◼️高嶋ちさ子
「ヴァイオリニストの音楽案内」
柔らかな名曲とCD案内。ジャンルとしては実によくあるが、高嶋ちさ子のさまざまが滲み出て面白かったりして。
確かこれは出張に行く空港で朝買ったと思う。この本の影響で私はvnヤッシャ・ハイフェッツ/指揮フリッツ・ライナーの「チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲」を買って、今の今までハマっている。
高嶋ちさ子が雑誌に書いたクラシック入門のエッセイを収録したものらしい。著者はコンサートに来るお客さんとコミュニケーションが取れず悩んでいて、最初にエッセイの話があった時「喜んで飛びついた」そうだ。
章のタイトルからかなりキャッチーである。
「しつこい男だね」
「弾いていたのはコギャルたち?」
「大海に泳ぐ鯨のように」
「じつはノミの心臓の持ち主」
この言葉たちから曲名を当てられたら天才です。でも、なんだと思います?
◆「しつこい男だね」
→ベートーヴェン交響曲第5番「運命」
ジャジャジャジャーンという旋律をなん度も繰り返し、第4楽章でも終わるフェイントを入れて繰り返したりするのでそこへ「しつこい男だね」。
◆「弾いていたのはコギャルたち?」
→ヴィヴァルディ協奏曲集 「四季」
もともとヴィヴァルディは女子だけが入れる孤児院で弾かせ、そのハイグレードさで評判を呼び大成功したから。乃木坂46とかみたいなものでしょう^_^コギャル・・ではないかな。まあ出版が2005年なので。
◆「大海に泳ぐ鯨のように」
→チャイコフスキー ピアノ協奏曲
大編成のオーケストラをバックに、あの黒い大きなピアノがうなり声をあげる様は、鯨のようだと。なるほどなるほど。スケールの大きさと分かりやすさはピカいち。このタイトルで曲名まではさすがにだけど。
おすすめは当時17歳のキーシン&カラヤン、リヒテル&カラヤン、そしてアルゲリッチだとか。私はやっぱアルゲリッチかな。キーシン人気あるよねぇ。
いつも冒頭タタタタン、ジャン!の五音で世界的に有名になったのはすごいなと思う。
◆「じつはノミの心臓の持ち主」
→私にはシベリウスのことかな?と思ったけど、ラフマニノフさんのこと。裕福なボンボンだったラフマは、自信満々で発表した交響曲1番を酷評され、神経症で医者にかかります。「もし地獄に音楽院があったら、こんな曲を書いた学生が1位をとり、地獄の住人を喜ばせただろう。」すごい評ですね〜。
ヴィオラ奏者だったお医者さん、ラフマになぜか
「あなたは協奏曲を書き、大成功をおさめる、あなたは協奏曲で大成功を・・」
と暗示をかけ、その言葉の通りピアノ協奏曲2番で立ち直ります。映画、フィギュアスケートにもよく使われるロマンティックで壮大な曲。浅田真央ちゃんも2014年ソチオリンピック、セルフベストを出し優勝した世界選手権で舞いました。
ちなみにシベリウスは優秀なヴァイオリニストだったのですが極度のあがり症のために作曲に専念、後進のために、技術的に「めちゃめちゃ難しい」、雰囲気は「暗く」「ピーンと糸が張ったような」「内に秘めたる何かがある」曲を書きました。高嶋氏は「どうも好きになれない」そうです。弾き手でない私は大好きです笑。
プレイヤーだけあって、「緊張」との付き合いには再々触れてある。著者も「間違えるぞ」という声が聞こえるようになって医者にかかったんだとか。生い立ちも、師とのレッスン風景も分かるようになっている。アメリカクラシック界の、ヨーロッパとの違いも感じることができる。
NHK響の番組で、諏訪内晶子がベートーヴェンのコンチェルトを弾くというので高嶋ちさ子なんて書いてたっけ・・と調べて、そのまま再読。ちなみに、なんといっても出だしが鬼門で、0.1ミリでも押さえるところが違った日には「死にたい・・・・・・」となるとか。
ソリストは完璧を求められ、聴衆に向かうばかりでなく、対指揮者、対オケなども考えておかなければいけない。プレッシャーもきついんだろなぁ。
曲はオケ部分だけがしばらくあり、やがてソリストが奏でるのは、太陽へと昇っていくかのようなメロディ。出だしバーンと、です。しかしアタマだし、コケたらたしかに階段をころげ落ちるようなもんかも。
おすすめはズーカーマン&バレンボイムだそう。私はヒラリー・ハーンか、チョン・キョン・ファ。自身がアメリカでオケを体験したイダ・ヘンデルの想い出もしたためている。
私の大好き度ナンバーワンのコンチェルト、いわゆるドヴォコン、ドヴォルザークのチェロ協奏曲は、「こんなにかっこいい曲がなんでチェロの曲なんだよ」とヴァイオリニストはかなり悔しい思いでいるとか。
おすすめはやっぱり、ロストロポーヴィチ&弟子の小澤征爾だそうだ。これは枯れた味わいが本当にいい名盤。私的にはジャクリーヌ・デュ・プレ&チェリビダッケも推したい。最近聴いたなかでは宮田大も印象が良い。
語りたくなってしまった。他にも、世界で人気の東京ストリングカルテット参加のモーツァルトクラリネット五重奏とかメンデルスゾーンのオクテット、八重奏曲とか、さっぱり分からないオペラの歌姫、マリア・カラス、アンジェラ・ゲオルギュー、サラ・ブライトマンなど興味を持ったのがたくさん。
高嶋ちさ子氏は、上手いなぁと感じた一冊でした。
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