2019年12月23日月曜日

12月書評の4







京都同窓会では、夕方の開始前にプチツアーで大徳寺、さらにその前に単独で京都御苑の東側の隣にある廬山寺へ。ここで源氏物語は執筆された。なるほど帝の中宮彰子に仕えていた紫、御所のすぐそばに住んでたのねーと納得。寺から京都の空を見上げて、ここで書いたんだなあ、と1000年前を想う。御所南の天皇家御用達、松屋常盤の松風も買って満足。

◼️アーシュラ・K・ル=グウィン 村上春樹訳

「帰ってきた空飛び猫」


早く続編を読みたくて。天使猫、生まれた街への旅。


街の路地裏でジェーン・タビーお母さんが産んだ4匹の猫たちセルマ、ロジャー、ハリエット、ジェームズにはなんと羽が生えていた。お母さんは子供たちに独立を促し、4匹は連れ立って飛び立つ。冒険の末、みなは田舎の農場に落ち着いていた。


ハンクとスーザンの兄妹にご飯をもらいながら納屋に住んでいた猫たち。お母さんに会いたくなり、ハリエットとジェームズは帰郷の旅に出た。やっとたどり着いた街は様変わりしていた。2匹は建物の最上階に、小さな黒猫を見かけるー。


「空飛び猫」の続編。いろいろと展開も考えられるが、王道とも言える帰省もの。やっぱ飛ばないとねー。4匹を送り出したタビーお母さんは次の旦那さんとの新生活に目が向き、未来への割り切った心持ちと猫の本能を伺わせていた。その後、は誰もが気になるところ。時の移り変わりを描いている。猫の一生は短い。その間にもさまざまな事が起きる。この4匹の兄弟姉妹たちの成長を描く事で、人の一生までが垣間見えるような気もする。全員が縞柄の猫、というのはなんか和風テイストでもある?なじみやすくていいですね。


なんといっても猫たちが、初めて見る物事を相談しながら、初々しく対処していくのか魅力で、この巻では、お姉さん、お兄さんぽいところが出でいて頼もしく見える。


「エルマーのぼうけん」という童話シリーズがある。エルマーが苦心の末動物たちに虐待されているりゅうを救い出し、2人は空を飛んで冒険するー。子どもに何回も読んで、自分も楽しんだ。


空飛び猫シリーズの、猫が翼で長い距離を飛行する、という大人も子どもも想像力をかきたてられる設定とハートフルなストーリーにエルマーを思い出した。


加えて私も犬を飼っているし、猫も飼った事があるが、身の回りの動物たちは、敏感で警戒心が強いところも見える反面、野生のなせるワザなのか間が抜けているのかわからないところがある。なんとも言えずコミカルなことは、同じ犬飼い、猫飼いなら分かっていただけると思う。そんな可愛らしさも漂っている。


訳者の村上春樹氏はあとがきを「この楽しくて素敵な子供だましの役に立たない(?)ファンタジーをーどうか楽しんでください」と締めている。


ハデハデな話ではないけれど、よく出来た物語で、だから心の中でイマジネーションが広がっていく作品だったと思う。楽しみましたよ。



◼️岡本千紘「鬼切の綱」


なんと!渡辺綱と茨木童子がパートナーに。あるもんですねー。


源頼光四天王、大江山の鬼・酒呑童子を退治したことで名高い渡辺綱(わたなべのつな)は、京の都で酒呑童子の部下・茨木童子と対決し、髭切の太刀(鬼切の太刀)で腕を切り落とした。幼い頃から好きな逸話。


この小説では対決以来、茨木童子こと薔薇(そうび)は綱の美しいパートナーとなり、BLの匂いを漂わせている。源頼光、藤原保昌、そして四天王の卜部季武(うらべすえたけ)、碓井(うすい)貞光、金太郎の坂田金時らに囲まれた綱は、光源氏のモデルとも言われる源融(みなもとのとおる)の玄孫で美男子。薔薇の宿る鬼切の太刀とともに鬼に立ち向かう。


ラノベコーナーで見つけて、私が買わんで誰が読むーくらいの勢いで^_^即購入。いやーあるもんですね世の中には。四天王や頼光が登場し、なんといっても綱と薔薇が動いているのが楽しい。


物語はそうハデハデしくはなく、薔薇との関係性も怪しいが何かが起きるわけでもない。

綱はそろそろ後進に道を譲りたいと思っている四十男。小さな男の子を育てている。どこかしみじみとして読んでしまう感じ。それはそれでいいのだが、もう少し展開できそうな気はする。


茨木童子は女の鬼で、酒呑童子の恋人だったという説もある、大江山退治の時の生き残り。最初は女役と思いしばらくそのつもりで読んでいた。


ぜひ続編出してくれ、という気持ちである。もっと綱と茨木童子を動かして、鬼とは何か、を掘り下げてほしい。

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