2020年8月1日土曜日

7月書評の14





◼️堀内興一

「北海道昔話 4 オホーツク物語」


北海道の、オホーツク海に面したエリアの話が多い。北の遠望、知らない町を、歩いてみたい。


5冊北海道で買ってきたうちの第4集。これまでは虻田町など、北海道南東部の話が多かったけれど、今回は北海道ひし形の右上エリアをテーマにしている。流氷も出てくるし、より北の、異国情緒も匂う。


◇「天上界の落ちこぼれ神(カムイ)・網走湖」


これまでも、子供たちのうち、とんと出来ない1人が、という話はあった。変身が苦手な落ちこぼれ神、オバカーネレ(馬鹿にする、という意味らしい・なんか笑)が人間界に降り、思わぬものに変身して、拝まれるようになるハッピーエンド。


◇「石舟(カムイポチ)で千年も待った男・紋別市」


偶然出会った不思議なおじいさん、ニペク(光明)は、若い頃鼻っ柱の強い知恵者で人をバカにするいやな性格だった。ある日どちらが優れているか、オイナカムイ(文化神)と勝負することに。時間単位の大きさがまた北海道らしい。


◇「流氷に乗って去っていった少女(メノコ)・遠軽町」


一転悲しめの話。飢餓に襲われた集落を救うため、酋長イクレシュエの娘シクラパは・・。他にも出てくるが、天災や悪行で、集落はとたんに飢える。コロナ禍と重ね合わせてしまった。



◇「矢となって魔神を倒した少年・斜里町」


美しい娘・ヘリアッテ(照らす)には、嫁入り話が引きも切らない。しかし相手として決まった男は次々と死に至る。それは、魔神の仕業だった。ただ1人見抜いたの弟・パンゲは天地創造の神・モシリエベンケカムイにあることを願う。


◇「山男(キムンアイヌ)になった女酋長の息子・サロマ湖」


敬愛されている女酋長は近隣に鳴り響く乱暴者のドラ息子パレシナに頭を痛めていた。その困った振る舞いに酋長は山にこもってしまい、村の結束が乱れたためパレシナは追放される。スサノオっぽい?聞いたような話だが、こちらもドラ息子が不思議な運命を辿る。


◇「地獄穴から帰ってきた女・網走市」


ファンタジー系。羽を広げると二十数メートルともなる巨鳥ヒウリに攫われたシオクは幼子を抱いていた。夫のキキカラは宝刀エペタムを携え仲間とともに助けに向かうが行方不明に。そして10年後ー。恒川光太郎を思い出した。


◇「双児の神(カムイ)の腕くらべ・常呂町・能取湖」


こちらは海幸山幸をアレンジしたような話。劇中でも弟が、神話みたいになっても、というくだりがある。直接の悲劇はなく、やんわりと終わる。


◇「三十郎松・北見市」


3週にもあったが、明治期の移民・入植の話。校庭の真ん中のオンコ松を切る話が地域に持ち上がったが、土地の持ち主の三十郎じいさんは反対する。入植した頃、大変な苦労の中で、不思議なことに福井にいるはずの母がこの木の陰に現れ、励ましてくれた。そしてじいさんのもとに、知らせが届くー。


感動した。もうあかんなこんなの。ホロホロ。


北海道には何度か行ったが、南と北、函館と稚内から網走方面はまだ未踏派。沖縄も異国情緒だが、はるか北の国境に近い北海道にはまた別の、特別な旅情、異国の香りがある。ああ、北海道行きたい!

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