2012年12月1日土曜日

11月書評

11月は7冊。途中忙しかったが、思ったより読めた。では行って見ましょう!

藤島大「スポーツ発熱地図」

土地とスポーツの結び付きを追って旅する、エッセイ集である。「○○に熱い町」というのが意外に多くて、微笑ましくていい。フェンシングやソフトテニスの話は面白かった。酒と食べ物の紹介もあって、楽しいスポーツ紀行ものだと思う。バスケットをやってた身としては、やっぱ能代に行ってみたいなあ!

誉田哲也「武士道セブンティーン」

映画化もされた、「武士道シックスティーン」の続編である。各方面から好評の声を聞く。かつては同じチームで、離ればなれになった2人の女子剣士には、それぞれに苦難があって・・という話。

主人公の1人、早苗が転校したのは、福岡にある、剣道のチョー名門校で、そこには、早苗の親友にしてライバル、全中準優勝者の香織を、決勝で破ったレナがいて、という流れである。

元々この物語の良さはキャラ設定の妙に尽きる、と思っていたが、新キャラクター、博多弁の剣士、レナも、とてもいい。物語的には、あれ?と思うところもあったが、でも上質のエンタテインメントだと思う。

誉田哲也「武士道エイティーン」

こちらも、あっと言う間に読みました。完結編。スピンオフ作品もあり、楽しめる。やはり香織の独白部分のセリフは秀逸。レナ目線も欲しかったかな。「ナインティーン」も、無いことはないらしいので、当てにせず、楽しみに待とう。

森絵都「風に舞い上がるビニールシート」

なんかいい本無いかなと、最近の直木賞受賞作をiphoneで見ながらブックオフで探していたら、行き当たった作品。ある意味奇妙な人の、短編集である。これは、普通の人の人生におけるふとした暗部に光を当てる、ライトな作品かなと思った。最初は。

しかし、途中からは趣きが変わった気がする。6つのうち、3つは前者、ひとつは、何故か重松清風、もう2つは、決して綺麗なだけではない、未来思考ものとなっていて、幅の広さを感じさせる。それにしても、昨今は、女性作家の方が、大胆だ。読めば読むほど、その感は強まる。

ただ、短編集では作家の本当のクセは分からないと感じている。次は長編を読んでみよう。

北村薫「空飛ぶ馬」

北村薫のデビュー作である。この時点では、作者の詳しいプロフィールは明かされておらず、女子大生が主人公であることから、若い女性作家が書いていると思った人もいたようだ。

北村薫を代表するシリーズ、円紫さんシリーズの第一 作でもある。日常に潜む、時にぞっとする謎を、神の視座をも持っているのではないかと思える落語家・円紫が次々と解いていく。ミステリに分類されているが、私はそうではないと思う。文学、落語のうんちくも、半端ではない。

しかし、北村薫は、特殊だ。はっきりとしたテイストを持っていて、はまる人ははまるだろう。一方理屈っぽく品もいいので、敬遠する人も居るだろう。私は好きである。またちょくちょく、「六の宮の姫君」とか「ひとがた流し」とかを読むだろう。

辻村深月「鍵のない夢をみる」

直木賞受賞作品。短編集である。ふうむむ、という感じだ。ここ最近、3冊の直木賞受賞作を読んだが、いずれも短編集だった。内ひとつは連作。そういえば、北村薫の「鷺と雪」も短編連作だ。こちらは短編連作のシリーズ3作めだった。

他の2冊、つまり森絵都「風に舞い上がるビニールシート」と、この作品は、なんら連関の無い短編集。正直に言うと評価に困る。

作家的に言うと、短編の方が小説技巧についてはより分かる、という話は聞いたことがある。収録作品間のテイストやまとまりも見ているのだろう。が、直木賞はやっぱドカンと大作を読みたいのが本音だ。せめて全体として何かが見えるようであって欲しい。私も、まだまだ修行が必要なようだ(笑)。

柚木麻子「終点のあの子」

これも短編集。しかし編ごとに主人公が移る、連作だ。東京、小田急沿線沿いにあるお嬢様女子校が舞台の、友情ものである。

女子と言わず男子でも、やはり友人、については色々有るものだ。全てが丸く収まる話ではないが、オチが微笑ましくついて、それが、解決のつかなかった物語の先をも予感させる。何より未熟な女子高生を未熟なまま描いている子供っぽさと、じれったさ、大げさに言えば瑞々しさが心地良く、久々に、次は次はと読んでしまった。面白かった。

最初のひとつ、「フォゲットミー、ノットブルー」がオール讀物新人賞を受賞し、短編を足した、初の単行本だそうだ。また選択肢が、ひとつ増えた気分だ。

11月終了時点で64冊。いよいよ来月で2012年の読書は終了。大賞発表だ(笑)。楽しく振り返ることが出来ればいいな。

0 件のコメント:

コメントを投稿