5月は、4冊。1ヶ月5冊を目標にしているが、正直スタミナが持たなかった。順番に行こう。
北村薫「秋の花」円紫さんシリーズのひとつである。このシリーズは初めて読んだ。コミカルな中に、じわっと、女性的な抒情がにじむ。これを読んで、北村薫は女性的なのだ、と改めて思った。お馴染みの登場人物の明るいやり取りにも、漠然とした将来への不安さえ見える。文学的素養を散らした構成は、知的、物語的ベースを作り、ジャン・リュック・ゴダールの映画までも想起させる。このような雰囲気が女性受けするんだろう、と思う。
トリックは、見事だったと思う。私が思うに、良いトリックというのは、説明されてみれば、なあんだ、というくらいシンプルなものだと思う。だから、しばしば作家は、読者に考える時間を与えないよう知恵を絞るのだが(と、勝手に想像している)その部分は自然体だったように見受けられた。ただ、推理自体は充分に想像力でカバーできるものだったとしても、探偵が、ちょっとスーパーマン過ぎた気がしている。
同じく北村薫「ターン」この作家の「時と人3部作」は幾人もの方から読むよう薦められ「リセット」は読んだ、と言ったら、残りどちらから読みます?と言われた事もあった。「リセット」に比してもっと直接ファンタジー的な要素に満ちていて、こちらのベースは、見てみたい、と思わせるような版画と、初々しく切ない恋心だ。シチュエーションは違うが、何となく、恩田陸の「月の裏側」や辻村深月「冷たい校舎の時はとまる」を思わせる孤立もの。たったひとつとはいえ元の世界との繋がりか保たれている点でこれらと違う。
やはり、かなり女性的。昭和初期、戦争期、文学、絵画とベースをしっかりさせ、流れる雰囲気を作るのが北村流か。正直、平和な世の中では、ちとファンタジック過ぎる気味があるのと、後半の、正直展開とミスキャスト、シチュエーションの勘違いは、説明されても、よろしくないと思わせる。次は「スキップ」だ。
渡辺俊介「アンダースロー論」現役投手による、アンダースロー投球術の本。個人的にアンダースローには憧れがある。昔沢木耕太郎が「魔球の中の魔球、それがナックルボールだ」と書いたが、サブマリン投法という特殊な投げ方で打者を打ち取って行く姿に、特殊な感情を抱いてしまう。少年時代山田久志、足立、サイドの柳田をテレビで見て、また地元のライオンズに山下、石井という好投手がいたからだろうか。再読なのだが、変わらず楽しめた。
リチャード・コーフィールド「太陽系はここまでわかった」太陽、月、地球にその他の惑星、衛星の探査について、最初の発見からその背景、最新の現状までが書かれていて、半分はもう知っている話なのだが、本当に面白い。金星は湿潤な惑星と見られていた、とか火星には生命体があるという想像がなされていた、等々。学説も紹介されているので時間がかかった。また、読了後2〜3日の時間があったが、しばらく新しい本に入りたくなくなったのも事実。でも金環食の週から読めて、何と言うか、いい気分で読めた。
5月は、以上。次は伊坂幸太郎「砂漠」で、北村薫「スキップ」と貸してもらったハードカバー、高野和明の「ジェノサイド」が控える。まあだブックオフには行かなくて良さそうだなあ。
東京行はきょうでこのシリーズ終了。当分はなし。もう6月か。去年の今頃は単身赴任調子に乗って遊んでたな〜。もはや懐かしい。まあ、また秋には東京行は数有るだろう。やや追い掛けられる生活だったし、多少はゆっくりしよう。
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