1月はちょっと飛ばし過ぎたので、2回に分けて。13作品19冊。では行ってみましょう!
村上春樹「1Q84」(6)
村上春樹5年ぶりの長編小説ということで予約が殺到し、社会現象を巻き起こした話題作。すでに日本のみならず世界的ベストセラーとなっている。
鍛え上げられた女殺し屋、巨乳女子高生天才作家、そのゴーストライターと、ハルキにしては俗っぽい設定だったりする。1984年と1Q84年、という異世界、新興巨大宗教、空気さなぎやリトルピーブル、マザとドウタ、パシヴァとレシヴァといったファンタジックな要素、また資産家の老女に自衛隊上がりのプロフェッショナルなボディーガードといった魅力的な人物を登場させながら、物語は取り敢えずの1点に向かって進んで行く。
基本的には、ハルキの構造は変わっていないと思える。人生の孤独をシチュエーションとして大きく設定しつつ、孤独を支える唯一無二の愛を描き出す。その構造だけ見れば少々あざとく、今回は、大掛かりでかなりまっすぐ、大河恋愛小説のようにも見える。
登場人物が、謎に包まれて魅力的で、途中から1点に向かって進むため、次は次はと読んでしまう。そういった意味では面白い本ではあったし、二つの月、猫の町、NHK集金人謎の来訪など、神秘的かつ象徴的な描写も多く、挿入される音楽や文芸、エピソードなどもさすがというか、洗練されている。やはりハルキは、他とは違う。
Book3までで、一応ハッピーエンドとして終わっているし、このままでも芸術作品として終われるのかも知れないが、ただやはり説明していない物事が多くて、不完全燃焼である。Book4は微妙そうだが、やっぱり読んでみたい。ふかえりにも、もう一度会いたい。
総体的に、感性は刺激されるけれど、舞台装置が大袈裟過ぎて、消化不良である。俗っぽくまっすぐな筋立ても、どうも大河過ぎるなあ。大きく一部芸術的で、何でもセックス的な部分も含め、ワンパターン。評価が難しい作品だ。
村上春樹「遠い太鼓」
村上春樹が、初めて海外で長期間過ごした滞在記・旅行記エッセイ。都合3年間の、主にギリシャ、イタリアの滞在記である。この期間中に「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」といった作品を上梓している。
一般に、読書家は学生時代に強く影響を受けた作家がいると思われる。ハルキは与えた方として、特に強力なようだ。この作品は、最大のヒット作品を書いたベースの生活とその時の心持ちが紐解かれていて、ハルキストには鮮烈な印象を残したようだ。熱心に薦められたのだが、私はどうも村上春樹のエッセイは好きになれないままである。
後半のローマあたりは書きたいことがわーっと書いてあって、率直で面白かったが、前半は退屈で、なかなか進まなかった。
神永学「心霊探偵 八雲」シリーズ
「1.赤い瞳は知っている」
「2.魂をつなぐもの」
NHKでアニメ化もされた人気シリーズ。左眼の赤い瞳で霊を見ることが出来る八雲が、難事件を次々と解決する。
私の知っている推理・探偵小説とは対極を行くものである。死者の魂から辿る、というのは本来反則だ(笑)。
その台詞回しからシャーロック・ホームズの影響を受けている部分があること、また貫井徳郎「慟哭」も意識しているかもしれないこと、などを感じる。間違ってたらごめんなさいだが。
ライトノベルとしてすらすら読める。登場人物設定はまずまず面白い。また、真反対のアプローチも、なかなか新鮮だ。8巻まであるそうなのでまた読もう。「1Q84」の後なんかはこういった感じのものが読みたくなるんだよなあ。
中島京子「小さいおうち」
2010年上半期、第143回直木賞受賞作。昨年の暮れに文庫が発売されたばかりである。戦前戦中、山形から東京に出た女中・タキは、奉公先の、赤い屋根の洋館での暮らしをとても気に入っていた。しかし時代の波が忍び寄り・・というお話。
とかく暗いものと捉えられがちな戦前の暮らしや、女中奉公というものを、綿密な取材により、伸びやかに、明るく描いている。タキと奉公先の家族との日常が微笑ましい。戦前には、今あるものはすでに全てあった、とも言われ、和風モダンが花開いてしばらく経ったころでもあった。日米開戦で、世の中がぱっと明るくなった、という描写は、読む人にとってはびっくりするかも知れない。
北村薫の「ベッキーさん3部作」でも戦前の雰囲気が描かれているが、やはり戦前モダンは華やかで、そしてどこか物哀しさが漂う。今の感覚で当時の世相を見てはならない。先入観のない表現が成された作品。興味深く愛せるが、淡々とし過ぎている感もあった。まあ戦争ものは、無理に盛り上げると鼻白んでしまうのだが。
蒼井上鷹「ホームズのいない町 13のまだらな推理」
ある日、三宮に新規オープンしたブックオフに足を運んだ、が、いつも品揃えがいいはずの店に、探している本は、まるで無かった。そんなとき、本棚から私に買って欲しそう〜にしていたのがこの本である。あおい・うえたかという作家のことはまるで知らなかったが、相変わらず、私が買わなきゃ誰が買うーと購入した。この日はこれ一冊だけだった。
中身はまあ、シャロッキアンはそれなりに楽しめるようになってはいるが、結局煮えきらず。オムニバスの事件が絡み合い、最後に結末がつくようになっている。でも面白くは無かったし、話があちこちに飛び過ぎである。
高田郁「今朝の春 みおつくし料理帖 」
みおつくし料理帖シリーズ第4弾。女料理人・澪を中心に人情豊かなつる屋ファミリーが織り成す物語。今回は、やはり「寒鰆の昆布締め」が、メインであり面白い。季節も冬で、いまとマッチしている。いや美味しそう。相変わらず楽しませてくれるし、あっという間に読み切った。
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