クッキーは熟睡している時、たまに「クゥン、クン」と寝言、寝鳴きをすることがある。埼玉のブリーダーのところに居たことを思い出しているのか、なにか怖い体験でもしたのか。
さて後半。
浦山明俊
「鬼が哭く 陰陽師 石田千尋の事件簿」
実在する、「平成の陰陽師」、同姓同名の石田千尋氏をモデルとした、陰陽師が活躍する物語。この作品は2作目である。
ブックオフで見かけて、鬼好きの私は衝動買い、したが・・現代の霊ものは現代風に見せれば見せるほど、どこか違和感も付きまとう。読んでいて、何かに似てるな・・と思ったら1年前くらいに読んでいた、「心霊探偵 八雲」だなと思った。
徳島県の山里・祖谷。除霊をしにきた千尋と秘書の小島は、災害や事故の現場に、鬼っ子と言われる幼い悠太が必ず姿を見せると聞かされる。折しも地域を台風が襲う・・!
源平の歴史や国生みほか豊富な知識が詰め込んである。物語同士の連関もある。また、主役の2人とも上等のスーツを身に付けたりと、キャラ設定に心を砕いてはいるが、特に千尋の人間性が見えてこないので物足りなさが残る。このシリーズは2006年に最初の2作が、2009年と2011年に1冊ずつ、都合4作出ている。
んーまあ、もしもブックオフで1か3を見かけたら考えるかな。
佐藤賢一「王妃の離婚」
1999年の直木賞作品。意外に活劇的で楽しんで読めた。法廷サスペンスぽい色もある。
舞台は中世のフランス。パリ大学で法を学ぶフランソワは、時の暴君の怒りを買い、パリを逃げ出す。恋人のベリンダと生き別れとなったフランソワは、20年後の1498年、弁護士となり、ローマ教皇庁が執り行う、フランス国王ルイ12世と王妃ジャンヌ・ド・フランスの離婚裁判で、ひょんなことから敗色濃厚な王妃の弁護人を引き受けることになるのだった。
「傭兵ピエール」などで名前を見かけていた佐藤賢一は初めて読んだ。専門分野であるヨーロッパをベースに、当時のカルチェ・ラタンの学生街の雰囲気や、法廷の形式、またそのやりとりなどを彩りとして、人生の悲哀や人間の感情を描いている。
何が特徴と言えば、その生々しさと人間エネルギー、とでも言うのだろうか。内なる欲望に正直であり、その描写も生で詳細である。また、パリの学生や裁判を傍聴する市井の人々、主人公フランソワの、活力があり優秀で、やり過ぎで荒っぽいところ、など様々なパワーが、フランソワの苦悩と王妃の悲しみを包み、一大活劇を織り上げている。最初は退屈感もあったが、物語の成り行きが読めてくると、面白くてどんどん読んでしまう。
また、ベリンダの台詞や性格付けも絶妙だ。腑に落ちないところはあるし、最後の方は強引で綺麗すぎるけれども、エンターテイメントとしてまずまずだ。
夏川草介「神様のカルテ3」
初回作が、史上最も私を泣かせた小説となったシリーズ3作目。医療エンターテインメントであることに変わりはないが、大小もしくは、長短の表現力には、相変わらず非凡なものを感じる、文学作品の香りがするシリーズだ。
「24時間 365日」を謳い文句にした本庄病院で昼も夜もなく働く消化器内科の青年医師・栗原一止。担当患者である肝性脳症の、祭り露店の金魚掬い屋が、病院から突如失踪する。
などなど、とても語りきれない複数の事件が勃発する。相変わらず抜群のキャラ設定の登場人物たちと信州の土地、季節感がいい味を出していて気持ちがいい。
作者の夏川草介は、信州大学の医学部卒で、医業の傍ら、このシリーズだけを書いている。
今回も新加入の女医が騒動を巻き起こしたり、というパターン付いた展開もあるが、大きな影響もまた与えていて善悪二元論だけではない。今回は涙は無かったが、人の去来があり、懊悩があって、物語は胎動を見せる。相変わらず爽やかに濃い良作であった。作中で一止も30才を迎えるが、主人公の青年の苦悩がストレートに、でも奥ゆかしく表現されていて、ぐっとくる。まもなく「2」の映画が公開されるとか。
読み直して、観に行こうかな。
沼田まほかる「ユリゴコロ」
続々と現れるサスペンスが好きな人にはいいかも。私には正直、う〜む、であった。文庫新刊、本屋大賞にノミネートされたという、巷の評判が良い作品らしい。
婚約者・千絵が失踪し、母は交通事故死、父は末期がんという主人公、亮介は、ある時父の書斎で古いノートを見つける。そこには、殺人を含む、恐ろしい人生の記、とも言えるものが書かれていた。
ノートの文章がまずグロで、そこに続く真実があっけなく、とんでもないシチュエーションになぜかマヒ状態で、もう一つの現代の問題はどうも都合が良くて、オチもそこまでまっとうに?と考え込んでしまう。以前読んだ「父からの手紙」と同じように強引なドラマの展開だ、と、ごめんね、アラばかり探してしまう。
たったかたったか読み進むのは確かだが、どうも私には馴染まない感じだった。普通のはずの感情表現に丁寧でない、という印象だ。
高田郁
「美雪晴れ みをつくし料理帖 」
人気シリーズ第9巻。今回は懊悩と、ほのかな感動が、久し振りにあった。寒い季節柄も時期に合っているから「味わい焼き蒲鉾」や「立春大吉もち」という章になってるものだけでなく、酒粕汁も、にゅうめんも、百合根も、実に旨そう。
飯田橋の庶民の料理屋「つる家」の女料理人、澪は吉原にいる幼なじみのためお金を貯めようと動き始める。また、自分の腕を認める周囲の声に、料理人としての自分の道を探し求めて苦悩する。
友人に勧められて読み始めたら、ハマってしまったこのシリーズ。新刊が出るや、いつも利用している書評サイト「ブクレコ」にいくつもの投稿が並び、たくさんの人に愛されているのが良く分かった。私も発売2日後には手にしていた。
実は大河ドラマ仕立てがちよっと苦手だったりしたのだが、すっかりお馴染みのキャラ達も元気に立ち回り、ほっとするのみならず、いつも料理にはわくわくする。
次の巻でついに完結。楽しみだ。
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