるだろう笑。

さらに表現も、どこか異世界に行ってる感じにハマる。まったく過剰なわけではないが、ラップ好きの高校生の調子とミックスされるのが私にとってはちょうど心地よい跳躍になっているかな。

スカーンと薪が真っ二つに割れて、暗闇の中で白い肉を見せる。一瞬エロスを覚えている俺って、何?変態?それとも猟奇?」

「剣先への気の集中。手の内の決め。左足の引きつけ。完璧な心技体の面打ちはまだ難しいけど、それでも空気を裂く音が鳴るようになって、どのくらいになるのだろう。強く振ろうと思って、余計な力を入れると、まず音は鳴らない。たぶん、速く強い打突をしたいと思う自分が、剣の邪魔をするのだ。いわゆる、自我ってやつ?自我なんていう表層のものなど捨てて、自己そのものになる。阿頼耶識への扉を開け、と思う。そこから現れる、魑魅魍魎?でも殺人刀(せつにんとう)でも、懼れずに見据えよ、か。」

いまひとつはやはり、自分を問う、掘ること。羽田と矢田部は同じ「殺人刀(せつにんとう)」を持つのか。止めようのない危うい自分、無意識よりも深い、すべての意識の根底にあるという阿頼耶識(あらやしき)の部分に住んでいる自分の、なのだろうかと彼らは悩む。そして、稽古でぶつかる。

第一作は、楽しみつつも矢田部の乱れぶりがやや過剰にも思え、なんとなく重い後味が残った憶えがある。しかし今回は武道の言葉、表現の調子、自分を掘ること、疑い、もがき、理屈ではないその姿を知り向き合うことが前向きに示されていて、そのマッチングに引き込まれた。やはりエピソード的に、後日談的にされているからだろうか。

藤沢周氏は父親さんが武道家だったとか。滲み出てくるものに違いを感じたような気がした。

今年の中では印象に強く残る、excellentな出会いだった。

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