2014年9月29日月曜日

想う行事

土曜は、運動会だった。毎年朝は涼しいが、決まってすぐ暑くなる。雲ひとつ無い、日焼けにはもってこいの天気でアツアツ。

向かいの高校の自販機でジュースを買い、門外の木陰で煙草をやりつつ涼を取る親御さんたちもいる。

息子、半周リレーは2位維持、ダンスは一番前、綱引きならぬ棒引きはチーム全勝と好調。赤白得点制で、入学以来初めて自分のいる赤が勝ち、ほくほく。親にはそっけない年頃でお弁当の時もさっさと戻って行ってた。

5、6年生が運営のお手伝い。放送も同じ。リレーでは実況が入る。私が通った小学校は地区の新設校で、放送委員の私は、初めての試みで、実況をやったっけ。「転倒〜!あと10メートルいや8メートル!」とか言って、同級生に、5メートルもなかったよ、とかツッコミを入れられてたな。

リレーを見てて、自分の前を走ると、どの学年でも自然と拍手する。息子が走ってる時はビデオ係だから拍手したことないな。そういえば。必死に走ってるの見てちょっとうるっとなったりして。親の心は複雑だ?

徒競走は、小学校のグラウンドを借りた幼稚園の時は、「あれ、あんまりうまく行かないなあ〜?」と思った記憶がある。走る時、先生が太鼓を叩いていた。その後何度も走ったが、他はあまり覚えてない。

小6の時は徒競走は1番。しかしプログラムの最後、紅白対抗リレーで、赤のアンカーで走って大逆転負け。私に勝った彼は後に高校で100メートルを11秒0で走り、福岡県3位になった男だった。

あとは中2の時リレーで2人抜いたかな。1人目を走り出してすぐ抜いて、2人目は差があったのを詰めて、親が見ている前くらいで抜いたから、応援席が盛り上がったと後で言われた。まあ、おおむねいいことしか覚えていないな、やはり。(笑)

お弁当の残りで例年の晩ご飯。機嫌のいい息子は夜もすぐ寝る。

翌日はエディオンに出掛けて、妖怪ウォッチゲーム。2台あるゲーム機に常に3人以上は並んでいる。途中抜けておもちゃを見た時間も入れて、結局3回するのにパパ1時間弱待ち。さすがの人気。プリキュアと、ドラゴンボールのゲームに少し人が居るが、仮面ライダーのガンバライドには無人。昔はあんなに並んでたのに、と思ったりして。隣のブックオフにも行ったけどあまり収穫なし。推理小説を2つほど買って帰る。

帰り道、風が強くて息子寒いと言う。でもまだまだ日中は暑いし、パパこの日も短パン。当面これで良さそうだ。近くの公園でブランコして帰る。見上げる空は、雲ひとつない快晴だった。

2014年9月23日火曜日

ダラダラ秋分

この週末+祝日は、土日月仕事の秋分の日だけ休みだった。雑感をダラダラと。っていつもか。

阪神-中日をテレビ観戦。興味深かったのは若い選手。中日の三ツ俣は、オリックスでは1軍<2軍だったが、今季移籍して2番スタメンでプロ初ホームラン。ちょっと応援してたから嬉しい。高橋周平も、期待されながらファームのスーパースター的な印象だったが仕事をした。

阪神では復活の松田。大きくはない身体で152キロ。まだまだ伸びる。ケガが多いイメージがつかないようにしたい。歳内は、シビアな勝負に耐え切れなかったのか負けがついてしまったが、今季はスピードを意識しているように見える。とてもいい事だ。まだ高卒3年。その方向でトライし続けて欲しい。

それと、中日の中継ぎは、ルーキー、ルーキー、2年目の3人がなかなか充実していた。祖父江はストレートとスライダーのピッチャー、又吉は荒れ球ながら、スリークォーターから浮き上がるようなパワーあるストレートを投げる。福谷の最速157キロのファーストボールは素晴らしい。

休みの谷間の月曜は、なぜか朝の電車に人が多かった。この日は関西在住の人の高校の同窓会。何せ高校は福岡なので10人くらい、全員卒業以来。ほとんど喋ったことが無い人ばかりだった。色々話しているうちに思い出す事もあり、それなりに面白かった。

秋分の日、爆睡&読書。夕方までに百田尚樹「海賊と呼ばれた男」上下巻を読了。ちょっと街へ行って帰って夕方息子とサッカー&ブランコ。ブランコ乗っている時に色々話すのが楽しい。上を見ると夏の大三角形。

「二等辺三角形?」
「いや二等辺じゃないな。直角三角形ではあるけど」

なんて感じ。

帰ってご飯食べて、息子と妖怪ウォッチカードゲームをしたあと、サッカー観戦。セレッソは名古屋と対戦、また負けた。名古屋は永井と川又のコンビ調子が良いのが憎たらしい。セレッソ、リーグ戦ここ14試合でたった1勝。攻めももうひとつで、山下のヘッドがバーをたたく。惜しい〜!でも勝てない時はそんなものかも。まだ7試合ある。負け慣れが最も怖い。次は必ず勝つつもりで。

てな感じかな。アジア大会の佳境は今週末。がんばれ!なでしこジャパン!見れたら見たい。まあこんなところかな。

2014年9月15日月曜日

お初

行って来ました、東映太秦映画村。20年近く関西に住んでいながら、1回も行ったことなかったが、前の日に行こうか、となって即実行。朝8時に家を出て、バスからJR、尼崎で乗り換えて新快速。約40分で京都。そこからホーム変わって山陰線、無事太秦駅に到着、徒歩5分で10時に到着。

撮影所口はひっそりとしていたが、入ってみるとすでに人が多い。「忍者修行道場」最初に入って屋内版アスレチックのような修行、隣の「からくり忍者屋敷」は30分待ち。待ってる間に息子はグッズショップを物色し、買ってきたのが怪獣のキーホルダー。なぜ?(笑)さて、屋敷はどんでん返しが多い、抜け道探しゲームだった。忍者好きの息子はほくほく。

朝早めだったので、「忍者カフェ」でカレーライス。ライスが手裏剣型に盛ってあった。出てすぐ迷路。一緒に入るが、パパは子供用の仕掛けが通りにくくひと苦労。幾何学的な模様とお勉強的な遊びもあったりするんだけど、息子はまったく気にもかけず(笑)、ひたすらゴールを目指す。

そして、「史上最恐のお化け屋敷」。暗くて、確かに雰囲気怖かった。役者さんが何人か脅かすけど、妙なルールを感じてしまったりした。息子はといえば、帽子のひさしを降ろして、パパにしがみついてたから、ほとんどなにも見なかったとか。アタマ使ったな(笑)。

忍者近くのエリアを出てぶらぶら歩く。江戸の町並みはいい感じではあるが、正直思ったより敷地が狭く、見るものが少ない。息子は辻斬り指南や劇場での演しものにはあまり興味がない模様。ちょっと暑くなってきたから、ソフトクリーム食べた。

パディオスというビルに入って3D映画を楽しむ。セットだけでなく技術も公開。「トリックアートの館」に行って、ビルに戻って「さかなクンのデジタル深海水族館」これが、カニがサメと戦ったりして、けっこう面白かった。

しばらく、ソフトビニールボールを敷き詰めた「キッズランド」で遊ばせて、パパは居眠り。川崎のウルトラマンベースにも同じようなものがあったが、遊ぶのは幼稚園年長以来。お腹がすいたというのでポテト購入。忍者の所へ戻って、忍者修行道場」もっかいやって、おしまい。

この3連休前の金曜日、夜更かしして頭が痛かったという息子、暑かったこともあってか、帰りの電車でずっと寝て、ご飯食べたら早めに眠気が来て、8時半にはご就寝。おつかれ。遊ぶ時は楽しまないとね。

2014年9月7日日曜日

名作

朝晩はそこそこ涼しいが、日中はまた暑い。次週は最低気温が20度台を割るとか。さすがに多少過ごしやすくなってきた。

私は週末が空いていたら、最近ジブリのアニメを観ている。息子が小さい頃録画したものが多いが、録っただけで、結局親も子も観れていない。ドラえもんと違い、あまり息子のお気には召さないようだ。

「コクリコ坂から」に始まり、「魔女の宅急便」ときて、前週が「崖の上のポニョ」。そして今週は「ルパン三世 カリオストロの城」だった。

1979年の作品というのにびっくり。私が小学6年生。確かに、ルパン三世のTVシリーズが始まって、その頃みんな見ていたけど、こんなに古かったとは思わなかった。

壮大な城の塔にいる可憐な姫の救出、という古典的なベースにルパンのにぎにぎしくハチャメチャな部分を絡ませる。もちろん相手は強大だ。

クラリス姫、カーチェイス、水の城、ルパンが救いに行った場面、暗殺集団、ルパンと銭形警部の共闘、オートジャイロでの戦闘、なとなど記憶に残るシーンがいっぱい。それでいて、仕掛けもギャグも面白い。

時計塔での最後の対決から結末は、スケールが大きい。そしてすぐにラストシーンがやって来る。

モーリス・ルブランが描いた、アルセーヌ・ルパンシリーズの、「カリオストロ伯爵夫人」「緑の目の令嬢」に着想を得、江戸川乱歩「幽霊塔」の時計塔のイメージを描いたとされる。全部読んでみようかな。

そんなにたくさんアニメ映画を観てるわけではないし、ツッコミどころもやはりあるのだが、「カリオストロの城」は日本アニメ界が誇る名作で、製作から35年目の今日でも全くその面白さとスケールは色褪せない。素晴らしい作品だと思う。

さあ、手元にあるのは「耳をすませば」「もののけ姫」。それに「カリ城」を返却するときまた借りることも出来る。やっぱ「ラピュタ」かなあ。楽しみだ。

2014年9月6日土曜日

東京行

木金と東京出張。新幹線車中で、京極夏彦「嗤う伊右衛門」を読み進み、東京駅で降りて、山手線で2駅隣の新橋へ。新橋の隣は銀座。久々に中央大通りのカフェーパウリスタでミックスサンドと濃いコーヒーの遅い昼食。

ここはモダンな喫茶店で歴史が古く、今の店舗は1970年からだが、明治44年創業の店には菊池寛や芥川龍之介も通ったという。また婦人専用の喫茶室には女性解放運動家の平塚らいてう、高村智恵子、与謝野晶子らが、運動のシンボルであったブルー・ストッキングをはいて集まっていた。だからいまも、青いストッキングで行くとコーヒーが無料になるとかならないとか。ともかく久しぶりで、ちょっと銀座プライスではあったが、満足。

で、大事な行先のお土産用に銀座のリンツに行って、リンドールチョコ詰め合わせを買う。新橋に戻って浜松町へひと駅。ホテルに荷物を置いて地下鉄で六本木へ。ヒルズも勝手知ったるなんとやら。帰りに読む本が無くなりそうなので、以前よく行っていた本屋に立ち寄り、パッと筒井康隆「ロートレック荘事件」を購入。

んで、六本木で夜までお仕事。少し涼しい。浜松町のホテルに戻る。ちょっと部屋が狭かったが、ここのいいところは朝食バイキングの種類がそこそこ多いこと。首都圏はこの点、出来てないところがある。朝ご飯2杯食べて満足。アイスクリームまで出ていたけど、朝はさすがに遠慮。

浜松町を出て、京浜東北線で神田。神田から中央線でひと駅の御茶ノ水。さだまさしの「檸檬」という歌の舞台、聖橋(ひじりばし)を見ながら神田川を渡る。いい眺めなんだけど、ずっと工事をしてて、橋のいい写真が撮れない。仕事を済ませて、調査済みの、煙草が吸える喫茶店へ。んで、中央・総武線で新宿へ。

ちょっと時間があったので、小田急百貨店10Fの大きめな書店を覗く。隣にパスタ屋さんを発見、新宿のビル街を眺めながらジャガイモとエンドウのグリーンパスタを食べる。喫煙席があったので、びっくりして嬉しかった。

小田急で東京都稲城市へ。暑くて上着はとても着ていられない。荷物の重さがこたえる。同僚の先輩と落ち合い仕事先へ。ここでリンドールを渡す。

ネットで調べて、最初は違うのを買おうと思ったのだが、店に行ってみるとアーモンド入りで、アーモンドは好き嫌いあるからなー、と直感でチョコ詰め合わせに変更したら、先方はやはり苦手だそうで、めでたし、となった。

思ったより早く仕事終了。新幹線を早めて帰る。お決まりの、シューマイ弁当。名古屋で空いた。「ロートレック荘事件」を熱中して読み、ギリギリ21時台のバスに乗り、息子と話が出来る時間に帰り着く。GOODな締めでした。

2014年9月4日木曜日

子守歌

パパは、家に居る限り、息子を寝かしつけて来た。彼が10ヶ月くらいの時から、ずーっと。

子守歌の曲は、赤ちゃんの頃から、変わっていない。

「ドヴォルザーク 交響曲第九番
『新世界より』第二楽章冒頭」

イングリッシュホルンの有名なフレーズだ。いまもこのメロディーを聴くと彼はあくびをする。

これで気持ち良くしておいて、

「浜辺の歌」

で追い討ちをかける。

ちなみに最近は、しりとりをしているとなぜか眠くなるらしく、くたっとなったところで口笛ならぬ息笛やハミングでメロディーを奏でる。静かに、ゆっくり。

しかしそれでも寝なければ、レパートリーをさらに繰り出す。穏やかで、子供にとって「退屈な」メロディーラインであることもけっこう大切だ。眠気をもよおしてもらわなきゃなんないし。

「今ありて」

上の2曲はポピュラーだが、これを知ってる方はよほどの野球好き。高校野球、春の選抜の大会歌である。阿久悠作詞の、感動的な歌詞。ここだけの話、大会歌は夏より春の方がかなり好きである。

ああ甲子園 草の芽萌え立ち
駆け巡る風は 青春の息吹か
今ありて未来も扉を開く
今ありて時代も連なり始める

と自己陶酔でハミングし終わった頃には大概寝ている。これでもまだ起きてたらあと3曲。

「しあわせ運べるように」

阪神大震災の時、神戸の小学校の先生が作った曲で、いまも式典のたびに歌われる。東日本大震災の被災地でも一部歌詞を変えて歌われた。

響き渡れぼくたちのうた
生まれ変わる神戸のまちに
届けたい私たちのうた
しあわせ運べるように

最後のリピート、半音あがるところなんて感極まりまくり、涙ぐんでハミング。

次はだいたい

「チャイコフスキー交響曲第5番
第二楽章 冒頭」

有名なホルンのソロ。大勢の観客を前に、自分がソロをやってるつもりで没頭。そしてつい楽章全部やってしまう。最後なんか盛り上がるので、音量を下げ目にしてハミング。

さらに寝ない時は隠し技

「別れの歌」

1972年、札幌オリンピックの閉会式の時に歌われた歌。サトウハチロー作詞、中田喜直作曲。これ以上別れの寂しい歌を私は知らない。小学校の卒業式で歌ってから、妙に印象的で憶えていて、5年くらい前にそうだと知った。

さよなら さよならが指にふるえる
さよなら さよならが肩にゆれてる
さよなら さよならが空にただよう

さよならの歌が広がる
また会える喜びの日を胸に浮かべ

さよなら さよなら さようなら

ノスタルジーに浸りつつ終了すると、とうの昔に気持ち良さそうな寝息が聞こえる。どんな子守歌も、この音には、かなわない。

こないだ息子と、東京に行った時10才だった隣の女の子は来年はもう19才だねーと話をした。子供の成長は早い。子守歌も、もうすぐ卒業。だから書きたくなった。

2014年9月1日月曜日

8月書評の2

土曜仕事して、夏休み最終日は丸1日息子の夏休みの研究仕上げにお付き合い。出来上がったの見たらやはり嬉しいもの。

次月は、特集なしだけど、10月までにまた考えようかな。では後半!

島田荘司「斜め屋敷の犯罪」

名作ミステリー第4弾。再読である。昭和57年というから、すでに32年前の作品だ。時代掛かった表現もあるが、そのトリックと、なんというか、仕掛けに唸った数少ないミステリー。

本格派の王道、つまりおどろおどろしく変な館で起きた殺人事件、もちろん密室、不可解な状況と少しずつ出てくる繋がらない状況、奇想天外なトリック、どうしてもそうしなければならなかった犯罪動機、華麗で明快な謎解き、等々。

北海道の、海を臨む土地に建つ「流氷館」は、日本を代表する企業の社長、浜本が建てた、屋敷全体が傾いている変わった館。提携会社の社長ら数人や浜本の娘、英子の友人達を招いて、クリスマスのミニ・パーティーが開かれるが、不可解な密室殺人が、立て続けに起きる。

私がこれまでミステリーとしてよかったと思う作品は、アガサ・クリスティー「ABC殺人事件」「オリエント急行の殺人」、ヴァン・ダイン「カナリヤ殺人事件」、日本では綾辻行人「十角館の殺人」「時計館の殺人」、東野圭吾「容疑者Xの献身」といったところか。あまり本格的に読んでいるわけではなくて、また北村薫やシャーロック・ホームズは、なんというか、物語や小説としての味を楽しむものとして別ジャンルかと思う。

本格推理ものの王道、館(やかた)ものとして、またミステリーワンダーランドを愛する読者の心に見事に応える作品かと思う。こういうものにありがちな、動機の点に正直弱いところがある。だが、やはり名作だろう。

伊坂幸太郎
「アヒルと鴨のコインロッカー」

ミステリー特集第5弾。伊坂幸太郎初期の青春小説。まあ、これは、本格ではないにしろ、広い意味でミステリーの部類に入るだろう。

伊坂幸太郎の長編第5作。前作「重力ピエロ」がヒット、次回作が待たれていたところにこの作品が出て、吉川英治文学新人賞を受賞となったらしい。その後やはり大学生の小説「砂漠」が直木賞候補となっている。

賞で信用するNo.1は直木賞、次が山本周五郎賞で、江戸川乱歩賞、本屋大賞の順。ただ、いろんな作家の受賞歴を見ていく中で、吉川英治新人賞の候補にはなっても受賞した作品は少ないイメージがある。

関東から仙台の大学に入学すべく、独り暮らしを始めたばかりの椎名は、出会ったばかりのアパートの隣人、河崎に、一緒に本屋を襲って広辞苑を奪わないか、と持ちかけられる。

時間軸をずらした2つの物語が進行していく展開。私にもようやく分かって来たのだが、この頃の伊坂は、行動への理由付けが希薄で、よく分からなかったりするが、ある意味無邪気で伸び伸びとした青春小説を書いていた。

私はミステリ好きも手伝ってか、動機が弱かったり感覚的過ぎるとどうも受け入れ難いと思ってしまい、「砂漠」ももひとつ、と思ったのだが、その後もっと独特のハチャメチャさを持つ小説を書いているので、この頃はかわいいもんだな、などと思う。

同じ理由で伊坂が合わない、という人もいるのだが、この小説は、まずまず面白い。最後にはへえっ、となるし。まあパンチは弱いかな。

高田郁
「天の梯 みをつくし料理帖 」

ミステリーシリーズの途中だが、これが出たなら読まねばならぬ。

大人気シリーズ、ついに完結編の最新刊。数々の名物料理を生み出して来たつる屋の女料理人、澪。幼なじみを吉原から身請けすべく独立する。

澪も手伝いには行っていたが、後に座る料理人、政吉の本懐、そして緊急事態も持ち上がり、次々と変わる状況、そして10巻に渡った物語の結末はー。

解決が一気に来るので、なかなか面白い。そう良く回るものでもないだろう、というのは目こぼしして微笑ましく読むもの。

美味しいシリーズだった。次のハマりものを探さねば。

綾辻行人「十角館の殺人」

ミステリー特集第6弾。これにはかつて衝撃を受けたものだ。初回でビックリし、再読では犯人の動きや手掛かりを追う。でもやっぱ面白い。

ある大学のミステリー研究会のメンバー達は、春休みに、無人島にある「十角館」で1週間過ごすことにする。外界との接触が無い中、次々と殺人が起きる。

1987年の作品、1991年の文庫化。この作品によって新本格派のブームが到来したと言われる、綾辻行人のテビュー作。綾辻行人は、この後「水車館」「迷路館」「人形館」「時計館」「黒猫館」「暗黒館」「びっくり館」「奇面館」と書き、次の10作目を持って、この館シリーズはやめる、と宣言している。

外部から遮断された無人島、変わった館、建築家の壮絶な死、そして連続殺人。アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」の系譜だ。本格本道である。くすりと笑ってしまう。

この作品のどこに衝撃を受けるかと言えば、「意外な犯人への仕掛け」である。下地は好きだが、トリックや本格の雰囲気に驚いた訳ではなく、「だからそういう描き方をしたんだ」とビックリした。私の場合は。

同期の友人に勧められて衝撃を受け、私はアヤツジストとなった。対談などは読んでないが、彼の著作はほぼ完読している。どれが好きかと言われると、3位が「霧越邸殺人事件」2位が時計館、ダントツの1位がこの十角館だ。

日本で本格、館、というと江戸川乱歩のようなおどろおどろしさを想像してしまう。京大在学中の若き才能が、新しく、若い世代にも受け入れられやすい、キレのある本格ものを書いて、滞留していた雰囲気を一掃したのではないか。

大上段に語るとこうだけど、エラリイ・クイーンの館シリーズ日本版が出現した、という言い方も出来る。

ともかく、私の中のチョー名作であることだけは間違いない。

乾くるみ
「イニシエーション・ラブ」

ミステリー特集第7弾、これで打ち止め。へえ〜・・。が正直な感想だった。もう、仕掛けも分からず、webで調べた。

出た当時、周りの人の多くが読んで、いいよ、と言っていた作品である。一時期ブームを作り出し、最近またよく書店に出ている。ミステリーの傑作ということで読んでみたが、まあその、ミステリーというよりは、ストーリー構成のパズルを楽しむ本だろう。

大学生の鈴木夕樹は人数が足りないからと呼ばれた合コンで、ベリーショートのマユと出逢い、恋に落ちる。

以前、歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」がこのミス大賞になった時、最後に分かる仕掛けにコロッと騙された。この手法はさっそく他の作家にも取り入れられて流行ったことがあったが、ふうむ、なるほどこんなのもあるのね、と感心した。

まあひとつの形でしょう。それは認めるべき。

8月書評の1

今週、思いがけず雨が降った日に、ぐっと涼しくなった。毎年今ごろ、朝晩に涼を感じるが、けっこう最高気温は下がらないから、日中は残暑なんだよね。昨年は雨が全然降らなかったが、今年はよく降った。台風直撃もあったし。

では、行ってみましょう。夏のミステリー特集を含む10作品10冊。まあ、本格ミステリーというよりは、サスペンスとかパズルっぽいものが多かったんだけど。

サン・テグジュペリ 堀口大学訳
「夜間飛行」

上空から見る地上は、裸で、死んでいた。機体が下降する、地上は着衣する。森や林がまたしても地上に蒲団を着せ、谷や小山が地上にうねりを刻む。つまり地上は呼吸しだす。

こんな、いやこれ以上の表現が続く「夜間飛行」「南方郵便機」の2編が収録された一冊。上の文章はよく分かるんだけどねー。

フランス名門貴族の出で、自らもパイロットであったサン・テグジュペリ。1920年代後半から1930年代の話である。フランスから、アフリカを経由して、南米までを飛ぶ郵便飛行機がテーマ。

「夜間飛行」ではパイロットもそうだが、リスクの高い夜間飛行にビジネスとして踏み切った支配人を描いている。デビュー作だという「南方郵便機」は、パイロットの人生と運命について描いていて、堀口大学いわく、読者に精読を要求する作品である。もちろん、飛行の場面の描写は、経験者ならではで、当時の状況もよく分かる。

正直、文章は読めてもワンブロックの意味と前後のつながりを理解するのに時間がかかるので、ページが進まない作品だった。主語はコロコロ変わるし。まあ、いつか「星の王子様」も読んでみよう。

高橋克彦「写楽殺人事件」

夏のミステリー特集第1段。美術ものも好きである。

1983年の江戸川乱歩賞。勢力が二分している浮世絵学界。その一方の雄、嵯峨が亡くなった。対立する大学教授、西島の弟子である津田は、謎の画家、東洲斎写楽の正体のヒントとなる画集を手にし、調査に乗り出す。調査は実を結び、証拠も固められるが、津田は西島に手柄をさらわれる。しかしほどなく、西島が焼死するー。

中途に、津田が、これまでの「写楽別人説」10個ほどを次々と説明、批判していく部分があるが、ここが前半のクライマックスだろう。写楽の評価の歴史なども分かって面白い。

好きな人が書いてるな、と思う流れで、途中、学説中の登場する人の多さに、わけがわからなくなる。得てして知識が多くなりすぎるとこういうものだ。写楽は確かに魅力あるネタだが、仕掛けはどうも俗っぽくも感じる。また、犯罪の、生な匂いが漂って来ない。

調査行と理論が多かった前半から、後半は次々と事件が起きて畳み掛けて来る。ネタも含め、楽しめた作品ではあった。日本推理作家協会賞「北斎殺人事件」、直木賞「緋い記憶」も読んでみよう。

原 「私が殺した少女」

夏のミステリー第2弾。いろんなところに名作として挙げてあるので、前々から読みたかった作品。

1989年刊行で、この長編第2作で直木賞を受賞している。ハードボイルドで、次々と何かが起きるところは藤原伊織の「テロリストのパラソル」にちょっと似ている。

探偵・沢崎は、少女誘拐事件の現金の運び役として犯人に指名され、六千万円を届けようとするが、その途中暴漢に襲われ気絶、現金は持ち去られる。程なくまた犯人とおぼしき者からの連絡を受け出向いた廃墟で、沢崎は少女の死体を発見する。

表現は、欧米のハードボイルド的なものによくある、使い捨て、その場限りの冗談のような比喩を軽く用いている。しつこくないのがいいところだ。謎が深まり、不自然なところがいくつもあり、一気に解決する。

ちょっと解決が、なんか一気過ぎる気もした。ただ、期待に違わぬ雰囲気を持った小説である。沢崎シリーズだから、シリーズものに特有の単発では分からないくだりもあるが、それも含めて惹きつけられる魅力を持っているのは確か。不思議な佳作ハードボイルドミステリー、だろう。

稲見一良「ダック・コール」

夏のミステリー第3弾、と考えて買ったのだが、これはミステリーではなかった。どこかの日本の名作ミステリー特集に載っていたから買ったんだけれども、ハードボイルド&メルヘン、とでもいうか、変わった短編集だった。山本周五郎賞を受賞している、1991年の作品である。

会社を辞めて旅に出た若者は河原で石に鳥の絵を書く男に出会い、若者のキャンピングカーでともに過ごす。その夜、若者は6つの夢を見る。

そしてその夢が、鳥と男に関わる様々なストーリーだ。仕事より鳥の撮影を選んだ若者、前時代のアメリカで、リョコウバトの大群と虐殺の現場に居合わせた男、密漁志願の初老の男と少年の心温まる親交、これまたアメリカで脱獄囚を追ってのマンハント、鳥の楽園を作った男が漂流する話に、なんと最後は、鴨のデコイが主人公の話。

作者は、一時期狩猟に没頭した時期が有るらしく、自然の観察やおそらく体験したのではというエピソード、また銃器に関しての実際的な知識が豊富に描かれている。

それにしても不思議な本。文学作品、という捉え方が正しいのかも知れない。面白くないことはないかな、という感じだ。なんというか、ゲージツ的にわけわからん話ではなく、ひとつひとつの話は普通、というか、いい話が多い。暑い中たまにトリップするにはひょっとして最適だったかも。

椋鳩十「黒物語」ほか

ちょっとブレイク。毎年息子が借りて来る夏休み読書本。

黒い飼い犬話の表題作や、猫、スズメ、コサメビタキの夫婦、タンチョウヅル、アリの話。

猫も切なくて、微笑ましくていいけれど、やはり片足スズメのママには感動するな。

大昔、実家で子供達が初めて飼ったのはポメラニアン。その時買った、犬のすべて、的な本の末尾に収録されていたのが、「高安犬(こうやすいぬ)物語」。かつて戸川幸夫が直木賞を受賞した作品を漫画化したものだった。シートンは読んでないが、この手の話は好きである。椋鳩十も小学校の教科書以来で、なかなか楽しめた。