2014年2月1日土曜日

1月書評2014の3

アップするのに疲れてきた。(笑)先日久々に、神戸市沖の人工島、六甲アイランドに行った。住宅も街の作りもやはり人工〜というのが強い。昔よく行った映画館は無くなったそうだ。写真はその時食べた北インドのカレーランチ。たまにはナン食べてラッシー飲まなきゃね。お好み焼きと一緒。(笑)

ダニエル・スタシャワー
「ロンドンの超能力男」

シャーロック・ホームズとアメリカの奇術師、ハリー・フーディーニが活躍するパロディ長編。

ホームズのパロディには、著名な同時代人を出演させることが多い。心理学のフロイト博士、オスカー・ワイルド、またバーナード・ショーやルイス・キャロルなどもあった気がする。和ものでも、ロンドンに留学していたことから、夏目漱石とホームズを邂逅させた作品がいくつかあるし、そもそも原典にはサラサーテの名前も確か出てくるので、これもまた大きな意味で、シャーロッキアン的に時代を楽しむ、という要素だろう。

作者は、マジシャンであり、なるほどフーディーニを生き生きと描いている。フーディーニとは、身体を拘束されて水中に吊るされた状態から脱出したり、レンガの壁を「通り抜ける」といった奇術を売りにしていた男である。

1989年の作品で、この頃「緋色の研究」で世にホームズがその姿を現してから100周年を迎えたり、日本での著作権期限が切れたりしたことから、パスティーシュ、パロディの発行が増えた傾向があったようだ。確かに私もこの時期に続けて買った記憶がある。今よりバラエティに富んでいたと思う。

英国皇太子とドイツの伯爵夫人のスキャンダル、その内幕でやり取りされた手紙が厳重な警戒の中盗まれた。スコットランド・ヤードはロンドンで公演を行っていたフーディーニを容疑者として逮捕するが・・

作中で、ホームズ、フーディーニ両天才はライバル意識をむき出しにしている。ワトスンが間でおろおろし、という微笑ましい関係で、レストレード、マイクロフトも出演、折に触れシャーロッキアン的要素も取り入れられていて嬉しい。パロディには欠かせない?追跡劇もある。

肝心の犯罪の動機が、確固たるようで、なぜここで?という疑念は残るが、なかなか楽しめる一冊である。そうか、ホームズとマジシャンは確かに相性が良さそうだ、とも思った。

スティーブン・バクスター他
「シャーロック・ホームズの大冒険」(2)

上下巻で合計26編もの、オーソドックス・パスティーシュが楽しめる、私から見たら、贅沢かつ豪華な本。

シャーロック・ホームズ。職業はコンサルティング・デテクティブ、諮問探偵である。コナン・ドイルが手掛けたホームズ物語は56の短編と、4つの長編のみ。しかし、今なお、ホームズとワトスンが活躍する物語は書き続けられている。こんなスーパースターが他にいるだろうか?

パスティーシュとは、登場人物や時代設定は原典そのままに、ホームズやワトソンが活躍する原典そっくりの物語を書いたものであり、パロディとはまた別。パスティーシュなんて、ホームズもののためにあるような言葉だと思う。

今回は、現代に活躍するそうそうたる書き手達が、オーソドックス、つまり本格派のパスティーシュを書き連ねている。それが、年代別、ホームズがワトソンと出会う前、出会ってからモリアーティ教授とともにスイス・ライヘンバッハの滝に落ちて死んだとされた1891年まで、その復活後、などに区切って説明文が付いている。

しかも「語られざる事件」の新版あり、巻末にはパスティーシュを含めた事件年表ありと、作りそのものが正統派の研究書とも言える内容だ。

それぞれの短編はというと、これは作り出したトリックを生かしたい、という思いが強過ぎて、かえって読みにくくなっているな、というものも散見されるが、ホームズとワトスンの世界には、冒頭からスッと入っていける。ホームズもの正統派パスティーシュにはいくつものハードルが、実はあったりする。それはベイカー街の部屋の雰囲気や、登場人物の関係性、ホームズの何気ない言葉、など色々有るのだが、ほとんどの短編において、それが軽く浮いていないのは書き手の力量かと思われる。

ちなみに「語られざる事件」とは原典中に、こんな事件があった、と事件名のみワトスンが記しているもので、約100件もある。これらを集中的に扱ったパスティーシュも多く出版されている。今回も、かなりパロディ的ではあるものの、有名な「自宅へ傘を取りに戻ったまま、忽然と消えてしまった」ジェイムズ・フィリモア氏の事件もやはり出ていて、微笑ましかった。

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