4月はそれなりに読んだ。興味ある本もだいぶ見つけてきて読めて、なかなか充実していたが、今年ここまでもひとつこれだーっ、は無い。まあそんなもんかな。ではレッツゴー!
柳広司「ラスト・ワルツ」
映画にもなった「ジョーカー・ゲーム」シリーズの第4弾。スパイものベストセラー。
第2次大戦中のドイツ。日独共同制作の映画に主演している逸見五郎は、ベルリンでのパーティーで、日本大使館出入りの映画好きな若い内装屋、雪村幸一にサインをせがまれる。席上、逸見はおとなしくて目立たない雪村を軽い冗談で「本物のスパイかも」と持ち上げる。
日本陸軍に、伝説のスパイ、結城中佐が作り上げた通称「D機関」。軍人以外から集められ、厳しい訓練を受けた、優秀な諜報員たちの活躍を描く作品。
顔が見えない、どんなことも平然とこなして当たり前、自死も殺人も最悪の選択肢、スパイであることがバレたらー。陸軍内での軋轢をも描き、新鮮な部分と、人がスパイに期待する部分を併せ持ち、夢中で読める。ここまで「ジョーカー・ゲーム」「ダブル・ジョーカー」「パラダイス・ロスト」と3作出ている。
今回は、短編が4つ。ちと幻想色が強くちょっと非現実的かな。最後の「アジア・エクスプレス」は面白かった。ラスト・ワルツはあくまで短編名なので、続編はまだ出そうだ。楽しみである。
近藤史恵「キアズマ」
「サクリファイス」に始まる自転車ロードレースのシリーズもの。ああ面白かった。
大学1年生の岸田正樹は通学途中に自転車部員の櫻井に絡まれ、逃げる途中の事故で部長の村上に全治10ヶ月の怪我を負わせてしまう。村上の願いに折れて、1年だけ自転車部に入る約束をした正樹だったが、これまで経験したことのない自転車競技の魅力に惹かれていく。
ストーリーは、大きな構図ではシンプルだ、が、そこに競技用自転車に乗る喜びや、微妙な人間関係、そしてもちろん自分が出場しているかのような感じにさせる、魅力的なレースの情景が描写されている。
近藤史恵はプロのロードレース界を舞台に主人公の白石誓(ちかう)を描いた「サクリファイス」が本屋大賞2位となり、さらにヨーロッパでのチカの奮闘を追った続編「エデン」も話題を呼んだ。「サクリファイス」はちょっと結末が露骨だが大いに楽しめて、「エデン」はこれを読みたかった!と満足させてくれた。
第3作「サヴァイヴ」はサイドストーリーの色合いが強い。そしてこの「キアズマ」はまったく舞台と主人公が変わって、アマチュアの世界、大学生の初心者の世界となっている。
主人公正樹のその後も気になる、そしてチカのその後も気になる。まだまだ続編が書かれているようなので、ホントに楽しみだ。
野崎まど「【映】アムリタ」
どこかで面白い、と読みかじったから買ってみた。ふうむなるほど、確かに、まずまず。
芸大映画学科役者コースの二見遭一は、同じ学科の美人カメラマン、画素(かくす)はこびに誘われて、映画に出ることになった。監督は天才と噂される後輩女子、最原最早(さいはらもはや)。最原が描いたという絵コンテを読みだした途端、二見は意識がトリップしてしまう。
メデイアワークス文庫、といえば栞子さんのお話、「ビブリア古書堂の事件手帖」がつとに有名だが、「【映】アムリタ」は2009年に、電撃小説大賞の一部門として新設された、メデイアワークス文庫賞を取って注目された作品らしい。
軽妙な会話とすっとぼけた展開も持ち味だが、やはり映画の天才、について掘り下げた内容が大きなポイントだろうと思う。天才の作る映画とは。さすがにライトで都合の良さも感じるが、そこはお話。むしろ楽しめる小説だろう。
最初からすっと読ませる、ストーリーに引き込まれる。いい具合に展開が早い。キャラクターと会話が魅力的。サクサク読めるし、確かに面白いかも、と思った。タネと仕掛けは、私にはちょっと分かりにくかったかな。でも後で見返すのも楽しみのひとつ、なんて思ったりした。
作者は、テレビドラマもしくは映画についてある程度経験を積んだ方とお見受けしたが、でなければけっこうな、勉強したことを文章にする才のある作家と感じた。
石田衣良「コンカツ?」
うーむ、オトナの総合的恋愛エンタメという感じ。現代社会の中での結婚とは。熟年離婚も描かれる。
自動車メーカーに勤める29歳のキャリアウーマン、智香と、大学時代の親友で飲料メーカーの彩野、やはり大学の先輩で総合商社の沙都子、グラフィックデザイナーで肉食系ロリータの結有は一軒家でハウスシェアをしている、合コン仲間。ある日智香は、年長の沙都子に、ちゃんと「コンカツ」しないかと誘われる。
社会人になってから年月も経ち、ものなれたオトナ女子たちの恋愛・結婚観が描かれる。彼女たち目線で辛辣なオトコ批評もふんだんに展開されていて、赤裸々だ。困った男たち、また草食系、就職氷河期、さらには熟年者の問題も出てきて、さながら映画化テレビドラマのような感じである。
最近は女流作家さんが、あけっぴろげな日常生活や恋愛を描くことが多いが、同様なものを感じてしまう。そんなんだよね、とうなずく部分もないではないが、恋愛引退の身としてはうーんとなってしまう。
芸能界も絡むし、エンタメは大事な要素、だけどなんか引かれる芯が欲しかったかな。まあこんなものなんでしょう。
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