◼️菅谷明子「未来をつくる図書館
ーニューヨークからの報告ー」
うーん、自治体の戦略。リテラシーが進んでいるのが素晴らしい。すごい、のひとこと。
2003年出版の新書。ニューヨークはまだ9.11テロの残滓濃いころ。
ニューヨーク市の図書館は、企業でいえばまさにコングロマリットとも言える「図書館群」。ビジネス図書館もあれば、芸術に特化したものもある。さらに黒人文化を研究する図書館もある。
新規ビジネスを生み出すことは、めぐりめぐって公共のためになる、という考え方から、来るもの拒まず、実にたくさんのサービスが展開されている。
業務スペースなどを提供するだけでなく、企業が購入するにも高額なデータベースを取り揃えて、誰もがアクセスできるようにしているのが素晴らしい。情報を妙に隠しておらず、国際スパイやテロリストにさえオープンで頭痛の種には事欠かないが、自由な情報の流れを優先させている。
さながら博物館の様相すら呈していて、舞台芸術などは、映像資料を図書館が積極的に公演を収録しアーカイブしたりするらしい。
有事の際には積極的に地域情報を発信したりと図書館に求められている役割がそもそも日本とは違う。
さて、理想に燃えて器だけ用意して利用者がいない、とはよく聞く話だが、図書館は積極的にさまざまな講座を設けている。その中にはパソコンの使い方のイロハを教えたり、移民のための英語教室を頻繁に開設する、という初歩的なものも含まれている。
さらに、職員も多彩で、市民にリテラシーを実施する、また専門的な資料を網羅する、データベースを使いこなすためには高度な職能をもった人材が求められ、大学院で資格を取った者たちが業務にあたる。
運営しているのはNPOで専門性があり、自ら膨大な寄付金をゲットするため営業的な役割を果たす。また企業らの社会貢献意識も高いそうだ。
原田マハ「デトロイト美術館の奇跡」にもあったけど、公共の文化的施設を身近に感じ、また感じさせるのはアメリカの一つの文化のような気もするな。
さて、日本ののんびりした図書館。狭くて新しくなくて、と思うことはある。本までの距離、借りるまでの時間が短いところは気に入っている。ない本も多いけれど、インターネット検索予約ができればさして不自由はない。
ニューヨークの例は、最先端たらん、戦略的であれ、という気概の表れで、すでに100年の歴史がある。これは逆に、短いとも取れる。人工的な戦略が奏功した例とも言える。
これだけの仕掛けがうまく行けば、雇用創出にもなるし、新規ビジネス、芸術活動、研究の母体と、充分になるだろうと思う。書籍のデジタイズは同時に多くの人が読むこともできるし、良いことも多い。それを市民ニーズと、同行と、日本語という限定的な言語とどうマッチさせていくか。目に見える経費削減とか、逆に収入等がないと腰を上げないということも多いだろう。
図書館が情報拠点として強くなるのは賛成。図書館関係の雇用が増えることも、高度化も本読みとして賛成。まずは気楽に受けることができる、実用的な英語講座とか、読み聞かせ活動とかないかな、と思うこのごろ。勉強になった。
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