2012年12月26日水曜日

12月書評

クリスマスは、今年もチーズフォンデュ。ワインを飲んで、プレゼントの、バーで動かすサッカーゲームを息子として遊んだ。

クッキーが、耳の腫瘍を手術で取った。レオンがまつわりつくので、パパとクッキー、ママと息子とレオンの取り合わせで寝ようとしたところ、息子がパパと寝たい、と号泣、結局いつものようにパパと息子、ママとクッキーとレオン、というふうにして眠る。

さて、12月もよく読んだ。では9作品の書評スタート!

森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」

山本周五郎賞、直木賞候補、本屋大賞第2位、数人がいいと言った森見登美彦の代表作である。舞台は京都、主人公は黒髪の乙女と、彼女に恋する私。まあ一言で言えば、ハチャメチャな京都の青春ファンタジー・ノベル。

最初は、マンガみたいで、正直小賢しさが鼻についた。読み進めるうち、マンガみたいなのは変わらないが、まあ慣れで親近感が出てきて、まずは面白かった。テンポとスピード感はいい。解説も無かったし、これがどの程度京都に造詣深いかは、分からない。神戸ならある程度分かるのだが。

うーん、へぇーという域を出ないが、薦めてくれた人たちと話をしたほうが良さそうだ。

高田郁「八朔の雪 みをつくし料理帖」

北川景子主演でTVドラマにもなった、「みをつくし料理帖シリーズ」の第1作。途中までは、あまり料理も作らないし暗いし、だったが、茶碗蒸しあたりから、すごく面白くなった。ちょっと泣きが多いのと、分かりやすい悪役が出てきたので、1巻めからパターンづいているが、謎が謎を呼ぶ展開で、2巻め「花散らしの雨」も早く読みたいものだ。

森博嗣「すべてがFになる」
工学博士が書いた、理系の物語。密室殺人、消えた犯人、孤島で連絡が取れない、とミステリーの王道を行く物語だが、物語のベースも、謎も、理系そのもの。10数年も前に書かれたものだけに、コンピュータ用語は、私にもついていけるくらい牧歌的な面もあるが、特殊な味付けが効いている。

この作品はシリーズの第1作で、評判を呼び、人気作になったとか。実は、ミステリーの王道をはっきりと意識して、外している点があるのだが、それを云々言うのは、もう数冊読んでみてからにしたい気がする。ミステリーの匂いがする、それなりに面白い作品だった。

高田郁「花散らしの雨 みおつくし料理帖」
「想い雲 みおつくし料理帖」

シリーズ第2作。次々と起こる災難、そして少しづつ明らかになっていく真実に、澪を中心とした、もはやみおつくしファミリー、とも言っていい人情豊かな人々が立ち向かう。単純に楽しめるし、登場人物は誰もが魅力的。また料理が庶民的で、知的好奇心も掻き立てられて面白い。「ありぇねぇ」には笑ってしまった。

3巻めには、謎についての情報がだいぶ出てくるので、先に進む気になる。料理について、新しいもの、知恵を絞った考え、という部分にも興味を惹かれる。ここまで来たら、シリーズ完読しよう。

熊谷達也「邂逅の森」

直木賞、山本周五郎賞を史上初めてダブル受賞した作品。東北の、あるマタギの数奇な人生がテーマである。

文学、文芸というものは、しばしば理屈ではなく、作品全体が醸し出す雰囲気と迫力が評価される。ミステリなどは、奇想天外な謎にトリック、さらにそのトリックを使わなければならなかった明確な理由、そして犯罪の、のっぴきならない動機、などが求められるし、のみならず、探偵役が魅力的であること、とか、設定の妙まで評価の対象となったりする。

通常の小説でも、意味合い、不幸と幸福のさじ加減、構成の噛み合い、などの分析をする傾向もあるが、時にそれをも凌駕するものが表れる。絵画や彫刻でも同じかと思うが、作品から立ち昇る力強さ、清冽な感覚、などはやはり中心となるべきものだろう。

前置きが長くなったが、「邂逅の森」は、そのような作品だ。最初はあまりに骨っぽく荒っぽい、前時代的なマタギの姿にやや引いたが、主人公富治の数奇な運命と、まっすぐに立ち向かう姿、そして人生の中での、確立されたもの、そして熊との迫真の対決。それらは、やはり丹念にマタギ、というものを、ベースとしてしっかり表現しているからこそ、活きるのだろう。

最後の、宿命の対決は必然である。そう思わせるものがこの作品にはある。全体として、やや偶然性が高い部分もあるし、後半はだいぶ誘導的な匂いが強いのだが、問題にならないと思う。「邂逅の森」は実に力強く、鮮烈である。

三浦しをん「舟を編む」

2012年本屋大賞。2位が「ジェノサイド」だから、今年は本屋大賞の1位2位を読んだことになる。友人2人から、熱烈に薦められた、辞書編集の話である。

確かに、エンタテインメントとして、また知的好奇心を満足させるものとして、面白かったし、ところどころ「上手い」と思ったが、正直感動は、あまり無かった。その理由は、「波がない」ことに尽きるだろう。

有川浩「海の底」

突如横須賀に、巨大人食いエビが大量に出現した。警察と自衛隊が立ち向かう中、潜水艦に取り残された、幹部実習生2人と10人の子供たち。その運命は!

有川浩初期の、自衛隊三部作である。三部作の外伝が「クジラの彼」だ。

いやーメチャクチャ面白かった。睡眠時間を削って読み、寝不足になった。ドラマ自体はヒューマンチックなのだが、なにしろ突飛な設定と、自衛隊の詳細な描写が面白い。傑作なエンタメだ。理屈は無用、昨年恩田陸「ドミノ」を読んだのと同じ感覚。読んでみるべし。

有川浩「空の中」

「海の底」の前作。航空自衛隊の話。未確認の生物体が上空に現れて・・という話。ちょっと理屈が勝ち過ぎて難解な部分もあるが、面白かった。「海の底」と違い、人類の相手も、愛せるという違いがある。ディックもフェイクも愛嬌があるし、土佐弁がまたいい。

はい。まあ読んでみるべし!

てな感じでした。よく進んだ12月。思ったより濃密な読書が出来た。次回はいよいよ大賞発表!

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