2018年5月11日金曜日

奈良行







また奈良に行った。近鉄西大寺駅で降りてバスで数分、秋篠寺を訪ねた。門は風情があるが、こぢんまりとした寺。ただ緑のモミジをはじめ参道は深閑とした魅力がある。秋篠宮の由来となった秋篠の地。寺には伎芸天立像がある。日本唯一の伎芸天の古像。先日読んだ立原正秋「花のいのち」で取り挙げられていて、興味を持ったから来てみた。頭部は奈良時代、体部は鎌倉時代。表情が柔らかく、着衣の彩色を含め優雅な印象を受けた。


秋篠寺は朝一番で、しかも樹木が茂りひんやりしていたが、この日は最高気温が30度近くまで上がるとの予想。半袖の上に着ていたごく薄いパーカーをさっさと脱ぎバッグにしまう。帽子を被って歩く体制。バス通りのコンビニで水分補給。缶コーヒー飲んで、およそ2キロの道を歩いて平城宮へ。やはり暑い。しかしまだ真夏のようには照りつけないから歩ける。


ただ最近は仕事的にもひなたを歩き続けることはめったにない。熱中症に気をつけて、脚や視界が揺れていないか、身体や頭はしんどくないか、気を配る。次のコンビニでアクエリアス買い、道を確かめてまた歩く。休み休み行かなきゃね。


平城宮跡は、一言で言えばだだっ広かった。だからか、東西に歩く道には、日光を避けた屋根付き休憩所や木陰のベンチが多く設置してあった。まだ整備途中のように見える。いまお祭り期間で、この日は休み日だったからかも知れないが、売店もいまだテントが散在していて、敷地と何もない道があるイメージで、公園としてまだこれからかと思った。しばらく歩いて、南北の道、朱雀門と大極殿をつなぐところに着いた。おそらくここがメインの場所だろう。間には、何もない。土の土地だけ。故郷福岡の太宰府政庁跡と似たようなもんだ。たしか芥川龍之介にも出てくるな、朱雀門、と思ったが、次の訪問地が北の大極殿に近いし、建ったばかりで風情はないしと、大極殿眺めて平城宮跡を離脱した。大極殿前広場には、スケッチ授業の高校生や遠足の小学生がいた。


宮跡から草地の道を通って法華寺の方向へ歩く。こういうところを歩いたり、平地が続いているのを見ると、奈良、という感覚がする。実は暑い予想だし訪問地の間が遠いから秋篠寺だけ行って神戸に戻って映画見ようかなとも思っていたが、奈良の平野の緑を見たらそんな考えはふっとんでしまった。なぜこんなに好きなんだろう。


暑いがさほど汗もかかないし、歩ける。草地から路地に入り法華寺到着。コンパクトな寺だが権威は高い。目当ては、どこかの女流作家さんが官能的、エロい、と書いていた十一面観音像。これは別の仏像好きの先輩もいい、と言っていた。


聖武天皇の妻、光明皇后をモデルにしたと言われている観音像は、最高級の白檀を使ったとアナウンスで説明されていた。光明皇后は藤原不比等の娘。法華寺はその不比等の邸宅があったところ。聖武天皇御願の日本総国分寺が東大寺、光明皇后御願が、日本総国分尼寺の法華寺。


やや離れたところに座って見る鑑賞席があって、最初人がいたので脇から立って見ていた。噂に違わずというか、ピンク色にも見える木肌、豊かな髪が女性的で艶やか。人がいなくなったところで正面近くから見てみたら、目の印象がまるで違う。こちらを捉えているような眼。仏様というよりは人間的にも見える。確かに感じるものはある観音像だった。


法華寺を出て近くの海龍王寺へ。こちらではより仏像らしい十一面観音像を見る。


海龍王寺の真ん前にはバス停があった。ふと見ると、対面には人がちらほら集まっている。こりゃ来るかなと見ているとやはりバスが遠くに見えた。近鉄・JR奈良駅方面。ここから先のことはあまり考えてなかったが、歩き疲れたのもあって道を渡ってバスに乗った。


そもそも奈良探訪は2ルート行きたかった。この平城宮プラス小さな寺巡りと、東大寺の宝物やいまやっている春日大社のすべて展、興福寺とならまちを別ものと考えていたが、まだ正午くらいだし、と行ってみることにした。


久しぶりの近鉄奈良駅。近くに、テレビで観た果実園直営の店があるはずだ。狭い路地沿いの店が集まっているエリアを探し周り、最後は店に電話して行き着いた。


スッキリとした涼しい店内でクリームたっぷりのフルーツサンド。セットの飲み物はカリン入りのアイスティー。食べたかったものを美味しくいただいて、すぐ近くの興福寺へ。


少し前に話題になった「応仁の乱」を読んで、いかに興福寺が力を持っていたかを初めて知った。権力の地、という視点から見つつも、やはり目当ては宝物殿の阿修羅像。


西洋の美術展に比べれば良心的な入場料。しかしフツーは無料でくれるミニパンフが有料なのには閉口した。外は外国人観光客も含めて人が多かった。でも宝物殿では余裕を持って阿修羅像をよく見ることがができた。三面六臂、三つの顔に六本の腕。帝釈天の宿敵、戦闘神にして仏法の守護者。このクッキリしたアグレッシブな顔立ちが好まれるんだろうなあ。たしかに惹きつけられる。


興福寺を出て、猿沢池を横目に見てならまちを目指してみる。旧市街で、古い建物で演出していたがそこまでインパクトはなかったかな。もちいどの商店街の方が色々あって面白かった。


東大寺と春日大社はまたの楽しみにして帰ることにする。


近鉄奈良駅から乗ると多い。ギリで座れたが、遠足の小学生やお年寄りも多い。でも1時間ちょっとで西宮。さすがに陽に当たって顔は火照ってるし疲れたしでマンガ喫茶で落ち着く。脚は伸ばせるし、涼しいし充電できるし、サービスのアイスコーヒー飲みながらGIANTKILLING読んで極楽。至福。ジャイキリ、最近のものだけ読んだけどやっぱ面白い!また買おうかな。


てなわけで、今年も奈良紀行。あまり暑い時期に歩くものではない。春日大社展やってるからひょっとしてもう1回行くかもだが・・。また飛鳥にも行きたいな。吉野はまだ行ったことないし、本も読みたい。いつか、奈良ホテルにでも泊まりで堪能したいなと思ったのでした。

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