前の日の写真。私はアジアン系チキンライス好き。地元になんとテイクアウトできる店が出現。ヘビロテで食べてます。
◼️榊莫山「書のこころ」
最澄、空海、一休、良寛ら書家の解題を読みながら「なにが良いんだろう」と作品を眺める。楽しい時間。
故・榊莫山先生が、NHKの「人間大学」というテレビ番組に出演した時のテキストを本にしたもの。
書はまださっぱり分からない。でも有名な作品を見るのも、由来の話を読むのも好き。紹介されている作品はいずれも日本を代表するものばかりで、名作を網羅できて嬉しい。
比叡山の最澄。真摯で純粋。その書はひんやりと清麗、なんとなく淋しげで秋風のよう。やせてスマートな王羲之の書風が見え隠れする、とのこと。空海の弟子に宛てて書いた手紙「久隔帖」ほかが掲載されている。確かにちょっと端正できっちりめのイメージ。
同時代の高野山の空海、弘法大師は、在唐のころ、ねっとりとして書に棲む睥睨力があるニューモードの顔真卿に心酔した。空海の書はエネルギーがあって変幻自在、顔真卿風に書いた時には、歓気があふれてくつろぎがのたうっているそうだ。空海の代表作としては「風信帖」は教科書でポピュラー、でもちょっと王羲之が入っていて莫山先生的には顔真卿っぽい「灌頂記」という書き物の方がいいらしい。
最長と空海は仲が良く、手紙もよくしていたが、空海から送られた詩の言葉がやたら難しく、分からない言葉を師匠に聞いて教えてくれ、という手紙が「久隔帖」。なんか笑える。まじめだから、最澄。
平安の「三筆」は嵯峨天皇、空海、橘逸勢(はやなり)、「三蹟」は小野篁の孫、小野道風(とうふう)、藤原行成、藤原佐理(すけみち)。三蹟が活躍したのは、遣唐使も廃止され、書にも日本的抒情の香気が強まってきたころ。
宮廷書家・小野道風の代表作は「屏風土台」。928年ごろ、大江朝綱の詩を道風が屏風に書いたもの。「しなやかでゆるやかな曲線にはあきらかに日本的抒情への美意識がつよく沈んでいる。」そうだ。たしかに典麗。その中に力強さも伺える。
道風に憧れたという藤原佐理が面白い。名門に生れながら懈怠者、如泥人で、評判が良くない人。残っているのは失敗、あやまちの「詫び状」ばかり。991年、太宰大弐として赴任する時、山口の長門まで来て、摂政関白の藤原道隆に赴任の挨拶を忘れてきたのを思い出した。飲み友達に、道隆に取りなしを頼む情けない内容の「離洛帖」がチョー代表作品らしい。壮快で、筆触のリズムが鮮烈に冴えているこの作品は日本書道史でも稀有の名作、だそうだ。うーん、正直分からないが、きっと劇跡なんだろうな。
ちなみに藤原道隆は清少納言が仕えた中宮定子のお父さん。やがて道長とその娘彰子により地位を奪われる。彰子に仕えたのが紫式部。
時代は下って1326年、京は紫野に大徳寺を興した妙超という人。重厚で実に堂々としている印象。
「この寺に王者の風格があるように、妙超の 書にも王者の貫禄が棲む」
私のお気に入りプレイス、大徳寺。観光地としては静かな方だが、たしかに風格を感じる。妙超の次に取り上げられているのが、大徳寺にゆかりの深い一休宗純。後小松帝の落とし胤。反骨精神が強く、四民平等の禅を解き、世上の人気は抜群。その書は荒っぽく豪快であるが、莫山先生いわく、 造形的な痛烈な感性があり、詩人的なエスプリもあるそうだ。
大徳寺には名書いっぱい。今度行った時見なければ。
江戸時代まで来た。私は物知らずでした。仙厓という、絵を交えた書をものす名人がずっと福岡に住んでたなんて。ユーモアのあるものも多そうだ。次に帰ったら福岡市内、呉服町の聖福寺を訪ねよう。
新潟で活動した良寛の書はたいへん人気があるという。これまで何度か本や画像で見たが、自由自在な中にもどこそかに品がある、というイメージ。しかし書いてあることはさっぱり分からない。それもそのはず、かなの書状もあるが、なんと万葉仮名を使って書いたりしてたらしい。しかしやはり、小粋で天真爛漫な美しさにあふれた作風のようだ。見てみたいな、実物。
明治。石川啄木は興味深い。莫山先生は明治時代は、書の駄目な時代だったと厳しい。妙に古典的なにおいを持ったものが多いが、石川くんの書には明治を感じない、筆の運びが明るくて近代的な造形美にあふれていると評価している。マンガ「月に吠えらんねえ」の闊達やんちゃなキャラがかぶって面白い。
奈良を愛した奇人っぽい會津八一。書碑は東大寺、唐招提寺、万葉植物園、秋篠寺にあるそうだ。やべ、全部行ったことあるのに、書碑は見てない。再訪の楽しみですな。かな文字ばかりの碑は文字が石に負けてしまうが、會津八一のは違う。自信まんまんで見る人をうならせてしまうとか。ガッチリして、柔らかで、流麗さも併せ持つ感じかな。
元々はもう少し字がうまくなりたいな、から始まった書についての本読み。まだもちろん分からないけれど、楽しい。感性のどこかを刺激される。シリーズ本もあるようなのでまた読んでみようと思う。