◼️平松洋子「肉まんを新大阪で」
食べ歩きのできない時期に、食のエッセイを読んで、想像をふくらませる。いつかきっと!
いつもながら、平松洋子氏は落ち着いてしっとりとした楽しい食エッセイを書く。読んでていくつも心が引っ掛けられるような感覚を味わう。コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が、関西で解除された翌日に読了。ただちにあちこち出掛けられるわけではないが、愉しい気持ちが広がるな。
いくつも羅列してみます〜。
◇「ブルドックの威力」
ベルギー人が日本のカキフライの美味さに異常に感動し、この素晴らしいソースはなんだ!というのでお店に聞いたら厨房から手書きの紙が来て「ブルドック中濃ソース」だと。
私はとんかつソースを色んなものにかけて食べる。特にフライものには最強、文中にあるポテトサラダにかけることも、焼き物野菜にもよく合ったりする。ベタッとしたソースは美味い。分かる〜!という感覚。
◇「豚肉を帯広で」
帯広名物、豚丼の有名店。まだ子供がいない頃、われわれ夫婦は北海ダーと呼ばれ?長い休みといえば北海道に行っていた。その中でも強く覚えている味の一つ。帯広はマルセイバターサンドの六花亭本店も想い出だが、帯広名物豚丼の味は忘れられない。駅前の名店ぱんちょう。店で食べ、テイクアウトして空港の待合で食べ、帰った後デパートのフェアで買って食した。濃いタレと重ねられた豚肉がごはんに合う絶品。
◇「コッペパンを盛岡で」
甘味から惣菜まで挟み込む。美味しそう彩られたコッペパン。単純に食欲が湧くし、なにかしら高校時代を思い出す。紹介されてる中ではあんバターと、やはりスパゲティナポリタン食べたい!コッペパンが盛岡のソウルフードとは知らなかった。ちなみにこの篇の舞台「福田パン」の創業者は宮沢賢治の教え子だったとか。賢治のふるさと岩手は未だ未踏の地。いつかイーハトーブスペシャル旅程の中でぜひ味わってみたい。
◇「大仏さまの奈良漬け」
瓜の漬物大好き。関西のチョー有名スポット・東大寺へは1時間半くらい。昨秋正倉院展で久々に再訪した。ここは阿修羅像の興福寺も春日大社も歩いて回れるザ・観光地だが、東大寺南大門の参道に奈良漬けの有名店があるのは見逃していた。まあ名前から考えてみれば奈良の名物であってもしごく当然。こりゃ次は買って帰らなければ。
◇「冬の湖北へ」
琵琶湖近く、余呉湖の真冬。関西でもとても寒いところである。そこの宿屋でなれずし、鮒ずしなどのフルコースを味わう。豪華な晩餐を味わうための旅行、宿泊というのが妙に胸に沁みた。ビジネスライクな東京出張ばかりしてるからかな。また湖北の冬、というのがそそる。ワカサギ釣りができるのもベリーグッド。鮒ずしはかなり昔、琵琶湖近くで味わったことがある。クセのある匂い、味が懐かしい。ああ行きたいな〜。
◇「冬のアイスクリーム」
さすが食通、アイスも詳しい。お気に入りは金沢「四十萬谷本舗」のジェラート。五郎島金時、奥能登ミルク、さらに加賀いり茶、加賀の味平かぼちゃ、加賀金城味噌といろんな味がある。いつか室生犀星の旅に行ったら食べてみたい。最後に、著者は遠い昔のアイスケーキを思い出すー。
私も子どものころ4人兄弟でワクワクしながらクリスマスの、ドライアイス入りの箱のアイスケーキを食べていた。発泡スチロールの箱に水を入れてシャンメリーを冷やしたものだ。息子と妻と、隣家の女の子とそのお母さんとのクリスマスでもあったなあ。
◇「まだ飽きません」
平松さん、週に一度は白菜と豚肉の重ね煮を作っているそうだ。白菜、バラ肉を交互に敷き重ね、ごま油、酒、しょうゆを垂らして蓋してことこと煮るだけ。三十分で汁気がたふたふ充ちているってー。心で舌鼓。この鍋はどこかで見て、1回作りたいな、と思ったまま。
◇「あさり飯の仕掛け」
満開の桜の時期、安くて多い有明産のあさりを買った平松氏、酒蒸しと、あさりご飯を作る。あさりと米をいっしよに炊くとあさりの身に火が入りすぎて縮み、ショボくなる。ふっくらした食感を保ったまま食べるためにひと工夫ー。春は過ぎたけど、貝のうまみが、読んでて口に広がる。
◇「夢の空き缶」
大きなクッキーの缶。平松さんは裁縫箱として使っていたが歪みと錆でついに処分。そこから子どもの頃の回想へ飛ぶ。青と白のツートンカラー、浮き輪マーク。泉屋のクッキー缶は着せ替え人形の衣装部屋。神戸凮月堂のゴーフルの丸缶にはお手玉、ゴム跳びのゴム。セロハンテープを引っ張ってはがしたり、蓋を閉めるとき、ふわっと空気が逃げる感触に、あったなあ、と。母の裁縫箱、子どもの雑物入れ、福岡では当地のお菓子、チロリアンの缶。チロル地方の民族衣装の少年少女が踊り、蓋は赤と青が風車のように均等に配されたデザインだった。このコラムは食そのものの話ではないが、表現といい、内容といい郷愁をそそりほんのりと良い気分にさせる名篇だと思った。
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