2017年4月24日月曜日

よしなしごと





水曜日は朝から、ドヴォルザークのチェロ・コンチェルト、通称ドヴォコンの最終楽章冒頭が鼻歌だった。迫力があって、とてもいい。ソリストは、ヨーヨー・マ、ジャクリーヌ・デュプレ、ロストロポーヴィチが思い出深い。ヨーヨー・マは力強く深い音色、デュプレはチェリビダッケと組んだCDがとても良く、暴れて主張が強い、ロストロは小澤征爾指揮のものがGOODで、枯れたというか渋い音が魅力的で、感動したもんだ。


火曜日の帰りのバスで、拍子木の音が聞こえて来た。薄暮のころだし、そもそも火の用心は冬のものというイメージがあるので変だなと思いつつ、特徴的な音に聞き入る。同じ間隔で、響くようにキンー・・、キンー・・、という音がずっと続く。たそがれ時、国道に曲がる前の信号待ち、バスのエンジン音のリズムに拍子木のサウンドがシンクロして、妙な雰囲気が醸し出されていた。


気温も上がってデスクワーク。夏物スーツで気持ちいい季節だが、朝晩は風が冷たい日もある。でもさすがに対策はない。春夏の間だもの。


木曜日は風が冷たかった。この日から息子はクラブ。バレーボール部で練習に入ったそうだ。ここ1年の特訓が功を奏し?上級生から褒められたとか。まあ初心者としては、だろな。これからこれから。


日月で島本理生「週末は彼女たちのもの」読み終わる。オットナ〜な感じの、あまり深くない恋愛小説。わたせせいぞうの小説版のよう。まあこれはルミネの広告に合わせたストーリーだから、いつもの島本理生とは違うよね。


火曜から木曜でノーベル賞作家ゴールディングの「蠅の王」読み終わる。無人島に不時着した少年たちの話。ゴールディングという人は、人の心に潜む悪魔的な部分を描くという。子供たちが異常な環境に置かれたことで、心の未熟さが暴走し、熱狂状態となり、悲劇を何度も招く。なかなか痛いが、物語にどこか説得力のようなものがあり、少年のもどかしさがよく出ていた。


金・土で豊島ミホの代表作という「檸檬のころ」。3カ月連続で豊島ミホ。こんなことは珍しいかも。ここまでなんというか、一般的な意味で面白いとは言い難いが、どこか雰囲気のある作家さんで、もう少し読んでみたくなる。「檸檬のころ」はクセのない感じで、よいまとまりだった。


だいたい、色々なものを挟みながら、2冊に1冊は女子系の、あまり分厚くない本を読んでいる感じだ。男っぽいのは読むが、現代ハードボイルドなんかはあまり読まない。で、男っぽかったり、大作だったり、分厚いものを読んだ後は女子系が読みたくなる。ゆえにブックオフで買っても買っても足りない。また買いに行かなきゃあ。


金曜は特段何もなく。


4月を契機に息子と寝るのを別にした。まだパパのベッドで寝たがるし、追い出しても、朝方いつの間にか入って来ていることも多い。ま、環境が一気に変わったから、寝る時はどうしても追い出すが、うるさく言い過ぎないようにしている。友人の言葉を借りれば、

「中2くらいに自然と離れるよ」だそうだし。


開脚は、あまり進まない。相変わらず酒飲んだ日以外はまめにやっている。webで調べて、相撲のシコ運動と、深い伸脚を取り入れた。でもいまのところそんなに効果はない感じ。120度前後がずっと続いている。一方で、前後の開脚も、深い前後伸脚ほかでトレーニングしているが、こちらは座っての開脚はしてないものの、脚がだいぶ前に上がるようになってきて嬉しい。180度までなんて冗談としか思えないんだけどね。


まあ気楽に続けるつもり。


土曜日は午前中爆睡。平日は、これまで通り起きていたら朝息子の顔を見られないため、630に起きている。そもそもあまり早く休むタイプではなく、最近寝つきも悪いから、睡眠時間が長くはない。5.5〜6.5といったところか。ちなみに、睡眠時間が短いと、夜中朝方に起きないから現状無理している感はあんまりない。だから土日どちらかはたいがい午前中朝寝坊だ。息子が帰ってくるのを待って外出。本屋で青木祐子「これは経費で落ちません!」宮下奈都「ふたつのしるし」知念実希人「優しい死神の飼い方」いずれも新聞に載ってたやつを買う。帰りは、北風が吹いて寒い。帰ってすぐワンコの散歩だった。


日曜日は、なでしこリーグ2部、コノミヤ・スペランツァFC大阪高槻vsセレッソ大阪堺レディース。そう、女子の大阪ダービー。


JGREEN堺は相変わらず広くて環境がいい。芝がすごくきれい。日陰は寒いが、日向はカンカン照りで暑い。


さて、高槻はレギュラークラスのほとんどを入れ替えた。昨年までの主力選手は移籍か引退で知ってる顔はほとんどいない。サッカーもおそらく組み立て中と見るべきか。いま10チーム中9位。


対するセレッソは、現在の主力を中学年代からゲームに出しながら育ててきた。彼女らはいま17〜20歳。3位で、トップ昇格が現実味を帯びてきた時期か。


試合はおおむね予想通りの展開。セレッソはサイドから、アンダー年代の代表に名を連ねた、もしくは連ねた選手中心に仕掛け、上手なつなぎのサッカーをする。左サイドの17番が目立つ。脚が速いだけでなく技術もある。調べたらやはりU−19に呼ばれている。


一方の高槻は全体に下がり気味で、うまく中央を閉める印象。突破してこようとするセレッソを食い止めている。しかし攻撃に連動性はなく、やや大きめに前に蹴る、行ってらっしゃいアタック。人数もかけない。DF登録でセンターフォワードに入っている大きな選手は、キープが上手い、2トップのもう一角はかなり脚が速いと、これまでには無い特徴があった。


前半早い時間帯にGKとDFの間のボールでお見合いした瞬間、高槻の脚の速いFWが奪って先制。セレッソはかなりダメージがあったと思う。


んー難しい。守ってカウンターのチームにラッキーで点が入って、はたから見ても面白いサッカーを組み立てているセレッソが劣勢だ。だがサッカーはこんなもんだし、下がった戦術も通じているということだ。しかし、後半は立場が逆転する。


65分ごろに、セレッソは、真ん中のCFへ、中盤からダイレクトにいいボールが繋がるようになったな、と思った数分後、セレッソは中央からのシュートのこぼれ球を交代で入った選手が決めて同点。さらにセレッソはCFがエリア内で引き倒されて得たPKを自ら決めてついに逆転。こうなると、テクニシャン揃いのセレッソが有利。高槻はこの試合初めて人数をかけて攻めるが、決定的なチャンスはなかなか作れずタイムアップとなった。


前半は余裕さえ見えていた高槻も、後半しんどくなってきた時間帯、特にサイドから中央クサビへのパスに対する注意が甘くなり、手数をかけて攻めてくる相手のプレッシャーに耐えきれなかった。現実的な手段なのかも知れないが、攻撃もこのままでは厳しい。もっと手段を増やすべき。ただ、つなぎや2トップの個性、また中盤が見せたテクニックは昨年までには無いものだった。今季はシーズンをかけて、サッカーを作っていく段階だと思う。


セレッソは長年のパスワーク、ハードワーク、足下の技術の高さを見せていたし、真摯に取り組む姿勢が見て取れた。前半も、ハーフタイムもベンチメンバーがアップをしなかったり、ポジジョンチェンジを多用したりという特徴があった。2年前に見た時よりぐっと体格が大きくなっていた。男子のチームがあると応援もハデだね。女子にさくら色はよく似合うよ。


女子サッカーは、なぜかこう、観る私にとっても、目の前のサッカーを分析し、向き合うことができて好きである。長い時間陽に当てられて、ヘロヘロになって帰った。ちょっとアタマ痛いし。ソファで安静。


帰りの電車+αで「これは経費で落ちません!」読了。ラノベチックでした。作者は少年少女向けの小説を長年の書いていた方で、キャラの微妙な立ち位置に職人芸を見た。まあそんなに盛り上がるわけでもないし、やはり軽さは否めないが。今週4冊か。


夜遅く、息子「眠れない」とパパのベッドへ。まあそんなもんか。長かったもんな。ぐっすり寝な。






2017年4月18日火曜日

ラス?







先週の木曜日はお好み焼き食べに行った。やっぱたまにソース辛いもの食べないとね。


土曜日、午前髪切りに行って、息子の帰りを駅で待ってたが出て来ない。妻に訊くと、毎時のバスに乗り遅れそうな時刻だったから乗り換え&歩きで帰るんじゃないかとのこと。


ちなみにバスは土曜は毎時1本。実は別の会社のバスもあるのだがそれぞれルートが違うからちっと複雑。いちばん分かりやすいのが毎時1本のバスだ。パパは完璧に把握してるがさすがに息子はまだ。毎時のを乗り逃したら歩くかもね。こないだは一番近い駅へ行きもせず、およそ3.5キロの道を歩いて帰って来たから自信もあるみたいだし。


で、そうか、それなら先に帰ってるかもなと、こちらも後を追うように乗り換えた先の駅まで行ってバスを待つ。歩くのしんどいし。そしてようやく来たのに乗るとなんと目の前に息子がいた。


結局、乗り換えたが別の駅で降りてその駅に近いバス停で待ってたら、当てにしてた別会社のバスがそのバス停を通るわけではなく待ちぼうけとなり、毎時のバスの次の便で帰って来たというわけだ。やれやれ。


日曜日はコナンの映画を観に行く。からくれないのラブレター、だ。大阪、京都が舞台で、制作元のよみうりテレビ本社が爆弾で崩壊してた(笑)。んー、ハデなのは分かるけど、テレビスペシャルみたい。だんだんパターンも読めて来たな。お昼の微妙な時間帯だったが、ご飯は食べず、ポップコーンペアセット塩&キャラメル、いつものようにカルピスとアイスコーヒーで済ます。


映画の前にエディオンに寄ってDSのゲーム、本屋で「MAJOR」の最新シリーズを買う。息子には入学祝いが多少あるが、うち決めた金額だけ好きに使いたいんだとか。まあ息子のお金だから、いいだろう。


映画後は、息子がバッティングセンター行きたいと言うので、もう暑い中テクテク歩いて行く。ちょっと道を間違えた(笑)。


3回打たせる。最初の2回は映像藤浪で、初級の配球パターン。100キロの速い球と80キロの遅い球と、カーブ。バントしたり、短く握ってみたり、食らいついたり。2年前の最初は怖がって打てなかったのに、背も伸びつつあるし、運動神経もついてきた感じだ。まあハイレベルではないが(笑)。ストラックアウトでも最速記録の76キロが出たとか。それよりは、まともに届く回数が多くなってきた方が大きい。


卓球もする。こちらの方が上達を感じる。パパも本気度を上げないと勝てない、ということで大人気ない攻撃も含め、フットワークなぞ使ったため、帰りは足腰に来た。バスまでの時間が空き、あまり知られていないターミナル的バス停まで歩き、ファミマで涼む。さすがにおなか空いたようでハムマヨ買って食べる。食べたかった肉まんが品切れだったのをかなり悔やんでいた(笑)。


来週から部活が始まるようだ。好きなスポーツを思い切りやるのはいいことだ。しかし土日も部活だから、もうこうやって2人で出かけるのは、小学校時代の延長のような形で行くのは少なくともラストかも知れない。


ビル爆破の火煙の中意識を失いかけたコナン。しかし蘭のことを思い覚醒する。私だったら息子かな、なんて考える。今回は上に書いた通りテレビシリーズみたいではあったけど、最後に平次が和葉を救うところはなんかミョーにぐっと来た。


まだ一緒に歩くとくっついて来たり、かつてのように手をつなごうとのばして来たりと子供っぽさは抜けないが、親離れ子離れの春夏となるか。わしもセンチメンタル過剰だな(自虐笑)。


2017年4月9日日曜日

さくら







送別会をして、中学の入学式に出た。セレモニーは、これで終了。まだまだ慣れるまでは息子のケアが必要だけど、いろいろ変わる春である。金曜日休んで3連休。木曜深夜から雨が降って来て、金曜は日中なんとかもって、また夜降り続いていた。外は一面の霧。土曜空けて、一時晴れ間も見えたもののまたシトシト。引き続き霧である。外出したかったけどやめて、シェイクスピア読んでいた。夜は暖かかった。


右足の甲外側が痛い。少し前から力が入らないような違和感があったが、最近しびれ系の痛みがたまにする。うーむ。日常生活に支障があるわけではないからとほったらかしにしているが、これ以上何があったら病院だな。


日曜日は、雲はかなりあやしそうな雰囲気だが、雨は降り切らず。しかし風が北で、寒い。息子と留守番して、阪神ー巨人ちらっと見て、ママ帰宅のちお土産のミスド食べて、単独で外出。


行きのバスで「ロミオとジュリエット」読了。西宮北口の本屋でケン・リュウ「紙の動物園」、高野秀行「幻獣ムベンベを追え」というのを買って帰る。ケン・リュウは新刊短編集で、又吉が帯で推薦してたのを見てつい買ってしまった。幻獣は、新しくはない本だからブックオフが理想的ではあるが、なかなか出ないのと読みたい気が先行して買っちゃった。どちらも最近欠けていたジャンル、SFと、探検ものである。


ちょっとバスの時間に余裕を見て、地元の川沿いの桜を眺めながら歩く。きょうがピーク。明日も雨が降るから花散らしになるか。帰ってワンコを散歩につれてくと、いつもバレーボールやってる公園の桜も満開だった。


夜はなでしこジャパン観る。長谷川唯、籾木結花、隅田凛らフレッシュな新戦力が入って攻撃に流動性が出ていた。彼女らは、日テレの下部組織で育ったエリートたちである。選手選考も、2部のチームからやこれまで呼ばれなかった選手を召集するなど、新鮮だ。一気に若返った日本代表。もうすぐ始まるワールドカップ最終予選を兼ねるアジアカップで、その実力が試される。

 

さあもう眠い。さっさと寝よう。春眠暁を覚えず。


2017年4月3日月曜日

春の心象







また本の話だが、ある日、本屋に行った。ジュニア新書で、天文学者のハッブルについてわかりやすい伝記が出ているらしい。ハッブルには興味があった。でも著書の「銀河の世界」が書店の検索でも出てこなくて、webでは絶版となってて、長い間どうしても巡り会えず、諦めたから、というのもある。


伝記を探し当て、角川ソフィア文庫で葛飾北斎の本を探す。なかなかコーナーが分からず、女性の店員さんに訊くと「はい!角川ソフィアびんこですね・・!や、やだ『びんこ』なんて言っちゃったー。」と少々赤面しながら連れてってくれた。私はもちろん、笑ってあげた。微妙な空気になるよりは、笑われたほうが気が楽でしょう。


さて、目的の本を見つけ手にとって、他も少し見ようと2列くらい見たところで電気が走った。シャーロック・ホームズの新しいパロディが出ていたのである。ホームズもの訳者として知られた北原尚彦さんの。うーん困った。これ書いたいどうしよー、ハッブルの伝記と、北斎の作品集文庫と、全部買うような思い切りを発揮するほどのものでもないし。


うーん、うーんと考えている時に、新書の棚が目に入った。そう言えばこの店では探したことなかったな。一応見てみるかないだろうけど。ところが、あったのだハッブル「銀河の世界」。あれだけ探してなかったものが目の前にある。悩ましい本が増えてしまった。


伝記のほうが面白そうだけど、被るしなにしろこれを逃したら「銀河の世界」は手に入るか分からなくなる。2度とは巡り合えないかもしんない。北斎の本は当分あるだろうから、いま買う必要はない。ホームズ読みたいし、で、最初行った目的と違う2冊を買って来た。


どうでもいい話なんだけどね(笑)。さっそく「銀河の世界」読んでいる。天文学者の本なので、さすがにこんなに数式入れられたら全部は分からないが、その分からなさも楽しい。


金曜日は、先週見逃したドラマ「守り人」今シリーズ最終話再放送を予約して、深夜まで起きてフィギュアスケート世界選手権女子フリーを見る。三原舞衣は頑張ったが、3人とも迫力不足か。宮原がいないのが正直痛い。


メドベージェワが目当てだったんだけれど、いやー、今回も圧倒された。ちょっとしたところ、I字開脚やジャンプの手の位置などでも難易度高い技を盛り込んでるのが素人目にもよく分かる。完成されたような、流れるような演技、表現もまるで劇を観ているみたいだ。


ジャンプに入る時の足が、まるでジュニア選手のように、妙に几帳面な型に見えること、あと表情もいいが口の開け方はちょっとワンパターンで変えたほうがいいかも。とかは目に付いたものの、パーフェクトな演技で、完全優勝。失礼な言い方ではあるが、一般のファンから見ると、もはや女子はメドベージェワとそれ以外。彼女は絶対女王といった状態だ。それほど飛び抜けていると思う。


うーん絶好調の時のキム・ヨナよりはちょっとかな、でもキム・ヨナよりメンタルの安定感があるようにも感じる。何にしろ、恐ろしい17歳だ。翌日の夜にダイジェストの再放送があるけども、生中継観て良かった。


翌土曜日は、センバツ決勝をテレビ観戦してからブックオフに出かけて、4月の本の調達。

伊坂幸太郎「チルドレン」

絲山秋子「袋小路の男」

島本理生「週末は彼女たちのもの」

シェイクスピア「ロミオとジュリエット」

高田崇史「QED ベイカー街の問題」

豊島ミホ「檸檬のころ」


を購入。シェイクスピアは、栞子さんの影響だな。豊島ミホは3か月連続。伊坂は、続編が手元にあるので最初の作品を。楽しみだ。


夜はフィギュア世界選手権男子フリー。羽生結弦の、パーフェクトな演技を見る。いや、素晴らしかった。宇野昌磨も頑張り、日本金銀独占。


深夜はバルサ。いよいよクライマックス。いやー、バルサいいとこで出てくるのは予定調和だが、カッコ良かったあー。チャグムとの再会は涙だった。感動した。これで第2シリーズ終わって、最終シリーズは11月。


日曜日はいい天気なのを見て、午前から神戸お散歩。阪急三宮からセンター街、元町商店街を歩いてハーバーランドへ。ブルゾン1枚来て、いつもの子育てバッグからって、スタンスミス履いてお気に入りの道をぶらぶら。古本や雑貨、ネクタイや靴下、靴なんかを見ながら、ポートタワーへたどり着く。風が吹くと寒いから、街の人もまだ厚手のオーバーとかダウンとかけっこうふつう。


メリケン波止場はイベントらしく、突堤の両側にずらっと露店。雑貨が多かった。きょうは散歩だけと思っていたが、美味そうなカレーパンだけ買う。帰り道はモトコー。相変わらずよくこれでやってけるな、というミニな店やギャラリーなどある。帰りの夙川駅はかなり人が多かった。でもまだせいぜい2分咲きというところ。


帰って昼ごはん食べて、ワンコをお散歩に連れてって、公園で息子とバレーボール。ソフトではなく公式のボールで、ばんばんサーブ打つ。息子けっこうレシーブ上手い。いわゆる対人パス?は自分の身体が動くのにびっくりした。ジャンプトスとか高さを合わせに行って飛ぶし。アンダーも足が勝手に動くし。でも1時間やり続けたらヘロヘロである。


家ではハッブル「銀河の世界」読む。土日で読めるさと思ったら難解さに停滞。とてもムリだわ。頑張れもうひと息。


さて、今週は心象的に、ちょっと乱れた週だった。


ひとつは、たった1泊2日だったけど、福岡を引きずったこと。地元はとてもいい。過ごしやすい。懐かしい。里心つきまくり。


私にとって太宰府は幼少の思い出が詰まっていて、車で行ったからこその、懐かしみがあった。もちろん、息子と両親、甥っ子姪っ子たちとの邂逅は心地よかった。息子も楽しそうだったし。


もうひとつは、仕事で人が変わること。よくあることだが、春にはやはり感慨が増す。ちょっとセンチメンタル過剰の、年度末なのでした。


2017年4月1日土曜日






以下は、3/17(金)と、3/18(土)〜20(月祝)の日記である。印象深い4日間だったのに、書くだけ書いてアップしてなかった。時期外れだかもったいないので上げときます。

春は出身の春日市の春。福岡の春日の由来をひもとくと、奈良の春日大社だという。


金曜は、小学校の卒業式。いまはかなり昔と趣向が違う。ステージに裏から入って、幕が開くとひな壇状に並んでいる。体育館のフロアに入場するときは、両側から1人ずつ中央に向かい、出会って向きを変え、2人並んで席に向かう。男子はジャケットにネクタイが多く、女子はAKBや袴。小粋な儀式感があふれる。さっそうと歩く姿と、キビキビとした所作が成長を感じさせる。


国歌斉唱、保護者も歌う。校歌斉唱。ああ、相変わらずいい歌だなあ。子供たちがそう思うのはかなり先かもしれないが。卒業証書授与もフロアで。お母さん方、スマホで動画。

1年の頃学校に通ったから知ってる子がけっこういて、その大きさにちょっと驚き。集団登校で連れてってた小さい女の子、中学年のとき仲良かった男の子、1年の頃息子の面倒を見てくれた女の子、いずれも大きく育ってた。


ひな壇に再び並んで歌と言葉。歌はけっこういっぱい。嵐の「ふるさと」はちょっと一緒に歌ったし、やや思い入れ。妻涙。私もウルウルしてた。


思えば東日本大震災から逃げるように帰って来て環境が変わった息子は、親がいないと泣き止まないようになり、母親は毎日学校に通った。周囲に話しても、どうして、どうして、ウチだって幼稚園から1人よとか言われるのがどこか責められてるみたいで、相談するのすぐにやめた。4年はすごく過ごしやすいクラスだったらしい。市民会館のステージでアナ雪歌った。5年の林間学校に6年はオバマが来た直後の広島へ修学旅行。親は感慨深い。やっぱり。


クールに、と思ってたが、「栄光の架け橋」で退場するときに、ちょっとかなわんくらい胸に迫るものがあった。しゃくりあげ寸前。どうしてだろう。何かを思い浮かべてたわけでもないのに。曲に泣かされたかな。


これで小学校は永遠に終わり、だと思う。こんなもんだ。やっぱ6年もあって、成長の度合いが急激だから、具体的に考えてなくても泣けちゃうんだな。きっと。


翌日は天王寺にお出かけ。関西最大級のアニメイトが目当てで、確かに「ハイキュー!」は梅田よりグッズ多かった。ただ一部ネットの噂は正しくて、18禁のBLものとかもたくさんで、ちとオタクアダルト系。お客さんは実に若い女子が多い。日本のアニメ、ジャパニメーションは女子に支えられている。


中華屋さんでご飯食べて、あべのハルカスの展望台へ昇る。エレベーターは壁にイルミネーションが流れる。60階、地上288mはやっぱりすごく高い。息子は珍しく興奮。下を覗いては「自動車のスピードが遅い」「フットサルコートがすごく小さい」床がガラスで下が見えている所には近寄ろうとしない。


あべのハルカスは、ビルとしては横浜のみなとみらいを抜いて日本一の高さである。3連休初日だからとちょっと警戒して行ったが、人は多くなく、エレベーターを待つこともなかった。期間限定のボールプールにも最初の入れ替えで入れた。私は入らなかったが、息子張り切ってボールの海を堪能し、見事に靴下片っぽなくして来た(笑)。


ゴールデンウィークとかは多いんだろうな。多分。やっぱ新しいビルは気持ちいい。天王寺って駅も周囲も都会だな。


帰り腹が減ったと息子コンビニおにぎりを2個食べる。環状線も各駅停車はガラガラ。いつもは混んでるイメージだから、意外である。バスの時間もちょうどよく、4時過ぎに帰着。それなりに遊んだな。


帰ってパパはワンコとうたたね。いま上下巻の名作を読んでるが、洋書というのもあって、珍しいくらい全然進まない。夜はバルサを観て、ちょっとだけ頑張って本読んだ。ここから面白くなりそうな予感。


日曜日は、髪切りに行って、すぐ帰る。眠くなって、息子のキャッチボールもワンコの散歩もサボってのんびりする。


月祝。ママ花粉症の延長で熱。センバツ高校野球にでも遊びに行こうかと思ってたが、子供に昼ごはん食べさせて急きょ買い出しに。1日は飢えないくらいの分量を買って帰る。あすの様子見。


帰ってワンコの散歩。レオンが珍しく積極的。なんか共通理解があって、行きたそうな方向に、いつものコースを変更して進む。もう15年一緒に散歩してるからね。ゆっくり回って帰る。引き続き息子とキャッチボール&バレーボール。野球の方は、肩が強くなってきた。ちょっと運動能力上がったか。遊びバレーしてるからかな。ふくらはぎ大きくなってきたし。しかし肝心のバレーはまだまだ技術&体力不足。


夜はママダウンコースのギョーザ定食。全てお惣菜、ギョーザは551。関西の文化は素晴らしい。(笑)


夜中に雨が降り出す。4連休を終え、4日間仕事する。年度末はなにかとバタバタ。まあ、いつも通り、カゼひかないように気をつけて過ごすだけだ。。バレーで張り切ってジャンプフローターサーブのまねなんかすると太ももが痛い。やばい。


3月書評の3





3月は、13作品14冊。まずまずバラエティに富んだものを楽しく読めた。ノーベル賞のパムクは、難しいところもあって時間がかかったが、構成の妙で、シェイクスピアの劇のような感じだった。4月も充実してたらいいな。

オルハン・パムク「私の名は赤」


ノーベル賞。舞台はオスマン時代のトルコ・イスタンブール。世情騒然とする中、細密画の絵師たちに絡むミステリー。大作でした。


1571年、地方での任官を終え、12年ぶりにイスタンブールに戻ったカラは、いとこの美しいシェキュレへの想いを再燃させる。シュキュレは結婚し2児の母だったが、軍人の夫はペルシア戦争に行ったまま4年間音信不通となっていた。皇帝の細密画工房の名人「優美」の死体が見つかる。皇帝の命により秘密裡に製作されている装飾写本を完成させるため、殺人の犯人捜しに、カラは否応なく巻き込まれていく。


当時のトルコの風俗や世情、庶民の暮らしを描きながら、細密画の世界、イスラム世界のコーラン、寓話、著名な絵師たちの話をふんだんに盛り込んでいる。仕立てはミステリーで、秘密の装飾写本をめぐり、カラは工房の名人「蝶」、「コウノトリ」「オリーブ」の中から殺人犯を特定するという使命を負う。


さすがに土壌がかけ離れていて、全ては理解できず、時間もかかった。かつて読んだ塩野七生のキリスト教勢力vsオスマン・トルコの三部作はだいぶ助けになったが、それらでも感じた、東西の文化の衝突、混ざり合いもまたテーマとなっている。


壮大なテーマの物語の中で、美しく計算高いシェキュレ、その子供たち、行商女エステルらの現実的、人間的な思いと行動が良いバランスを取っている。神秘的な絵画ミステリー、という感じだ。手法も、カラ、シェキュレ、エステル、3人の名人等々、視点が目まぐるしく変わる小さな章が連続し、構成の妙が際立つ。


トルコ人のオルハン・パムクが1998年に著したこの作品は国際的ベストセラーとなり、パムクは2006年にノーベル賞を受賞する。確かに壮大で、人間臭く、文化的相克が生々しい。変わっていく世界に対し、諦念のようなものが大きく横たわっている。


キリスト教とイスラム教の衝突を歴史に持ち、また宗教を強く意識し、大陸で地続きに暮らしている国の読者と我々の理解はまた別かな、という感覚を抱きつつ、いずれもう1回読もうかな、と思った。パムクは現代ものの「雪」も高評価を得ているらしく、こちらも、読んでみたいかな。


梨木香歩

「エンジェル エンジェル エンジェル」


三世代、と天使がキーワード。梨木香歩の得意の魔法がちらり、不思議な物語、最後の最後にホロリ。


伯父の海外赴任で、コウコの家に痴呆症でほぼ寝たきりのおばあちゃんがやって来た。成長したコウコは、深夜のおばあちゃんのトイレ付き添いを引き受ける代わりに熱帯魚を飼う許可を得る。ある夜、サーモスタットの音に反応したおばあちゃんは、突然少女のようなおしゃべりを始める。


過去と現在が交錯する、ちょっとファンタジックで、シニカルな面もある物語。そんなに心が動くわけではないが、戦前と、現代と上手にからめて、オチをつける。技術的だけど、ほんのりと感動する。梨木香歩一流の筆致だろう。


長く濃い作品の次に読むにはベストの本でした。


又吉直樹「火花」


機会があってひょいっと読んだ。漫才師の若者、情熱と葛藤。思ったよりもストレートだったな。


売れない若手漫才師の徳永は、熱海の花火大会で漫才をやった後、同じ会場で出ていた年上の神谷と飲みに行き、意気投合する。しばらくして、徳永のいる東京に、神谷も移り、頻繁に飲みに行くようになる。


多くは徳永と神谷のつきあい、会話、関係性が描かれている。売れない若手のお笑い芸人の想いや、キツい現実もさらされる。先輩後輩の間柄も、現実も、成り行きも、そうなんだろうなあ、という感じだ。


ある意味独自のストーリー。季節感も、物事に対する感覚も、滲み出てくるものも、興味深くはあった。


福岡に帰った時に、読むものがなくなってコンビニで買ったけれど、夜は子供の相手をしながら沈没し、帰りの新幹線は爆睡で、結局帰って来てから読んだ。


豊島ミホ「ぽろぽろドール」


最初は暗くて気持ち悪いな、と感じていたのだが、読み終わる頃には、ほおーという印象だった。興味深い。人形にまつわる、短編集。


鎌倉にあるおばさんの広い家。おばさんの部屋には、天蓋付きの豪華なベッドと、大きな、少年のような人形があった。小学生の私は、おばさんの急逝後、顔を叩くと、涙をこぼすそのからくり人形を貰い受ける。

(「ぽろぽろドール」)


小学生から大学生まで、様々な年代の女子たちの物語に、人形たちが登場する。最後の一編のみ、男子が主人公。


あとがきにも詳しく触れられているが、ひとつ貫いているのが、容姿へのこだわりだ。作者は容姿の良し悪しによって決まるヒエラルキーに、特別な感情を持っている。きれいな容姿を持たない者の想いを、強く心に留めている。


そして、この人に惹かれる要素というのは、胸にある歪んだ感情を物語の中で解決しないこと。物語というのは、問題があって、それを困難の末克服し、成長する流れが一つの定型だったりするし、私もそういう姿にけっこう感動したりする。でも誰もが胸のどこかに抱えていて、わだかまっている感情は、そう簡単にほぐれないとも思える、いやそう知っている。


そういった部分は、正直で、リアルに思える。誰も口には出さないけれど、どこかに必ずあるだろう、と。


もちろん歪みまくったいやな話ばかりではなく、いろんなパターンがあるし、短編らしく思い切ったシチュエーションや成り行き、突然終わるブレイクもある。好みはあるし、この本そこまで話題になってないと思うが、なかなか考えさせられ、興味深かった。


3月書評の2




先の稿で触れるが、あべのハルカスからの眺め。私はたかいところ好きで、大阪の高いビルはだいたい踏破している。ここは東京タワーみたいに下がのぞける足元がガラス張りの部分があって、ちょっとだけ怖かったかな。関西にもこういうとこ出来たかってな感じだ。

飛鳥井千砂「はるがいったら」


両親の離婚で離別、それぞれ成長した姉弟は進路と恋愛に悩む。そして不安定な季節に起きる小さな事件。小説すばる新人賞受賞作。淡々としていて、読後感がとてもいい。


男子高校生の行(ゆき)は、自分の部屋で愛犬の介護をする毎日。両親の離婚で別々に暮らす社会人の姉、園(その)とは今でも仲が良い。ある日の深夜、高熱で意識を失った行はしばらく入院することになる。


心を強く動かされる話ではなく、いくつか出て来る小さなエピソードもどれくらいの必然性があるのか、という部分もある。でも、やや多いキャラクターの設定分け、季節、キーポイントとなる犬、エンドと、全体として上手く噛み合って、テーマを鮮明にしている。ミステリ風味もあってなかなか興味深い。


飛鳥井千砂は、「タイニー・タイニー・ハッピー」が直木賞候補になって気になっていた作家さんだが、もっとフェミニンな、ベタッと恋愛を書く方だと思っていた。これくらい淡々としているなら、また読みたいと思う。


でもやっぱ、女子系作家さんは、ひとつひとつファッションを詳しく書くという特徴があるな。


今沢真「東芝不正会計 底なしの闇」


分かりやすくとても面白かった。うーん。今の目で読むと、見方が違ったりして、考える部分もある。


長く毎日新聞の経済記者だった筆者が、東芝不正会計について、経過をドキュメント風に追いながら、問題点をまとめ、解説したものである。ビジネス情報中心のニュースサイトの編集長として取材、コラムをだいぶ執筆したそうだ。


経済用語も分かりやすく説明されていて、何が問題なのかよくわかる。そもそも、最初に発覚した不正会計は、構造的にはあまり難しくない。


しかし、経営陣主導の不正で、監査法人もスルーで、監査委員会、社外取締役も形式で、第三者委員会の報告も良くなくて、広報に丸投げの部分もあってと泥沼である。単純に、こんな簡単に不正していいもんだろうかと思う。選択と集中、というのも、聞こえはいいが、しくじればダメージが大きいのでやっぱり怖い言葉だな。


コーポレート・ガバナンス上よろしくない例としても、おそらく語り継がれるだろう。第2弾も出ている読もうかどうしよか、と思っている。


初野晴「退出ゲーム」


学園ミステリの連作短編集。よくある設定・テイストではあるが、設定、ネタ、経過、キャラがかなり練られている。ふむふむ。


高校1年生の穂村千夏(チカ)は、幼なじみの上条春太(ハルタ)と同じ吹奏楽部員だが、彼との三角関係に悩んでいる。文化祭を前に脅迫状が届き、猛毒の物質がなくなった事で、実行委員の千夏は頭脳明晰な春太に助けを乞う。


「ハルチカ」シリーズとして人気の出た、第1作。ハルタが探偵役である。学園生活を描きながら、身の回りの謎を解決していく。日常的というよりは、謎のネタは重い。周りを固める登場キャラクターと、経過の鮮やかさでバランスを取っている印象だ。


チカとハルタはどつき漫才のような関係だし、出てくる高校生は愛すべき変人が多く、マンガのようにドタバタする。連作の中でそれらの登場人物たちは再登場し、それぞれの役割を果たしていく。


設定の方も、ルービックキューブだったり、演劇だったり、色の名前だったり、どこかひと昔色を感じさせながら、非常に斬新なものを感じさせる。


まあその、学園ミステリが巷に溢れているせいもあるが、知識で勝負し過ぎる部分があり、また謎の重さとのバランスも微妙にしっくり来ない面もある。また、特にハルタについては色々描かれてはいるが、ハルチカら軸となるキャラの顔がもうひとつ見えて来ないきらいがある。でもアイディアの斬新さは買いな気がする。


もともと最近出た文庫「惑星カロン」というタイトルに宇宙好きの私は惹かれて調べたところ、ハルチカシリーズだというのでとりあえず第1作を読んでみた。これで本命に進めるというものだ。今調べたら、間に3作もあるのか、どうしよっかなあ〜。


高橋克彦「ジャーニー・ボーイ」


明治維新からまもなく日本を旅行し、「日本奥地紀行」を著したイギリス人女性、イザベラ・バード。その通訳兼ガイド、伊藤鶴吉をモチーフにした活劇。


明治11年、大久保利通刺殺事件からほどない頃。東京・上野の西洋料理店に勤め、英語が堪能、腕っぷしも強い伊藤鶴吉は、高名な文化人、岸田吟香から、イギリス人女性、イザベラ・バードの旅への同行を勧められる。外務省からの依頼だった。危険な旅となるのは間違いなかったが、伊藤は承諾し、バードとの面接に出掛ける。


もともと幕末明治は好きなのと、触れ込みに惹かれた。どんな展開かと思っていたら、バードとの厚い会話、謎の刺客、この時期の武士の想い、友情などが盛り込まれていて、多重な構造の話だった。


東京を出立してから、日光、そこから新潟へと、困難な旅路が描かれている。バードは最終的に北海道が目的地だったから、ちょっと楽しみにしてたが、新潟で終わってしまった。(笑)


謎の刺客に立ち向かう伊藤とやはり政府に雇われたボディーガード達とがひとつストーリーの中心だ。気ままに振舞い、道の険しさ、宿の汚さ、好奇心を丸出しにする日本人に辟易し、時に伊藤に文句たらたらのバードと、その裏で忙しく警護する日本人たちの好対照さが浮かび上がる。


なんてか、美化しない、という意味で、バードの描き方には好感が持てた。ただ、ちょっと活劇に寄りすぎかな、というのもあり、多重な構造にも、ハマってないところがあるな、という感じがした。


まあ題材が興味深く、活劇のおかげもあって、すらすら読み進んだ。バードと伊藤については中島京子も小説を書いてるらしいので、気にしてみよう。


3月書評の1




写真は初めて行ったランチの店のチキン南蛮。ランチを普通に行くようになってからウエスト戻る。やはりか笑。

さてでは3月もスタート!

北村薫・宮部みゆき編

「名短編、ここにあり」


小説家が選ぶ、名短編。半村良、小松左京、松本清張、井上靖らお歴々の短編が並ぶ。興味深かった。


小説の匠2人がチョイスした、ちょっと古めの短編集。出だしの「となりの宇宙人」はコミカルで、城山三郎の「隠し芸の男」なんかは悲哀を感じさせる。いっぼう吉村昭の「少女架刑」は視点の変わった、静かな「死」を扱うものだ。


短編というと、うまく落とすか、ほんのりと、余韻を楽しむか、ちょっと見に不思議な顛末を描いて、描かれていない行間とか背景をあれこれ考えるか、というのを愉しむという趣きがあると思う。あるある、という行動を切り取っているものもある。


この短編集は、本読み2人がかつて目をキラキラさせて読んだという雰囲気と、小説家ならではの視点で、うまい、と思った感覚とが示されていると思う。巻末の対談の楽しそうなことといったら(笑)。


感動したり、大笑いしたりといった類ではないが、なかなか読ませる作品ぞろいだった。


渡辺裕之「偽証 オッドアイ」


男くさいのが読みたくなって新刊を購入。舞台は知床。ヒグマ絡みなのにも惹かれたな。ある意味予想通り。


伊豆諸島に巡査として赴任している朝倉は、自衛隊特殊作戦軍の隊員出身でもと警視庁捜査一課の刑事。片目がシルバーグレーのオッドアイを持つ。事情があって転任したが、ある日釣り名目で島を訪れた、自衛隊中央警務隊の国松に、自衛隊の訓練中に隊員が死亡した件の捜査に協力して欲しいと頼まれる。


なんというか、これが現代の、売れるアクション小説なのかな、と思った。自衛隊にも警察にも詳しい。主人公は抜群に強く、切れる捜査官で、アクションもふんだんにあり、国家機密にも絡んでいる。


ところどころに自衛隊の現状や考え方、軍事的な国際問題が書いてあって、それなりに考えさせるし、知床ネイチャーものの要素も多い。さらさらと読んでしまった。


オッドアイというのは、左右の目の色が違うことで、息子も名探偵コナンの影響で知ってたし、私も「心霊探偵 八雲」でおなじみ。主人公を際立たせるのには確かに適している。


渡辺裕之は、「傭兵代理店」でデビュー、同作が人気シリーズとなったのか。名前は目にしていたが、読んだことはなかった。今回のオッドアイもシリーズ2作めだ。


エンドも、期待通り。日本的ハードボイルド。うーん、やっぱり男くさい。


谷川流「涼宮ハルヒの溜息」


なぜ読む気になったかというと、最近やっと、舞台が近所の高校で、聖地巡礼もよく来るよ、と聞いたから。「えッ」てなもんでとりあえず読んでみた。表紙恥ずかしい。(笑)


涼宮ハルヒ率いる非公認のサークル、SOS団には、ヒューマノイドタイプの宇宙人・長門有希、未来人の朝比奈みくる、超能力者の古泉一樹、そしてハルヒのお守役男子キョンが所属している。文化祭に向けてハルヒは団の映画製作を強引にスタートするが、次々と不思議なことが起きる。


うーむ、こういうのか、というのが正直なリアクションである。実はデビュー作「涼宮ハルヒの憂鬱」がなかったので、2作めでいいやー、と買ったのだが、大事なことは1巻にだいぶ書かれていたらしく、ちょっと物足りなかった。


まあハルヒが、その強権でみくるに様々なコスプレをさせる、ハルヒ自身もバニーになったりする、というのも売りのひとつだが、今回たまたま息子が本をめくってコスプレのイラストを見ちゃったので、できるだけ落ち着いてと自分に言い聞かせつつ、言い訳しなければならなかった(笑)。


高校、公園、駅前は分かる。神社とはどこぞや。たぶんあの寺か、と思ったが、まあそこはスルー。池も、だいたい目星がつく。移動距離、意外と長い。


ハマらないうちにやめとくか、それともいっそ全部読むか。ちょっとマンガすぎるとこがあるのであまり心惹かれないが、デビュー作読んでから考えようかな。


長野まゆみ「夜間飛行」


今回は、ショートショートのような、アイロニーを含んだような、はたまた銀河鉄道の夜のような、ファンタジックな作品。もちろん作者の色はよーく出てます。


親友同士のプラチナとミシエルは、冬至と夏至の近くに行われる、ハルシオン社の夜の遊覧飛行に参加する。機中では席替えがあり、プラチナは隣になった老紳士から、ミシエルも隣になったセールスマン風の男から、それぞれとっておきの話を訊きだす競争をする。


次々と場面が変わり不思議な現象が起きるので、上でもだいぶ例えたが、読んでる時はもうひとつ、不思議の国のアリスみたいだなあと思いながら読んでいた。長野まゆみの特徴は色々あるが、今回もBLのほのかなにおいがする美少年もの、宇宙、駅、旅、そして鉱石、変わった飲み物、食べものなどなど全開である。


この作品は1991年のもので、あとがきによれば、フランスがムルロア環礁で行った核実験を皮肉っている色合いもあるとか。その件に関してはあとがきで強烈に批判している。


それにしても、相変わらず「忍冬(すいかずら)とジャスミンの蜜が匂う飛行場」とか、「檸檬の皮を涵(ひた)したシトロネル酒や蜜橙(タンジェリン)の皮でつくるオレンヂキュラソー」だとかいうのがすらすら出て来る。

今回はマザーグース、フランス語の唄なども引用されている。


この人の構成力と語彙力、世界を作る力には呆れてしまうほどだ。こんなに表現できたら楽しいだろうな、と思う。ホンマに。


長野まゆみは、ちょっと前の時代の、兄弟や親戚の微妙な思いとか、このような、どこの国の話か分からないような美少年ものファンタジーとか、ある程度世界が限定されているが、今回はなんか、古典的文学の香りもしたな。多作な作家なので、まだまだ楽しめそうだ。


花村萬月「月の光(ルナティック)」


バイクが好きな作家の、ロードノベルの趣を持つサスペンス。んーまあ、男臭いかな。


かつて文学賞をとり、今はライターのような仕事もしている沢渡丈(ジョー)は、新興宗教団体の松原という男と深夜に会う約束をしていたが、現れた松原は今にも倒れそうな状態だった。通っていた空手道場の娘・律子とともに松原を介抱している時、ジョーは何者かに襲われ、昏倒する。


こないだ読んだロードノベル「どうしてこんなところに」の解説に、同様の小説の傑作として、花村萬月の「重金属青年団」が紹介されていたので興味を持った。同作は行った本屋になかったから、似たような感じのこの本を読んでみることにした。


主人公といえばジョーだが、愛車のハーレー、律子との絡みも濃厚である。外国の娼婦、ヤクザ、セックスに新興宗教団体と盛りだくさんな、男作品。新興宗教との対決は最後の3分の1で、ハーレーでの旅と律子とのことが大半だ。


花村萬月は「ゲルマニウムの夜」で芥川賞を取った作家さんで、バイクを愛し、かなり破天荒な人生を歩んだ方らしい。「重金属青年団」もバイク愛あふれる物語なのだろうか。


出て来た要素をどこかに起き忘れたような部分もあるが、まあ全体として読みやすい仕上がりではあった。