2025年6月8日日曜日

6月書評の1

◼️一穂ミチ「砂嵐に星屑」

数多いる人々の一。大阪のテレビ局を舞台にした心の描き方。

また細かいな、微妙やな、なにわやな、と思う。仕事上、また私生活に蹉跌を持った人々をテレビ局を題材に描く。とかく後半のほうの話が、手を添えられているような気もしてくる。

なにわテレビで上司の看板男性アナウンサーとの不倫が発覚し、東京支社に転勤させられ、10年振りに大阪の本社に戻った女性アナウンサー。資料室先ごろ他界した不倫相手の幽霊に遭遇し、新人女性アナと幽霊騒動の解決に挑む。
(資料室の幽霊)

立ち上がりは少し派手なネタ。細かいな、と思ったのは大きなストーリーの中に、主人公の心中の動き、思いを細かく描写してあるから。大きな線に沿ったわけではなく、リアルに浮かびそうな心のうち。

50代の負け組報道マン、タイムキーパーの女性の私生活の鬱屈、制作会社の冴えないADくん。それぞれ仕事が絡んでいて、他話で主人公だったりする報道番組に絡む人が交差する。

取材がうまくできない、前向きでないADくんの話にはそれ先に確認しとかな・・と社会人的に思うこともあった。でも人間らしくていかにもだ。ちょっと思い入れてしまう。このへん職種はあまり関係ないかも。

星屑・・誰しも、社会、さまざまな業界というカテゴリだけでも山ほど、いや星の数ほどいる・・そんなに多くないか笑大多数のうちの1人、という感覚を持ったことがあるのではないか。底で慌ただしくもがいている自分を。

ダイレクトに、だけどサラリと、微妙な事柄を時に熱く時にクールに描く筆者は変幻自在だなと思う。

作中には大阪のおっさんやな〜と思える人がほのぼのと登場したりする。女性のあけすけな言い方もなにわだな、と思ったりする。会話が上手い。

なんというか、人の機微テレビ局編、という感じでした。

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