2018年7月16日月曜日

2018上半期各賞





カバーデザイン賞


柴崎友香「ビリジアン」


マンガ的イラストは珍しくないんだけど、タイトルとともに魅かれるものがあった。しかし内容は散文的でつかみにくかった。写真撮る前に売っちゃったので画像はなし。興味のある方は是非ググってください。


人気賞


サキ「サキ短編集」


私が主に出入りしている某書評サイトでこの半期最も投票数(『いいね』みたいなもの)が多かった本。みな一度は読んだことあるのかな?短編集らしい、テクニカルかつクールな作品。



マンガ賞

清家雪子「月に吠えらんねえ」


いやーこれハマっちゃいますねー。朔ちゃん(萩原朔太郎)、犀さん(室生犀星)、白さん(北原白秋)、シキさん(正岡子規)、キョシ(高浜虚子)、ミヨシくん(三好達治)、アッコさん(与謝野晶子)、石川くん(石川啄木)、チューヤくん(中原チューヤ)ら文豪が多数出演。笑いつつ文学的に、社会的に、わけわからない風に展開される。でもいいんだよなあ。


シャーロッキアン賞


キャロル・ネルソン・ダグラス

「おやすみなさい、ホームズさん」(2)


少女マンガ風の表紙、いかにも軽そうなタイトルに敬遠していたが、読んでみるとどうしてどうして。「ボヘミアの醜聞」の裏側を忠実になぞっている、アイリーン側目線の物語。シャーロッキアンの端くれとして、久しぶりに楽しかった作品。


鬼で賞

馬場あき子「鬼の研究」


いやもう、好きだから、鬼。鬼とは、日本の文献における鬼の登場、女性と鬼など多角的に分析している。ちと難しい部分はあったけど、鬼網羅的な本。この日本史の闇の黒さが好きである。


美術賞

朽木ゆり子

「ゴッホのひまわり 全点謎解きの旅」


去年の暮れから今年の上半期にかけて、ゴッホがブーム?に。京都国立博物館ではゴッホ展があり、ボストン美術館展にも代表作が出て、原田マハが「たゆたえども沈まず」という作品を書いて、ゴッホに関する映画も上映されて、ちょっとしたブームなった中で読んだ本。京博のゴッホ展には行けずじまいだったけど、ボストン、映画、本作読んで「たゆたえ」の文庫化を待つのが楽しい。


我らが朔ちゃん賞

萩原朔太郎「猫町」


萩原朔太郎、唯一の小説は児童小説風。さまざまな出版がなされているが、金井田英津子の作画で楽しめるパロル社のものを読んだ。幻想的な物語によくマッチして楽しめた。


希望賞


吉野源三郎「君たちはどう生きるか」


売れるだけあって、物語の成り行きは分かるんだけど、ジンとする。コペルくんをはじめとする少年たちにも好感。社会的であるが、思想的なものはなく、よい作品だと思った。


ベストノンフィクション賞


ナサニエル・フィルブリック

「白鯨との闘い」


1820年、捕鯨船が巨大クジラに襲われた。漂流することになった乗組員の運命。


メルヴィルの小説「白鯨」のもとになった事件。当時の捕鯨がなにせ大迫力。漂流して生き抜くための過酷な運命。集中して読めた本。


奈良賞

 

立原正秋「花のいのち」


秋篠宮の名前の由来となった秋篠寺や斑鳩の中宮寺など半分は奈良が中心となる話。格調高い恋愛もの。読んでほどなく秋篠寺を訪れ、優美な技芸天立像を観た。


黒い舞台劇賞


ウィリアム・シェイクスピア

「リチャード三世」


ドロドロしている、陰惨、とか聞いていたから読むのを先延ばししていた。ワールドカップで日本が負けた後なんかには読めないな・・と思っていたらコロンビアに勝ったから読んだ。確かに謀殺、裏切りばかりで陰惨だが、呪いの色で背景を塗りつぶし、最後にたたみかけ光が射す。バランスよく出来た作品だと思った。

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