2016年7月5日火曜日

久々の〇〇〇




丸の中はハ、とシ、とゴ、である。

午前はちょっと本屋を見回ってから、新梅田シティのシネリーブル神戸。

インドネシア映画
「鏡は嘘をつかない」

インドネシア南東部の島嶼地域で、海の上に暮らすダショ族を描く。海がとにかく美しい。父親が漁に出たまま戻らず、父にこだわる10才の娘パキスと、働いて家計を支える母。その家へ村長の命令で、イルカ調査の若い研究者がやって来て、という話。

舞台とその暮らし、風習、また、男の子の演出が可愛く微笑ましかった、が・・

若い研究者に母娘ともども参ると、話が軽くなる気がするし、ラストも、現実を見せたいのだろうけど、ちょっと単純過ぎるかと。あと正直に言えば、フレームをかっちり作り過ぎていて、逆に気になった。これはカメラ的、とか映像的、とかいうものは得てして見る方はあまりそう思わない場合が多い。照明も明るすぎる。

長編デビュー、女流監督の若さがあったかな。

映画は昼からで、始まる前にサンドイッチとアイスコーヒーの昼食を摂ったからか、やたらトイレに行きたくなって困った。

終わってすぐに移動。雨が降って蒸し暑い。次の映画まで、あと1時間。神戸の旧居留地で観るのだ。早歩きで大阪駅、新快速で三ノ宮へ。着いた時はまだ25分あったが、一服と徒歩移動、シネリーブル神戸でチケットを買ったのは10分前を切っていた。

中国映画「山河ノスタルジア」

2000年に「プラットホーム」という作品を観て印象に残っていたジャ・ジャンクー監督の新作である。

汗だくになって席に座った時に、ジャ・ジャンクーのために大急ぎで大阪から神戸まで移動してこんなに汗かくのは全関西でオレくらいちゃうか、と笑えてきた。

座った列が結構多くてとなりにはおっさんが来た。こういった映画を平日に観るとき、隣に人が居るのは珍しい。一列前はガラガラだったから、途中で移動した。汗かいて喉かわいてたが、上映中トイレに行きたくなかったので、我慢してす っぱいのどあめで唾を出すことにした。

オフィス北野やバンダイビジュアルが出資してて、ふむ、しばらく観てなかったが、ジャ・ジャンクー作品は日本にも認められているんだなと思った。カンヌ出品作品である。

さて、1999年の中国内陸部フェンヤン。小学校の教師で、余暇に舞台に出て踊ったり歌ったりするのが好きなタオ。彼女には金持ちのジンシェンと炭鉱で働くリャンズーが思いを寄せていた。タオはジンシェンを選び、結婚して子供を授かる。リャンズーはフェンヤンを出て行った。

2015年、リャンズーは炭鉱労働で病を患って妻子と故郷に帰り、タオにお金を借りる。タオはガソリンスタンド経営の仕事がうまくいっていたが、ジェンシンとは別れ、息子のダオラーは父親と香港に暮らしていた。そんな折、タオの父が亡くなり、タオは呼び寄せた7才のダオラーと再会を果たす。

2025年、オーストラリアで大学に通うダオラー。もはや英語しか喋れず、父ジンシェンは中国語しか分からないため、直接の会話が成立しなくなっていた。自分のアイデンティティに悩むダオラーは中国語の先生に母親の面影を見て、母タオの事を思うのだった。

という話。いやー、軽く未来まで出しちゃうところがジャ・ジャンクー、なのか?演出はだいぶ洗練されたな、という気もするが、始まってだいぶ後にタイトルが出たので、おいおい、もう30分は経ってるだろう、と突っ込んだ。いい感じだ、ジャ・ジャンクー(笑)。

「プラットホーム」は、内陸部の、田舎の若者たちの話で、やはり時間の動きがあった。今回は外国に移住する中国人をもテーマにしているようだ。主演女優のチャオ・タオは「プラットホーム」以来ジャ・ジャンクー作品には出続けているようだから、さしずめチャン・イーモウ監督のコン・リー、ウッディ・アレンのダイアン・キートンやミア・ファローか。

ジャ・ジャンクーはカメラワークに特徴があって、フレームイン、フレームアウトが得意である。さらに、フレームアウトしたあとの風景をしばらく映していて、それでなにかを語る。今回も多用されていた。

フレームインフレームアウトはカッコいいが、下手に使い過ぎるとベタになってわざとらしく、まとまりがなくなる。正直ちと目についたが、演出と意識して、形としてやっているのでまあいいか、という気にもなる。また、今回は、3回の時代ごとに画面サイズが変わっていた。昔のテレビサイズのようなものから、横に広がり、最後にはシネマスコープサイズまで行った。なかなか面白い。

あと、もはや日本ではあまり見られないようなカットつなぎがあったのにはびっくり。同じ人が部屋に入っていくところと入ってきたところをほぼ同じサイズでつなげたり、同じ人の、画面上の位置をずらした広めの絵を続けたり、本来反則ぽい感じも、わざとやってるんだろか。こちらはちょっとよろしくない。

冬の凍結した大河、ダイナマイト、また飛行機が落ちるところなど、ところどころに観客を飽きさせない演出を挟むのはナイスだった。明らかに本当にセスナみたいな飛行機を続き芝居で落としたのは驚いた。
 
病のジャオスーをその後はほっといたりとか、物語の組み上げ方も、もう少しうまく出来そうな気もしたが、ま、これがジャ・ジャンクーか、と思った。今回は、中国の内陸部の現実と、外国に出る中国人と、時の流れをテーマにしているのだろう。

ラスト、雪の河原で、作品冒頭に踊っていた「GO  WEST」に合わせ、タオが踊るシーンは、それだけでなんか泣けてしまった。さすがジャ・ジャンクー。どう終わるかと思ったら、早い勝負だった。

充実した気分。観る人の心を動かす構想を、自分らしい演出で、小道具やウィットが効いている方法で、きちんと届ける監督は素晴らしいと思う。私は映画は芸術ではなく、観客に、うまく何らかを感じさせて初めて仕事をしたと言える、と思う。

本屋に入るが、いまは読みたい本がすでに数あるから、買わないで帰った。

久々にオケを聴きに行った。アマチュアオケの定演で、レオノーレ、カルメンにチャイコの「悲愴」。コンチェルトは聴いたけど、本格的なオケは東京以来。

アマチュアだけに、金管が合ってなかったり、弦の本数が計算されたものではおそらくなかったり、悲愴のクライマックスで弦の音が小さかったような気がしたりしたが、そんなことはどうでもよく、いや、そういう事を観察することも楽しみのうち、細胞が沸き立つ感じで、充足感を味わった。

やっぱオケっていいよね。弦がトゥッティで単体では決して出せない波のような音を奏でた瞬間、生き返るような心地になる。

オーボエ上手かったな。クラリネット目立ってたな。CDでは決して味わえない生感に浮き立つ。

今回はたまたまの機会だったけど、またいいコンサートを探してゼッタイ行こう。




0 件のコメント:

コメントを投稿