2014年2月1日土曜日

1月書評2014の2

ひたすらホームズ関連もの続く。まあよく思うのだけど、再読しない本は私的にポンポン捨てる、売るべきで、それでもとっておいても読まない物は沢山ある。

ホームズものは必ず再読するから置いておく価値がまたひとつの意味合いでは、ある。写真は、先日自宅付近はひどい霧が出たので、ロンドンを意識して。なあんてね。

ローリー・キング「シャーロックホームズの愛弟子 女たちの闇」

愛弟子シリーズ2作め、意外にまあまあ面白かった。宗教団体、相次ぐ不審死、監禁などなど、現代のサスペンス映画でも通用しそうな内容だ。

ホームズ隠退先のサセックスダウンズで、前作、彼ともに事件を解決した才気煥発なメアリ・ラッセル。21才になったラッセルは兼ねてからの取り決め通り父の遺産を相続する。

オックスフォード同窓のヴェロニカから紹介され、女性の駆け込み寺的な宗教団体のカリスマ、マージョリーと親しくなるが、彼女の側近とも言える女性たちが次々と不審死を遂げる。

愛弟子シリーズを読むのは3つめ。初回作を読んで、こりゃあもひとつ、と思い、「バスカヴィルの謎」をバスカヴィルと聞けば読まなきゃあかんでしょ、と読んでやはりいまいち、となっていた。こうまで女性心理、女性目線に特化されるとどうも、なのである。理屈は多いし、推理というよりはサスペンスだし。

でも、今回も同じパターンではあるが、ワクワク感はシリーズ中で一番。オックスフォードでの、いかにも学生らしいシーンも描かれていたので楽しかった部分もあった。解決は意外にあっさりしていたし、なぜ?というところもあったのだけどね。

愛弟子シリーズはあと4作有るらしいが・・まあブックオフで見つけたら考えよう。

エラリー・クイーン「恐怖の研究」

ジャック・ザ・リッパー、切り裂きジャックにホームズが挑む!シャーロック・ホームズが世に出た長編のタイトルが「緋色の研究」、原題スタディ イン スカーレット。こちらは原題スタディ イン テラー。いかにもエラリー・クイーンらしい遊び心かなと思う。

1976年、昭和51年に発行された一冊である。新しい小説を執筆中のエラリー・クイーンのもとに、ワトソンの未発表原稿らしきものが届く、という設定だ。

シャーロック・ホームズが活躍した時代は、ジャック・ザ・リッパーの恐るべき異常犯罪でロンドン中が震え上がった年、1888年とかぶっている。なので、シャーロッキアンの間では、なぜホームズはジャック事件の捜査に乗り出さなかったのか、というのもちょっとした関心事となっている。

まあ、そのまま題材にするにはあまりにもセンセーショナルだ、というのも理由の一つだと思う。そもそも現実とフィクションを混ぜるのはシャーロッキアンが好きなお遊びなのだが。

という状況から、必然的な帰結というか、こうして、ホームズのパスティーシュでジャック事件を扱ったものはいくつも書かれることになったのだった。

ちなみになぜ捜査しなかったかのか、という問いには、実はホームズは犯人逮捕もしくは少なくとも特定に成功したが、犯人が高貴の身分だった、などの理由で未発表にした、という説が主流のひとつだったりする。私としては、だってその頃は「バスカヴィル家の犬」事件にかかりきりだったから、という説の方が好きである。

ともかく、この稿でエラリー・クイーンは読者の要望に応えて長編のパスティーシュで興味を惹いているわけだが、今回の再読の感想はうーん、もひとつ、だった。なんか肝心のところに飛躍があったな、と思う。

とはいえ、ホームズ関連本の中ではあらゆる面で面白い作品だろう。

ピーター・ローランド
「エドウィン・ドルードの失踪」

タイトルだけでは分からないが、これもシャーロック・ホームズのパスティーシュである。好きな人ならピンと来るかもしれないが、この作品の場合は、文豪ディケンズと絡めてあるという、特異な構想となっている。

チャールズ・ディケンズは友人ウイルキー・コリンズの「月長石」に刺激されて本格ミステリ小説を書こうと思い「エドウィン・ドルードの謎」という作品の執筆を始めたが、半分くらい書いた後、突然亡くなってしまい、このミステリは、未完の小説となってしまった。

考えてみれば、ミステリで、後半だけが書かれていない、というのは面白くも大変なことである。以後たくさんの人によって解決の推理を含む補足がなされたらしい。

で、書かれずに終わった事件の解決に、シャーロック・ホームズが乗り出す、という新機軸の作品の登場となったわけだ。

さて、シャーロッキアン的に見ると、1894年に依頼の相談があった、というのがなにやら暗示的だ。依頼人も触れているが、スイス・ライヘンバッハの滝壺に落ちて死んだと思われていたホームズが「空き家の冒険」で、ベイカー街に劇的な帰還を果たした年だからである。

また、この事件を解決した1895年には「美しき自転車乗り」「三人の学生」「ブルース・パーティントン
型設計書」など、ホームズ物語を代表する事件が起きたとされている。

多忙な事件捜査の合間を縫ってなんとか調べを進めるホームズ。最後はしっくりと来ない感じもあるが、大団円を迎える。地味ながら、構成はしっかりしていて、ディテールは疑問点が少ない感じで、読みやすくまずまず面白かった。

劇中でホームズが、「セクストン・ブレイクさん!」と名前を間違えられるシーンがあるが、これは、シャーロック・ホームズの連載が始まって間も無く出て来た類似モノマネ作品の主人公らしい。ベイカー街に住んでいるところまで同じで、それなりに人気は博したようだ。

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