先日雨の日にまたひときわ濃い霧発生。もう驚かないが、山暮らしをまた実感。
さて、2月は12作品14冊。これまた2回に分けまする。ちょと数が多くなって、本の方が足りない状態だ。
藤沢周平「蝉しぐれ」
昭和63年に単行本になった作品。初藤沢周平である。おなじみの海坂藩、御家騒動の物語。剣の達人、牧文四郎がさわやかに活躍する。
もっと派手な切った張ったかと思いきや、青春、友情、初恋、道場といった要素を丁寧に描いていて、それらが作品としてのまとまりを成している。のっぴきならない状況もあるが、それは一部の話だ。ただ、どうも敵役の墓穴の掘り方が単純なような気もする。
まあ初作品としては満足、といったところだろうか。と思ったら、NHKでドラマをいまやっていた。2004年制作ものの再放送だそうだ。
石田衣良「波のうえの魔術師」
大卒無職の男が、謎の老人に見込まれ、株式投資を仕込まれた。男と老人は、巨大銀行に罠を仕掛ける。
久しぶりの、というか「池袋ウエストゲートパークしか読んでないが、ともかく久しぶりの石田衣良。男っぽく荒い文体、悪に挑んで行く直情的な姿勢などは私の知る石田衣良らしい。
少々経済向きなので実感の無い部分もあったが、スラスラ読めた。適度に、映画的。大きく深くはないがまあ面白かった。
石田衣良「4TEEN」
2003年上半期直木賞作品。14才、中学2年生の4人組、ウェルナー症候群で早老症のナオト、大食いでデカいダイ、秀才で小柄なジュン、そして普通の家庭の、普通の子、テツローが様々な体験をするストーリーだ。
4人は基本的にずっと仲がいい。自転車に乗ってどこまでも行く少年たち。やんちゃだった楽しさを思い出さずにはいられないと同時に、いずれは別れ離れてしまう切なさに想いを馳せずにはいられない。
しかしながら、出くわす日常の事件(中には本当の刑事事件もある)は、中学生にしては進みすぎてて、もうひとつシンパシーを持てないのが正直。また肝心なところで、少年たちの友情や言葉が美しすぎるので、なにか違和感を覚えてしまう。さらさらと読みやすく、少年たちの物語が溌剌と描かれて面白くはあるのだが・・という作品だった。
奥泉光「シューマンの指」
2011年本屋大賞第5位。読みたいと思っていたところ、友人が読んだー、と話が出たタイミングと文庫化された時期が一緒だったので、思わず購入した一冊。講談社創業100周年記念の小説だそうである。
耽美派、という言葉が最も当てはまるだろうか。クラシックピアノものの小説は枚挙にいとまが無いが、それにしても言葉を重ねる重ねる。表現に次ぐ表現。クラシック好きとしては、シューマンに詳しくなれて良かった。「幻想曲」や「クライスレリアーナ」が欲しくなった。
ミステリーとしては、特に目新しいものではないし、極上の演奏の持って行きどころが消化されてないような気もする。
しかし、充分に面白かったし、はまり込むことが出来た。芸術に耽溺する感覚にチャレンジしていたと思う。幻想を抱ける時点で、主人公の中に、音楽は、あったのだ。
神永学「神霊探偵八雲」シリーズ
「3.闇の先にある光」
「4.守るべき想い」
アニメにもなった神霊探偵シリーズ。正直、設定がアダルトではない気がするが、まあ微笑ましく読んでいる。
3はレイプ魔の話、4は虐待を受ける、家庭環境が複雑な子供の物語。シリーズが進んで行くに従って、本格推理ものっぽくなっていくのが面白い。神霊が先に来るイメージだが、中身は探偵ものだ、と思う。まあなんか、特に4は少々人間関係を複雑にさせすぎているような気がする。
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