昔父親に、サッカー観戦に連れて行ってもらった話をいつもする主人公。しかしそれは自分の体験談ではなく、きょうも主人公は、友人にその話をして聞かせてくれとねだる。少年の切ない憧れが、心にきて、泣けた。脚本家の才能を感じた作品だった。
11月は、吉野弘「二人が睦まじくいるためには」、池井戸潤「下町ロケット」、湊かなえ「境遇」、安達千夏「モルヒネ」、吉田修一「あの空の下で」の5冊となった。今年初の詩集となった「二人が・・」には、新鮮な響きを感じた。難解な現代詩が多い中、分かりやすく、広く愛されている詩集、との事だった。頂いた方に深く感謝し、その感覚に心から敬意を表します。
「下町ロケット」、直木賞受賞作。ロケットの話だし、愛せる、力のある作品だと思う。しかし、都合が良すぎる点も多々あり、どうも素直に受け取れなかった。小惑星探査機「はやぶさ」の成功という時流にも乗ったと思う。ただ、おそらく、そのような批評は織り込み済みで描いたのだろう。昨今の余裕のない世の中に向けて放った矢とも言えるだろうか。「境遇」は、主人公の二人が宿命的に向き合う、という、少々先が読める物語である。ただ、仕掛け的には面白い。どうして、と思う場面もあるにはある。
「モルヒネ」は先に書いたが、圧倒的な表現の量にやられた、という感じだ。恋愛とは、いや恋愛感情とは、結局、シンプルなもの、だが、だから余計に心に来る。最近、子供を相手にしていて、子供は親に愛情を求めるのに躊躇が無い。スキンシップひとつにしてもそうだ。でも、そうして欲しくても、素直に言えないのが、大人になってからの恋愛感情ではないかと思う時がある。いやまあしかし、最近はあまりリアルでもないので、この程度にしよう。ともかく、11月のMVPである。
「あの空の下で」は、重松清をもう少し若くしたような感じだ。本当に短いので読みやすい。全日空の機内誌に掲載されたものだという。ライトを求める方にはいいだろう。
日曜日は、また、神戸の科学館へ行った。もはや息子は科学館慣れして、大好きなよう。土曜の月蝕は、独特の欠け始めの形や、静かに進行して行くところ、完全に隠れる前の形と色の綺麗さ、また皆既中の赤銅色、明けの光など、本当に美しく楽しめた。今度ビデオ見ようっと。次は来年の金環食だな。
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