2020年6月26日金曜日

6月書評の3






妻がお菓子を作るようになった。いまその波。とても好きなのでぜひ作って欲しい。パクッとナチュラルに普段食べ出来る生活がお気に入り。



◼️ジャック・リッチー「クライム・マシン」


ユーモア&ミステリー&ちょっとホラー。短編の才、ここに凝縮せり。楽しい。


アメリカの短編の鬼才、ジャック・リッチーの作品集。現実にあるわけないよな、と思わせたり、幻想の世界に行ったり、ヴァンパイヤまで出てきたりとまた幅広い設定で飽きさせない。書評を見かけてからチェックしていた。


殺し屋リーヴズのもとに、タイムマシンであなたの殺しを見ていた、というヘンリーが現れる。事細かで自分以外には知り得ないはずの描写を聞いて、リーヴズは口止め料を払った上にタイムマシンを買い取りたいと申し出る。ヘンリーの倉庫に行ったリーヴズはからくりを探すがー。(クライム・マシン)


丁寧に出口を封じ、オチに持っていく手際の良さにすっきりとしたものを感じる。信じさせる。社会的な「日当22セント」はラストに笑える。どんでん返しもの「エミリーがいない」、タイトルに惹かれる「切り裂きジャックの末裔」も興味深い。


ミルウォーキー署のターンバックル部長刑事がピントの外れた活躍?をする「こんな日もあるさ」、幻想的な「縛り首の木」もいいアクセント。そして4つの短編ではカーデュラという吸血鬼が夜専門の探偵をするシリーズもコミカルで面白い。テレビドラマにできそうだ。


ラストの「デブローの怪物」もクールで黒さを感じさせ、気が利いていると思う。


共通しているのはタッチがハードボイルド、ということ。殺人も多く、犯罪の緊張感がある中で、ユーモアと早く分かりやすい展開と明確で理知的なものを感じさせるオチがハマる。


実は最初の表題作は凝っててやや長いかな、とも思った。でも後に続く作品はとっとことっとこ読めてオチでキレを味わった。こんなにクリミナルではないけど、収まりの上手さにちょっとだけサキの短編を思い出したかな。



◼️「論語」


漢詩から四書五経へ。年代の古さを実感。カッコいいな、孔子。


日本の古典を読むようになって、源氏物語や枕草子が白氏文集の影響を受けていることから漢詩の本を読んでみたら、その美しさにけっこうハマった。白居易や李白、杜甫は唐代の人。で、今回から四書五経に突入してみたんだけど、孔子様は紀元前500年くらいで唐詩の彼らが活躍した時代より1200年も古い。


漢詩とは違って、今回漢文的な難しさを実感。でも言葉はカッコいいな、と。



◇子曰く、学びて時(つね)に之を習う。亦説(よろこ)ばしからずや。朋遠方より来たる有り。亦楽しからずや。人、知らずして慍(いか)らず。亦君子ならずやと。


老先生の教え。不遇の時であっても学ぶことを続け、常に復習する。それは、いつの日にか世に立つときのためである。なんと心が浮きたつではないか。

突然、友人が私を忘れずに訪ねてくれた。おう、あんなに遠いところから。なんと楽しいではないか。他人が私の才能を知らないとしても不満を抱かない。それが教養人というものではないか。


孔子が任官したのは遅く、50代。30代でおそらく私塾、学校を開き、多くの弟子を教えたが、長く不遇だった。これはその頃の言葉と思われる。孔子やその高弟の言葉をまとめた「論語」の、最初の文。



◇女君子儒と為れ、小人儒と為る無かれ


「教養人であれ、知識人に終わるなかれ」



女は「なんじ」、儒は宗教者の集団。孔子はさかんに知識だけでなく道徳を身につけよ、と強調している。詩書礼楽、詩書を学んで礼法を身につけ、音楽の調和に従って均衡のとれたありかたを養う。


昔読んだ探偵小説で探偵が事件担当の警部を評した言葉を思い出す。

「もっとも扱いにくいのは、小才のある馬鹿だ。」


雑学、浅い知識好きな私には痛いし、心しておく言葉ですな。


50代で魯国の高官となった孔子は、道徳に重きを置いた政策を実施、国力は上がった。しかし水清ければ魚棲まず、のたとえではないが、道徳的すぎて、窮屈感が出てきたところへ、国力を殺ごうとライバルの斉が喜び組ならぬ美女歌舞団を送り込んできた。執政の季桓子が美女に溺れ3日間政庁へ来ず、孔子は絶望、辞職する。

 

◇子曰く、学びて思わざれば則ち罔(くら)し。思いて学ばざれば則ち殆(あやう)うし


知識や情報をたくさん得ても思考しなければ、どう活かせばいいのか分からない。逆に思考するばかりで知識や情報がなければ、独善的になってしまう。



バランスが大事ということね。



◇子曰く、知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼れず。


賢人は迷わない。人格者は心静かである。勇者は恐れない。


ともに流浪の旅をした顔淵、子貢、子路といった弟子たちのことを言っている。弟子たちとの旅は充実していたとか。うーん言葉がカッコいい!


◇吾日に吾が身を三省す


私は毎日いろいろと反省する。


三省は三回ではなく何度も。これは習って、ずっと覚えていた。なんか口になじむんだよねー。


◇子曰く、君子は和して同ぜず。小人は同じて和せず。


教養人は、和合はするが雷同はしない。知識人は雷同はするが和合はしない。


聞いたことある。改めて読むとちょっと感じるところはあったかな。ソフトバンクホークスの王さんは子供のころ父親さんに「友だちを大事にしろ、でも意見は言わなくてはいけない」と諭されていたとか。ちょっと違うかな^_^


◇義を見て為さざるは勇なきなり


正しいものと分かっておりながら、実行しないのは勇気がないからである。


これも有名ではあるが、うーん、善悪の話だけではない気がする。



温故知新、巧言令色鮮なし仁、など「論語」にはよく聞く言葉、ことわざも非常に多い。

また、まごころである信、思いやりの恕を大事にしているのが心に残る。


もとの魯にある孔子の墓には世界中から人が訪れるとか。


わが身に照らしてホント心する言葉で締め。



◇駟(し)も舌に及ばず。


ひとたび口に出したことば(舌)は駟馬(四頭立ての馬車)で追いかけても追いつけない。


つまりは失言は取り返せない場合もあるということ。こわ。気をつけよう。


漢詩も簡単だとはとても言えないが、さすがに漢詩よりミレニアム以上前の論語は言葉が難しいな、という感触。でも世に流布されている言葉、ことわざなど論語由来のものは多くて勉強になる。次は詩経が読みたいかな。

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