写真は初めて行ったランチの店のチキン南蛮。ランチを普通に行くようになってからウエスト戻る。やはりか笑。
北村薫・宮部みゆき編
「名短編、ここにあり」
小説家が選ぶ、名短編。半村良、小松左京、松本清張、井上靖らお歴々の短編が並ぶ。興味深かった。
小説の匠2人がチョイスした、ちょっと古めの短編集。出だしの「となりの宇宙人」はコミカルで、城山三郎の「隠し芸の男」なんかは悲哀を感じさせる。いっぼう吉村昭の「少女架刑」は視点の変わった、静かな「死」を扱うものだ。
短編というと、うまく落とすか、ほんのりと、余韻を楽しむか、ちょっと見に不思議な顛末を描いて、描かれていない行間とか背景をあれこれ考えるか、というのを愉しむという趣きがあると思う。あるある、という行動を切り取っているものもある。
この短編集は、本読み2人がかつて目をキラキラさせて読んだという雰囲気と、小説家ならではの視点で、うまい、と思った感覚とが示されていると思う。巻末の対談の楽しそうなことといったら(笑)。
感動したり、大笑いしたりといった類ではないが、なかなか読ませる作品ぞろいだった。
渡辺裕之「偽証 オッドアイ」
男くさいのが読みたくなって新刊を購入。舞台は知床。ヒグマ絡みなのにも惹かれたな。ある意味予想通り。
伊豆諸島に巡査として赴任している朝倉は、自衛隊特殊作戦軍の隊員出身でもと警視庁捜査一課の刑事。片目がシルバーグレーのオッドアイを持つ。事情があって転任したが、ある日釣り名目で島を訪れた、自衛隊中央警務隊の国松に、自衛隊の訓練中に隊員が死亡した件の捜査に協力して欲しいと頼まれる。
なんというか、これが現代の、売れるアクション小説なのかな、と思った。自衛隊にも警察にも詳しい。主人公は抜群に強く、切れる捜査官で、アクションもふんだんにあり、国家機密にも絡んでいる。
ところどころに自衛隊の現状や考え方、軍事的な国際問題が書いてあって、それなりに考えさせるし、知床ネイチャーものの要素も多い。さらさらと読んでしまった。
オッドアイというのは、左右の目の色が違うことで、息子も名探偵コナンの影響で知ってたし、私も「心霊探偵 八雲」でおなじみ。主人公を際立たせるのには確かに適している。
渡辺裕之は、「傭兵代理店」でデビュー、同作が人気シリーズとなったのか。名前は目にしていたが、読んだことはなかった。今回のオッドアイもシリーズ2作めだ。
エンドも、期待通り。日本的ハードボイルド。うーん、やっぱり男くさい。
谷川流「涼宮ハルヒの溜息」
なぜ読む気になったかというと、最近やっと、舞台が近所の高校で、聖地巡礼もよく来るよ、と聞いたから。「えッ」てなもんでとりあえず読んでみた。表紙恥ずかしい。(笑)
涼宮ハルヒ率いる非公認のサークル、SOS団には、ヒューマノイドタイプの宇宙人・長門有希、未来人の朝比奈みくる、超能力者の古泉一樹、そしてハルヒのお守役男子キョンが所属している。文化祭に向けてハルヒは団の映画製作を強引にスタートするが、次々と不思議なことが起きる。
うーむ、こういうのか、というのが正直なリアクションである。実はデビュー作「涼宮ハルヒの憂鬱」がなかったので、2作めでいいやー、と買ったのだが、大事なことは1巻にだいぶ書かれていたらしく、ちょっと物足りなかった。
まあハルヒが、その強権でみくるに様々なコスプレをさせる、ハルヒ自身もバニーになったりする、というのも売りのひとつだが、今回たまたま息子が本をめくってコスプレのイラストを見ちゃったので、できるだけ落ち着いてと自分に言い聞かせつつ、言い訳しなければならなかった(笑)。
高校、公園、駅前は分かる。神社とはどこぞや。たぶんあの寺か、と思ったが、まあそこはスルー。池も、だいたい目星がつく。移動距離、意外と長い。
ハマらないうちにやめとくか、それともいっそ全部読むか。ちょっとマンガすぎるとこがあるのであまり心惹かれないが、デビュー作読んでから考えようかな。
長野まゆみ「夜間飛行」
今回は、ショートショートのような、アイロニーを含んだような、はたまた銀河鉄道の夜のような、ファンタジックな作品。もちろん作者の色はよーく出てます。
親友同士のプラチナとミシエルは、冬至と夏至の近くに行われる、ハルシオン社の夜の遊覧飛行に参加する。機中では席替えがあり、プラチナは隣になった老紳士から、ミシエルも隣になったセールスマン風の男から、それぞれとっておきの話を訊きだす競争をする。
次々と場面が変わり不思議な現象が起きるので、上でもだいぶ例えたが、読んでる時はもうひとつ、不思議の国のアリスみたいだなあと思いながら読んでいた。長野まゆみの特徴は色々あるが、今回もBLのほのかなにおいがする美少年もの、宇宙、駅、旅、そして鉱石、変わった飲み物、食べものなどなど全開である。
この作品は1991年のもので、あとがきによれば、フランスがムルロア環礁で行った核実験を皮肉っている色合いもあるとか。その件に関してはあとがきで強烈に批判している。
それにしても、相変わらず「忍冬(すいかずら)とジャスミンの蜜が匂う飛行場」とか、「檸檬の皮を涵(ひた)したシトロネル酒や蜜橙(タンジェリン)の皮でつくるオレンヂキュラソー」だとかいうのがすらすら出て来る。
今回はマザーグース、フランス語の唄なども引用されている。
この人の構成力と語彙力、世界を作る力には呆れてしまうほどだ。こんなに表現できたら楽しいだろうな、と思う。ホンマに。
長野まゆみは、ちょっと前の時代の、兄弟や親戚の微妙な思いとか、このような、どこの国の話か分からないような美少年ものファンタジーとか、ある程度世界が限定されているが、今回はなんか、古典的文学の香りもしたな。多作な作家なので、まだまだ楽しめそうだ。
花村萬月「月の光(ルナティック)」
バイクが好きな作家の、ロードノベルの趣を持つサスペンス。んーまあ、男臭いかな。
かつて文学賞をとり、今はライターのような仕事もしている沢渡丈(ジョー)は、新興宗教団体の松原という男と深夜に会う約束をしていたが、現れた松原は今にも倒れそうな状態だった。通っていた空手道場の娘・律子とともに松原を介抱している時、ジョーは何者かに襲われ、昏倒する。
こないだ読んだロードノベル「どうしてこんなところに」の解説に、同様の小説の傑作として、花村萬月の「重金属青年団」が紹介されていたので興味を持った。同作は行った本屋になかったから、似たような感じのこの本を読んでみることにした。
主人公といえばジョーだが、愛車のハーレー、律子との絡みも濃厚である。外国の娼婦、ヤクザ、セックスに新興宗教団体と盛りだくさんな、男作品。新興宗教との対決は最後の3分の1で、ハーレーでの旅と律子とのことが大半だ。
花村萬月は「ゲルマニウムの夜」で芥川賞を取った作家さんで、バイクを愛し、かなり破天荒な人生を歩んだ方らしい。「重金属青年団」もバイク愛あふれる物語なのだろうか。
出て来た要素をどこかに起き忘れたような部分もあるが、まあ全体として読みやすい仕上がりではあった。
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