よく本を借りていた後輩が産休に入ってしまってちょい困った。また開拓せねば。かねてから注目していた宮下奈都が本屋大賞。「羊と鋼の森」私的には「スコーレNo.4」「よろこびの歌」以外みるべき作品はなかったが、今度はどうだろ。ホームズ以外で久々にハードカバー買うかどうか悩み中。
北原尚彦編
「シャーロック・ホームズの栄冠」
ホームズ企画本。趣向を凝らしてあって、なかなか楽しかった。
コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズ物語は、56の短編と4つの長編がある。これだけでは足りないと、登場人物や時代設定はそのままに、新たなホームズ・ワトスンの冒険を描くパスティーシュ、ちょっとおふざけを入れたり、有名な同時代人や果ては宇宙人を出したりするパロディものは、現在でも世界中で書き続けられている。
かようにスーパースターであるシャーロック・ホームズ。好きな人をシャーロッキアンというが、この作品はホームズものの著名な訳者の1人である北原氏が、星の数ほどもあるパスティーシュ・パロディの中から単行本に未収録のものばかり厳選して集めた本格的な企画ものである。
「ハーロック・ショームズ」とか、ホームズの名前をちょっとだけ変えた「もどき編」、原作中にさわりだけ書いてある事件に題材を得た「語られざる事件編」、007まで登場する「対決編」(まあすでにドラキュラや火星人などと対決したものも過去あったのだが)などなど、テーマ別に分けてあって面白い。
マニアックかつ、かなりパロディっぽい。まあこの類の本はバラエティを楽しむのが基本。まじめな本格的なものはまた他にもあるし。私もそれなりに読み込んでいる方だが、シャーロッキアン的要素を満足させるお祭り本かと思う。
ホームズものは毎年けっこうなペースで生産されてて、なおかつハードカバーが多いので全ては追いきれない。好評を読みかじったタイミングで、たまたま神保町で安く売っていたから、ほくほくと買った本だった。
長野まゆみ「ぼくはこうして大人になる」
美しさは罪〜♪ 得意の少年もの。今回は、そう来たか、だった。
中学3年生の印貝一(いそがいはじめ)のクラスに、姉の恋人の弟、後藤七月(なつき)が転入してくる。クラスにまったく馴染もうとしない七月は、聡明で世話焼きな一にも冷淡な態度を取る。
「少年アリス」のヒットで固定ファンを獲得したという長野みゆき。私もやられて、読む作家ローテーションに入っている、といってもまだ3冊目だが。
ちょっと古風で、難しい漢字を使って、賢すぎる少年が出て来て、名前が変わってて、やや複雑な人間関係が主な主題で・・などの特徴があると思っているが、今回は、長野みゆきにしては、設定も話の流れもオチも、大衆小説みたいだなあ、と思ってしまった。
修学旅行、進路、家族関係、東京近郊の地方都市・・風景の描写など鮮烈さという意味ではいい刺激だが、ちょっと行動が直接的過ぎて、パタリロの世界だった。
私を〜愛さない〜人は〜いな〜い〜♪
ポール・ギャリコ「猫語の教科書」
猫から見た人間観察、また猫自身の身の処し方。ふふ、と思いながら読んでしまう。
友人の郵便受けの上に不思議な言葉の原稿が置かれていた。筆者はふとした思いつきで解読を始めるが、その原稿には、恐るべきことが書かれていたのだった。
第1章は「人間の家を乗っ取る方法」である。いかにして快適な暮らしを手に入れるか、どうやって猫に対して人間を奉仕させるか、が猫目線で書いてある。おもしろおかしくしてあるのだが、人間、そして猫のことをよく分かっていないと書けない。一歩引いた目線からの表現が面白い。また筆者は子育ても経験した雌の猫で、その語り口調が、いかにもものなれていて、ちょっと色っぽい(笑)。発想&演出勝ちだと思う。
第7章「魅惑の表情をつくる」なんて、猫好きにはたまらないのでは?私は犬派だが、あっという間に楽しんで読めた。1995年日本発行の作品で、作者が1976年没となっているから、書かれたのはもっと前である。ふと興味にかられて探した一冊。
解説にはポール・ギャリコは無類の猫好きで、猫を主人公とした「ジェニィ」「タマシーナ」は世界中の猫好きから愛されている、とある。機会があったら読んでみようかな。
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