2017年2月27日月曜日

初観戦






バタバタとした週が過ぎ、土曜日は一瞬外出のみ。本屋で、やっと出た「ビブリア古書堂」最新にして最終巻を買って来た。


で、はや日曜日、大阪市中央体育館、Vリーグ男子・ファイナル6を観に行った。電車移動は1時間足らずで楽な方。30分ほど前に最寄りの朝潮橋駅に着いて、ファミマでおにぎりやパンを買い込む。開場前に行ったらかなりの行列。びっくり。15分ほど待ってようやく入る。


席は審判側、つまりバックスタンド側のアリーナ一番前。頑張って取ったかいがあったかな。席を確かめ、アリーナはモノを食べてはいけないので、ロビーでパッと食事を済ます。


息子は練習から目をキラキラさせている。連れて来て良かったな。ボールも近くに飛んでくる。やがて試合開始。序盤はどのセットも競るが、首位豊田合成に対し4位のサントリーがきょうは主導権を握る。


サントリーはエースのエスコバルと日本代表の柳田を軸に攻める。今回調べてみて驚いたが、両方とも、オポジットが大半の得点をたたき出していて、それに柳田のような第2エースが続いている。特に2人はアタックサーブの調子が良く、サービスエースを連発する。豊田合成は、後衛のアタッカーを削って本職はリベロの選手を入れるなど対抗策を取るが、オポジットの208センチ、イゴールがこの日は不調でなかなか点が取れない。


2エース、身体能力抜群の高松が頑張ったが、気合いが空回りしてイエローカードをもらうなど歯車は噛み合わず。サントリーが3-0で豊田合成を下した。


せっかく前の席だったのに拍子抜け。まあ最初はこんなもんだ。エンド側の隣は応援に慣れている子連れのご婦人で、サントリーの応援グッズをいただく。応援団のところに行けば配っているそうだ。1コ覚えた。


ちょっとまた腹が減ったと売店でサンドイッチとおにぎり買って食べる。第2試合はスタンド自由席だけど3階なんでかなり遠い。


試合前に選手が投げ入れるミニサインボールが欲しいと言っていた息子、ちょっとここでは届かないだろうと思っていたら飛んで来た。私はアピールを手伝ってあげてたが、気がつくと目の前にボールがあり、難なくキャッチ。東レのリベロ、ありがとう!まさかゲット出来るとは。「気合い」の文字、受け止めました〜。息子上機嫌だが、もう集中力が切れたようで、第1セットが終わったところで帰る。


スタンド席はガラガラで、第2試合は、我々が座っていた席も売れてなかった。女性ファンが多かった。うーん、考えるものはある。


バレーの戦術も、基本は大きい外国人のオポジットに上げるというもの。失礼ではあるが、彼らは選手としてのピークを過ぎている者もいる。一時期のバスケット界によく似ている。こんなんでいいのかな。


セッターが早いトス回しをしたらリードブロックでも1枚しかついてこれないとか、やはりレセプションは大事で、ここをミスったらセッターのトスが乱れやすいとか、意外にオープンで高々とは上げないんだな、とか2枚ブロックの入り方とか、実感することも多かった。


私的には、人の具合も程よく、久々に体育館でトップリーグの試合を観ることができて満足。息子さんはどっか得るものあったのかな。楽しかった。


2017年2月20日月曜日

バレンタイン週





気温が上がったり下がったりするようになりら天気も数日に一度雨の日がある。真冬は抜けたか。春に向かうのが時期的にも気候的にも現実的になってきた。まあまた寒い時期もあるだろうけどねー。


バレンタインデーは仕事呑み。翌15日、高校大学の同級生Aが神戸出張だから呑まない?と突然言ってきたから慌てて会社を出て移動。尼崎で走って新快速に乗り換え、最速の手段を使っても、三ノ宮着、元町の店へ向かっていたら正味1時間かかる。神戸勤めの者Bにも声掛けて、私お気に入りの明石焼きの店へご案内した。


「原宿でクレープ食べてる女子高生にこの明石焼きを食べさせたい!」


とは明石焼きをひと口食べた時のAの言葉。おっさんぽくて笑えた。まあ、お気に召していただき、早め引き揚げで、楽しい夜。Bはロンドンへ旅行するそうで、「シャーロック・ホームズのマグカップ買って来て〜!」と懇願した。それにしてもタイミングが良い。渡りに船。


帰ってみると、手作りチョコケーキがいちごを添えて、テーブルの席に置かれていた。ゴメン。


16日は息子の誕生日。ホントは前日に買うつもりが、慌てて神戸行きだったから、少し遅くなるのも仕方なく本屋に寄って帰る。


私のプレゼントはバレーボールの初歩的教則本とルールの本。本なんであまり関心ないかなと思ったら、けっこう食いついて読んでいた。意外。ブックカバーして、小学校に持っていきたいとか言うので、紙製のカバーをしてやった。


金曜日は特に何もなし。


土曜日、クリーニングに出たくらい。帰りにスコールを買って帰ると息子の大喜び。やっぱ皆好きなんだね。夜は「神の守り人」観る。前回を受けて、バルサがチキサに、命のことを説く。そして裏切り。南の大帝国、タルシュのスパイ・ヒュウゴ役は、こないだ観た銭形警部実写版で銭形をやっていた鈴木亮平。なかなか売れ筋だな。


ここ数日、仕事関係の難しい本をひたすら読んでいて、進みがかなり遅い。そりゃあ物語とは違うけど、それにしても遅いし、気合いが必要だな。疲れて来たが、読まなきゃなんない。まる3日で230ページとは記録的な遅さである。


日曜日も読み込むが進まず。散髪に行って気分転換。外は、寒い。分厚いダウン必要。平日も含め、部屋の中は陽が差し込んで暖かだが、外は、ことに山は寒い。明日は雨で、あったかくなるとか、ホントかなあ。


レオンクッキーを散歩に連れ出す。年末年始は4時半がリミットで、5時には暗くなってたが、2ヶ月経てばもう日没じたい5時半すぎ。散歩終了で時計を見ると611分、薄暮だった。夜はひたすら読み込むが、進まず。ワイシャツにアイロンかけて風呂入って、眠たいが、もう少し読まなくては・・の日曜だったのでした。

2017年2月13日月曜日

山寒





寒波でとても寒い。木曜の朝など、少し積もってて、道は濡れてただけなんだけど、粉雪がサーっと降っていて、雪国みたいだった。北野天満宮の梅は満開だという話を聞いたが、寒い中でも咲くのが梅、となんかほっとする。


なんかバタバタしたわりには進まなかった週、水曜日の昼にちょっとびっくりがあって、夜はボスと飲みに行った。酒肴が美味い店だった。


木曜の帰りはバスで阪急十三に出て、西宮北口で降りてジュンク堂に寄ってきたが、タイムロスが少ないからか、出費の多い移動の仕方だなと思った。だって十三までバスで220円、十三から北口へ220円、いったん降りたから、帰りにまた電車賃がかかる(この電車賃はやりようによってはカット可能)。

 

阪神では、小さくはないが大きくもないブックファーストにしか寄れないので、本を探したい時は西宮北口に行くのだが、そんなことを思ってしまった。おまけに、こう回ってちょうど時間的にいいバスは阪急からしか出ていない。


一番いいのは定期を持っている区間のJRの途中下車だけど、尼崎駅のQsモールにある書店もなんかイマイチな印象。また駅からちと遠い。なら大阪駅まで行ってグランフロントか紀伊国屋に行けば、なのだが、やはり通り道の方がロスが少ない。ロスを多くして帰る時間が遅くなると、バスが少なくなるからだ。早く帰りたいのも大いにあるのだが。まあ時間的なロスをなくすためにちょっとだけ金額をかけてるということか。


木曜日は、1年ぶりに、眼の検査。お客さん多い医院に思いつきで行ったから、2時間半かかった。まあ外でコーヒーも飲めたし、待ち時間に「イワン・デニーソヴィチの一日」読んでしまった。ソ連発世界的ベストセラーは、収容所の実態を告発し世界と国内に衝撃を与えた歴史的な書であると同時に、文芸的にも優れた作品だと思う。


視力を機械的にはかり、眼圧をはかり、古典的な視力測定をして、視野検査。看護師さんが手で片眼にガーゼを貼って、開ける方の眼もまゆからテープで引っ張って瞼を開く。私の眼が細いから?笑。さらに角膜の写真を撮って、診察。年配の女性の先生なのだが、きっぱりして、1年ぶりの私をちゃんと覚えていて、キッパリとして的確で、心のある対応をしていただける。これってけっこうスゴいと思う。特に訊かれないから、受付でも何も言ってないのだ。


「危険水域に達していない、また半年後に。」ひと通り検査するから、それなりに金額もかかるのだが、看護師さんの対応も含め納得感がある。


子供が小さい頃通っていた皮膚科も、やはり女性の先生だったが、頻繁に通っているにもかかわらず覚えてなかったし、とっくの昔に処方してもらった薬を、じゃあこれ新しく使いましょう!とか言ってくる始末だった。


ともかく、クリーニング屋に寄り、たばこ店の雑貨屋でお菓子を買い、ファミマで立ち読みして昼ごろ帰った。帰ってカップ焼そばと、妻手作りのチーズケーキを食べて、書評を書いてケイタイゲームして、夕方息子を迎えて、次の本を読んでいた。


夜はしんしんと降る雪、晴れてても降ってるから、多分山から飛ばされてくるのもあるんだろう。うっすら積もるのを見ながら、夜ふかし。本は原田マハの絵画もの新書で、ああ、パリ、もいっかい行きたい、妻と、と思う。こんだ美術館もっといっぱい回るんだもんね。ほいでもって、必ず1日はロンドンに行く。ベイカー街に!


翌日土曜日は午前からチケット取り。Vリーグ男子のファイナル6が大阪であるのだ。常々息子に見せてやりたいと思っていたので、私もリーグのHPでチケットを取るべく人に聞いたりして勉強した。


土日で、土曜日は3試合、日曜は2試合。チケットの値段は一緒。当然土曜日から早く売り切れていた。どうやら人気チームのパナソニックが日曜日は出ないらしい。


最初は日曜日のアリーナコートエンドかと考えていたのだが、聞くところによるとコートエンドは8列までしかなく、買えるのは5列目以降。んで、一段高いアリーナSSベンチ側とアリーナS審判側がこの日売り出し。せっかく進学祝いだし、ここから先、一緒に観に行く機会もあまりないだろうから、いい席にトライしてみようと朝10時と同時にアクセス。


取れない。一番高い席は、何回やってもエラー。すぐに◯は消えて△マークになった。でもまだあるはず。20分くらい何回もトライし続けて、こりゃあかんわ、様子見てやっぱコートエンドにしようと、10分くらい様子を見て再びトライしたが、SSはやはりダメ。おそらくは1枚とかの余りなんだろか、と考えてSにトライしたら、何回めかでようやく席指定まで繋がって、なんと1列めが出た!


こりゃ押さえなきゃと速攻決めて、引き取り締め切りは翌日の夜まで、でも外出出来ない日だから、また早く入手しないと、何かの間違いでしたはイヤだから、さっさとコンビニへ発券に行く。無事入手できてホッ。ウソみたい。帰りのバスちょっと待ったが、もうホクホクで、冷凍チャーハンとタバコと自販機のクリームソーダ買って帰る。


実は、アリーナSSSも、1試合ごとの入れ替え制で、Sは全試合同じ席で観ていられるコートエンドと値段の差はあまり無い。でも3-0で終わったとしても、3セット間近で観られる訳で、その迫力には代え難いし、ウチの息子は集中力がたぶんもたない(笑)。当該試合の対戦は今季リーグ戦、3試合中2試合が3-2だ。しかも片方は、人気はないようだが(笑)リーグ1位のチーム。楽しみだ。


なんかの間違いでありませんように。行ってみたら観にくい席でありませんように。


あと、はっきり言ってVリーグのチケット販売サイトは不親切。まず、どんな席かの説明ページが無い。また1回トライしてダメな時、サイト時にはまたパスワードを入れなくてはならない。不便この上ない。それでも売れるからかも知れないが、ちょっとねえ、と思ってしまった。あと、2試合日は次の試合も観れるようにして欲しい。これは無茶な願い。(笑)


帰ってきたら、息子がリビングでバレー遊びをして、私のお気に入りの、シャーロック・ホームズのマグカップを割ってしまっていた。ぐっとガマンして、これは友達が、ロンドンで買ってきてくれたものだと、とくとくと話す。あまり効いてなさそうなのがちょっと腹が立つが、形あるものはいつか壊れる。ネットで探してみよう。


昼ごはんのちゃんぽん作って食べて、妻子が外出して買ってきたミスドも食べた。この日はちょいテレビの日で、「神の守り人」観て、「美の巨人たち 尾形光琳」を観た。ワイシャツにアイロンかけてしまう。


守り人は、バルサが、大量に殺傷できる超能力というか霊の力を持った少女が、この力は神様が与えてくれていて、災いが降りかかってきた時に解放してどうしていけないの?となる。確かに、無力で幼い少女は、母が処刑された時、悪い人身売買のやつらに連れ去られそうになった時、今回は狼の群れにバルサがやられそうになった時と、自分ではどうしようもない危険がある時に力を解放する。かつて師であり父親がわりでもあったジグロに、命について説かれた時のことを思い出したバルサは、どうしようもなく涙が止まらなくなる。この残酷な現実の中で、この子に命の大切さを教え、力の抑制の大事さを理解してもらおうか、おそらく深く思い悩む。なかなか今回も見応えがあった。


次の本、安部公房の「壁」という作品はワケワカメ的であまり進まず。さすがというか(笑)。


日曜日。義母が来て、しばらく逗留。もうすぐ息子の誕生日。


ザーッとすごい勢いで行きが降ったが30分ほどでやむ。


この日は、クリーニングに出した夏物ズボンを取りに行って帰っただけ。また別のズボンを出して来た。暑くなると上着は着て行かないし、事務系の仕事に移って新調したから今年はズボンだけ。いまやっとかないとすぐ春は来る。下界の滞在時間はわずか20分ほどでさっさと帰ってきた。夕方は、私の部屋で、息子はアニメ見ながらマンガゲーム。私は写真の整理などもろもろ雑事と読書。


そんな3連休でした。寒いとやっぱ活動する気なくなるな。本については、多少新刊を挟むのがベターだなと思ってるので、また買いに行こう。バレー楽しみだな。

2017年2月6日月曜日

1月書評の3




先日、体育館、クラス、予備校の仲間、元バレーボール部の同級生と、30年ぶりに再会した。彼は老け込んだところもなく相変わらずナイスガイで、オレオマエ、で話せるところが本当に良かった。今だから話せるマル秘話もあって面白かった。この歳になって同級生、いい時期を迎えている。

日曜日は、かなり久しぶりに、息子と外出した。西宮北口へのちょっとしたものだったけど、この時間は、何ものにも代えがたい大事なものだ。エディオンでゲームのカードを買い物、その後ブックオフ。彼はマンガを立ち読み、私は小説本をパパっと買う。小腹がすいたら、スーパーでハムマヨを買って食べる。きょうもそうした。彼も、春が来て中学生になったらこんな風に父親と一緒には外出しなくなるんだろう。長い間、よく2人で歩いたよな、と感慨深く、ちょっと寂しい。

感傷的だな。1月は13作品13冊。寂しくても、きっと読書が救ってくれるだろう。


江國香織

「泳ぐのに安全でも適切でもありません」


ふううむ。なんか、上手さもあるんだけど、世の中にあるたくさんの恋愛のシーンを切り取って、まともに向かい合っている感じ。フェミニンだなあ、と思う。やっぱ女子ウケがいいのかな。山本周五郎賞。


無職で酒飲み、しかし身体の相性がいい彼と同棲している私は、祖母が危ない、との連絡で、母と姉の待つ病院へ向かう。(表題作)


短編集である。中盤まではきっちりと同じページ数で書かれている。妙齢の女性が主人公で、なんてことないけど、でも、心象的に薄く刺さる、本人にとっては記憶に残る、理屈ではない意味のあるシーンだよね、ということを書き連ねてある。なかにはドラマチックなものもある。別に結論も付いてないし、不可解ぽいものばかりだ。


ただ、シーンの設定や文章はなかなか印象的であって、濁っているけど澄んでいるものを求めてるようなイメージがある。


誰しもいくつかの恋愛を経験してるが、それぞれ形が違ったよね、というのを思い出させてくれるような、フェミニンで、大人で、少女趣味なテイストだ。


3ヶ月連続で江國香織の本を読んでいるから、途中でちょっと食傷気味になったけれど、読後感は良かった。評価されたのも分かる気がするな。


江戸川乱歩

「江戸川乱歩全集 第5巻

                 押し絵と旅する男」


乱歩の代表作の1つとも言われる短編。なんというか、不思議さと、妖しさと、モダンさに女性への執着。


蜃気楼を見ようと富山の魚津へ行った帰り道、上野に向かう列車に乗った「私」は、額を窓に立てかけた老人に出会う。男は話し掛けてきて、私に不思議な絵を見せ、その絵にまつわる妖しい話を始めたのだった。


江戸川乱歩は人気作家で、私の周りにも全集を持っている人が複数いる。その内の1人から借りて読んだ。乱歩は私も多少は読んでいるが、この小説の名は、「ビブリア古書堂の事件手帖」の、全編に渡り乱歩を取り挙げた4巻で初めて知った。


確かに、幻想的で異次元的な風景の導入から、乱歩らしい怪奇で不思議な話、また小道具として望遠鏡がトリッキーな役目を果たしている。さらに女性への執着が、乱歩の味を出していると思う。


この全集第5巻は、「押し絵」のほかには、「蟲」「蜘蛛男」「盲獣」と、なかなかエログロな境地、やはり女性への執着を描いた短編、長編が収録されている。「蜘蛛男」は明智小五郎も出てきて、かなり探偵小説風。しかし、日本を代表する名探偵の明智も、ちょっと抜けた役どころだったりするのだが。


私は小学生の頃、「怪人二十面相」シリーズを図書館にあるもの全部読んだ口で、高校生の時に「白髪鬼」を読み、ここ数年で「孤島の鬼」「幽霊塔」「黒蜥蜴」なんかを読んだ。エログロなんだけど、乱歩にしかない味はやはりあって、親しみを感じてしまうのである。


朝井まかて「阿蘭陀西鶴」


ふむ。落ち着いた、騒がしくも温かい物語。

なんか朝井まかての方向性を感じたな。浮世草子で一世を風靡した、痛快な関西人、井原西鶴を、斬新な形で語る。織田作之助賞。


大阪・鑓屋町に住む盲目の娘、おあいは父、井原西鶴と2人暮し。西鶴は俳諧師として名を成しつつあったが、家事を取り仕切る15才のおあいは、見栄っ張りで、派手好きで、おあいのことを話の種にして自慢する父が嫌いだった。


話は1680年頃、世が太平となり、町人の間に文化的教養が高まった時分の大阪が舞台である。負けず嫌いで、周りが困るほど意気軒高な西鶴。ライバルとも言える松尾芭蕉との確執、浮世草子が生まれた背景、近松門左衛門との出会い、やたらと法令を出した徳川綱吉の時期の世情と、興味深いベースが並ぶ。


その中、たった1人の家族、おあいの、父に対する感じ方が変わっていくところが温かい。朝井まかては関西人で、いかにも的な西鶴の性格描写も堂に行っている。ちなみに鑓屋町というのは、大阪城の近く、今の谷町四丁目付近らしい。


さて、朝井まかては庭師を題材にした「ちゃんちゃら」や青物問屋を題材にした「すかたん」女3人のかしましいお伊勢参りを描いた「ぬけまいる」など、初期には設定はしっかりしていながら、どちらかというと柔らい時代ものを書き、かなりまじっと幕末の悲劇を描いた「恋歌」で直木賞を取った。私も上に挙げた作品は楽しませてもらい、「恋歌」の清冽な大河感には酔わせてもらった。


パンチの効いた「恋歌」とは今回はまた違う、落ち着いた、柔らかさも硬さも技巧も含んだ、歴史上の人物の人間ドラマである。この人の作品は、どこかすっと蒼い風が吹き抜けるような感覚があって、いつも新しい。面白い時代小説だった。楽しめそうなネタの作品を出しているようだし、次作もまた読みたい。


花崎正晴「コーポレート・ガバナンス」


ちっと自己啓発。小説ではありません。念のため(笑)。


一般的なコーポレート・ガバレンスとは、とか、この言葉の定義とかの本ではなく、経済学的観点から、アメリカ型のガバナンスを紹介し、日本型ガバナンス、かつての銀行のガバナンスを再検討し、東アジア企業のガバナンスを研究している。ここでいうガバナンスとは、企業が、よくありがちな、効率性や収益性の悪い企業行動を抑制するものは、という大きな視点のもの。間違ってたらごめんなさい。


日本型のこれまでのシステムは、ある程度評価していると受け取っているが、バブル崩壊までの銀行のガバナンスに関しては、厳しい視線が向けられている。


外国人投資家が増え、日本の企業活動にとって環境の変化は続いている、という気にさせられる。思ったよりも学術的な本だったが、それなりに勉強になりました。


正座してワイシャツにアイロンをかけている時、背筋がキクッといってしまい、痛みをかかえながら、全豪オープンのナダルvsフェデラーの決勝戦を見ながら、深夜に読み切った。




iPhoneから送信

1月書評の2





20年来の後輩女子が宇宙好きということが先日発覚。種子島にロケットの発射を見に行ったが、延期となり、休みを延長して粘った話とか、西はりま天文台に行った話とか。なかなか刺激になった。ああ、こちらに帰ってきてから、宇宙、あんま出来てないなあ。

またJAXAのサイトをのぞきに行こう。

ガブリエル・ガルシア・マルケス

「族長の秋」


ノーベル賞作家の作品も読みたいなあと常々思っていたので、手をつけてみた。いやあー手法が錯綜してるけど、なんか訴えたい事は分かるのが、ノーベル賞?


中南米のとある国。独裁者である大統領が死んだという噂を聞いて「われわれ」は大統領府に踏み込み、荒れ放題の執務室で、彼のものとも思われる死体を見つける。


物語はここから、大統領自身と、複数の証言者により、その残虐で孤独な人生が語られる。段落替えすらない、ずーっと続く文章で、語り手がいきなり入れ替わったり、幻想的な表現が所々にあったり、ファンタジーめいた部分もあったりして、かなり読み辛い。途中からはあまり意味を噛んで含めることなくひたすら文章を追っていた。


この独裁者は、作りものの土台に載っているが、とにかく残虐で悪い。しかし、腹心の部下、愛した母親、想いを寄せた女性、またようやく得た愛する家族らとの別れがあり、迫り来る列強に半ば脅され謀略を仕組まれて翻弄される。その、独裁者ならではの悲哀が表現がされている。


ガブリエル・ガルシア・マルケスの代表作には「百年の孤独」があり、魔術的リアリズムの騎手であり、1960年代の南米文学ブームの中心の1人とされる。1982年にノーベル文学賞を受賞している。その他文庫として発売されているいくつかのうちの1つがこの作品。「百年の孤独」を書き終えた後取り掛かったが、書き上げるのに8年をとる要したという。1975年の作品で、やはり政治風刺色が強い。


「百年の孤独」に挑戦する気はまだ無いけれど、もひとつくらい読んでみようかな。


佐藤多佳子「ごきげんな裏階段」


ユーモラスで、かわいい。いや児童小説、なんかくせになっちゃったな。


小学生の小村学は、住まいのコーポラスにある裏階段で、タマネギが好きなかわいい子猫と出会うが、飼うのは両親が許してくれない。ある日、廊下からミューミューという鳴き声が聞こえ、学が外に出てみると、なんとも不思議な姿の猫が、そこにいた。

(「タマネギねこ」)


「タマネギねこ」「ラッキー・メロディー」「モクーのひっこし」と、それぞれ50ページくらいの短編が入った連作短編集。すべて同じコーポラスの裏階段が出てくる。


それぞれ、不思議なものが出てきて、それ自体もかわいらしいのだが、それを主体に、主人公の子供とその家族や教師が面白く、微笑ましく描かれている。


「一瞬の風になれ」で本屋大賞を取った佐藤多佳子はデビュー作で、やはり小学生の物語、「サマータイム」を書いていて、スタートは児童小説らしい。今回のこちらはもう少し幼くほわっとする作品だ。


「サマータイム」がなかなかキレのあるストーリーだったから、今回も楽しみに読んだ。とても安心感があった。これまでのところ、丁寧に、時にコミカルに書いて行く感があり、ちょっと気になる作家さんになっている。


次は佐藤多佳子の児童小説じゃないのを読もうかね。


加藤陽子

「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」


文芸中心の私にしては珍しく・・たまにはね。日本の近代戦争史と内外情勢をさらえて、興味深かった。


東大大学院の教授が、難関私立、栄光学園の中高生に5日間行った講義を本にしたもの。日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、日中戦争、そして第二次世界大戦の5章立てで構成してある。


事実もそうだが、当時の社会情勢、東アジアの情勢、各国の思惑を、豊富な研究資料から語って行く。


当時は納税額により選挙権が与えられていたが、日清戦争が終わると普通選挙を求める機運が出てきたり、日露戦争の増税により、それまでの地主に加え実業家が政界に進出してきたり、第一次世界大戦を巡るエキサイティングな動きがあり、など、なかなか興味深かった。


講義だけに、講師と中高生のやりとりがあり、例えば、日露戦争で、日本の、韓国問題に関して、戦争に訴えてまで争う、という考えをなぜロシアは理解できなかったのか、などの質問をして、中高生の答えを聞きながら説明して行く。分かりやすくて、また冷静で、ページが進む。


近現代の戦争史は、様々な角度から研究がなされているが、ともすれば、感情的になりがちな中で、研究の専門的な内容を書き下してあり、じっくりと知識が出来たような気になった。


一応、国際政治専攻だったんだけど、もはや雲の彼方というか、なんか思い出したな。


ジェイムズ・パトリック・ホーガン

「星を継ぐもの」


名作。ルナリアンとガニメアン。なかなかワクワクした。面白いSFだと思う。論理の副次的なものが私の好みだった。


2028年、月の洞窟で、宇宙服を着たある死体が見つかった。調査の結果、死体は約5万年前のもので、地球の現代人と同じ特徴を持つという事が分かる。マンモス企業群を構成する会社に勤める原子物理学者、グレッグ・ハント博士は、国連宇宙軍に行くよう命じられ、この通称「チャーリー」について研究・調査することになる。


何にワクワクしたかというと、やはり宇宙、太陽系の衛星を扱っている事と、個人的に、主人公がエウレカ!となるクライマックスは、天文好きが夢想するシーンだった事がある。


月から地球を見る視覚的な大きさ、巨大惑星の衛星から見る木星や土星。凄いだろうな。


もちろん、設定も、人間関係も、議論のピークの作り方、推論の成り行きも上手くて、かなり楽しめる。1977年に書かれ1980年に日本で文庫が発行されたこの作品、私が手に取ったのは2015年の95版。愛されているのが分かる気がする。


続編買うぞー。


1月書評の1





例年雪は1〜2回積もるが、今年は、降るけどこんなもん。ここしばらく、暖かいという予報も出ていたが、朝晩を中心に、やはり寒い。毛糸の部屋着を洗いに出して、トレーナーを着ているが、かなり寒い。うーむ。まだまだかな。

では1月書評。今年もスタート!

熊谷達也「漂泊の牙」


年初は好きな作家さんで。相変わらず男系の小説。ベースもしっかりしてるし、ゾクゾク感が半端ない。新田次郎文学賞受賞作。


城島郁夫は、オオカミの専門家で、WWF(世界自然保護基金)の仕事で世界を飛び回っていた。TVディレクターの丹野恭子は、東京からの赴任先、仙台から県北西部の村に、オオカミが出た、という噂の取材に出向く。その近くにある城島宅に突然、大きなイヌのような獣が入り込み、在宅の妻子は恐怖に怯える。


東北への愛があり、マタギ、山歩き、銃などに詳しく、動物絡みのネタも多い熊谷達也は、「邂逅の森」を初めて読んで以来、なかなかフェイバリットな作家さんだ。ここまで「相克の森」「氷結の森」「銀狼王」「荒蝦夷」と読んでいる。


デビュー2作目だというこの作品は、持った能力が炸裂している。謎の獣は幻のニホンオオカミか、という魅力、雪山で獣を追って山を歩く迫力、ストーリーの展開力と、夢中になって読んだ。中盤で一度小解決が来て、話がさらに深くなっていく部分も良い。


この人のもう一方の魅力は「男臭さ」で、直木賞を受賞した際も「骨太」という評価が複数出た。その特徴に伴い、読者に対しての説明役を担う、いわば専門外のキャラクター、TV局の丹野恭子の描写は、やっぱりおっさんくさい(笑)。昔「邂逅の森」をお貸しした読書女子から「貸してもらわなかったら、おそらく読まなかったジャンルの本」と評されたが、そんな感じだよね。主力の読者層に合わせた配置だろう。


いやいや、どの作品も面白いけれど、「邂逅の森」以来のヒット、といっても間違いではないだろう。年初の作品、満足です。


深緑野分「戦場のコックたち」


直木賞候補に躍り出た作品。戦場での出逢いと別れ、その思い。


ルイジアナの雑貨店の息子、19歳のティモシー・コールは祖母のレシピを手に、軍隊に志願入隊する。軍隊で出会ったエドワード・グリーンバーグの薦めで中隊の管理部付きコックとなったコールは、2年の訓練の後、ノルマンディー上陸作戦に参加する。


多くの文献をもとに、丁寧に話を組み上げた印象の物語だ。いくつか謎があり、それが長いストーリーの起伏を、緩やかに作っている。また、戦地となったフランス、ドイツの複雑な事情、激しい戦闘、戦友との別れ、ユダヤ人迫害の現状、と尽きない流れを、庶民出身の一兵卒であるティムの視点から、じっくりと描いている。コックならではの視点も多いが、それは導入に思える。


話がゆっくりなわりには、歴史の内幕的な部分もあり、興味が持続する作品である。上下段に文章がある本は、春江一也「プラハの春」、綾辻行人「暗黒館の殺人」以降3回目の経験かな。


ま、ちょっと心的な盛り上がりに欠けるかな。捉えどころがない。直木賞の選考委員の評でも、けっこうボコボコです。ただ、一部の方の、若い日本人の作家がヨーロッパでのアメリカ軍を書くということへの疑問については、まったく問題ないデショ、と思う。ようは作品に力があるかどうかだ。その萌芽は確実に感じるし、興味深く読んだ。


これからこの作家さんが、どういう形で我々読者を惹きつけるか、注目している。


吉田修一「森は知っている」


吉田修一は実に久しぶり。ハードボイルドタッチだが、うーん、どう評しようか。


南蘭島で暮らす高校生、鷹野と柳の2人は、ある産業スパイの組織に属している。柳には、知的障がいのある弟、寛太がいた。間もなく18才になる彼らには、初任務に就く時が迫っていた。


ひと通りの前段部分が終わった後、物語は一気に動き出す。日本各地とアジアを舞台にして情報盗みが行われ、その意味もしだいに明らかになる。この辺を読んでいるぶんにはなかなか楽しいが、では、このお話が行き着く先とか目的が、分からないまま終わってしまったかな、という感じだった。


吉田修一は、山本周五郎賞を取った「パレード」という作品がとても印象的だった。落差があって、背筋がゾッとした。


で、「怒り」とか「悪人」等を読まずして今回久々に当たったが、ちょっと持ち味が分からなくなったかな。社会性なのか、ストーリーテラーなのか。


まあまあ、まだ別の作品を読んでみようかな。いつか。


瀧羽麻子「うさぎパン」


かわいらしい、ハートウォーミングな作品。ダヴィンチ文学賞大賞だそうだ。作者は京大卒で、博士課程の描写がなんかリアル。


父がロンドンに単身赴任し、継母のミドリさんと暮らす優子は、私立の女子中から共学の高校へと進学、パン好きという趣味の合う、富田くんという男子と親しくなる。新しく来た大学院生の、気の合う家庭教師、美和と過ごしていた日、突然ある「人」が現れる。


人に薦められたし、評判のいいのは知っていた。読み出して、通常私が読んでいる女子系よりはさらに可愛らしい作品だと分かった。上にも書いたが、優子の子供っぽさと、なんか私にも分かるような、美和の世慣れて悟ったような女子学生っぷりのギャップが魅力のひとつだろう。物語の成り行きも、いろんな細かい要素を組み合わせて、普通であり普通でなく、してある。ふうむ。


140ページくらいの表題作と、60ページくらいの、スピンオフ作品。ほわっとする作品なのは確かかな。全てを描いているわけではなく、悪くはない。


太宰治「女生徒」


北村薫、「円紫さんと私」シリーズ最新刊の「太宰治の辞書」で取り上げられていたので、読んでみた。ふむふむ。ちょっと太宰の見方が変わったかな。


お茶の水の学校に通う女学生の「私」。父は病気で亡くなり、姉はお嫁に行って、母と弟と生活しながら、鬱々としたものを抱えている。


この作品は、女子の読者から送付された日記を元に書いたものだという。昭和14年の短編小説で、同年代の作家、川端康成らから激賞された、らしい。


主人公が朝目覚めてから夜眠るまでの1日を描いてある。目にするもの、境遇、電車、家事、母とのこと、などなどひとつひとつの物事に発想が飛び、知的な要素も取り入れながら、跳ね回る不安定な心象を、とりとめもなく書き連ねている。表現が、こんなに飛んだら、面白いと思う。言葉も思考も新鮮で、明るかったり、鬱屈していたりする心持ちが伝わってくる。


実は、太宰は、「人間失格」「走れメロス」「晩年」「グッド・バイ」くらいと、読んだ数も少なくて、いくつかの特徴はあるが、あまり好きでなかった。


今回もある意味だらだらと書いているが、なんというか、題材以外の輝きがあるようだ。誰か、長編小説に仕立て直してもいいんしゃない?と思えるような、印象だけである意味見えない感、にも良さを感じる。


通読した後、「太宰治の辞書」を斜め読み再読。よく分かる。これまた、いい感じだ。


ヨーロッパ映画なんかに似たようなモチーフはあったが、短編小説だと、より締まる気がする。清冽で、うまい。ふーん、他の小説も、読む気になってきた。