◼️硝子町玻璃
「出雲のあやかしホテルに就職します」
ご当地ラノベ好き、今度は出雲ものにチャレンジー。どんなものやら。
思った以上にあやかしマンガ的。でも最後の方は泣かされちゃったりして。
就職面接にトラブル・失敗続きの時町見初(ときまちみそめ)。出雲の心霊スポットとして悪名高い「ホテル櫻葉」でベルガールとして働くことに。着いてみるとホテルは心霊スポットどころではなく、河童やろくろ首など人外のものも客として宿泊していた。先輩のベルボーイ・椿木冬緒や創立者の孫娘で美人のフロント係・櫻葉永遠子らに囲まれた社会人ライフは天狗や男性の魂を喰らう女の妖怪など、予想以上のあやかし生活となるー。
見初の就職活動からホテル櫻葉の一員となるまでがコンパクトにおもろかしく描かれ、その後冬緒、永遠子、見初の家系と能力を少しずつ明かしていく。そして従業員たち、冬緒や腕が良く朴訥としたシェフ桃山のエピソードが印象的に展開されていく。
いやあ流れるがごとし。ライトノベルの鑑のような、妖しく面白くスピーディで色んなものがギュッと詰まった楽しい作品。主役クラスにはイケメン童顔・冬緒、美人美ボディの永遠子、謎の実力者の支配人、実は妖怪のソムリエなど今後のエピソードを予想させるキャラを配している。
冬緒の過去に連なる妖し話、桃山と女妖怪とのブロックともに心のどこかに響く。桃山のほうはホントに切なくぐすっとなったりしてしまった。
ご当地出雲のネタはおそらくこれから、というところ。これってミニマムっぽいけど6巻まで続いてるらしいし。また探してみようかな。
むっちゃ暑かったんで栞絵はがきは雪景色の樹々に鷹がとまっている東山魁夷「白い朝」でした。少しでも涼しい気分で読みたく。
深夜に読んでいると風でブラインドが揺れ音がした。母の霊がそばに来ているような気がした。ラノベでも、あやかしものってそんな気分になるから不思議。
ホームズをも連想させる推理。強いクセのある同心・木暮の大仕掛。
今回はよりミステリー度合いが濃い。同心木暮と殺し屋の過去を持つ遠野屋、岡っ引き親分で年配の伊佐治。噛み合わせ抜群の3人が活躍する「弥勒」シリーズ第5弾。
児童小説のイメージ濃いあさのあつこが、こんなに大人の闇深いストーリーを書くなんてと「弥勒の月」を読んだ時は唸 った。今回ややハデで、エンタメ推理もの風味。主役クラスに大きな展開はなく、それぞれの持ち味で活躍させている。
品川に女郎旅籠を経営しているお仙は同心木暮信次郎の情婦。かつて仕官していた夫が女郎屋の女と無理心中をはかり、家はお取り潰し、損害の返済のため身を売り、囲われたお大尽から遺産を得て店を興した過去を持つ。
木暮の配下で堅物の赤田哉次郎が女郎屋で遊女を斬り切腹して死んだ。現場に多くの血が流れているのを検分した木暮は、お仙に、当時の事情を知る者に聞き込みをするよう持ちかける。そして今は羽振りの良い小間物屋だが、かつて殺し屋だった過去を持つ遠野屋清之介に、お仙の護衛を依頼するー。
同様の手口に大きな闇が潜んでいると見立てた木暮は次々と手を打って捜査の網を絞っていく。
もちろん木暮のクセの強さは発揮されているが、今回はあくまで捜査のため、という向きが強い。そういった意味では新鮮味はないかもしれない。
しかし今作は発想、推理の足がかり、捜査の仕掛けと、大げさに言えばシャーロック・ホームズのようなミステリー物語だった。
ホームズも、どこかで、犯罪の事例を徹底的に勉強すれば古今の犯罪への考え方、対応が分かるようになるという意味合いのことを話していたと思う。
ハデな事件に木暮、遠野屋、伊佐治のくすっと笑うテンポの良い会話、深い陰謀と見どころたくさん。犯人が分かった時の感慨が薄かったかな、とは思ったが、今回も楽しめた。
文章、言葉にもだいぶ工夫を凝らしている。読む時の引っかかりもいい味のひとつだったかな。
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