2016年11月27日日曜日

消沈TOKIO





金曜の東京日帰り出張を友人宅泊りにして、東京で遊んで帰ってきた。感想は、散財したなあ、である。なんというか、遊んだ後に、金勘定することはままあるし、それをするなら遊ぶなよ、と自分でも思うが、いろんなことを含めて、もっとスマートに出来たよな、と思う。

かなり落ち込み、いまも引きずっていることはあるのだが、もう書きたくない。別に怪我したとか誰か傷つけたりしたわけではない。 ただほんのちょっとの事で、痛いお勉強代を支払った。くそー。

行きの新幹線で、これまででもナンバーワンクラスにきれいな富士山が見えた。仕事は順調に終わった。

夜は、想い出の店巡り。中目黒に海南チキンライス食べに行った。2軒目はシェリー酒のバー。ここに中目黒在住の友人が来てもう1軒歩いて恵比寿に行って、タクシーで遅く帰った。高校の同級女子が、誰でも知っている会社の取締役になっていると聞いてびっくり仰天。すごいなあ。

これも予定通りだが、友人宅で本を借りてほくほく。ここしばらく、読みたい単行本が多かったのだ。彼は土曜午前から用事で、残念ながら今回あまりゆっくり話が出来なかった。

前夜シンガポールのタイガービールとシンガポールスリングとレモンハイ、シェリーのソーダ割り2杯、ギムレットとロングのオリジナルカクテル飲んで、軽度の二日酔い。頭痛い。最近は酒量が少ないので結構こたえた。新幹線で木内昇「櫛挽道守」読了し、バスも待つことなくスムーズに帰り着く。

昼は食べずにとにかく寝た。夕方3時間ほど寝て、夜もすぐに眠くなって風呂に入らず寝る。とかく眠い。まるで起きて現実に向き合いたくないように。

雨の日曜日はママ髪チョキチョキでお出かけのため、半日息子とワンコとお留守番。携帯ゲームと読書。なかなか本は進まず。

昼はチャーハン、夜は昨日からつけておいたおでん。息子がお腹すいたと言ったので、ママ帰ってすぐにご飯。6時には食べ終わり、きょうは進行が早い我が家。いま8時半には息子風呂から上がってママはもうワンコとともに就寝、早い時間に書いている。

私もきょうは、日曜日のうちにアップして、なんとか気分を切り替えることにします。

2016年11月24日木曜日

バスカヴィル家の犬





写真は会社の近くにある、火、金曜日のみランチサービスのカレー屋さんで食べたスパイシーカレー。世界を放浪したシェフが辿り着いた1品らしい。彩りが良くてGOOD。味は・・まあまあ。

最近のこと、夜の帰り道、家の近く、公園外の街灯の下に、どうやら人らしきものが動いているのがぼんやり見えた。

次に、人の近くに大きな動物らしき影が見えた。なんじゃありゃ、人は立ったり座ったりしてる。こないだ公園外の花壇を、ミミズを探してほじくっているイノシシを見たし、前住んでいたマンションの近くでは、おそらく市に雇われた人が、棒を使って、イノシシを山の方に追い込んでいるのを見たし、そういう人が、イノシシに何かアクションをしてるのか?

なんて想像をしながら近付いたら、これが大きな黒い犬。飼い主は、身体を撫でていたのだろう。でかっと思って横を通った瞬間、「バウッ!」と吠えつかれた。

私は生まれた時から実家でずっと犬を飼ってたし、今も2頭いるしで、慣れている方である。この吠えつきも、敵意ではなく、興味を持って、でも行けなくて吠えていることも分かる。だが、久しぶりに怖いと思った。分かっていても。

あーすみません。飼い主の男性が謝る。びっくりした、なんていう種類?ニューファンドランドです。

通り過ぎてから、シャーロック・ホームズの長編に出てくる、バスカヴィル家の魔犬ぽいな、黒いし、とつい考えた。ニューファンドランドはデカいが、顔は、精悍というよりは、愛嬌のある感じだ。もともとは水難救助犬で、好んで泳ぐという。

息子はまた日曜日に高熱を発したが、月曜日学校休んだら治まったようだった。水曜日23日は勤労感謝の日。梅田のアニメイトに、「ハイキュー!」というバレーボール漫画の、バボカというカードゲーム、新シリーズを買いに行った。5セット30枚買って息子ほくほく。

帰るというので、ママに言われてたチーズケーキを買って帰る。お昼は地元の有名なサンドウィッチ屋さんに行こうと話していたが、なんとなくなっていた・・。駅前のパン屋でホカホカのカレーパンとドーナツパン、サンドウィッチを買っていると、ママが買い物がてら迎えに来てくれると。あわててクリーニング屋でYシャツを受け取り、スーパーは隣の駅なのでひと駅電車乗る。待ち時間に駅のベンチで、息子は実に美味そうにカレーパンを食べていた。

合流して帰る。帰って私は東京出張の荷物をまとめて、靴を全部磨く。はー疲れた、でバボカを息子とする。種類が増えたから楽しい。やっぱカードゲームはバラエティが無いとね。

晩ご飯は私のリクエストでトンカツ。用意が出来たところで片栗粉を忘れたママは再び買い物に。

夜はテレビ東京でカラオケバトルU-18 歌うま大会を観た。11歳初出場の女の子には本当にびっくり。ひと声だけで、透き通った、響く声にほうっとなる。また、やはり初出場の演歌女子も玄人はだしだった。他にもうまい男女がいてなかなか楽しかった。優勝は常連の2人の女の子が争った。

なんというか、カラオケの採点機能は、人間がプログラミングしているから、それと感じ方は、やはり違うなと思う。昔世界的に有名なピアノコンクールが、採点基準をクリアにしようと、コンピューターに諸要素を打ち込んで結論を待ったところ、「審査員の感じ方による」という回答が出たそうだ。逆にこの回答を出させた方々の誠実さをも感じさせる話である。

私的には、11歳の子や、演歌の女の子の個性には圧倒されたが・・ま、そんなこと言ってたら採点式のバトルは出来ないかな。

この日は、珍しく1行も本を読まなかった。2月以来だろうか。久々の出張で、車中読書が少し楽しみだ。

2016年11月21日月曜日

ちょっとお試し





友人が、福岡マラソン、4時間を切ったそうだ。なんて言うのか、サブフォー?それはいいのだが、彼は、はっきり言ってオッサン体型をしている。腹が出ている。確かに高校時代から運動能力は抜群だったが、ちょっと信じられない。

走れる人は走れる。走れない人は走れない。私のように。

運動能力は中高とバスケットをやってたから悪くないつもりだし、特に高校ではそれなりに鍛えたから、短距離中距離走くらいまでは当時も自信があった。しかし、周回コース1周を過ぎるともうムリ、となるのが通例で、冬のマラソン大会では、男子300人のうち、バスケ部は全員100番以内に入ること、という、自由がモットーの我が母校には珍しい厳としたルールを課され、90番とかでお茶を濁していた、確か。キャプテンは確か5〜10番くらい、彼も運動能力はワンランク上だった。

まあ小学校のマラソン大会も、遅くもなく早くもなくだったからねえ。  

で、ここで前フリが終って、以上のように私は長距離に向いてなく、でも最近何かやろうと思って、柔軟・開脚をしている。(笑)

最初は、8時55分までしか足が開かなかった。少しして9時になり、現状9時5分、120度を目指して鋭意努力中である。んー、いま9時1分くらいはいけてるかな。これ、膝からふとももの内側の筋を伸ばす必要は感じていたけど、そこだけでなくて、上から体重がかかる膝関節が痛かったり腰が痛かったりする。対して、股関節はまったく痛くない。姿勢の取り方も意外に難しい。

まあ続けること。少し体重減らさないかんしー。本当は週一でもいいから定期的な運動が理想なんだけどね。ジムはどうも、だし。

サッカー日本代表はホームのサウジアラビア戦で、若手を抜擢、本田、香川、岡崎をベンチに置く采配で見事勝利、オーストラリアがタイに引き分けたこともあり、首位のサウジと同勝ち点のグループ2位に浮上した。

現場、見ている者からもものすごい、祝福感がある。やっと若手が出て来て正しい競争が起きる、名前だけの選手は外して正解、というもので、珍しくセルジオ越後氏も褒めていた。

もちろん勢いは大事で、喜ばしいのも確か。しかし、残り試合はアウェーも多いし、まだまだ、これで日本のサッカーが固まったわけでもない。結果だけ見れば、オーストラリアは相手に下がられたら苦戦するようだし、これからは、状況に即応した変化、また若手と、やはりベテランの共存も求められるだろう。さらに、突破した場合、予選とはアプローチも変わって、当然メンバーも変わって当たり前。

まだまだ代表の長い旅は続くのだ。それは複雑で困難な道のりだ。

床屋のお兄ちゃんがサッカー好きで、いつも代表の話をするが、私が見てきた、98年フランスからの代表の話をしていると、我ながら年をとったなあ、と思うわー(笑)。

土曜日はクリーニングと、本屋。深緑野分「オーブランの少女」木内昇「櫛引道守」購入。深緑野分は「戦場のコックたち」が直木賞候補になった作家さん。木内昇は、得意の?幕末明治の話。正直メジャーではない(笑)賞を3つ取った作品だとか。暗そうだが、暗いだけの作家ではないのでどんなものかな。

日曜日はお仕事で万博公園。初めて太陽の塔を間近に見て、紅葉を楽しんだ。「オーブラン」読み始める。

もう次週過ぎたら12月かあ〜。

2016年11月14日月曜日

Catch a cold




海老と古座川野菜のオイルソース。よく行くイタリアン。相変わらず美味い!

月曜日、朝息子は、お腹が痛い、と学校へ行きたくなさそうだった。案の定、腹痛で早退、そのまま病院39度の熱を出した。腹痛は、便秘だという。

帰ってみると、毛布にくるまり、冷えピタをしていかにもしんどそう。9時にはベッドへ連れてった。しばらくすると寝たので、パパしばし2階にいたら、ひー、という声がした。こんなとこは幼児の頃と変わってないなと思いつつ、ともかく行ってみる。

どした?寂しかってん・・まだまだ子ども。でも具合が悪い時に弱気になるのは分かる。お腹をなでてやって寝かせ、パパも隣でもう寝た。

お腹をなでるのは儀式みたいなもので、昔こうやって手を当てると、手から微妙なパルスが出て、良くなるんだ、だから「手当て」というんだよ、とマンガで読みかじった知識を教えたら、気に入ったようで、いまだに痛みを和らげるために手を当てるのは、父子の定番だ。

夜中に2回、冷えピタとポカリを飲ませるために起きたほかは大過なく、朝の熱は、37度くらい。きょうは市の小学生がスタジアムで組体操をする日。めったにない機会でかわいそうだが、外は今年一番の寒波。仕方がないねーとお休み。

パパも休み?いやいや会社。

昼間また熱が上がったようで、夜はなんと、パパのお仕事インタビューの宿題に1時間以上つきあう。その間も体温計で何度か計っていたが、明日からは無理かなあ、寒いし、と思う。9時半に就寝。

翌朝は微熱があり、やっぱりお休み。熱は下がったようで、次の日は行く体制。やはり9時半には寝る。まあ、明日は暖かいし、ちょっと便秘が解決してなくて、だけど行けるだろう。

パパこの間、同じ時間に就寝して、朝風呂に入る。おかげて長い時間眠っている。(笑)

金曜日は学校へ出かけて行った。ぶり返さなければいいけど。ここから普通の生活、だが、薄着で過ごしたのが間違いなく原因なので、結構うるさく言う。土曜日は妻実家の日なので塾へ送って行く。途中駅前のパン屋で昼ごはん買って、西宮北口のベンチでランチ。息子カレーパンと細長いドーナツ、私はエビフィレオのハンバーガー。その後私は待ち時間にブックオフへ。軽く見るだけのつもりが、6冊。

江國香織「冷たいよるに」
梨木香歩「村田エフェンデイ滞土録」
佐伯一麦「ア・ルース・ボーイ」
紅玉いづき「毒吐姫と星の石」
H.G.ウェルズ「宇宙戦争」
魯迅「阿Q正伝」

最近は、300ページを超える本は敬遠しちゃっている。今年はこれだー!という本が無いと思っていたが、そりゃ、まあ、こんだけ、長い大河ドラマ読まなかったらそうかも知れないな、と思う。

これで、あー!深緑野分「オーブランの少女」忘れたー!とか言ってるんだから、読者自体には非常にどん欲なのは間違いないけども。この週平日は、宮下奈都「終わらない歌」紅玉いづき「ミミズクと夜の王」読了。どちらも良かったな。

本で重いバッグを抱え、晩ごはん用に、551の餃子20個と、からあげ200g、ポテトサラダ200gを買って帰る。およそ5時間お留守番のワンコたちは、ごはんもお預けとあって帰った瞬間泣き狂う。はいはいとドッグフードやって、ソファに落ち着いた。ワンコには、パパにべったりくっつくこの時間が大切なのだが、息子すぐにおなかがすいたと言い出したので、ご飯を解凍して、皿に餃子とポテサラからあげ盛って、餃子のタレ出して、食べる。からあげが小さくなくて、途中箸が止まっている気配がしたので、餃子多い?と言ったら、いや、全部食べる、とガガガーッと完食。好きなものはよく食べること。

日曜日はのんびりしてた。土曜に我孫子武丸「探偵映画」読了でこの日はフランス映画にもなった「地下鉄のザジ」。復刊するのはいいけど、新訳にして欲しい、とよく思う。こんなん古いなあ、という単語や言葉遣いそのままだ。順調で月曜にはおそらく読み終わる。

そんなこんなの1週間。夜はそこそこ寒く、昼間はかなり暖かい気候。さて、ちょっと忙しい週だ。

2016年11月7日月曜日

美術の日





いやー、メアリー・カサット展、ものすごく良かった。平安神宮近くの京都市立博物館。阪急と地下鉄乗り継いで行った甲斐あり。京都はやはり独特の雰囲気があり、ステキな街だ。

カサットは印象派がパリで活躍したころの、アメリカ人の女流画家でドガの盟友である。私はたまたま、原田マハの本で知った。母子の絵をよく描き、アメリカではかなり人気の高い画家らしい。しかし知名度は低い。

カサットの初期から晩年までの作品群と、影響を受けたという日本の浮世絵、さらに別の女流画家、マネの絵のモデルとしても有名なベルト・モリゾの作品、ドガの小品などが展示してあった。

何がと言って、おこがましいのを承知で書くが、センスがいい。全てを描くわけではないが、特に観劇をする女性、母子像、などは、手指や肩、髪の毛など、どこかポイントを決めて、リアルに、明るく描いているようだ。また衣服やリボン、アクセサリーなどがかわいい。顔もポイントを押さえていて明るく美しく、女子が描いている感がものすごく強い。色使いもハッとするセンスがあり、なかなか「ニクい」画家だ。さらに、展示されていた、歌磨呂、北斎の作品も凄く良く、ベルト・モリゾの「バラ色の服の少女」の絵、その衣服の描き方や表情に感銘を受けた。

私はすっかり感心し、どころかのぼせたようになって、2回廻って、売店で絵葉書4枚買って、さらに出入り口の売店で、展覧会の盛り上げでインタビューしていた江國香織の「日のあたる白い壁」という美術エッセイを買って、ついでにハンカチ忘れたから竹久夢二デザインのものを買った。

満足して、地下鉄東西線東山駅への途中にある洋食屋でランチ。相席になった、高そうな服を着たおじいさんが話しかけてきた。海外、おそらくイギリスに行き、全部日本語で話そうとしたら、近くにいた者が気を遣ってくれ、一流の通訳が来た。そして、誰も来ない別室が用意され、お互い忌憚なく意見を交換して友人となった。つまり、海外では日本語で通す方がいい、そしたら無料で一流の通訳のもと、で話ができ、知らない人と親友になっちゃえる、というのが一つ。さらに、イギリスは日本と違って100年単位で物事を考えるから、いま再度の日英同盟を望んでいる。それでプーチンのロシアに対抗しようとしている。ところでプーチンはシベリア鉄道を北海道まで延伸したがっているようだが、いっそのこと東京からロンドンまでリニアモーターカーで繋いでしまえば12時間で行けるから、飛行機いらなくなる、というのがもう一つ。

彼はこの話のレポートを内閣官房室宛てに書き送ったそうだ。ランチにビールを呑んでいたが、近くの家で奥さんとケンカしたらご飯作ってくれなくて1人店に来たらしい。私は、はいはいと聞いてさっさとランチを済まして店を出た。ハンバーグと魚フライとえびフライのグリルランチだった。

でもう大阪に帰ってきて、次は国立国際美術館でやっている、「ルネサンス期の巨匠たち」だ。昔はこの時代の絵なんて、宗教関連で、暗くて、好きではなかったが、5〜6年前に大橋巨泉の本で目覚めた。この時代の人たちはリアルめに上手い絵を描き、光と影が比較的はっきりしている。今回は、ティツィアーノの「受胎告知」とティントレットの「聖母被昇天」がメインだった。

メアリー・カサットも上手いとは思ったが、この時代の画家は、身に付けている布用の衣服のひだを大胆に、かつリアルに描く。そこが明らかに演出の一つだ。また髪の毛、髭なんかも上手い。

ティツィアーノの「受胎告知」はその荒っぽさ、大胆さに感心。ティントレットは職人的上手さを身に付けた人だと思った。いや、良かった。メイン2つの絵葉書買って帰る。

絵画はとてもいい。疲れた頭に新鮮な刺激を与えてくれる。今回の題材は、広がりがあって、色彩的にも目を満足させてくれた。

岩波文庫の、ハッブル「銀河の世界」を探しているが、どこにもない。もうインターネット通販かな。探しているうちに、ホームズものの新刊文庫を見つけてしまい(笑)、買わざるをえなくなる。日曜は三宮のブックオフ。紅玉いづき「ミミズクと夜の王」万城目学「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」レーモン・クノー「地下鉄のザジ」購入。

いったい本読みというものは、ああ名作系読んでないなあ、とか、同じ作家の本ばかりぐるぐると読んでるなあ、とか不毛に思い悩むものだ。私的には名作系と、今年は意図せずに児童文学とファンタジーが異様に多い。う〜〜む。

今年はまだ「来たっ」という本が無い、と言いながら本格を避けているよんな感じ。うーん、あまり長い作品は読む気がしないしなー。と不毛に(笑)悩む秋だった。

2016年11月5日土曜日

みなが知らない歌をべらべらと





「ハイキュー!」というバレーボールアニメにハマっている。10月から、3rdシーズン、県内最強豪との決勝戦が始まった。自分のバスケット部時代に想いを馳せつつ、毎週見ている。

オープニングテーマも息子と、覚えるべく大声で歌っている「ヒカリアレ」という曲で、こんなフレーズが・・

もっと眩く俺は飛べる〜♩

私は性格がスポ根でノリ易い。中高のスポーツ部活時代なら、まともに信じていたかも知れない。若い頃ならそのまま受け取っていたかも知れない。今は、この言葉を信じていいのかどうか分からない。だから、好きなのかも。

このアーチストの他の曲の歌詞もどこか共鳴するとこがあって気に入っている。

ちなみに我が家は、歌を大声で歌っても普通の家庭で、息子も私も、平気で歌う。

さて、気心の知れた先輩と、ワイン料理ともに美味しそうなイタリアンに行った。前日イノシシを仕入れたばかりだそうで、ジビエ料理に、ワイン通の先輩チョイスの、しぶい趣味の赤ワインで酔っ払い、リガットをカルボナーラトリュフのせでいただき、幸せ。たまには美味いもの食べないとね。

3日は外出せず、CSで高校野球の秋季東京大会決勝戦を観ていた。清宮幸太郎の早稲田実と日大三の対戦。強豪同士、宿命のライバルの戦いだ。東京大会は、優勝したチームのみセンバツ甲子園が当確、準優勝チームは関東地区の5校目の選考に回るから、確率が高くはなくなる。夏もそうだが、東西合わせた東京で1校、というのは夏以上の厳しさだ。

試合は接戦となった。新チーム結成間もない大会、硬さも見られたが、日大三が先制すれば、早稲田が取り返す、早稲田が3点をリードすれば、日大三は注目の大型スラッガー、金成の3ランホームランで追いつく、というかなり面白い展開。

早稲田は8回に勝負をかけ、2番手の投手に代打を送った。9回から3番手を登板させる。しかし、甲子園のかかった9回に代わった投手は制球に苦しみ、フォアボールのランナーを出したのをきっかけにピンチとを招き、金成にレフト線へ2点タイムリースリーベースを打たれてしまう。これで勝負あった、と私も思った。早稲田は継投をミスし、4打席4三振の清宮と対照的に、日大三の打線の中軸が決め手となるバッティングをした、と。

しかし、先発でずっと投げてきた日大三のサウスポー桜井も、疲れを隠せなかったのか、この回抑えれば甲子園、というのが力みになったのか、変化球のキレが悪いように思えた、と9番バッターにヒット、そして負傷交代の1番に代わって入った選手が初打席で左中間へタイムリースリーベース。これが、かなり大きかった。

3番清宮の時、ワイルドピッチで同点、清宮は5打席連続の三振に倒れたが、4番野村がライトへサヨナラ2ランホームラン。劇的な幕切れだった。4点を失ったものの、日大三のエース桜井は安定していた。しかし、最後に、歯止めがきかない状態になってしまった。継投の早稲田と、エースを9回まで引っ張った日大三。面白い対照だった。

観る方としては、とても面白い試合だった。敗れた日大三も、トップバッターに野球センスが伺え、エースと4番がしっかりしている。早稲田は明治神宮大会に優勝して、東京のセンバツ枠を増やしてやって欲しいな、などと思った。

2016年11月2日水曜日

10月書評の3




10月は12作品13冊。年間計100を突破した。まあこんなもんかな〜。ホームズもの2つも読んだな。寝やすい季節。

島本理生「シルエット」

18歳で書いたデビュー作。にしては、だから?表現が凝っている。独特のみずみずしさが胸にしみる恋愛小説。

高校生の「私」は同級生の冠くんと付き合っていたが、別れてしまった。今は大学生の恋人、大人のせっちゃんがいるが、冠くんとの恋がどんな成り行きだったか、私はたびたび思い出すー。冠くんには、一つだけ、秘密があった。


島本理生は、表題作が群像新人賞の優秀作となり、初の単行本化となった。彼女は、15歳の時に書き、文芸雑誌の年間MVPを取った「ヨル」という短編も収録されている。なにが評価されたのか、その煌めきを見たくて、読んでみた。

生の実感、心での捉え方、大人になりつつある時期の、身体での掴み方、周囲にまとう、季節感と環境の移り変わり・・表現が難しいが、そういったものが、みずみずしい、実感のある透明感のようなもの、を目の前に醸し出す。

本読みで、早くから小説を書いていただけあって、表現も凝っていて、小説らしいな、と思う。上で書いたような要素をバランスよく配していることが最大の特徴で、全体として好感が持てる。恋愛や家庭環境のパターンが似ているな、とはいつも思うけど。

島本理生は、「リトル・バイ・リトル」「ナラタージュ」「生まれる森」、そしてこの作品と読んだ。「ナラタージュ」以外は200ページくらいの薄めの本だが、私は中身もさることながら、このくらいで完結して、読み足らなさも読み飽き感もないまとめ方が気に入っている。

あとがきの「主人公と同年代の読者に届けば嬉しい」におっさんでごめんね、とかすねちゃったが、評価できる、と勝手に思ってる作家さんだ。

森見登美彦「太陽の塔」

いやま、森見登美彦らしいというか・・。日本ファンタジーノベル大賞受賞のデビュー作。

京大生の「私」はかつて付き合っていた水尾さんの行動を研究レポートにまとめるべく、彼女の住むマンション脇で帰りを待ち受けていた。するとある男が歩み寄って来て私の行動を非難する。

なんだかストーカーもののように始まった話は、京都のイケてない男子大学生たちを、その街の生活者として描写しながら、ファンタジー風味を漂わせる。主人公があくまで強気で、古風で、知的で、おもろかしい。

私は、森見登美彦は「夜は短し歩けよ乙女」「四畳半神話体系」「ペンギン・ハイウェイ」くらいしか読んでないが、「ペンギン」を除き、森見のテイストだなあ、というどこかしら特徴らしきものは感じていて、本作もそれに当てはまっている。

形としては。すぐ前に読んだ「シルエット」に似ていなくもない。なんだか、カズオ・イシグロの「日の名残り」をも彷彿させるような、物悲しい雰囲気のするラストだ。水尾さん、の扱いがまたテクニカルだ。

いやいや、ストーカーでしょ、から、最後はなんだかホロッとしてしまう不思議な一冊だった。本上まなみの解説が、かわいい。

窪美澄「よるのふくらみ」

今回、この形にした。

さて、久々の窪美澄。相変わらず息苦しさ満載の(笑)連作短編集。

保育士のみひろは、同じ商店街で育った2つ上の圭祐と暮らしている。仕事が忙しい圭祐は、みひろとなかなかセックスをしようとしない。みひろの母親は、かつて若い男と出奔し、出戻った過去があった。(「なすすべもない」)

みひろ、圭祐、そして圭祐の弟の裕太、3人の視点が次々と移り変わる6つの物語。セックスにまつわるエピソードが生々しく、また主人公たちが関わる外的な要因が、不思議な透明感で強く刺しこんでくる。今回は、幼なじみたちのラブ・アフェア。息苦しさが特徴(私はそう思っている)の作者は、やはり息苦しさで惹きつけてみせている。

エロ衝動的に始まった作品は、進むにつれて混迷し、切なくなっていく。うーん、今回世界が小さいが、村山由佳「星々の舟」と、タッチは窪美澄独特なんだけど、朝井リョウ「星やどりの声」を思い出したな。なんか。

窪美澄は「ふがいない僕は空を見た」が本屋大賞2位に入り話題を呼んだ。実際この作品は入りに驚くが、最後はジーンとさせられる。オススメである。山本周五郎賞をも受賞している。で、「晴天の迷いクジラ」で山田風太郎賞を取った。今回時間をおいて読んだが、らしさは健在で、テーマと成り行きをどこか醒めて見ながらも、なかなか夢中になって読んだ。

んー、いつも思うけど、窪美澄は、女のセックス、男の純情、だな。

ブリタニー・カヴァッラーロ
「女子高生シャーロット・ホームズの冒険」上下

いやー、子孫もしくは親族が女子、というのはこれまでもあったけど、かなりシンボリックな形ですな。日本のラノベぽいが、中身はシャーロッキアン的にもけっこう楽しめる。土日で読んでしまった。

アメリカ・コネチカット州のシェリングフォード高校には、ラグビー部の特待生で、シャーロック・ホームズの伝記を著したジョン・H・ワトスンの子孫、ジェームズ・ワトスンが在籍していた。ロンドンから転校してきた彼は、同校にいるホームズの子孫、シャーロットとの知遇を得ようとするが、彼女に付きまとっていたラグビー部員のリー・ドブソンと喧嘩になる。その数日後、ドブソンが死体となって見つかった。

物語は、あまり単純ではなく、第2第3の事件が起き、しかも、ホームズの短編3つの犯罪が模されていて、16才のシャーロットと兄のマイロのホームズ家、ワトスン家、そしてモリアーティ家が絡み合うような展開を見せる。こう描くとシャーロッキアンには夢のような展開である。

シャーロットは、もちろんシャーロックの推理法や基礎となる犯罪学を学んでいるが、その一方で麻薬に溺れ、読んでいても信用できるのかどうか分からない部分もあり、またやはりティーンエイジャーとして不安定なところもあり、ちょっと複雑だ。

シャーロットとワトスンの揺れ動く心が物語の中心にあって、丁寧に扱ってある、女子ならではのシャーロットの変わり身もいいスパイスだ。

作者はアメリカの若き研究者で女子である。やはり、イギリスやアメリカのホームズものは、独特の文化がストーリーに取り込まれていて、それは時に難解だったりするのだが、けっこう好きである。シリーズものになりそうらしく、楽しみだ。

今年は(も?)ホームズもの多いなあ。

10月書評の2




直木賞2つも読みました。なんか時代が見えるような気がした。ヤマモトのパスタはいつも絶品。


芦原すなお「青春デンデケデケデケ」

面白い小説だなあ、と思った。私が会社に入った年の直木賞作品。讃岐の高校生、1960年代末、ロックとともに過ごす青春。

香川・観音寺。高校生になる前の春休み、ぼく・藤原竹良は、ベンチャーズの「パイプライン」のイントロを聴き、衝撃を受ける。エレキギターへの思いが募っていた竹良は、高校の軽音楽部を訪ね、後の親友でギターの天才、白井に出会う。

とにかく「あの時代」のロック、一部は我々がオールディーズと呼んでいる曲が満載だ。それだけでも興味深いが、文章が軽妙で、さり気なく知的な言葉も使ってあって、単純に読んでいて楽しい。 

バンドメンバーは個性に溢れているわけではないが、それぞれに親しみを持てる顔ぶれで、周囲の登場人物もおかしく温かい。パワーのある讃岐弁もなかなかいい。ちなみに、私が手にした文庫本は、どう見ても印刷が斜めで、数行、印刷が部分的に消えてしまっているところもあった。

この作品は、1991年上半期の直木賞を、初ノミネートで受賞している。同時受賞は宮城谷昌光「夏姫春秋」、候補作に宮部みゆき「龍は眠る」が入っている。選考委員のセンセイ方は、胸に迫るものがない、と言いつつもおおむね好意的だ。

まあ一読面白いタイプの小説だが、底抜けの明るさ、青春の光、いいじゃないこういうのを佳作と呼んでも。出てきた曲を楽しく探して聴いてみようと思う。

高田崇史「QED〜flumen〜ホームズの真実」

「僕は運動のための運動はしない」
〜シャーロック・ホームズ

ホームズが言うと中年でもカッコいいけど、今の私が言っても、説得力ないな。(書評には関係ありません)

なんかないかな、と書店に行った時に、目に飛び込んできた1冊。やはり猫にまたたび、私にシャーロック。

薬剤師の棚旗奈々は、かつてのホームズに関連した事件の際知り合った友紀子と再会する。近くシャーロッキアンの教授が自らのコレクションを開陳する催しに、緑川友紀子から招かれた奈々は、以前の事件の時活躍した桑原崇とともに会場の洋館に出向いたが・・。

QEDシリーズは知ってはいたが、読んだのは初めて。今回はホームズと、源氏物語にまつわる謎が説明される。なかなか知的好奇心をくすぐられた。

証明なので、説明が長いのだが、巷間に流布する説を用いながらも、独自の視点で掘り進んでいく展開で、まずまず興味深かった。

巻末にはQEDシリーズの完全ガイドが付いていて、以前のホームズ絡みの事件はもちろん、なかなか面白そうなラインナップが並んでいる。

ホームズを日本人が書くと、痒いところに手が届きすぎるとは思っているが、今回はすっとなじんだ感じ。また探してみよう。

長野まゆみ「天体議会 プラネット・ブルー」

炸裂してますねー。この、少年たちの耽美的な世界。ひとつの独自の形だろう。ある意味素晴らしいと思う。女子の感想が聞いてみたいもんだ。

13歳の夏休み明け、銅貨は親友の水蓮とともに、学校をさぼって、行きつけの「鉱石倶楽部」という、様々な鉱石を売っている店で朝食を取る。その日の店番は、同じ学校の制服を着た、見慣れない少年だった。

長野まゆみの作品は、少女マンガのような風味で、またBLの気配を漂わせている。今回も見事なほどに、(おそらくは)美少年しか出てこない。いつもながら名前も変わっている。銅貨って、名前なんですよ。

彼は親友の水蓮や、最終学年の兄、藍生(アヲイ)に、複雑な好意を抱いており、その葛藤やエピソード、南の島に赴任している父への想いなどが、架空の未来都市とそこでの生活、出来事とともに表される。

いつもながら、難しい漢字と、言葉遣い、架空の小道具などの演出が数が多くて細かく、それが少年たちの世界によくマッチしている。今回は架空の未来の港町が舞台だが、月面からロケットを発射出来るようなテクノロジーの時代なのにもかかわらず、暖房が石炭ストーブだったり、鉱石ラジオが出て来たりと、そのミスマッチのようにも見える部分にも絶妙のバランス感覚が見て取れる。

ストーリーと、膨大な演出努力と、センス。そんなに数多く読んだわけではないけれど、この作品は、ひとつ長野まゆみが表現したい世界の代表的なものじゃないだろか、と思った。

一部の熱狂的なファンほどではないが、私もハマっている。長野まゆみ、なかなかだと思う。

車谷長吉「赤目四十八瀧心中未遂」

1998年の直木賞作品。「青春デンデケデケデケ」とは打って変わって、底辺に生きる人間の情念を描く、私小説。

「私」は大学を出て東京でサラリーマンをやっていたが身を持ち崩して転々とし、人の紹介で尼崎の料理屋に雇われる。鶏や豚牛の臓物に串を刺す仕事で、住居兼仕事場の狭いアパートには、刺青彫師や、その情婦と思われるアヤが住んでいた。

いや荒んだ話である。ひと昔まえの尼崎で、元インテリの男が、やくざな登場人物たちの中で、無気力に過ごしていく。周囲はやがて、自分たちの世界の外の人間である私を拒絶するようになる。作者の経歴を読むと、自分になぞらえているように思える。

しかし「私」の思うことや行動、来し方や成り行きは、誰しも心のどこかで抱いているような感情に通じているようにも思える。

ちょっと近代文学に回帰したような作品であり、人間とその住む世界を別の目で見て、淡々と綴っていく。物語は意外に起伏が有るのだが、ベースは変わらず、全てが説明されるのでもないから余計になにかしらの迫真性を感じる。

ちょっと時間をかけて読んだが、気骨という点で、興味深い作品ではあった。

10月書評の1




暑かったり寒かったりの10月。ある程度バリエーション豊かに読めたかな。ではレッツゴー。

村田沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」

確かに人を捉える熱は、あるようだ。一気に読んで、しばらくぶりに深夜になった。芥川賞作家の傑作。

開発途上のニュータウンに住んでいる小学4年生の谷沢結佳は、習字教室で一緒の伊吹陽太と仲良くなるが、学校では親しいところを見せたくない。ある日、立ち寄った公園で、アダルトな雑誌を目にした伊吹の恥ずかしそうな反応を見て、結佳の心にある種の快感がこみ上げる。

物語は、小学校時代から、中学生へと流れていく。自分の中学生時代を、久しぶりにじっくり思い出してみた。私は、上の階層(笑)では無かったから「幸せさん」じゃないけど、持ち前の鈍感力(笑)で、気にしてないところがあったなと思う。もちろん、子供らしい葛藤はあったし、身の置きどころを計算するのは、誰でもそうだろうと思う。

ネタバレしないように書くのは難しい。確かに小学校時代は幼く冒険的で、中学生の時は、周囲が荒れていたり、悩みをかかえたりと混沌としていて、高校になると周りが一気に大人になった感じがした。若さに幼さが混じるエネルギーが極端に出ていたのは、やっぱり中学時代だったろうか。なにかその空気感が、緻密に醸成されている。確かにあった、と思わせる様に描かれていて、読者はそのリアルさに反応しているのではないだろうか。

女子特有の世界が延々と展開されていて、男子には、なかなか分かりにくい部分である。その中で、暴走するエネルギーを秘めた主人公が残酷な現実に向き合う。ある意味大変な話で、心理的に、確かに息が詰まる感覚だ。

最初は正直ページが進まなかったのだが、中盤から後は読む手が止まらない感覚を味わい、押し切られていた。熱の高さは確かにあるし、難解でない文章で、刺激を生み出し、面白みとクセを引き出す能力に長けた作家さんと言えるだろう。暗喩と暗合も面白く効いていると思う。生々しさはともすれば行き過ぎとなるのだが、怖れない姿勢が見える。

まあ男子の目線からは、救いが用意されているところが少女マンガチックだな、でも良かったと正直思えてしまうのだが。

なるほど、女子と男子の読み方は、違うだろうな。

ニュータウンものは過去にいくつも読んだことがあり、パターンは変わらないな、ということもあるが、そこも怖れてないと思わせる。うーん、まあ、も少し読んでみよう。

久保俊治「羆撃ち」

就職の代わりに猟師になる道を選んだ作者の自伝。いやー緊張感に痺れる。怖いし。かなり面白かった。

日曜ハンターの父に育てられた作者は、地元の大学を出た後、北海道で猟師をして暮らすと決める。羆猟、シカ猟期には、雪山でのビバークも辞さず、延々と山で猟を続ける。やがて、一人前の熊猟犬を育てようと、フチという牝犬を飼う。

初めての羆猟の緊張感、その後に描かれる自然とのやりとり、執拗な追跡の後の獣との対決はリアリティにあふれ、怖いほどの北海道の自然を迫力を持って追体験させてくれる。

食料は米と調味料はあるがほぼ現地調達、寒い中雪を溶かし砂糖を加えた白湯を飲むところなんか実に美味そうだ。獲物を仕留めた後の動きも事細かに描写してあり、身体の奥にあるものを刺激する。

作者は1947年生まれだから、1960年代から山で1人で猟をしている、ということ。やがて牧場主となり、家族を持ったらしい。娘をシカ猟に同行して現地調達でメシを食い、やがて地元の放送局が興味を持って、その様子をロングランのドキュメンタリー番組にしたとのことである。

いまちょうど回顧展をしているが、私はアラスカ在住の写真家、故星野道夫さんの作品が好きで、全作品を読んだ。また、小説でも、どこか猟師ものに惹かれてしまうところがある。この作品も、羆ものの小説の解説に紹介してあったのをメモしておいて探した。

読む分にはいいけれど、色々な意味で命の危険が現実的にある北海道の山深くに入るなんて、とても怖い。だから惹きつけられるのだろうか。星野氏もよく単独行をしていた。

猟ものの作品は多くあると思うが、今回はかなりシビれる部分が多かった。また、フチとの別れには感動して泣けた。

巻末の解説は女性の方が書かれているが、女子でもこの作品、血が騒ぐ部分があるらしい。

やはり自然ものは今後も折に触れ取り入れて行きたいな。

森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」

3つの作品それぞれに、ピアノ曲が使われる。解説の角田光代さんいわくの、「魅惑的」。今回はちょっとやられた感あり。

中2のぼく、智明、ナス、じゃがまると章くんはいとこ同士。夏休み、新潟にある章くんの別荘に集まって過ごすのが毎年の楽しみだ。しかし毎年、寝る前に章くんの好きなクラシックのCDを強制的に聴かされるのが苦痛だった。ぼくは、ふとした事で、一つ年上の章くんに反感を抱く。(子供は眠るーロベルト・シューマン〈子供の情景〉より)

森絵都らしく、児童文芸である。いずれも中学生が主人公。キツい刺激や設定があるわけではない。今回は、よく似た話かな、とも思う。ちなみに2つめ、「彼女のアリア」はバッハの「ゴルトベルク変奏曲」、3つめの表題作はエリック・サティが味付けのピアノ曲。音楽好きの私は、いいかも、とチョイスした。

2つめはけっこういいけど、3つめはちょっと変わってるなあ〜、作品的にはフツウかな、とやや冷めた思いで読み進んでいたら、終わり近くで、なぜか感動した。不思議な感じ過ぎる。成長期と、あまりに短い、少年少女の1年。印象深いが、すぐに終わり、自分も周囲も変わっていく。

児童文芸の王道だが、それを、森絵都流に、テクニカルで感覚的に創った小宇宙に取り込まれた時に、やられた、と思うのかも知れない。

やばい、今年が明ける時にはもひとつかなと思っていた森絵都の存在感が、私の中で増している。

阿部智里「烏に単は似合わない」

史上最年少、20才で松本清張賞を受賞したファンタジー推理作品。書店でもけっこう目についた本。ふむふむ、てな感じだった。

「金烏」の一族を宗家とする八咫烏の世界。住人は普段は人の姿をしているが、瞬時に烏に身を変えることが出来る。宗家を支える東家、西家、南家、北家から、若宮の后候補として直系の姫が1人ずつ集うことになり、東家は兼ねてから予定されていた双葉の代わりに、箱入り娘の二の姫が登殿する。

物語は、のちに「あせび」と名付けられる東家の姫を中心に進む。各名家の、それぞれアクの強い姫とその後見人が、絢爛豪華な宮で、激しく凌ぎを削り合う。そのような中、事件が起きる。

まあ、やはり最初は想像力の限り事件と冒険が繰り広げられるものだと思っていたが・・女子色の濃い小説であり、さらに本格推理小説のような謎解きが行われる。ちょっと予想と違った。

設定が魅力的ではあるが、それを活かし切ってない気もするし、詰めや整理がもひとつ、かな。ただ、描写にも、細部にも、膨大なエネルギーを感じるのは確かだ。次作も同じ設定の続編らしいので、いずれ読んでみよう。