東京への行きの富士山は、人生最高級ち美しかった。これはちょっと白が飛んでベタッとしたのと、水平取れてないから不満な写真。
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
ちょっと読みたくなった。再読だけど、話は忘れてたな〜。でも、感性に手で触れているようで、いい感じ。童話集だし、息子手作りの栞が合うかなと使ってみた。
クラムボン、で有名な「やまなし」、「いちょうの実」、哀しい「よだかの星」、ちょっと仏教系の「ひかりの素足」そして「風の又三郎」に「銀河鉄道の夜」。先の4編は10〜40Pくらい、最後の2つは70〜80Pほどの作品だ。
最初の3つは、谷川の中の蟹の子、いちょうの実つまり銀杏、ヨタカと、いずれも人の視点でないのが面白い。「やまなし」はどこまでも美しく清冽で、ヨタカは根元的な哀切に溢れる。
「又三郎」は現実のみの話で、「銀河鉄道」はもちろんファンタジー。この2つは、日本の何人の人に読まれたのだろう。
「又三郎」は異界からやって来たような転校生の、岩手の山里で地元の子らとのふれあい、また「又三郎」とあだ名された子がなにかしら不吉なことをもたらす、という不安な感じがよく出ている。「銀河鉄道の夜」は少年ファンタジー童話の王道で、こちらも不吉な予感を感じさせる天の川の旅。ラストがかわいそうで、ちょっと変。
巻末に宮沢賢治の詳細な解説がついている。ほかの著作も読みたくなる。
宮下奈都「終わらない歌」
「よろこびの歌」の続編。好みもあるけど、とてもいい。久々に宮下奈都のいいところが、暴走している。
ヴァイオリニストの母親を持つ御木本玲は、音大の声楽科に通っているが、クラスの中で一番になれず、鬱屈がたまっている。高校の同級生でミュージカル女優を目指し劇団に所属する千夏と行った居酒屋で、成り行きで玲はハッピーバースデーを歌うことになる。(「シオンの娘」)
「よろこびの歌」で玲とクラスメイトだった女の子たち、その3年後、それぞれの視点と状況で、5つのストーリーが物語られ、最後にまた玲と千夏に戻って来る。
宮下奈都は、デビュー作「スコーレNo.4」が私的にスマッシュヒットだった。表現に思い切りがあって、少し引いてみるとなんのことはないストーリー立てなのに、もの凄く引き込まれた。その後数作品を読んだ時には、なにか目指しているものは見えそうだが、小さくまとまっているようにも感じていた。
この作品は、歌、曲が一章ごとに出てきて、章の主人公に大きな影響を与えている。女の子な小さな物語の集積、でもそこには宮下奈都の確固とした感性に従った組み立ての話が、丁寧に、かつ思い切って描かれている。
不思議に引き込まれる感覚が久々にして、ちょっと変な話だなー、と思った中盤の「コスモス」では涙を誘われた。私1人で盛り上がってるんだろか(笑)。
ブルーハーツ好きな人には、必読。作者も大好きだそうだ。私と同い年の作家で、「玲」は私の母と同じ字、というとこにもどこか親近感がある。
紅玉いづき「ミミズクと夜の王」
良いお伽話。ストレートでてらいのない成り行き。でも小説を作っているディテールにちょっと惹かれる。電撃小説大賞。
魔物が棲む「夜の森」に入っていった少女ミミズクは、月の瞳と美貌を持つ夜の王に出会う。ミミズクは彼にあるお願いをするのだが・・。
ちょっと悲しく極端な伏線が引いてあって、それがまたこの話の底をひとつ支えている。登場するキャラクターがそれぞれ魅力的で、分かりやすい。感情的な裏付けがシンプルであり、過剰な演出をしない分、品が良い。
作者を紹介している新聞記事で、このデビュー作に興味を持って探していた。思っていたよりSFチックでもないし、趣向を凝らしたストーリー展開があるわけでもない。しかし力があるお伽話である。
もう少し魔力の活用と説明があると面白いかも、とも思ったが、まあ、すべてを出さないところが、この作品のいいとこなんだろうな。
我孫子武丸「探偵映画」
トリックがミステリー界ではひとつ認められたものとして、他の本で名前を見かける推理小説。復刊版。
映画製作プロダクションのサード助監督、立原は、ベテラン大柳登志蔵のもと「探偵映画」という作品を撮影しているが、ラストシーンの撮影を前に、監督が失踪してしまう。さらに、俳優陣も出資していたことが明らかに。立原は記録係の美奈子とともに監督を探し回るが・・。
この小説の名前を見たのは、米澤穂信の古典部シリーズ「愚者のエンドロール」だろうか。その後もうひとつどこかで目にした。トリックというか手法自体は、映画を見て、犯人を当てる、というものである。
たまたま見つけて、読んでみたが、その手法が何を生むのか、も面白いし、美奈子も含め、映画オタクの人々の考え方もふむふむ、となるし青春ものとしても楽しめる。1990年の作品なので、その時代のにおいもあり、手法だけでなく、全体の色合いもいい秀作か。サラサラ読めた。
オチに関しては、まあなにも言うまい。(笑)でもキレイかな。どうかな、というところ。
我孫子武丸氏は、初読。綾辻行人や有栖川有栖らと新本格を担った作家の1人だと認識している。ミステリーの傑作を検索すると、我孫子氏の「殺戮にいたる病」という作品がもれなく出てくるが、いかにも重そうなので、ちょっとこれ読む前に、作風を知るために読んでみよう、的な気持ちも今回あった。
ふむ、なんか、若い頃を思い出したな。楽しかった。
0 件のコメント:
コメントを投稿