糸島ドライブ。定番塩プリンの店へ。糸島は風光明媚&おしゃれな店という土地柄がすっかり板に付いた感じで、開発が進んでいるように見受けられる。
時代やね。映え文化は開発を生み出す。一つの方向性が面白い。
◼️ ポール・セロー「ワールズ・エンド」
ねじれを作って、読者を放り出す。小説的おもしろさの一種の特徴か。
本友と訳者の柴田元幸氏の話をしてて、ググったところ、村上春樹の訳のチェックをした作品としてこの短編集が挙がっていた。タイトルに惹かれた部分もあったかと。あとたまに行く古書店が同じような名前だった。
さて、正直な感想は、なるほどハルキ氏が求める小説的おもしろさに合致してるかなと。氏の訳は「グレート・ギャツビー」「フラニーとズーイ」で読んだけれど、その類を、ほんのちょっとだけ一般化した感じかと思う。
9編が収録されている。
「ワールズ・エンド(世界の果て)」
「文壇遊泳術」
「サーカスと戦争」
「コルシカ島の冒険」
「真っ白な嘘」
「便利屋」
「あるレディーの肖像」
「ボランティア講演者」
「緑したたる島」
ほとんどが、アメリカから外国へ出て、そこでなんらかの捻れた、ストレスのかかる状況を発生させ、矛盾というか、割り切れない人間の悲哀を描き出して、そのまま終わる、というパターン。ホラー的でグロなのもある。
好きなのは、父親が息子の言動で妻の浮気に気づく表題作、妻と別れた男がコルシカ島のレストランで働く人妻をナンパしてみる一篇、ぜんぜん明るくないけれど長めで読み応えはあるかな、というラストの「緑したたる島」だろうか。
緑したたるのはプエルトリコ。もう大きなトカゲがネズミを食されたりして異国情緒?満点。ロンドンやパリといった都会もあるが、外国にいること、周囲の環境といわば非日常性が話の成り行きに大いに関係し影響を与えている。そのバランスは確かに上手いと思う。
訳者あとがきでハルキ氏が言うところの、何かが間違っているのだけれど、何が間違っているかがつかめないという居心地の悪さ、というのが直接的間接的に表されている。興味深い短編集だった。
「鉄道大バザール」というのも楽しそうなので読んでみようかな。
◼️ 「上村松園」日経ポケットギャラリー
上村松園の日本美人画に感じ入る。
先日、奈良の松柏美術館へ行ってきた。祖母上村松園、子の上村松篁、孫の上村淳之三代の画業を収集していて、この時は淳之氏の米寿記念の展覧会とかで松園の作品は数点だったけれども、それでも代表作の一つ、「鼓の音」には惹きつけられた。
松園は明治初期に生まれ15歳で英国王室から「四季美人図」を買い上げられたり、18歳で万博に出品したりと早熟の天才然とした女流画家さんと経歴から見える。
ほとんどが美人図で、私はこの人の着物の描写の美しさに惚れ惚れと感じ入ってしまう。
代表作をとしては源氏物語の大きな特徴である嫉妬深い六条御息所の怨霊を描いた「焔」や謡曲の狂女の舞を表した「花がたみ」がある。
現在東京で開催中の「あやしい絵」展覧に展示されている。大阪にも回覧があるそうで楽しみだ。
また正統派、というか、凛とした美しさの「鼓の音」、そして宮尾登美子の小説名にもなっている「序の舞」の雰囲気も良い。
浄瑠璃・歌舞伎劇の「朝顔日記」の深雪を描いたり、平安時代の雪月花を愛でる女性を描いたりと古典や芸能から題材を取ったものも多くそれらがストーリーを感じさせる艶やかで確固とした煌めきを放つ。一方、特に江戸末期の風俗に惹かれるそうで、母親の思い出とも結びついている青眉の女性にはこだわりを持っているようだ。
青眉とは結婚して子が出来たら眉を剃る習慣。柔らかな「母子」、またタイトルそのままの「青眉」には想いがあふれているように思える。
蚊帳を吊ったり、針仕事をしたり、物思いに耽ったりと庶民の姿をも色の組み合わせもセンスよく鮮やかにスッキリと彩るさまはため息が出る。
夏には京都で上村松園の大型展があるそうで、今から心待ち状態。それまでに「序の舞」も読みたい。
どれもいいけど、今回初めて見た「娘深雪」がギャリー中のMVPかな。「鴛鴦髷」も絵葉書買ってきた「若葉」も娘っぽさが出ていてあてなり。
「青眉抄」より「絵三昧」
真・善・美の極地に達した本格的な美人画を描きたい。
私の美人画は、単にきれいな女の人を写実的に描くのではなく、写実は写実で重んじながらも、女性の美に対する理想やあこがれを描き出したいーという気持ちから、それを描いて来たのである。」
すっかりマイブームで期待が膨らんでいる。
0 件のコメント:
コメントを投稿