2017年2月6日月曜日

1月書評の2





20年来の後輩女子が宇宙好きということが先日発覚。種子島にロケットの発射を見に行ったが、延期となり、休みを延長して粘った話とか、西はりま天文台に行った話とか。なかなか刺激になった。ああ、こちらに帰ってきてから、宇宙、あんま出来てないなあ。

またJAXAのサイトをのぞきに行こう。

ガブリエル・ガルシア・マルケス

「族長の秋」


ノーベル賞作家の作品も読みたいなあと常々思っていたので、手をつけてみた。いやあー手法が錯綜してるけど、なんか訴えたい事は分かるのが、ノーベル賞?


中南米のとある国。独裁者である大統領が死んだという噂を聞いて「われわれ」は大統領府に踏み込み、荒れ放題の執務室で、彼のものとも思われる死体を見つける。


物語はここから、大統領自身と、複数の証言者により、その残虐で孤独な人生が語られる。段落替えすらない、ずーっと続く文章で、語り手がいきなり入れ替わったり、幻想的な表現が所々にあったり、ファンタジーめいた部分もあったりして、かなり読み辛い。途中からはあまり意味を噛んで含めることなくひたすら文章を追っていた。


この独裁者は、作りものの土台に載っているが、とにかく残虐で悪い。しかし、腹心の部下、愛した母親、想いを寄せた女性、またようやく得た愛する家族らとの別れがあり、迫り来る列強に半ば脅され謀略を仕組まれて翻弄される。その、独裁者ならではの悲哀が表現がされている。


ガブリエル・ガルシア・マルケスの代表作には「百年の孤独」があり、魔術的リアリズムの騎手であり、1960年代の南米文学ブームの中心の1人とされる。1982年にノーベル文学賞を受賞している。その他文庫として発売されているいくつかのうちの1つがこの作品。「百年の孤独」を書き終えた後取り掛かったが、書き上げるのに8年をとる要したという。1975年の作品で、やはり政治風刺色が強い。


「百年の孤独」に挑戦する気はまだ無いけれど、もひとつくらい読んでみようかな。


佐藤多佳子「ごきげんな裏階段」


ユーモラスで、かわいい。いや児童小説、なんかくせになっちゃったな。


小学生の小村学は、住まいのコーポラスにある裏階段で、タマネギが好きなかわいい子猫と出会うが、飼うのは両親が許してくれない。ある日、廊下からミューミューという鳴き声が聞こえ、学が外に出てみると、なんとも不思議な姿の猫が、そこにいた。

(「タマネギねこ」)


「タマネギねこ」「ラッキー・メロディー」「モクーのひっこし」と、それぞれ50ページくらいの短編が入った連作短編集。すべて同じコーポラスの裏階段が出てくる。


それぞれ、不思議なものが出てきて、それ自体もかわいらしいのだが、それを主体に、主人公の子供とその家族や教師が面白く、微笑ましく描かれている。


「一瞬の風になれ」で本屋大賞を取った佐藤多佳子はデビュー作で、やはり小学生の物語、「サマータイム」を書いていて、スタートは児童小説らしい。今回のこちらはもう少し幼くほわっとする作品だ。


「サマータイム」がなかなかキレのあるストーリーだったから、今回も楽しみに読んだ。とても安心感があった。これまでのところ、丁寧に、時にコミカルに書いて行く感があり、ちょっと気になる作家さんになっている。


次は佐藤多佳子の児童小説じゃないのを読もうかね。


加藤陽子

「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」


文芸中心の私にしては珍しく・・たまにはね。日本の近代戦争史と内外情勢をさらえて、興味深かった。


東大大学院の教授が、難関私立、栄光学園の中高生に5日間行った講義を本にしたもの。日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争、そして第二次世界大戦の5章立てで構成してある。


事実もそうだが、当時の社会情勢、東アジアの情勢、各国の思惑を、豊富な研究資料から語って行く。


当時は納税額により選挙権が与えられていたが、日清戦争が終わると普通選挙を求める機運が出てきたり、日露戦争の増税により、それまでの地主に加え実業家が政界に進出してきたり、第一次世界大戦を巡るエキサイティングな動きがあり、など、なかなか興味深かった。


講義だけに、講師と中高生のやりとりがあり、例えば、日露戦争で、日本の、韓国問題に関して、戦争に訴えてまで争う、という考えをなぜロシアは理解できなかったのか、などの質問をして、中高生の答えを聞きながら説明して行く。分かりやすくて、また冷静で、ページが進む。


近現代の戦争史は、様々な角度から研究がなされているが、ともすれば、感情的になりがちな中で、研究の専門的な内容を書き下してあり、じっくりと知識が出来たような気になった。


一応、国際政治専攻だったんだけど、もはや雲の彼方というか、なんか思い出したな。


ジェイムズ・パトリック・ホーガン

「星を継ぐもの」


名作。ルナリアンとガニメアン。なかなかワクワクした。面白いSFだと思う。論理の副次的なものが私の好みだった。


2028年、月の洞窟で、宇宙服を着たある死体が見つかった。調査の結果、死体は約5万年前のもので、地球の現代人と同じ特徴を持つという事が分かる。マンモス企業群を構成する会社に勤める原子物理学者、グレッグ・ハント博士は、国連宇宙軍に行くよう命じられ、この通称「チャーリー」について研究・調査することになる。


何にワクワクしたかというと、やはり宇宙、太陽系の衛星を扱っている事と、個人的に、主人公がエウレカ!となるクライマックスは、天文好きが夢想するシーンだった事がある。


月から地球を見る視覚的な大きさ、巨大惑星の衛星から見る木星や土星。凄いだろうな。


もちろん、設定も、人間関係も、議論のピークの作り方、推論の成り行きも上手くて、かなり楽しめる。1977年に書かれ1980年に日本で文庫が発行されたこの作品、私が手に取ったのは2015年の95版。愛されているのが分かる気がする。


続編買うぞー。


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