サッカー日本代表は、ホームでイラクを劇的に破った後、11日にはアウェーで宿敵オーストラリア戦だった。結果は、引き分けだった。しかし、引いて守るという戦法に出て、やや采配に明瞭さが無かったこともあって、ハリルホジッチ監督は袋叩き。おそらくは関係の悪いメディアがこれまでのうっぷんもあって、猛烈に叩いているように見える。やれ予選突破が目標ではなく、W杯ベスト8を達成したいチームのサッカーじゃないだろう、ほれ守備的なのにトップ下は香川か?清武調子良かったのに、やれ選手交代が遅すぎだ、疲れてるのに。
私はここ最近の代表の強化には疎めだし、オーストラリア戦は最後の方しか見てないのだが、ダイジェスト観戦と、新聞のコメントをもとに、経験則で語ってみようと思う。
まず結果は、私的には全然OKだ。グループ首位に、しかもこれまでWC予選で勝ったことのないオーストラリアにアウェーで1-1のドローは妥当だと思う。ハリル側に立って、考えてみる。
グループ最強の相手アウェーで引いて守るのは、常識的な戦術だ。これまでの予選で、オーストラリアの強さを肌で感じてきただけになるほど、と思う。また、私はW杯で日本が勝ち進むには守ってカウンターという戦術を柔軟に取れるようになるべきだと思ってきた。だから前進と見ている。なにせこの試合負けたら、出場権が大きく遠のいてしまう。間違っても負けるわけにはいかないのだ。ハリルは、今回負けることを最も怖れたのだと思う。さらに上を目指すチームがうんぬんのライターには、安直だと感じる。
2つめの、メンバー。私も清武起用の方に賛成ではあるが、コメントを見るに、ヨーロッパで揉まれた香川に肝心な部分で「違い」を作ることを期待したのだろう。勝負をかける監督のカン、だと思う。清武はファイトするが、香川に比べれば、プレーがスタンダードな印象があり、イラク戦もギリギリまで勝ち越し点を奪えなかったのだから。しかし結果的に機能しなかったから、これはハリルの失点。
もひとつ、交代は・・負けるわけにはいかない、拮抗しているところでは、指揮官は動けなくなってしまうこともあるものだ。古いがトゥルシエ監督の時の、シドニーオリンピック準々決勝アメリカ戦、あの時もなんで本山や平瀬を投入しなかったのか、とトゥルシエはだいぶ責められたが、あの時コーチだった山本昌邦は、後に「この点私はトゥルシエに同情的だ。試合は拮抗していて、本山や平瀬のポジションの選手は好調だった」という意味合いのことを著書で書いている。過度のプレッシャーが、ハリルを動けなくしたのだろう。後半、オーストラリアは温存していたサイドの選手を投入し、効果的なセンタリングが上がるようになっていたし、セットプレーも脅威だった。1点取られてしまったら、日本に取り返す力は無い。ここはライターも認めなければならないだろう。だから、均衡を重んじた、新しく入った選手のなじめない中でのミスを怖れた。
もちろん、相手の状況を見て、プランを変える、強気に勝ちに行く交代をする能力も監督には必要だろうと思う。万能ならばいいけれど、負けないための戦いをした、ということか。
問題はむしろオーストラリアの側にあって前半、思ったよりもヘナチョコだったこと。また早い時間帯に得点できたことで、観ている方に「いけるんじゃないか」という感じが生まれたことに、なぜ?と周囲が思ってしまった原因がある。でも、これって、裏を返せば、引いてカウンター狙いの戦法が当たったから、いける、となった、ということだろう。
さて、難しい局面だった。ハリル自身も終わった直後には勝ち点2を失った気分、と言い、会見では、交代は早く出来たかも知れない、と反省した。
確かに、チグハグな印象はある。しかしそれは、メディアの側にも、どっか加熱し過ぎな所があると感じるし、なんかどこか甘い。
ちょっと毒を吐くと、理想のサッカーとは何か?かつてのバルサのようなサッカーか。出来るわけないだろう。W杯ベスト8に見合うサッカー?ブラジルW杯で「自分たちのサッカー」はあっさりと敗れた。南アフリカでは超守備的で、しかし勝ったから賞賛された。ドイツでは自由なサッカーで負けた。日韓ではホームで守備的なサッカーをして勝って大フィーバーが起きた。この現実をどう思うのか。フランスW杯以降もう20年、次で出場6回に達そうとする歩みだ。日本は弱い。攻撃的なサッカーで、日本は結果を出したことがない。それでもと望むなら、負けても負けても攻撃的なサッカーで、というのを許容する度量が必要だ。
勝つにはしたたかさが絶対必要であるし、海外でプレーする選手には、日本は召集、コンディションの問題を抱えている。やみくもに攻撃的なサッカーをすりゃいいとは思わないし、先に解決すべき問題はまだ多い。
私は諦めろ、と言っているわけではない。「ひどく困難だ」と言っている。一足飛びに出来ることではなく、本当の強さを手に入れるには、時間がかかるのだ。その過程で、1回守備的な戦いをしたからといって何だ、と思う。
まあ次、11月のホームサウジアラビア戦には、絶対勝たなきゃならないけどね。乾坤一擲の試合は、チームには是非とも必要。グループ首位となったサウジは強いだろうが、アウェー戦のためにも叩かなければならない。
今回の。ヒステリックな論調は、ブレイクスルーが生まれない世相と日本代表を重ねてるんだろか、と思ったりもしたな。
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