ヒバリが公園の木のてっぺんで、実ににぎやかに鳴いている。鳥らしい澄んだ歌声はヒバリならでは。シジュウカラのピーツピーツ、というのも好きなんだけどね。もうすぐヨタカ?ホトトギス?が夜にキョッキョッキョと鳴くかな。
サキ「サキ短編集」
ちょっとブラック、ちょっとクレバー。妙味を楽しむ。
母親に甘やかされて育った青年セオドリック・ヴォラーは、母の死後初めての汽車旅で、若い女性と客室に2人きりになる。服の中に忍び込んだ二十日鼠を追い出そうと、女性が寝入っているのを見て裸になるが、折悪しく女性が目を覚ますー。(二十日鼠)
10ページくらいの短編が21編詰まった本。小気味好くまとめられていて、最後のオチを期待しながら読み進む。鮮やかな、ほう、というものもあればそうでないものもあり、多くはシュールな幕切れかなと思う。
心に残ったのは「二十日鼠」「狼少年」「七番目の若鶏」「ビザンチン風オムレツ」「おせっかい」「盲点」といったとこかな。
「ビザンチン風オムレツ」は寸劇風のクスッと笑える社会派喜劇。「おせっかい」はコントのような感じでキレがいい。短編集としても「二十日鼠」の、聞いたような話だが鮮やかなラストの話で始まり、どこか芸術的な匂いも感じさせる「盲点」で締めるという、気持ちのいい配置となっている。
サキは1900年代初頭に活躍した作家で、その短編集はO・ヘンリと並びイギリスやアメリカで人気だという。クールで冷徹。しかしそれはエンタテインメントの範囲内だと感じた。
型が決まっているが、途中も難なく理解でき、オチを待つ楽しみを味わえた。こうなると、O・ヘンリも読みたくなるな。
豊島ミホ「リテイクシックスティーン」
高校1年女子の、1年間。甘いけど、この人の作品、好きだなあと思う。
地方の進学校に入学した小峰沙織は、同じクラスで、親しくなった貫井孝子に告げられる。「あたし、未来から来たの」ー。
出だしが、え、ちょっとSF?少女ものでこれってよくあるかも、と思わせるが、内容の主眼はまた違う。沙織と孝子、イケメンの村山基和、身体が大きく性格もおおらかな大海ちひろという男女4人の、1年四季の群像劇。折にふれ未来話は出てくるが、基本は高校生たちのよくある日常と葛藤を描いたストーリーだ。
著者の青春ものは「檸檬のころ」「エバーグリーン」と読んだが、いずれの作品も、秋田県出身の著者の体験をベースにしている。冬が早く来たり、雪が多かったり、また電車がいかにも本数が少なかったり、行動する範囲が大きくて遠い感覚だったりと、ちょっと厳しい環境には共感できる部分が多い。
高校生には地域性が不可分で、またそれが、もどかしさや素朴さ、等身大の自分を見つめる視線につながっていて、リアルだと思わせる。
物語は、海やスキー合宿での出来事もあり、青春してる、という感じがするが、あまりハデなわけではない。主人公沙織の揺れる心を丁寧に描き出していて好感が持てる。
自分の高校生の頃はボーっとしてたなと。(笑)。1年の時は地域の親しさがあった中学とは違いちょっと階段を昇った感覚で、落ち着きが悪かった覚えがある。それはこの物語ともつながってる気はするが、登場人物たちのほうがよほどしっかりしてるな、と思うな。私の場合進路に悩むことはなかった。なんか根拠なく未来を信じてたし。^_^あとはバスケばかりやってたな。
名作ー!とかではないが、また、らしい豊島ミホ作品を楽しんで読むことができた。
清家雪子「月に吠えらんねえ」(2)
「汚れつちまつた悲しみに」の演出が最高だ。
1巻を読んで、ちょっとこれは理解するのが難しいかもー。でも興味あるしもひとつ読んでみようかなでタイミングもよく入手した2巻。
いろんな文豪が登場するが、ベースの中心は萩原朔太郎、三好達治、北原白秋と旅に出た室生犀星。コミカルな部分も多いが、純文学的なところも多い実験的マンガエンタメ。
1巻よりはかなり分かりやすかったし、私はミーハーなのか、途中の犀さんの、戦時中のビルマの旅と、なんつっても中原中也、チューヤくんの「汚れつちまつた悲しみに」の演出が本当に良かった。私は詩はほとんど読まないが、こういう浸み方なら何度でも、という感じである。
すぐすぐというわけではないが、3巻も読んでみたいな。
アガサ・クリスティ「七つの時計殺人事件」
小気味好いサスペンス・ミステリ。登場人物たちがちょっと魅力的。
裕福なオズワルド・クートが借りているチムニーズ館に集まった、ジミー・セシジャーをはじめとする若い男女たちは、朝寝坊のジェリー・ウェイドにいたずらしようと8個の目覚まし時計を買ってきてジェリーが寝入った後の寝室に仕掛ける。翌日、ジェリーは死体で見つかり、寝室にはなぜか7個のみの時計が並べて置いてあったー。
オズワルド・クートとその妻、またチムニーズ館の持ち主ケイタラム卿らと、ケイタラム卿の娘で主人公ともいえるバンドルことアイリーン・ブレント、ジェリーの妹ロレイン、また若い男性たちのエネルギーが対比されてるのかな、とまずは感じた。
連続殺人、秘密の会合、バンドルの冒険、撃ち合いと見どころが多く飽きさせない。ミステリーとしてもいくつか仕掛けがあってかなり最後の方にわっとネタばらしするとこも興味を惹く。
あまりスケール感はないが、男女の群像を描きつつ、謎解きとドキドキ感を盛り上げている。小気味いい逆転劇。そこはアガサ、まあまあ楽しかったかな。
0 件のコメント:
コメントを投稿