2019年8月15日木曜日

8月書評の4




大型の台風10号はほぼ予報通りのコースを取って、近畿の私の居住地域は暴風域をかすめるくらいのはずだった、が、15日の当日朝になってみると、暴風域が大きくなり、かつ台風の中心から極端に東に寄っていた。なんちゅうアンバランス。これでほぼ近畿直撃やんか。上陸が近づいてきてデータが集まってきたってことなんだろうか。

(気象にはシロウトなので全部経験則です)
発達しながら北上する見込み、「強い」台風になるおそれがある、という予測は外れて、965hpはこの24時間で975まで落ちた。ただ最大風速は30m、瞬間最大風速は45mのまま。

通常日本付近に来ると海水温が低く陸地も通るから勢力はどんどん弱まる。軽くなるから速度も増す。動きがゆっくりだからそのペースは早いか?注目しとこう。

山陽新幹線は終日運休、東海道新幹線は間引き運転、JR神戸線は昼頃から計画運休。阪急、阪神は運休の発表はない。まあ「強い」にもなってない台風で、最接近は夕夜。実際いま時折パラパラと雨が降る程度。風もあまりない。私鉄としてはこの状況では運休しにくいだろう。

今回関西は台風の東側、危険半円と呼ばれる範囲にわが住まいは含まれる。ただ、暴風域が東に広がったことで、これまでは暴風域の端で夕方以降かなり風が強まる予想だったのが、内側に入ったから、これまでより少し弱まる予測も出ている。

いろいろ予測してプラス材料を探しても、台風は一つ一つ別もので、来てみないと影響は分からない。これもまた経験則。

◼️中西進「万葉を旅する」


三輪山は山そのものがご神体。登ってみましたよ。。


触発されて、図書館で取り寄せて読んでみました。


第一部は「万葉びとの宇宙観」「万葉の道を歩く」「大和しうるはしー三輪とその周辺」「近江から薩摩へ」で、万葉集のベースとなる奈良と当時の時代性、史実と歌と土地の関係などを述べている。


私は数年前、日本最古の神社、大神(おおみわ)神社を訪ねたことがある。御神体は三輪山そのもので、故に本殿はない。入山料を払って、御神体に登る。水分補給以外の飲食禁止、写真撮影禁止。杖貸してもらって、2時間ほどの往復行程。けっこうしんどい。山頂には何もなく、景色も開けなかった。


帰りに寄った三輪そうめんの店で、「食べたら扇風機独占して寝てってもいいですよ〜」と言われた覚えがある。疲労困ぱいが顔に出てたかもしれない。実際近くに纏向や箸墓へ行くエネルギーはとてもなかった。^_^


そもそも近鉄沿線のアクセスの良い奈良や飛鳥に行った時も大和独特の悠久さというものがたしかにあると感じる。しかし三輪山とその周辺は、海石榴市(つばいち)、山の辺の道という雰囲気も相まって、逆に歴史という考え方から脱け出たような気がした。この本でも紹介されている壬申の乱、国際的危機などからまた別のところにある土地のような気がした。もっとこう、空想的な・・。


大神神社はJRからのアクセスはいいのだが、なにせ本数が少なかった覚えがある。近鉄と比べて行きにくいのもちょっと関係あったりして。


第一部で万葉のベース、地域とのつながり概要を述べた後、第二部では陸奥から壱岐・対馬まで一つずつ土地をゆかりのある歌により取り上げる。


北から下って、富士山から北陸、富山は立山連峰がいい感じ。


立山の雪し消らしも延槻(はいつき)の

川の渡瀬(わたりぜ)鐙浸かすも

                                          大伴家持


立山の雪こそ今解けはじめたらしい。

延槻川の渡り瀬で鐙を水にひたすことよ。


富山に行った際、飛行機の中から、市内からの眺めと立山連峰は素晴らしかった。

立山連峰の写真の名所である雨晴海岸に立ってみたくなる。


近江、額田王の歌で有名な蒲生野から京都へ。そして奈良に入り、但馬皇女の恋の吉隠(よなばり)、香具山、大津皇子と大来皇女の二上山もぜひに行ってみたい。


さらに西へ。須磨、熟田津、すっ飛ばして福岡のよく行った志賀島(しかのしま)。


さて取り上げたいのは福岡の可也(かや)。いまの芥屋である。


草枕 旅を苦しみ恋ひ居れば

可也の山辺にさを鹿鳴くも

                           壬生宇太麻呂


草を枕の旅がつらいので家を恋していると、可也の山辺でさ男鹿が妻を恋して鳴くよ。


可也は、博多から西に行った、糸島市。このお盆に私はその周辺に行く。多少なりとも感じるものがあるだろうか。


著者の経験談も多く、特に第一部は万葉の歌の舞台となった土地が持つ、霞がかかったような、悠久で神秘的な雰囲気が現れている。


第二部はそれぞれ列車バスのアクセスを書いてくれているのはプラスポイントも、も少し写真があれば、んで地図があれば最適と思ってしまった。


ああ、可也から帰ってきたら、奈良行かなきゃ。早く行きたいな。


◼️竹下佳江「セッター思考」


ほんとうにまっすぐ、まっしぐらで、感心しながら読んだ。世界最小、最強セッターの思考とは・・ちょっとオトナの読み物でした。


スポーツ好きで竹下佳江を知らない人はいないでしょう。バレーボール全日本女子の正セッターとして長く活躍し、2012年ロンドンオリンピックでは28年ぶりのメダル獲得に貢献しました。勝気そうなイメージで、でも思慮深い態度で好感度は高いです。


私にとっては同じ福岡県出身、また引退後関西で活動されていること、さらに159cmという、女子バレーでも最も小さい部類に入る身長でありながら第一線で活躍し続け大きなことを成し遂げた、というのも素晴らしいと思います。


本書は最初にリーダーを行動力のあるタイプ「アタッカー型」、縁の下の力持ち「セッター型」、職人タイプの「リベロ型」に分け、セッター型を説明、追究していくわけですが、特に前半は「女性を指導するには」ということがポイントのようです。


スポーツものは好きで、これまでサッカーの中村俊輔や遠藤保仁の、同種の本を読んできました。その中で、やたらとスポーツ界での現象について、これは一般の企業でもそうだろうと思う、というフレーズを多用するのでちょっと食傷気味になった覚えがあります。


最近の方向性か、この本もそんな感じの言い方もあるのですが、さすがセッター?細やかな思考というか、男性管理職が苦労しそうなポイントを的確に冷静に説明してくれているので、素直に読み込めました。バレーボールで男性監督と女性選手の間に立つことが多かったことを感じさせます。女性の多い部署に管理職で行った先輩が女性心理の本を読み込んだ、と話していたのを思い出しました。


全日本女子はシドニーオリンピックの最終予選で負け、オリンピックの連続出場を途切れさせています。その時のセッターが竹下氏で、当時はあんな小さな選手を使うから、とだいぶバッシングを受けたらしく、その時一度バレーボール自体をやめています。しかし周囲の熱意で復活し、また全日本に呼ばれ、アタッカーを気持ちよく打たせるセッターとして、日の丸を背負うキャプテンとしてほんとうに心を砕いて、個々の選手、チーム、監督のケアをしてきたその軌跡が、独自の言葉で書かれています。どうもこれまでのスポーツものとはちょっと印象が違いました。思い入れかもしれませんが、壁が低く、私が聴衆として参加している講演で、竹下氏が話しかけているような気がしました。


それともうひとつ。ほんとうにまっすぐですね!彼女は小学生の時から強いチームと縁があり、ユース世代で世界大会で優勝するなどエリートコースを歩んでいます。


しかし、親に経済的負担をかけたくなかったことから実業団に行きたいと願い、コツコツと努力して四年目にようやくレギュラーをつかみ、チーム、全日本でも観察と気遣い、タイミングを読むことなどコート内外でのそのセッター力、セッター思考力、セッター行動力とも言えるものをフル回転させます。ロンドンオリンピックでは指を骨折していたにもかかわらず絶対出る!と強行出場しメダルを勝ち取りました。夢であった親にマンションを買ってあげたエピソードなど、バレーにもまっしぐらでまっすぐ、人生にも謙虚でまっすぐ、というのが伝わってきます。


息子がバレーボールをやっているので、先に読んでうんちくを身につけ、読ませてやろうと思って借りた本でしたが、けっこう書いてあることが、特に女性の扱い方に関してはオトナで、学生に与えてもいいものかはと考えちまいました。まあ読ませますけどね。


理論と人間力。良書でした。

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