2019年5月13日月曜日

5月書評の3




昨年はひと月に20冊読んだ月もあったのに、今年はペースを上げようと思ってもなかなか上がらず。長いのも読みたいしねえ。あまり数は気にしない方がとは思うけど。まあまず読めてはいる。

◼️「雨月物語」


エンタメのようで、ホラーのようで、そうでもない。夜道で思い出してゾッとした。


読み終わって、強烈なインパクトは正直なかったけれど、正統派なのかな、いう気はした。


上田秋成の作、「雨月物語」「春雨物語」から抜粋した小編が収録されている。


西行と、魔王となった崇徳院が対峙する「白峯」、行きずりの武士と義兄弟となり、固い約束を守る「菊花の約」、商いで京に上った夫を死しても待ち続けた妻の「浅茅が宿」、画家が魚に魂を移すファンタジックかつ美文の話「夢応の鯉魚」、裏切られた妻の幽霊が出奔先の男を襲う「吉備津の釜」、県の真女児(あがたのまなご)が恐ろしい蛇となる「蛇性の淫」、人喰い僧の話「青頭巾」、吝嗇家の武士と黄金の精霊とのリクツもの「貧福論」が雨月物語から抜粋されている。


「春雨物語」からは、少し時代を遡った、桓武天皇の後の平城天皇、嵯峨天皇の話「血かたびら」「天津処女」、土佐日記に材を得たリクツもの「海賊」、親兄弟を殺して盗賊となった男を描く「樊噲(はんかい)」が入っている。


こうして振り返ってみると、「吉備津の釜」とか「蛇性の淫」とか「青頭巾」とか怖いこと。読んでる最中はそうでもないけど、後から来る感じかなと。


雨月物語〜日本を代表する怪奇ものというイメージがあった。古典、とくに物語集はなんとなく平安・鎌倉という先入観があって、江戸時代のものとは実は思ってなかった。


さて、正統派、というのは漢籍や古典を材料として書いている点、物語が読者の期待に応えるような、意表を突くような、その中間のような展開であること、全体として、何を醸し出そうとしてるのだろう、と考えてしまう不思議さ、だ。


今昔物語集、源氏物語、伊勢物語、また今昔に材を得た芥川龍之介にしても上に挙げたようなテイストがあって、割り切れない話もある。ただ、物語を組み上げる時に、漢籍・古典を活かし、しかも読み手が楽しめるものを書くためには相当な労力と推敲がいるだろうな、とは今回も思った。


読み終わった後、バス停から帰りの山道で振り返った時、薄暗い街灯の下に髪の長い女性のシルエットが浮かび上がったのを見て、思わずゾッとした。すぐに現実に戻って笑っちゃったけど。^_^


後を引く物語集である。


◼️高橋均「グループ会社リスク管理の法務」


たまにはね。勉強。


持ち株会社制により、企業グループが新たな形で多く生まれ、組織再編、またM&Aも頻繁に行われている。


また時あたかも企業の内部統制が叫ばれるようになって久しいが、東芝の例を出すまでもなく企業不祥事、不正は次から次から湧いてくる。


ステークホルダーを守るため、コーポレート・ガバナンスコードはどんどん厳しくなっていき、企業に対する監視の目は厳格化している。


そのような状況の中、親会社は企業集団の内部統制、リスク管理をどのように実施していけばよいか、平成26年会社法改正を起点に原則論と方法、ハード面とソフト面から解説している本。


もと新日本製鉄のコーポレート部門に勤め、法制度を研究している著者の書き方は、実務的でもあり、また親子会社間の訴訟制度にはこだわりもあるようだ。


途中そのこだわりによる法制度の変遷の部分がやや冗長かな、というのと、海外子会社については実務的な論があまりないかな、という点、また内部監査部門の業務についてはやはり分野が違うかなというのがあったりしたが、大いに参考になった。


判例を楽しみに読んだが、これが難しかった。私法学部卒なんですけど^_^ちょっとショックを受けました。えーん。

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