2017年3月26日日曜日

帰郷





息子と2人、福岡に帰省。1泊だから、自分のリュックにパジャマも下着と靴下入れさせて、パパも荷物一つで帰る。息子は新幹線乗るのは久しぶり。


みずほは2席ずつで、ゆったりしてデラックス感あり、素晴らしい。息子はサンドイッチを食べた後、ゲームをしているうちに酔ってしまい、気分悪わるで博多駅着。しばらく駅前のベンチでへたる。弟の車で太宰府へ小1時間。窓を開けて風に当たってて、安心していたら、太宰府天満宮の駐車場で降りたとたんゲロゲロ。ちょっとびっくり。


父と待ち合わせでフラフラで天満宮へ。でも吐いたら少し楽になった様子。参道歩いて参詣する頃には復活。お茶屋での梅ヶ枝餅は、パパの分まで頬張ってた。胃に何もなくなったからお腹空いたのね。


父と別れ、車で春日へ戻る。車中またやや気分悪気味。

弟「梅ヶ枝餅もまた出るんやない?」

私「もう味わったからいいやろ」

息子「いやそれはあかん!」


アニメが始まるまでに母宅に着き、コタツで寝転がりながらテレビ。また復活してきたもよう。お腹空いたみたいで、いとこたちが来るなり、パーティー寿司にかぶりつく。後半はゲームの話で子供たちと弟、盛り上がる。子供達と言ってもいとこの一番上は22歳、下の男の子も17歳、末っ子は13歳の女の子で、決して小さくはないけども、めったに会わないが共通語はある。


17歳の子は資格も取って、高校卒で家を出るみたい。落ち着いてて、イケメンで、いいやつ。独立の時期か。月日は早いな。


9時半にはバラシで、近くのローソンへ散歩。明日朝のパンなど買う。最近はチョコ菓子のビッグサンダーがお気に入り。帰ってきて、お風呂。上がった後も、いつまでも、弟とゲームで遊んでいる。いつも思うが、この弟は4人の甥姪の相手をずーっとしてきたから、子供の扱いが抜群に上手い。慣れない環境には欠かせない叔父である。


たたみにふとん2つ並べて寝る。息子はこういうの、好きである。いつもと違い、県道の車の音や同じアパートの住人がたてる生活音に寝付けなかったが、いつしか眠る。寝るときはそうでもなかったが、朝方はとても寒かった。


母の住まいは思い出の山。コップ類の棚をふと見ると、私が中2の春にセンバツを観に甲子園へ行った時買ったマグカップが。第54回。荒木大輔の早稲田を観たんだった。いま89回。おいおい。洗面所には、家に居た時共用だった口すすぎ用のプラスチックコップ。懐かしすぎる。


朝からボウリングへ出掛けるが、なんと子供会の貸切とか、九州大会とかの日で、2つとも入れず。卓球して帰る。母校を回ってもらった。いつの間にか坂道にトンネルが掘られてて、脇道から行かねばならなくてびっくり。母校は、やたらと建物が増えていた。でも基本的な校舎と奥の体育館は変わってない。


母宅で昼ごはん食べて帰阪の途へ。ハンバーグ弁当を完食、朝もスティックパンを一袋食べてたから安心はしたが、酔い止めを飲ませビニール袋を持たせて帰りののぞみへ。


ちなみに行きも帰りも20分前には駅に着いてるが、トイレとかなんとかしてたらギリになる。帰りもお土産選べなかった。今後の教訓だな。


さて注目、帰りの新幹線、息子はゲームをせず、本も読まずで退屈そうにしていた。パパは爆睡。半分を過ぎたところで、直接操作するのではないゲームを開始。ちょっとだけ気分悪入ったようだったが、何事もなく帰還。


ちょっと疲れたかな。でもやはり、福岡は特別だ。何事もおだやかにまだ、続いている。太宰府は、父の職場で、土日によく連れて行かれたから、第2の地元みたいなもの。天満宮以外は、ほとんど変わってなくて、家並みも、昭和色が濃かった。


すべてが過去になっていくな。いま分かることも多い。また、行きたいな。

2017年3月24日金曜日

1人で





歓送迎会の店。ネットで見つけて、雰囲気を見ようと十三で1人吞み。生中なんて多い量飲めるかいな、という不安もどこへやら、お腹空いてたのもあってガツガツ、グビグビ。あっという間に完飲完食。ビールと枝豆とポテトサラダで1500円。帰り着くのも早かった。


3月前半まで飲み会が多めで、ここ最近はぱったりと飲んでなかった。だからか、ミョーにビールが飲みたい気分にはなっていた。いつもは1杯めの生中でしばらくもつくらい飲まない。でもこの日はあっという間。


朝はベルトの具合から少し痩せた感があったけど、増えちゃったかな。(笑)


あまりに引き上げが早いと、店からも変わってると見られるかもだけど、1人吞みって楽しいと、発見した。単身赴任の時さえ、夜帰りに1杯だけとか1人で行った覚えは1回くらいしかない。


翌日は、人身事故でJRが止まり、急遽阪急。やっぱ混んでたけど、ひと駅で座れるラッキー。


翌日もJR遅れる。断続的に来たからさして被害なし。やや多めだったかな。にしても連日。高脂血症の薬をもらいに医務室に行って戯れに身長体重計る。身長は・・立ち方にもよるんだろうけど、なんと縮んでてショック。開脚柔軟により足が伸びたと思ったのは勘違いか。体重は、ベルトが示す通り減ってた。


これはおそらく、昼休みにやりたいことがあって、先々週まで2週間ほどおにぎり&サンドイッチで通したからではないかと思われる。あと、最近深夜にお腹がすかないからお菓子とか一切食べないことも関係あるのかな。


8日間もかかったオルハン・パムク「私の名は赤」上下巻読了。濃かった。オスマントルコ時代の細密画の世界はさすがにわからん。でもいつか読み返したい佳作だった。


さて週末は、旅だ。


2017年3月13日月曜日

なぜか





「面白くなかったでしょう。」元バレー部の同級生で、先日のVリーグ観戦のことを教えてくれた方が切り出したから、ちょっとびっくりした。


金曜日の夜は、高校同級生飲み会。ここ2年ほど3ヶ月に一度ほど開催されている。単身赴任のマンション住まいの者の家に10人ほど集まる家飲み。


で、なぜバレー部はそう言いだしたか、よくよく話を聞くと、私が何回か前の稿で書いた、外国人オポジット頼みのバレーを憂えているらしい。もう結論。Vリーグはあんなバレーやめちゃいなさい。日本代表が強くならない。Jリーグは開幕当初、ビッグネームが来たおかげで得るものも多く、また世界的FWの存在が日本人DFを強くした。獲得するなら昔の女子のクロケット、ハイマンくらいの人とってきて、ですな。


この週は、ヘロヘロだった。忙しい時に限って飲み会2回もあるし。


この家飲みは居心地がいいからタクシーになる。また同方向が何人もいるからガードが緩くなってしまう。家飲みであまり経費かからないし。でもいかんな。今回遅れて行ったが、次は早めに行って電車にしよう。


土曜はゆっくり寝て、ちと買い物。本屋に行って「東芝不正会計」という本を買って、帰りスーツの量販店で不足していた紺の靴下と、やはり紺系のネクタイを2本買った。量販店でもネクタイはそう安くはなかったのだが、ポイントが貯まってた。次は夏の、色が薄めのスーツ用に淡い色のと、次の冬用に赤系かな。


昔みたいに、三ノ宮からハーバーランドまで歩きながら、目に付いたテーラーやブランド店で靴下とかネクタイを見て歩きたいもんだ。トアウエストに映画や絵の絵はがき買いに行きたい。でもすぐ疲れるからなあ。トシです。


次の日曜日の朝が早いから、バタバタと寝る。で、翌日6時前に起きて出かける。寒い。万博公園まで、南茨木でモノレール、万博公園で東口行きに乗り換え。「東芝不正会計」を読みながら。


公園はポカポカと暖かく、つつがなくイベント視察終了。この日妻子は1ヶ月ほど家に居た義母を送り届けに行く。ちょっと寂しくなった。


で、帰って来て、息子がキャッチボールしたくなったというので久々に行く。肩が痛くならない投げ方をした。途中からソフトバレーボール。空気が抜け気味で、変化しやすくて2人ともなかなか取れなかった。


1時間ほど遊んでクッキーだけ連れて散歩。息子はスクーター遊び。レオンはあまり散歩行きたがらない。やっぱクッキーは遅い。低い位置の満月が、大きく見える。夕闇の街を見たくなり、高台で見下ろせるとこに行って薄暮の夜景を眺めた。終わりの方は息子と別行動で、鍵は私しか持ってないので、息子はずっと待ってたそうだ。事故にでも遭ったのかと思ったらしい。おや心配してくれんの、と言ったら、いなくなったらお金に困るから、だって。


夜はWBC。かー、強いオランダ。すごい緊張感。常に日本先行の形だったが、打ったら同じだけ打ち返されるイメージで、9回、ついに追いつかれ、6611回からタイブレーク。プロで見るのは初めてだ。日本は先に2点とってウラを牧田が抑え勝ち!殊勲は5打点でタイブレークも勝越しタイムリーを放った中田翔。きょうは筒香が打てなかった分埋めてくれた。


は、いいが、試合が終わったのが24時。これは私の行動に非常に制限をかけるもの。いい試合すぎて他のことが出来なかった。


最近なぜかバタバタしていて片付かない事が多い。気がつくと深夜。なぜか。なぜなのかな。今度考えてみよ。

2017年3月5日日曜日

本読みの行動初級編





前回書いたように、少々疲労を覚えたこともあり、読む本が減ってきたこともあり、三ノ宮へ購入の旅に出た。


まずはブックオフ。相変わらず目当ての作品はなかなか見当たらない。このへんある時は当たりまくるのだが、最近そうでもないな。べったりは見なかったがちょっとウロウロして、こんなラインナップとなった。


飛鳥井千砂「はるがいったら」

ウィリアム・ゴールディング「蠅の王」

高橋克彦「ジャーニー・ボーイ」

谷川流「涼宮ハルヒの憂鬱」

豊島ミホ「ぽろぽろドール」

初野清「退出ゲーム」

花村萬月「月の光(ルナティック)」


飛鳥井千砂は直木賞候補にも上がり、ちょっと気になっていた。最初に認められた作品らしく、興味深い。


「蝿の王」最近ノーベル賞ものに関心が向いてて、これもノーベル賞作家の代表作。ボロかったが、あるだけマシだ。「イワン・デニーソヴィチの一日」などすぐ入手できるものもあるが、一般的にノーベル賞ものはブックオフでは目につかない場合が多い。


「ジャーニー・ボーイ」確か去年秋の新刊。興味を持ってたんで、少し高めの設定だったが、新刊を割引で買ったと思って購入。イザベラ・バードの北海道探検歴史もの。題材が面白そう。


「涼宮ハルヒ」まあ、第2作めの「溜息」を先に読んで、あまり深いものは感じなかったが、シリーズデビュー作は読んどこうと。


「ぽろぽろドール」こないだデビュー作の「青空チェリー」を読んだ。最近けっこう取り上げられてるみたいだし、その後は、てな感じで。


「退出ゲーム」最近の新刊案内で「惑星カロン」というハルチカシリーズ2作めが出て、宇宙好きの私はタイトルに惹かれたのだが、シリーズの1作め読んどこうと買った。


花村萬月、どこかの本で、ロードノベルの傑作を書いた、と名前が挙がっていた。目当ての作品ではなかったが、まあ100円コーナーにきれいな状態であったから。


てな感じで7冊買って、新刊も欲しかったからとなりのジュンク堂へ行った。ノーベル賞ものがけっこうある、ハヤカワepi文庫で、


オルハン・パムク「私の名は赤」


を発見。現代ものの「雪」にしようか迷ったが、この作品が先に激賞されたようなので上下2冊とも買った。シャーロッキアンものも見かけたが、次の機会にする。さすがに全部はつきあえない。


電車バスでと思って持ってった長野まゆみ「夜間飛行」と合わせて10冊抱えて、クリーニングに出しておいた夏用ズボンを引き取って帰る。ライトダウンもやめて、春秋用のブルゾンを着ていったが、寒くない。気候は春、山道を文庫本10冊持つと汗が出た。(笑)


順調に読み進めば来月早々にはまた枯渇するだろう。でもしばらくはいらんな。あと新刊数冊くらいしか(笑)。本読みは、こんなもんだ。


2月書評の3





たまの東京出張は久々に日の出に出た。早めの行動だったが、神戸のトンネルで煙が出て(後に水蒸気と判明)、新幹線のダイヤ乱れるわ、予定外にバタバタするわでキュウキュウ感があった。翌日、そのまた翌日とめいっぱい感ありで、土曜日に体調を崩したのは金曜日の酒だけが原因ではないと思う。まあ1日で治ったけど。やっぱ頑丈だな、わし。

さて、2月は12作品12冊。ホームズあり、女子系あり、児童小説あり、ノーベル賞あり仕事本あり芥川賞あってさらにビブリア完結編と、バラエティに富んでいた。月が長い感覚もあったな。昨年はほとんど読めなかったが、安定感が戻って来た。

池澤夏樹「南の島のティオ」


児童文学。ミクロネシアの島を舞台に、ファンタジーのような、少し不思議な話が10篇。いい雰囲気の本だと思った。


ティオは父の経営する、南の島のホテルの男の子。かつては日本軍も来た島だった。ティオと父は、見た人は絶対観光に来るから、という絵はがき作りの男に、ホテルの絵はがきを作らないか、と持ちかけられる。(「絵はがき屋さん」)


不思議な絵はがき作りの男、アスファルト舗装をした十字路に穴が空くというミステリーめいた話、不思議な女の子の話、神の使いのようなお婆さんが出て来る話、悲恋の話がなど、不思議な雰囲気のストーリーが詰め込んである。


話は、ミクロネシアのある島で、作者が本当に島の少年から聞き込んだものらしい。


それぞれの話は、不思議だけれどあまり捻りはなく、島を訪れ、魅せられて帰る人たち、また島の置かれた環境や歴史、その雰囲気を、すいも甘いもうまく脚色している。


さる先輩に、一番好きな作家を聞いたら池澤夏樹、と言われたので、目についたのを1冊買って来た。これが初めての児童小説とのことなので、次は大人の話を読んでみたいな。


川村眞一「現代の実践的内部監査」


自己啓発。さすがに日にちがかかった。


神田秀樹「会社法入門新版」


ここのところ、勉強が多いのでその流れに乗って通読。会社法の変遷を取り扱っている。こちらのレベルが足りてないのかもだが、平易めの書き方にしては、なんかもひとつかな、だった。


もともと2005年に新しい会社法が制定された際に出版され、最近の一部改正、またコーポレートガバナンス・コードに対応している。ここのところ、金融商品取引法とともに、注目されており、その制定改正は、世界の流れと日本の証券市場と切り離せない。


株式会社の機関、資金調達、設立、再編、事業再生等について述べてあり、最新の判例も盛り込まれている。まあ勉強の一環。


三上延「ビブリア古書堂の事件手帖7

                〜栞子さんと果てない舞台〜」


ついに完結。やっと出た最終巻はシェイクスピア。白眉の大団円と言っていいだろう。パチパチ。面白かった。


ビブリア古書堂の若き店主、篠川栞子は、恋人にして店員の五浦大輔が大けがをした事件に絡み、太宰治の初版本を入手すべく業者に連絡を取ったが、現れたのは悪徳にして古書に執着を抱いていた久我山尚大の弟子、吉原だった。吉原は法外な金額を提示し呑ませた後、礼だと言って古いシェイクスピアの訳本を差し出す。


長きに渡って続いて来た超ヒット作、本好きの友のようなシリーズも本編はこれで完結。それにしても「次の巻で完結」と予告してから長かったな。


今回は・・ケタ違いの超高額な稀覯本が焦点だ。このシリーズは中だるみしたかな、と感じた際にも、先に手を打つように、江戸川乱歩や手塚治虫といった、興味を引く題材を持って来ていたが、最後も大いに気になるテーマ。それにしても、最後にして、絵画ミステリーみたい(笑)。


シャーロック・ホームズもシェイクスピアを多用していたし、今回また興味が刺激され、読みたくなった。


最終巻は、なにせ終わりをつけなければならないのて、一般的にどこか強引なもので、今回もそれが見え隠れする。また人物造形も動機も、ちょっと大げさな部分もあるが、シリーズ全体を完結するミステリーとして鮮やかだったと思うし、少々ホームズ的でもあったかな。


まあ、好きに書かせてもらえば、ネタはブルーピカソとか8枚目のひまわりで、謎はフランシス・カーファックス姫の失踪」だな。


アニメ化・実写映画化されるそうだし、今後はスピンオフ小説も考えているそうなので、何かと楽しみだ。


2月書評の2




2回くらい前に書いた神戸の店の明石焼き。私の記事にしては反響があった。ここに行って呑んだくれてるのが好きだった・・。明石焼きには赤ワインが合うんだぜ〜。

豊島ミホ「青空チェリー」


ふうむ。エッセイ「底辺女子高生」などの豊島ミホのデビュー作。作家の特徴は色々あるものだと思う。なかなか面白い。次は「檸檬のころ」を読もう。


首都の大学に通う21歳の麻美は、交際している教授に、新幹線の切符を渡され、夏の間四国の実家に帰るよう言い渡される。日本は戦争をしていた。田舎に帰った麻美は、幼なじみの映二と付き合うようになる。(「ハニィ、空が灼けているよ」)


正直言って、最初の作品はもひとつ分からず、「女による女のためのR-18文学賞」読者賞だったという短編の表題作は、うーむ、という気になった。最後の「誓いじゃないけど僕は思った」で初めて、この作家の良さを認識し、すると前2作もちょっと見えてきた。


豊島ミホの特徴をひと言で言うと、「空気感」だと思う。早稲田大在学中に書いたという本作は、設定や会話が若かったり、エロだったり、主人公の女の子が、可憐と言うよりはちょっと不思議ちゃんだったりするのだが、風景、光景、それに絡む思い出、などの部分で作る空気感は、独特の、みずみずしいものがある。


「誓い」にはミョーに共感しちゃったし。男のこの部分を共感させるこの女性作家ってなんなのよ、とか思った。


感覚というと簡単だけれど、言葉、文章、物語の感覚は本当に千差万別だ。豊島ミホは、前の作品の、新海誠のように、緻密に計算してないようにも思える。もう少し読みたい、と思った。


アレクサンドル・イサーエヴィチ・ソルジェニーツィン

「イワン・デニーソヴィチの一日」


再びノーベル賞。壮絶で文学的な作品。ソ連時代の収容所生活。色々な意味で、時代と歴史を感じる。


元農民のイワン(シューホフ)は、第二次大戦中ドイツ軍の捕虜となり脱走して友軍に戻ったところをスパイ罪で捕らえられ、すでに酷寒の収容所で8年を暮らしている。過酷な収容所生活を上手く立ち回って生き抜く、シューホフの「幸福な」一日とは。


早朝5時起床、薄い粥や野菜スープを食べるだけで、酷寒の中厳しい労働を強いられる囚人たち。様々な出身の者がいて、少しでも得をするよう知恵を使って立ち回る。厳しい規則はあるが、どこでどのように反抗すれば許されるか、まで微に入り細に入り描いてある。


そこにはある種の明るさとたくましさがあり、語り口も淡々としている。長い刑期のため、家族とも離れて、自分とは、というところにまでほんのりと迫る。


なるほど、これは文学的だ。世界的ベストセラーだとか。なんか納得。


ソルジェニーツィンはソ連の作家で、軍に居たとき、手紙でスターリン批判をしてしまい、カザブスタンの政治犯収容所などで8年を過ごした。その体験をベースとしたこの物語が出版されたのは1962年。スターリン批判をしたフルシチョフ首相らの尽力で出版されると国内外に反響を巻き起こした、ということだ。


フルシチョフが失脚するとまたソルジェニーツィンは不遇となる。そりゃそうだろうな。当時のソ連に居て、ここまで赤裸々なことを書いた日には。1970年にノーベル賞を受賞したが、授賞式には実質的に出ることが出来ず、メッセージを寄せただけだったとか。そして、1974年には国外追放となってしまう。


読んでて日本軍のイギリスの捕虜生活を描いた「アーロン収容所」を思い出した。もちろん残酷な部分もあるのだが、知恵を使って食料品や酒を盗み出す捕虜たちのたくましさが書いてある。


抑制された文章で、武骨に綴る生活と想い。うーん、軽々に言ってはいけないかも知れないが、良いものに触れた、と思う。


1972年の訳だが、解説や言葉遣いにも時代が見える一方、やはり新訳した方が、と思う部分もあった。


原田マハ

「モネのあしあと 私の印象派鑑賞術」


雪がしんしんと降る夜は、夜ふかししたくなる。「ジヴェルニーの食卓」を書いた原田マハがモネの絵を紹介し背景を説明したもの。モネ愛に溢れている。やっぱ活き活きしてるな。


パリで生まれたモネが活躍した時代背景、印象派の新しい潮流、モネが描いた環境と人生などを追い、最後のほうにフランスでのモネに絡んだ観光の仕方、国内でモネ作品を置いている美術館などが紹介されている。


原田マハはもと美術館に勤めていて、キュレーターも経験した異色の作家。「楽園のカンヴァス」をはじめとして彼女の美術ものの作品はとてもいいと思う。今回は、昨年日本を巡回した、マルモッタン・モネ美術館の作品展の際の講演をまとめたものである。


私は印象派はちょっと斜めから見てしまうたちで、モネの作品はかつて神戸でも大原美術館でもだいぶ見たからいいや、人多いだろうし、とこの展覧会をスルーしてしまったが、この本を読んで、行っときゃよかったと後悔している(笑)。


自然を愛したモネ、庭を愛し、喜びあふれる絵を生み出したモネ。私も好きだ。いい本だった。絵が白黒でなく全部カラーだったらもっと良かった。


もう1回、パリ行きたい!


安部公房「壁」


うーん、「壁」が大きなテーマになってるようではあるが・・。大半は分からない(笑)。昭和26年の芥川賞。


ある日、「ぼく」が目覚めてみると、胸のあたりに異常を感じる。「ぼく」は自分の名前をどうしても思い出せず、身分証などを見ても名前は消えていた。オフィスに出勤してみると、席では自分に似た、ぼくの「名刺」が仕事をしていた。(「S・カルマ氏の犯罪」)


安部公房は、幻想文学、という定評があるらしいが、この作品は、確かに幻想的な部分もあるが、なんかシニカルで、暗喩的で、どこか星新一的、またハルキ的なものも感じる。このあとぼくは、胸に風景や動物を盗むとして裁判を受けたり、身に付けるものや文房具の反乱に遭ったりする。うーん、理解しようとするのは間違いかも。


この本には、先に挙げたもののほか、「バベルの塔の狸」「赤い繭」と、ざっくりと3つの全く違う話が収録されている。どれかというと、2話めは分かりやすい。3話めはちょい江戸川乱歩が入っている。


安部公房は、三島由紀夫らとともに戦後派として活躍し、「砂の女」などが海外でも評価され、1968年にはフランスの最優秀外国文学賞を受賞したりしている。私は「砂の女」を読んだが、昆虫好きな一介の教師が、不可思議な世界に入り込むというストーリーで、大きく暗澹としたものを感じた。「燃え尽きた地図」はアメリカで評価されたそうである。


まあ、文学に対する理解の一助にはなったかな。かな?




豊島ミホ「青空チェリー」


ふうむ。エッセイ「底辺女子高生」などの豊島ミホのデビュー作。作家の特徴は色々あるものだと思う。なかなか面白い。次は「檸檬のころ」を読もう。


首都の大学に通う21歳の麻美は、交際している教授に、新幹線の切符を渡され、夏の間四国の実家に帰るよう言い渡される。日本は戦争をしていた。田舎に帰った麻美は、幼なじみの映二と付き合うようになる。(「ハニィ、空が灼けているよ」)


正直言って、最初の作品はもひとつ分からず、「女による女のためのR-18文学賞」読者賞だったという短編の表題作は、うーむ、という気になった。最後の「誓いじゃないけど僕は思った」で初めて、この作家の良さを認識し、すると前2作もちょっと見えてきた。


豊島ミホの特徴をひと言で言うと、「空気感」だと思う。早稲田大在学中に書いたという本作は、設定や会話が若かったり、エロだったり、主人公の女の子が、可憐と言うよりはちょっと不思議ちゃんだったりするのだが、風景、光景、それに絡む思い出、などの部分で作る空気感は、独特の、みずみずしいものがある。


「誓い」にはミョーに共感しちゃったし。男のこの部分を共感させるこの女性作家ってなんなのよ、とか思った。


感覚というと簡単だけれど、言葉、文章、物語の感覚は本当に千差万別だ。豊島ミホは、前の作品の、新海誠のように、緻密に計算してないようにも思える。もう少し読みたい、と思った。


アレクサンドル・イサーエヴィチ・ソルジェニーツィン

「イワン・デニーソヴィチの一日」


再びノーベル賞。壮絶で文学的な作品。ソ連時代の収容所生活。色々な意味で、時代と歴史を感じる。


元農民のイワン(シューホフ)は、第二次大戦中ドイツ軍の捕虜となり脱走して友軍に戻ったところをスパイ罪で捕らえられ、すでに酷寒の収容所で8年を暮らしている。過酷な収容所生活を上手く立ち回って生き抜く、シューホフの「幸福な」一日とは。


早朝5時起床、薄い粥や野菜スープを食べるだけで、酷寒の中厳しい労働を強いられる囚人たち。様々な出身の者がいて、少しでも得をするよう知恵を使って立ち回る。厳しい規則はあるが、どこでどのように反抗すれば許されるか、まで微に入り細に入り描いてある。


そこにはある種の明るさとたくましさがあり、語り口も淡々としている。長い刑期のため、家族とも離れて、自分とは、というところにまでほんのりと迫る。


なるほど、これは文学的だ。世界的ベストセラーだとか。なんか納得。


ソルジェニーツィンはソ連の作家で、軍に居たとき、手紙でスターリン批判をしてしまい、カザブスタンの政治犯収容所などで8年を過ごした。その体験をベースとしたこの物語が出版されたのは1962年。スターリン批判をしたフルシチョフ首相らの尽力で出版されると国内外に反響を巻き起こした、ということだ。


フルシチョフが失脚するとまたソルジェニーツィンは不遇となる。そりゃそうだろうな。当時のソ連に居て、ここまで赤裸々なことを書いた日には。1970年にノーベル賞を受賞したが、授賞式には実質的に出ることが出来ず、メッセージを寄せただけだったとか。そして、1974年には国外追放となってしまう。


読んでて日本軍のイギリスの捕虜生活を描いた「アーロン収容所」を思い出した。もちろん残酷な部分もあるのだが、知恵を使って食料品や酒を盗み出す捕虜たちのたくましさが書いてある。


抑制された文章で、武骨に綴る生活と想い。うーん、軽々に言ってはいけないかも知れないが、良いものに触れた、と思う。


1972年の訳だが、解説や言葉遣いにも時代が見える一方、やはり新訳した方が、と思う部分もあった。


原田マハ

「モネのあしあと 私の印象派鑑賞術」


雪がしんしんと降る夜は、夜ふかししたくなる。「ジヴェルニーの食卓」を書いた原田マハがモネの絵を紹介し背景を説明したもの。モネ愛に溢れている。やっぱ活き活きしてるな。


パリで生まれたモネが活躍した時代背景、印象派の新しい潮流、モネが描いた環境と人生などを追い、最後のほうにフランスでのモネに絡んだ観光の仕方、国内でモネ作品を置いている美術館などが紹介されている。


原田マハはもと美術館に勤めていて、キュレーターも経験した異色の作家。「楽園のカンヴァス」をはじめとして彼女の美術ものの作品はとてもいいと思う。今回は、昨年日本を巡回した、マルモッタン・モネ美術館の作品展の際の講演をまとめたものである。


私は印象派はちょっと斜めから見てしまうたちで、モネの作品はかつて神戸でも大原美術館でもだいぶ見たからいいや、人多いだろうし、とこの展覧会をスルーしてしまったが、この本を読んで、行っときゃよかったと後悔している(笑)。


自然を愛したモネ、庭を愛し、喜びあふれる絵を生み出したモネ。私も好きだ。いい本だった。絵が白黒でなく全部カラーだったらもっと良かった。


もう1回、パリ行きたい!


安部公房「壁」


うーん、「壁」が大きなテーマになってるようではあるが・・。大半は分からない(笑)。昭和26年の芥川賞。


ある日、「ぼく」が目覚めてみると、胸のあたりに異常を感じる。「ぼく」は自分の名前をどうしても思い出せず、身分証などを見ても名前は消えていた。オフィスに出勤してみると、席では自分に似た、ぼくの「名刺」が仕事をしていた。(「S・カルマ氏の犯罪」)


安部公房は、幻想文学、という定評があるらしいが、この作品は、確かに幻想的な部分もあるが、なんかシニカルで、暗喩的で、どこか星新一的、またハルキ的なものも感じる。このあとぼくは、胸に風景や動物を盗むとして裁判を受けたり、身に付けるものや文房具の反乱に遭ったりする。うーん、理解しようとするのは間違いかも。


この本には、先に挙げたもののほか、「バベルの塔の狸」「赤い繭」と、ざっくりと3つの全く違う話が収録されている。どれかというと、2話めは分かりやすい。3話めはちょい江戸川乱歩が入っている。


安部公房は、三島由紀夫らとともに戦後派として活躍し、「砂の女」などが海外でも評価され、1968年にはフランスの最優秀外国文学賞を受賞したりしている。私は「砂の女」を読んだが、昆虫好きな一介の教師が、不可思議な世界に入り込むというストーリーで、大きく暗澹としたものを感じた。「燃え尽きた地図」はアメリカで評価されたそうである。


まあ、文学に対する理解の一助にはなったかな。かな?


2月書評の1





2月書評、ちょっと遅くなった。さて、長年使って来たT-Falくんが、ヒビが入って水漏れするようになったので、デロンギさんへモデルチェンジ。いつだって、前の方が使いやすく安全に思えるものだが・・まずはフタに気を付けよう。ではレッツスタート!

高殿円

「シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱」


「阿蘭陀西鶴」を買いに行ったら書店に平積みされていたから即購入。ネコにまたたび、私にホームズ。シャーロッキアン的で、ラノベで、エキセントリック。面白かった!


2012年、アフガニスタンから帰還した女性軍医、ジョー・ワトスンはロンドンの聖バーソロミュー病院で、女性顧問探偵、シャーリー・ホームズと出逢う。ベイカー街で共に暮らす事になった2人は、ロンドン市内で、女性連続殺人の捜査へと向かう。


シャーロック・ホームズとジョン・ワトスンは、第1作の長編「緋色の研究」において聖バーソロミュー病院で出逢い、ルームメイトとなった。


この作品は、かなり現代的でマンガチックではあるが、原典に忠実で、また、ほぼ全て男女をひっくり返している。登場人物の名前もなかなかだ。


ホームズとワトスンを引き合わせたのは、原典に忠実にスタンフォードとなってるし、スコットランドヤードのレストレード警部、イギリス政府に大きな影響力を持つ姉、さらに2人が取り組む事件には「緋色の研究」事件の関係者の名前が並ぶ。ホープ、ドレッパー、スタンガスン・・。


住まいには人工知能のハドスン夫人が居るし(ハドスンさんの性別が同じなのはちょっとホッとする)、ワトスンが戦地で負傷し、孤独をかこっているのも味がある。そして宿敵モリアーティ教授も女性、ホームズのモデルになったというベル教授も出演する。


周囲の人々や環境は、かなり先鋭的で、物語の展開も早く、ああラノベ〜って感じがするけど、楽しいお気楽な読み物で、好感が持てる。


続編必須の終わり方。日本人のシャーロッキアンものは、相変わらずかゆいところに手が届く作り方。先が楽しみだ。


紅玉いづき「毒吐姫と星の石」


「ミミズクと夜の王」の続編。王国のファンタジー。おとぎ話なストーリーだけど、どこか感じるところがある。あっという間に読了。今回、ちょっと考えちゃった。


占いが重視される国、ディオンの姫として生まれたが、凶兆のため、赤ん坊の時に捨てられたエルザ。成長して口の悪い少女となった彼女は、突然、占者(占い師)たちに囚われ、同盟国レッドアークの王子の妃として、送り込まれる。


今回もなかなかそれなりに面白くて、さらさら読んだ。おとぎ話ベースで、ちょっとだけ飽きた感も正直あったけど、この作家の語りは、意外に繊細だと思う。


キーとなる微妙な色の演出が心に響く。登場人物たちが活き活きと動き回る。


物語の発想は、本来自由であって、現在隆盛を極めているファンタジーSFのジャンルにおいても、私がよく読む児童小説やラノベでも、のびのびと発揮されている。もちろん技術というのはあるもので、あまりに都合が良かったり、幼い子供の心理を創造しすぎ、とかが見えるとしらけたりするのだが、基本は制約が無いのは面白い。


もちろん小説にはたくさんのジャンルがあるわけだが、大人向けの大衆小説やミステリーになると、そこにはたくさんの制約が付く。本来の社会で起き得ることだけ、現実の中で紡がれた、面白く、特徴があり、感動できる物語は、やはり美しく、実感がある。


最近は、自由な発想の作品は、大人の大衆小説その他を読む目を養ってくれるような気がしている。文章であり、表現であり、文章をつないだ構成があることには変わりがない。現実の制約がある話でも、かなり突飛な設定は多いし、意外に、両者には境目はない。


まぁ要は、これからも児童小説やファンタジーも読もうということです。はい。


白石一文「彼が通る不思議なコースを私も」


相変わらず色がある。が、ちと不思議かな今回。似たような話を読んだ記憶も・・


大手家電メーカーに勤める霧子は、友人、みずほが恋人の吉井に別れ話をする場に立ち会う。吉井は逆上してビルの屋上から飛び降りてしまうが、その直前、下に居た霧子は死神のような男、林太郎と出逢う。


白石一文は、平凡な設定を掘り下げていくという特徴があると思っている。また、こと恋愛に関しては、人が思うのと逆方向の結果になったり、またしばしば社会問題を正面から扱う。今回はそれに、ファンタジーめいた味が加わっている。


林太郎と霧子の現実は、だんだん突飛な方向へ動いていく、気がする。ちょっとハデかな、とも思う。


そんな作品だ。


名作といっていいだろう「私という運命について」を読んだ女子たちが軒並み影響を受ける、というのを目の当たりにしたので女性受けのいい恋愛もの作家さん、というイメージを持っていた。しかし後にハードなものも書く人、ということが分かった。


今回の話は不思議で、ヒーローもののような流れもあるので、いかにも物語、という見方も出来るが、男女をていねいに描いている部分や、なんというか、行間には、独特の色がある。


ふうむ、やはり、もう少し読みたいと思わせる筆致の持ち主のようだ。


新海誠「小説 言の葉の庭」


作者は、そう、「君の名は」の監督さん。別のアニメーション作品のノベライズ。万葉集が良い味付けの、美しいストーリーだ。


15歳の孝雄は、雨の日は高校をサボり、新宿の近くの庭園で過ごすことが多かった。ある日、いつもの庭園の東屋で、孝雄はスーツを着てビールを飲んでいる女性、雪野と出逢う。


手法は一時期流行った、章ごとに主人公の変わる方式。孝雄と雪野を軸に、孝雄の兄・翔太、雪野の同僚教師・伊藤、雪野と伊藤の教え子・相澤翔子、孝雄と翔太の母らの目線から物語を展開している。


孝雄がまっすぐさ、雪野に何があったか、などをみずみずしく、また痛々しく表現している。人間臭さと同時に、大都会と対照的な、キーポイントとなる雨の庭園の美しさ、不思議さと深さを与える万葉集の数々の歌、いくつかの暗合で、物語を上手にきれいに織り成している。


劇中に出てくる井上靖の「額田王」は私もかつて感銘を受けた作品で、どこか共鳴した。46分ほどのアニメーション映画は、孝雄と雪野に絞られた話だそうだが、今回は映画では語られなかった人物をじっくり描いているらしい。


ノリにのってる人の作品は、やはり当意即妙さがかなりあって、噛み合わせがいい。手法はまあ以前よく見たものだし、どこか物足りない感がないこともないが、興味深く読めた。