2025年6月8日日曜日

6月書評の2

◼️ 村野藤吾「建築をつくる者の心」

直接関係ないが、フランク・ロイド・ライトのヨドコウ迎賓館のチケットをしおりに気分を盛り上げて😎

人呼んで「階段の魔術師」大阪に根を張り、全国に名建築を残した村野藤吾の考え方。

告白、実はほとんど観て回ってないんだけども、村野藤吾という建築家は多くの名建築を残している。広島の世界平和記念聖堂、東京の赤坂迎賓館、日生劇場、目黒総合庁舎、それからザ・プリンス箱根芦ノ湖。大阪では新歌舞伎座に、ドラフトマンとして製図をした大阪綿業会館。ほかもろもろ。隈研吾氏も非常にインスパイアされたという巨匠。毎年の大阪の建築祭イケフェスで、昨年はガラスブロックを多用した壁面と、ウワサの曲線的で細い階段手すりに触れ感銘を受けた。

一言でいえばシャープで美的、エスプリを感じて惹きつけられる。目黒総合庁舎の階段なんかぜひ観に行きたい優美さだ。行ってないけども苦笑。

さて、この本は1980年に4回開催された、村野藤吾がゲストのセミナーの記録である。コーディネーター、質問者がいて、質問を受けて答える村野氏の言葉には、含蓄がうかがえる。

「九十九%関係者の言うことを聞かなければいけない。ただそれでもね、一%くらい自分が建築に残っていく(中略)村野の作品というのは、そこからはじまる」

依頼主は莫大な額を投資しているわけで、それに対する責任、というものを村野氏は繰り返し強調している。

建築のディテールにも触れ、専門用語もある。窓が深い、モールディング、セセッション、エクステリア他ほか。分からないけども、建築や美術的な流れに入ってるようで、科学ものと同じく理解の外ながらもワクワクする。

ストラクチュアルライフとコマーシャルライフ、またマテリアルライフの兼ね合い、という話も興味深い。建築として持つ年数と商業的な寿命、これはどんな建築か、を考えて造っていく、なるほど。

「社会に対して、どのような影響を与えるか、これは口では絶対言い表せませんが、そういう方向に建築家が持って行くべきだと言うことです。それが1%なのです。村野の1%は、そこにあるのです」

第4回はラストということで、滔々と建築の流れ、思想を感で含めるように説明する。そこは口語なので意味が測りかねるところもあるが、畳み掛けるようで魅力的だ。

「建築家は科学をヒューマナイズする」
カッコ良すぎますね。

戦後近代に至るまでは、ある意味思想を問う時代でもあったかと思う。やはりここでも、ミース・ファンデルローエらの大量生産について意見も出ている。村野氏も自分もそのような教育を受けたと認めている。

建築に興味が出てきてから、やはり建物を注意深く見るようになった。村野氏は違うように見えてもだいたい同じ、ということも述べているが、私的には、やはり画一ばかりでなく、それぞれのビル、住宅がけっこう個性を持っていると思う。やはり建てる方も、建築の専門家も、ただ味気ない建築だけでは物足りない、ということなのかなと。

ここ数年で、大阪のイケフェスに続き、京都、神戸、そして東京でも建築祭が始まった。いまは明らかに建築ブームで注目が集まっている。村野氏の言われるように建築は社会に影響を与える、残るものも、そうでないものも、と思う。この盛り上がりは、さらに建築の個性化を促進するのではないかと期待している。

身近な宝塚カトリック教会も、屋根のカーブなど実に魅力的。関西にまだ残っている作品や、東京の名建築を観に行く気分が、はやっている。まあ少しずつ回ろうかな。

良い読書でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿