2019年10月5日土曜日

9月書評の7





台風18号は朝鮮半島に上陸した後ググッと真東に進み温帯低気圧となって新潟などに上陸。30m近い瞬間最大風速でパワーをみせつけた。温帯低気圧でも怖いなあ。

さて、CS、クライマックスシリーズとラグビーの土曜日。

◼️東山魁夷「泉に聴く」


「あお」の秘密。日本を代表する風景画家・東山魁夷の来歴。


東山魁夷は、昨年の展覧会で作品に触れ、また川端康成と親しかったというのも興味を引いた。先日観に行った「川端康成と美のコレクション展」でも表紙絵をはじめ多くの展示があり、タイミングよく図書館で目に入ったので借りてきた。


昭和30年代から40年代のエッセイを集めてある作品で、散文的、一部幻想的に生い立ちや画家としての道のり、多くの風景を描いたヨーロッパへの旅、日本の旅、それぞれの文化、また自分の筆致について語彙の豊富な独特の美文で書いている。


東山魁夷といえば、「青」を印象的に使った絵が多い。冒頭の方に「青」という色について分析し、東西、ヨーロッパ、中華、そして日本で青を使った作品についてまとめている。


 そして、ヨーロッパの北方に憧れ、ドイツ北部や白夜の北欧、コペンハーゲンの郊外、フィンランドなどを旅した、その道行きが感性を開放したような表現で書き留められている。


特にフィンランドのヴィラット、湖のほとりで観た夏至祭の炎のくだりは幻想的な美しさだった。長野まゆみの小説みたい、なんて思った。


もちろん国内も奈良・飛鳥、多くの海岸線、代表作「道」の着想を得た青森・種差海岸の牧場への道など、様々な旅について書き残している。京都には特に一章が設けてある。


川端康成が亡くなった際の驚き、思い出も綴っている。


読むのに時間がかかる本というのはあるものだ。読んでて文章がすっと頭に入って来ず、同じページを何回も読んでしまう。おおむねあまり面白くなく、続きを読むのに辟易したりする。


この本も時間がかかった。でも丁寧に読みたい、もっと噛み砕いて頭に入れたい、という意識があり、苦痛は感じず、むしろ読み終わるのが惜しかった。読了後心地よい感慨に浸った。


画伯が描いた大作、唐招提寺の障壁画を、もう観たくなった。


◼️遠藤遼「奈良町あやかし万葉茶房」


ご当地ラノベ好き。こんなん出ました〜。


今年はご当地ライトノベルを多く読んでいる。近在のブックオフにラノベコーナーが出来て探しやすい。奈良と万葉と来れば逃すわけにはいかないっす。


父を亡くした高校生、草壁彰良は母方の親戚、額田真奈歌の勧めに従って、東京から奈良へ引っ越す。真奈歌はならまちで、「万葉茶房」という喫茶店を営んでおり、彰良はそこで店の手伝いをすることに。彰良には、あやかしを見る力が備わっていた。


「万葉茶房」はあやかし向けの店でもあり、あやかしや神様も来店する。どうやら彰良の母が開店に尽力したらしい。シェフの吉野は大天狗、真名歌も霊力がありそうだ。母が遺した万葉集を覚え込んでいる彰良は歌を口にしてあやかしを癒していく。砂かけ婆の孫娘・阿砂子、小天狗のミヤマと友人だった委員長・春日めぐみ、さらに強い神の娘だという男勝りの竜川美幸らと、彰良は母の正体を追いつつ、賑々しい毎日を過ごす。


設定と出来事はいかにもラノベらしいのだが、奈良の土地柄となんといっても万葉集の歌が楽しめる。差し挟まれる軽妙な会話もグッド、またグリーンエイジらしい恥ずかしさもいいと思う。このトシにして面映ゆい想いになる。


「ならまちはじまり朝ごはん」という別のラノベシリーズとかぶる部分も多く、逆に分かってるからさくさくと進む。


これ、2017年に出てこれで終わり?ワタクシ「よう」とか「おまえ」とかフツーに使う走り高跳びのエース、竜川さん気に入っちゃったんだけどー。せっかく万葉集題材だし、もっともっと展開できるのにー。十市皇女とか、天の火もがも、とか衣干したりとかやってほしい。彰良は母親とも会ってないのにー。続きが激しく読みたいぞ。と思ったら2巻は出ているようだ。


楽しみだぞ。

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