2020年6月26日金曜日

6月書評の4




日曜日の朝からやったオンライン同窓会。なんと瞬間的に80人もの会となった。

リモートのいいところはいっぱいある。
出かけないでいい。自宅で気軽、気楽、席を外すのも簡単。そしてやはり、距離の問題を一気に解決する。

そもそも同窓会は、福岡、関西、首都圏で個別に総会を開いていた。私も関西以外は行ったことがない。まず、ここに境界がなくなった。今回は同学年総会。主要な3エリアのほか、愛知や鳥取からも参加。ふだん首都圏の飲み会には行きにくいであろう神奈川県の西寄りの人も多かった。

で、当然ながら、海外組も参加できた。アメリカ2人、タイ1人。コロナ禍の中、またそうでなくとも、なかなか帰国もままならない人たち。何も起こらなくてふつうに同窓会総会やってたら出られなかった、みなどこかで気にしつつもスルーしていた状況が劇的に変わった。

念願の同窓会、との言葉にはやりがいを感じたし、世界の変遷を実感した。

あーあ、終わった、と今はやや虚脱状態、いわゆるロス。平日も休日も空いた時間をだいぶ注ぎ込んでたし、連絡も頻繁だったからね。まあ良かった。

これからどうなってくのか。リアルの総会が行われても、同期のオンラインは維持したいかな。


◼️堀内興一「昔話 北海道 3集」


憑き物、美しさ、説話風、緊張感。胆振地方を中心にした第3集も北海道らしさを堪能できる。


2集の2年後に出ている第3集。今でこそアイヌ、北海道の民話は多く出ている印象があるが、昭和53年発行の本書は嚆矢的存在なのだろうか。反響があったように思える。今回は胆振地方、北海道を人間の首より上としたら、くいっと曲がった内側、のどぼとけとアゴの中間あたり。室蘭を中心とした地域、の話のようだ。


「アトカニ崖に現れた二つの月」

「義経の隠れ住んだ滝」

「お神酒徳利に住む中島の守護神」

「悪疾をなおす女神」

「熊が超えていった山」

「シシャモののぼる川」

「トシ坊とコロポックルの話」


7篇が収録されている。


モルエランのコタンに住む気のいい若者、カルコトルの顔に、赤いトカゲ形のあざができた。時を同じくしてコタンで食物がなくなる事件が頻発し、隣のコタンと諍いが起きる。カルコトルの妹・カナツは兄の目つきがおかしいことに気がつき、オイナ・カムイ(文化神)に相談するー。

(アトカニ崖に現れた二つの月)


なにやらホラーっぽいスタートの冒頭作。オイナ・カムイはニツネ・カムイ(魔神)の化身である偽の月を射ようとするが・・。


義経伝説はとても多い印象があるが、今回はアイヌに対し居丈高な義経がぎゃふんとなる話。平泉を経て弁慶(表記は弁景)も存命だ。


洞爺湖の中島は、第1集冒頭の話とよく似ている。登別温泉の悪疾治癒の神は醜く鈍い母キルテキから生まれた美しく働き者の娘ケトルクシ。不思議で、最後まで回収できてないところが民話らしい。


山を越える熊は天地創造の神サマイクルカムイに仕えた、プライドの高い弟子ヘペレの末路。中華古典の昔話のように説話めいている。


天上界からタンチョウヅルに姿を変え下界に降りたクヌンチが人間の男に恋をする、まさに鶴の恩返し、シシャモの川。


そして有珠山爆発という緊張感の中、少年トシ坊と理解者ケイ子の心温まる最終話。宮沢賢治風で、なんとも言えず後味が良く締まった。


北海道の自然と歴史と、民話の心地よい神話性を感じつつ、11冊読み切る読書は爽やかさをもたらしてくれる。残りの2冊はとっておいてまた来月かな。


◼️堀内興一「昔話 北海道 2集」


全てが違った、北の大地を思い出す。のびやかで大きく、ちょっと切ない民話2nd


1集の6年後に出された第2集。書き手が童話作家の森野正子さんから変わった。2段のページ構成もなくなり、気のせいか話も、阿寒湖のマリモ、などメジャーどころが入ってきたかな。第1集、売れたのではと推察される。^_^まあともかく、第5集まで長く積んでたこの薄い紙冊子、ほっとくとまた読まなくなるので、少しムチを入れることに。相変わらず楽しいぞ。


「シコツ湖のあめうお」

「西海岸のあわび」

「積丹半島の嘔吐岩」

「層雲峡のパウチ・チャシ」

「斜里の化物」

「摩周湖の中島」

「阿寒湖のマリモ」

「久蔵とコロポックル」


8編。巨大あめうおに立ち向かうは若者ポンオアイヌルシクル。「あわび」は女神カムイカッケマツとカイナとの間の、美しい愛の話。「嘔吐岩」の主役はウミヘビの化身、悪者のウエングル。カチカチ山のように民話らしく残酷。


着物仕立ての求道者パウチ、「斜里の化物」はイペランケと優しい夫、麗しいアザラシ、少し哀しいストーリー。摩周湖は義経伝説。マリモは数万年前のこと、とあるのに社会派でコミカルな語り口。そして久蔵は、明治初期、シュママップト(島松)に入植し、北海道稲作の父ともいえる実在の人物、中山久蔵にまつわる一篇だ。


かわいいマリモもアイヌの間ではトーラサンペ(湖の妖怪)と呼ばれ忌み怖れられていたんだとか。


霧の摩周湖。妻と行った時には湖面がきれいに見えて、いい思い出。前回よりも道東よりの話が多いかな。九州生まれ育ちの私、初めて北海道をゆっくり回ったのは社会人になってから。札幌や函館でなく、最初に女満別に降り立ったからか、北海道はまるで北の異国のようで、ホントに新鮮だった。ひとつひとつ読むたびにその感覚が甦ってきて、すぐにでも行きたくなる。


良き本だなあ。


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