2021年1月6日水曜日

12月書評の5




クリスマスの食卓。ウィンターカップが始まって、毎夜深夜まで再放送を観てたから、寝不足気味のこのころ。

手続きがあってクリスマスまで出社。はやぶさでこの年の読書が締まった。やっぱいいな、はやぶさの物語。

◼️津田雄一

「はやぶさ最強ミッションの真実」


はやぶさ2は、完ぺき。しかし、その影にもトラブルや深い悩みは尽きなかった。遠大なミッションを支えたのは、チームづくりと、遊びゴコロ。


12月初旬、はやぶさ2のカプセルが地球に投入され、美しい軌跡を描いて計画通りオーストラリアのウーメラ砂漠に帰還、無事回収されましたね。私は後述する思い入れがあったのですが、深夜のこととて待ち時間に寝落ちしてしまい、ハッと気がついたら管制室に拍手が湧いてて、記念すべき流れ星をリアタイで見逃しました。2020年の大きな悔いです泣^_^。。


この本ははやぶさ2 のプロジェクトマネージャーさんがしたため、帰還前の前の11月に出版されたもの。


初号機はやぶさの帰還前にすでに計画はあったらしいのですが、やはり感動的な帰還があってからぐっと進めやすくなったらしい。


はやぶさ2のミッションにはJAXAと宇宙科学研究所、全国の大学の研究者、技術者、NECが参加した。さらにドイツとフランスチームの探査ロボットを積み、NASAには多大な協力を求め、サンプル回収のためオーストラリアにも依頼したばかりでなく多くの観測チームの力を結集するなど、第九のシラーの詩を彷彿とさせる世界参加のまさにビッグプロジェクト。



そのチームのモットーとしてプロマネの津田氏が心掛けたのは、「遊び心」と言っていいだろう。ガチガチの計画ではなく、あんなことこんなことできないかと模索したり、厳しい訓練や小惑星の地名の命名にもユーモアを忘れなかったり。もちろん本務にも目標に向かって前進していけるような、「いい雰囲気」を出すよう心掛けたのがよく分かった。


遊びゴコロでクイズです。「リュウグウ」という名前ははやぶさ2を打ち上げた後に公募により決められました。水を求めるはやぶさ2、探究の帰りに玉手箱を持ち帰るはやぶさ2のイメージが、浦島太郎の物語と、パッと結びついたとのことですが、記者会見でのやりとりが印象的。


記者

「浦島太郎の物語では玉手箱を開けると煙が出てきて歳をとるが、リュウグウで得た玉手箱は開けると何が起きるのか?」


著者

「開けると歳を取るのは◯◯です。◯◯の時計を前に進められます。」


さて何でしょう。難しくない言葉です。回答はどこかに。



はやぶさ初号機は、イオンエンジンの故障があり、砂塵を巻き上げるための弾丸が発射されず、探査ローバー「ミネルバ」の着地失敗、一時広大な宇宙空間で行方不明になるなどの大トラブルが相次いだ。


しかしこの経験はあまりにも大きく、はやぶさ2プロジェクトはそのおかげでスムーズに進んだと言っても過言ではないと思う。弾丸発射、2台になった「ミネルバⅡ」の着陸、稼働成功など、初号機のストーリーを知っている身にもリベンジ成功の感動のお裾分けがあった。


さて、はやぶさ2の全容と魅力が語られているこの本の読みどころ。


はやぶさ2は、大トラブルに見舞われることなく、大成功したプロジェクトだと言い切っていいかと思う。


はやぶさ2のミッションの定義とサクセスライテリア(成功基準)は、ミニマムサクセス、フルサクセス、エクストラサクセスというように分類されていた。


計画では衝突体(銅製の弾頭)を小惑星に衝突させ、クレーターを生成させる、がミニマムで、特定した領域に衝突させる、がフル。


衝突により、表面に露出した小惑星の地下物質のサンプルを採取する、はエクストラサクセスとなっていた。


リュウグウは予想よりかなりデコボコした地形で岩が多く、平らな部分が非常に少ない。そんな中、苦労してチームはタッチダウンを成功させサンプルを採取した。その後、ドカンと大きなクレーターの生成にも成功した。



熱などにさらされてない地下の物質を採取したい、しかしフルサクセスまで達成しており、降下を失敗して墜落したりしたら、全てを棒に振りかねない。地球帰還が最優先ー。宇宙研幹部からは、第2回タッチダウンは考える必要なし、というブレーキがかかった。


チームでも、あまり地下物質の露出はないだろうけれど、より平坦なエリアにタッチダウンさせよう、という無難な結論にいったん落ち着くが、あるエンジニアがこう言った。


こんなチャンス、もう数十年は来ない。これを見逃すのは人類の宇宙科学の損失だ、本当にそんな中途半端な地点を選択していいのですか?


どう解決していったのか、結果はどうだったのか、はググるかお読みください。


個人的な思い入れ、もともと天文好き、初号機でハマった私はカプセルを見に行き、JAXA相模原キャンパスで実物模型を見て、向かいの博物館のプラネタリウムでドキュメンタリー映像に感動し、書籍を読み映画を観た。


はやぶさ2のデータ募集に家族全員の名前とメッセージを託した。世界18万人分のデータを刻んだマイクロフィルムはターゲットマーカーに貼り付けられて投入され、いまもリュウグウにある。コピーのデータは先日カプセルとともに帰ってきた。


はやぶさ2は地球上空でカプセルを投入した後、残り50%のイオンエンジンの燃料、弾丸1発、ターゲットマーカー1つを抱えたまま、拡張ミッションへと旅立った。直径数十メートルほどの小さい、しかも10分あまりで高速自転する小惑星をターゲットに、1つをフライバイ探査した後、最終的には2031年に「1998 KY26」へ到着し、残る弾丸を撃ち込み、タッチダウンも行うかも。


詳しくはこちらで。

https://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20201111_extMission/


JAXAにはなんと、火星の衛星フォボスのサンプルリターンを行う「MMX」ミッションもあるとか。もちろん「はやぶさ3」の検討も始まっているとか。


夢は広がる。はやぶさは、最高だ。


回答は「科学」でした。

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