2013年10月31日木曜日

10月書評の2

読む本が尽きたので、きょうの帰りに上下巻の文庫新刊を買った。てっきりハルキかと思い込んでたら、龍だった。初龍、楽しみだ。

では後半。自分の人生の中では、誰もがみな主人公〜♪

野沢尚「龍時01ー02」

めっちゃ面白かったー。サッカーファンとして、文芸好きの端くれとして、今まで読まなかったのが自分でも不思議である。

U-17日本選抜として同じカテゴリのスペイン代表との試合に出場した無名の高校生、リュウジはそのプレーが認められ、スペインの地方チームのユースに入ることになる。

リュウジは日本でサッカーをつまらないと思っていて、スペインでなら、と思っていたが、そうはうまくいかず、というストーリーである。

ひとつひとつのプレーをイメージしながら、緻密に描いてあり、その繰り返しに迫力を感じる。U-17スペインのプレーに、「殺される、と思った」というのは、まさに言い得て妙な表現であり、随所に、当たり、とも言える言葉が出てくる。

スポーツ小説は、うまくいかなくては面白くない。さらに、リュウジはやはり攻撃の選手である。まあそうだよな、というストーリーの進み方ではあるが、鼻白むことなく興奮して読めるのが、この作品のパワーなのだろう。

日本人はやたらに10番タイプが多いが、攻撃的MFはセカンドアタッカーなんだから、パスばっかしてちゃダメだよ、というのは一時期よく議論された。その風潮に乗っ取ったキャラ選びの勝利、とも言えるだろう。

野沢尚「龍時02ー03」

当然のように続けて読んだ。この巻は、最初の仕掛けも長く、恋愛部分も長く、途中で、早くサッカーしろよ、と思ってしまった。

アトランティコのトップチームと契約出来なかったリュウジを代理人が売り込み、強豪ベティスへのレンタル移籍が実現する。

最初はなかなか遠征メンバーに入れないが、だんだん活躍し始めるリュウジ。前巻に続いて、スカッとする。選手名が実名で、もし日本人で本当に戦力になるアタッカーがいたら、その選手がレアルやバルサと戦ったら・・というサッカーファンの願望を叶えてくれている。ジーコジャパンと戦うところなどはもはやノスタルジーだ。(笑)

早く先が読みたいな。

野沢尚「龍時03ー04」

アテネオリンピックに日本代表として挑むリュウジ。しかし監督と温度差があり・・

相変わらず実名と、選手のプレーを詳しく描いているのは面白い。ちなみにリュウジは18歳だから、U-20の世代をスキップした、「飛び級」でのオリンピック代表招集である。

スペインリーグ、リーガ・エスパニョーラでの経験がベースになって、チームメイトやリーガの対戦相手と当たっているのもなかなかそそる。これがまた実在のスーパースターだったりするから尚更だ。ロベカルのフリーキックの壁には、ホンマになりたくないなと、当時私もTVで見ていて思ったものだ。

日本代表に戻ったリュウジ。スペインへと飛び出すきっかけになったのも日本選抜での確執だった。もちろん、ストーリーにはこれまでの流れを踏襲した仕掛けもある。が・・私は、納得できるかというと、そんなんあるんかいな、という感じだった。

面白いのは間違いないけどねー。明らかに続く兆候があるのにもう先は読めない。2014年でリュウジは28歳。誰か、続編を書いておくれよー。

辻村深月「島はぼくらと」

目立つ表紙デザインでストーリーの行く先が見える、ような気がする。

昔「藍色初恋」という台湾映画を観た。恥ずかし系の高校生恋愛ものだったが、特に学生の女子は、やがて来る別れを前提に友人関係を築いている、とその映画のパンフレットで読んで、軽く衝撃を受けた。男は、というか私は、すべて地元の学校に行ったせいか、そこまで考えなかった。

「島はぼくらと」は出逢いと別れがテーマの物語だ。小説の場合作家の調査、取材は表に出ないが、相当の実例を取材しないと描けないだろうと思う。興味深くもあった。

が、島は昔から映画の題材としても取り挙げられやすく、設定として目新しいか、は難しい。文章を超越できるものも感じなかった。もひとつ、上にも書いたが、これは、私はよく言うのだが、お姉ちゃん小説で、この感情に共鳴せよ、うーん、リアライズせよ、というのはかなり難しい。

まとまっていて、読める作品ではあった。

ヴィンセント・スタリット
「シャーロック・ホームズの私生活」

シャーロッキアン本の代表格の作品である。世界のスーパースター、シャーロック・ホームズの誕生秘話、登場から一時的な?死まで、そしてその帰還、ホームズの私生活的性質、ベイカー街221Bの女家主ハドスンさんの研究から、「語られざる事件」、ホームズが書いたとされる論文のタイトル一覧、ドイルの活躍、さらに世界で最初のシャーロッキアン団体「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」通称BSIの設立の経緯なとなど盛り沢山の内容となっている。

この団体がイギリスでなくアメリカで最初に生まれたのは、よりアメリカの方に熱狂的に受け入れられた証左でもある。本国ではそこそこの評価しか受けなかった「四つの署名」が、アメリカではかなりの高評価だったという。

10数年ぶりの再読である。著者はアメリカのシャーロッキアンで、BSI参加者の1人であり、この本は、なんと、1933年に書かれたシロモノだ。「ホームズとハドスンさんが生きていれば、今年は2人とも80歳になるはずである」なんて書けるのが羨ましい。

時代先端の読み物として書かれているので、我々には空気感が読みにくいところもあるが、作品全体を網羅して様々な解説をしているものとして非常によく出来ていると思う。

一つ。訳者は、「緋色の研究」に[「緋色の習作」が正しい訳]などとこだわっておられるが、はっきり言って煩わしい。もはや長年馴染みのある訳だし、「緋色の研究」の方が断然カッコいい!私は「研究」賛成派である。

百田尚樹「ボックス!」(2)

ううーん、百田尚樹は、直接的で、ドラマティックさに重きを置く作家た。「永遠の0」から肌合いの合わなさを感じていたが、この作品もそう思った。

ボクシングの天才で、典型的な大阪のヤンチャ、鏑矢と、その幼ななじみにして親友の優紀。学業の特待生で運動をしたことのなかった優紀は強くなるために、鏑矢のいるボクシング部に入る。

後はもう、アマチュアボクシング、プロのボクシングについての専門的な知識やボクシングへの考え方、そしてリアルな試合の描写と白熱の行き着く先・・面白くて次、次と読むのは確かだが・・。

うん、やっぱ肌が合わない。好みの問題。

三島由紀夫「青の時代」

破滅的な秀才の行動。戦後若者の虚無感を表しているらしい。奇しくも書き終わりの日付が、1950年の10月31日で、読了の日と同じだった。

久しぶりに読んだ三島はまあ、暗い中、やはり何処かに破壊的なところがある物語だった。

千葉の海辺の都市で育った誠は旧制一高、つまり東大に合格するが、詐欺で大金を騙し取られてしまう。その学友とともに嘘の金融会社を設立すると、経営が軌道に乗り高利貸しも始める。

戦争を挟んで復学してからの金融業である。このころのモダンな文学には、割り切った機械的なものではない微妙な、些細な迷いが見られ、たまにあるある、と共感してしまうのだが、今回は秀才のプライドをひたすら見せているだけのような気がして、また難しくていけない。

ストーリーも自滅的で、なにか自らの作り出す理屈に合わせているようである。当時の風俗は興味深い部分もあるが、まあもうふたつ、だった。

10月書評の1

わーっと読んだ時期もあり、なんかスポーツに寄っていたような、でもいっぱい読んだ10月だった。ホームズものも2つ読んだし。長く感じる読書月だった。

14作品16冊。では行ってみましょう。


殊能将之「ハサミ男」

だいぶ以前に傑作として名前を聞いたことがあったこの作品。おそらくそれは、出版された1999年の頃の事だったのだろう。最近書評を見かけ、読んでみる気になった。

女子高校生を殺し、死体にハサミを突き立てたり、顔を切り裂いたりする「ハサミ男」。ハサミ男は、次のターゲットにした由紀子の家の近くにある公園で、彼女が殺されているのを発見する。死体にはハサミが突き刺してあった。

いきなりシチュエーションの変換から入る、粋なサスペンスである。なんというか、最後までズレているのが特徴か。そして、どんでん返しにより、再読したくなる内容となっている。またクールさが目立つ文体である。

これはまあ、どう特徴を持たせているかはよく分かったが、すっきりしない部分も含めて、名作かと言われると、私的には疑問符が付く。うーん、といったところだ。

桂望実「嫌な女」

評判が高く、書店で目に入って、思わず買ってしまった一冊。女を武器に詐欺を働く夏子と、その縁戚で夏子が起こすトラブルの火消しをする弁護士・徹子の物語。

夏子と徹子は同い年で、若い頃から始まり、70才を超える頃までの、人生を含みこんだストーリー。徹子は一貫して、過剰なほどクールな女で、一方の夏子は女を武器とし、感情を隠さない性格。しかし、夏子は描写か伝聞としてしか登場せず、両方の主人公と距離があるまま話がずっと続いていく感覚に囚われる。

トラブルは起きるものの、全体としては淡々と進行する。静かに迫る感覚。そして、この作品は、人生における孤独との向き合い方もまた一つの芯にしている。よくもまあこんな構成を、キャラクター立てを考えたものだ。読了したとき、感動こそないが、全体としてストン、と落ちた感じがするから不思議である。傑作とは正直思わないが、読んでみてよかったかなと思わせられた。

長友佑都「上昇思考」

2ヶ月続けて、ナガトモの本。「日本男児」が一代記とすれば、こちらはどのように心を保つか、ということをクローズアップしている作品だ。

だからというか、「日本男児」を読んだ前提で書かれているような部分がちらほら見られる。

インテルのサネッティのことなど、特に人との出会いという点では、具体的で面白い。それ以外は、長友も同様なことを書いているが、同じ事を手を替え品を替え説明している感じである。読んでいて少しじれったくなる時もあった。

いつも読み返すという祖母からの手紙、については胸が温かくなる。まずまず楽しんで読んだ。

ジョン・H・ワトスン著
ローレン・エスルマン編
「シャーロック・ホームズ対ドラキュラーあるいは血まみれ伯爵の冒険ー」

難破した船の操舵輪に自らの手を括り付けた船長の死体、その首には2つの噛み傷があったー。

1978年にアメリカで発行されたパロディで、翌年に日本でも出版されている。私が手にしたのは、1992年に文庫版として再訳出されたものである。これが10年ぶり3度目くらいの再読だ。

まあ、パロディここに極まれり、というくらいのものなのだが、中身は真剣そのもの。ホームズはドラキュラと真っ向から対峙し、ブラム・ストーカーの小説に登場したヴァン・ヘルシング教授一行とも邂逅を果たす。

ホームズもの長編第2作の「4つの署名」を彷彿とさせるような、探偵犬トビーの活躍ほかシャーロッキンの頬をゆるめる要素がいくつかある。突飛な発想だが、なかなかいいな、と今回も思ってしまった。

由良弥生
「眠れないほど面白い『古事記』」

数年に一度、神代ものを読んでしまう。私は、子供の頃に親から与えられたマンガの影響もあり、日本神話が好きなのだ。コンビニでよく見かけ、興味を引かれていたのだが、ついに、品川駅で買ってしまった。

中身は意外に淡々としている。「眠れないほど面白い」というから、もっと削って、絞って、誇張してあるのかと思ったら、上中下巻の大筋を現代語にし、より分かりやすくデフォルメしているだけである。

イザナキとイザナミの話、アマテラス、ツクヨミ、スサノオの誕生、スサノオの乱暴狼藉に、天の岩戸の話。また八岐大蛇、苦労したオオクニヌシ、国譲り、タケミカヅチ、天孫降臨、サクヤビメ、海幸彦山幸彦、勇敢で哀しいヤマトタケル・・

倭は国のまほろば
たたなづく青垣
山籠れる倭しうるはし

今も読むとときめくが、相変わらず前後関係とか、神々の名前についてはうろ覚えで、何回読んでも、正確には覚えない。(笑)

ちなみに、本屋さんにしてもらったカバーは、京都・福知山市の観光案内で、大江山の鬼の博物館にめっちゃ行きたくなった。

藤原伊織「シリウスの道」(2)

伊織色満載の作品。大手広告代理店に在職していた筆者が、ホームグラウンドを舞台に、特殊な物語を描いた作品。代表作である「テロリストのパラソル」へのオマージュともなっている。

専門用語も多く、ビジネスでの話が多過ぎる気もするが、おそらく本人は、書き足りないのではないだろうか。(笑)幼なじみの思い出が大きなウエイトを占めるが、大なり小なり、同じことがあるような、サラリーマン社会の縮図も物語の芯だ。また、藤原伊織ものには欠かせない、微妙な恋愛関係や、主人公のハチャメチャさ、そしてお気楽さも入っている。息をつかせぬダイナミックなストーリー展開も相変わらずだ。

こうして全体としてまた伊織ワールドが形成されているが、いままで読んで来た中では、「ダックスフントのワープ」と「テロパラ」だけが異色の作品で、他は同質感がある。この人の手になる作品で、違う展開のものも読んでみたいな、というのが、正直な感想で、また別の本を手に取ってみることになるのだろう。

中村文則「掏摸」

「スリ」と読む。大江健三郎賞受賞、数カ国後に訳されて海外でも出版されているそうだ。日本がこんなにひどい国だと思われたらどうしよう、そんなストーリーでもある(笑)。

人の懐から財布をスリ盗る、天才スリ師の「僕」は、血も涙もない、会いたくなかった相手、木崎と再会し、厄介な命令を受ける。失敗すれば命は無いー。

純文学風な話でもある。心理的に人の快楽、というものの一部を表そうとしていると思うが、正直もうひとつだという感想だ。

マンガでも小説でも最近特によくあると思うのだが、都合のいい、深い訳は話さないでOKの、スーパーパワーキャラクターを登場させると、話が簡単になってしまう。例えばこの界隈を仕切るヤクザのドンで、この人の耳に入らないことはない、とか裏で全て糸を引いている、とか。

扱っているテーマも分かるような、でもやっぱり違和感があるような感じである。物語を超える力を、残念ながら感じ取ることは出来なかった。ただ先も知りたいので、姉妹編だという「王国」も文庫が出たら読んでみよう。

2013年10月28日月曜日

短い秋

去年、9月半ばのものすごく暑い日に外仕事をして、月末に台風が来て涼しくなって、2週間前はあんなに暑かったのに、と思ったものだ。

今年は、10月に入っても30度を越す日があって、台風はむしろ暖かく湿った気候を持って来ていた。昨日から今朝で台風27号は列島の南に沿う形で行ってしまい、やや涼しかった。

土曜日は、世界スーパージュニアテニスを観に行った。靱テニスセンターのセンターコート。観客席付きの専用テニス場に入るのは初めてである。観客席への通路出口には係員がいてロープを張り、コートチェンジの際にしか出入り出来ない。

女子ダブルスの準決勝。イギリスペアと中国ペアのクォーターファイナル。全員デカい。女子でも、4人のうち3人は180センチあるのでは?という身長。妻曰く「カモシカような足」がスコートから伸びている。

お客さんは3分の1くらいの入りで、一番前で観た。さすがにジュニアとはいえ世界大会。ショットも動きも細かくて速い。プレー中はシーンとして、ポイントが入ると拍手。息子も拍手する。最初の試合はサービスエースの少ない、駆け引きの戦いで、第1セット7-5、第2セット6-4の接戦をイギリスペアが制した。

入場した時は太陽が出て、厚着してきたけど暑いな、と思ったが、曇って風が吹いて寒くなった。インターバルは、喫茶店で温かい飲み物を補給。会場が靱公園で、オシャレな店がたくさんある。パパはパニーニのランチセットを食べた。ケーキセットを頼んだママは、喫茶店でケーキなんて久しぶりよ、と笑っていた。

息子は朝はテニス行きたい、と言ったのだが、試合は長時間だし、やはりそう面白いものでは無く、歩いて15分ほどの、市立科学館へ連れて行って遊ばせる。ママは男子ダブルスを観戦。やはり男子は迫力が違い、リアクションも大きくて盛り上がったとか。

帰ってきて、シングルスかと思ったが、女子ダブルスのクォーターファイナルもう1試合。日本人の選手が、オーストラリア人とペアを組んで、やはり国籍の違う白人ペアと戦い、ワンサイドゲームで勝っていた。この試合は日本人が入ったペアのサービスエースがよく決まっていた。

暗くなってきて、帰りにしばらく歩いて、トマトラーメンと餃子食べて帰った。東京に居た頃から、ママはテニス観に行きたい、と言っていたから、ようやく念願果たしたかな。来年はファイナルを観に行こう、と話した。

で、日曜日はママ友家族を呼んでバーベキュー。前日と同じような天候で、屋上は陽が照ったら暑く、陰ると寒い。先方はママと中2のお姉ちゃんと、小3のぼく。同級生の息子とぼくは家中で遊び回っていた。

大人組はゆっくりソーセージ、パプリカ肉詰め、肉に焼きおにぎりなど食べながら談笑。屋内に移ってお茶にお菓子。長年の付き合いだけあって、なかなか楽しい時間だった。

日本シリーズはマーくん負けず、完投で1勝1敗。頂上決戦の投手戦は、ものすごい緊張感を孕む。面白かった。夜、外はもう寒い。季節はもう短い秋である。のんびりの、動いて快適な土日だった。

2013年10月19日土曜日

神無月にかこまれて

中学生のころ、私はギター少年だった。小学校から一緒の、ギター友達がいた。少年野球でも一緒、中学では、彼が野球部、私はバスケ部だった。

彼はお兄さんもギターを弾いていて、当時のフォークソング全体に詳しかったし、楽譜も持っていた。よく彼の家にギターを持って遊びに行き、お互い弾きながら、ギターのコード表だけじゃなくて、バンドスコアも欲しいねーとか楽しく話していた。一緒にコンサートにも行った。

そんな彼と2人で合わせたのが、井上陽水「神無月にかこまれて」だ。フォークギター的には、最初激しく、途中アルペジオがカッコよく入る部分があった。リードギターは上手な彼が担当し、私はサイドを弾きながら歌った。不思議な歌詞だった。

10月、序盤は暑過ぎた。35度超の10月史上最高気温も出たとか。大阪も、30度超える日もあり、夜は一時期落ち着いていたが、気温が下がらず、先週はまたドライをかけて寝ることもあった。いつも、人間的に見れば異常気象でも、地球の歴史規模で見れば大した変化じゃない、などと偉そうに思っているが、結局のところは、やっぱり暑いのは嫌である。

こないだの土日はいい天気で日中暑く、でもカラッとした気候。何回目かの秋っぽさだなあ、と思っていたら、いきなり台風が来た。しかも関東に上陸する可能性のあるものとしてはここ10年程度で最強、しかもチョー大型。夕方には関西も強風域に入っていた。

ちょっと警戒したが、関西では、雨はそれなりに降ったがさほどでもなく、風も、夜のうちはさほどでもなかった。朝方にはかなり強く吹いて何回も目が覚めたが、ちょうどひと月前に来た台風の時は、何というかパワーがあって、2階に居ると家全体を揺らすような風だった。今回は突風系で、ヒュウウウー、という音が聞こえたが、さほどパワーは感じなかった。

しかし台風は、今度こそ空気を入れ替えてくれたか、朝晩すごく寒くなった。これくらいで、いつもの10月だと思う。すなわち朝晩は寒涼しいが、日中は、秋冬の服にはまだ暑い、といったくらいの。11月まで似たような気候が続き、いきなり寒くなるパターンだ。

にしても、やっと秋っぽい格好をして行けるかな。ポロシャツはついに終了だ。

サッカー、日本は、今はうまく行っていない状況。ベラルーシ戦もさっぱりだった。本田は新しいことにトライしている、と言っているが、最低限の得点パターンは持っておくべきかと思う。今回は、分析はせず、イライラしたし、つまんなかったとだけ言っておこう。負けは、欠点を洗い出し、危機感を募らせる。時間があるうちの自省力に期待する。まだジタバタできる。

この土曜は久々にIKEAに行った。ここのレストランは大人的には美味しくない、不味いが、どこの家でも、子供は行きたがるそうだ。ウチも好きである。息子は定番のミートボールとポテト、大人はクリームソースの冷えたパスタを食べて、パパと息子は隣の市立科学館へ。

6つの展示室回って、斜めの部屋とかクイズとか、体力測定ものとかで適当に遊んで、スタンプ全部のコーナーで押して、地下の自販機でジュース飲んでおしまい。神戸ポートアイランドは、ポートライナー含め、全体にインフラが老朽化しているが、この科学館ではいまだに冥王星が太陽系の惑星扱いである。うーむ。

ただ老朽化、というか古き良き時代を反映し、喫煙所は外と地下の食堂外に設置してある。建て直しになったら、趨勢から行って、完全禁煙になりかねないな、などと思う。

明日は肌寒い涼しさだが、来週はまた最高気温が上がる日もありそう、との予想。10月も終盤で最高気温予想が25度を超えるのはカンベンして、という感じだ。でも、もっと嫌なのは、また来ている台風27号。もう、本当に、来ないで欲しい。いやほんと。

2013年10月6日日曜日

旅読

先週から今週は、全部日帰りで旅から旅となった。岡山に行って、台風が来る中仙台へ。仙台は少しは涼しかろうと思ったら、台風で湿った空気が入ってきてるのか、関西と大差なく、ホンマにはるばる東北まで来たのかな、という気にさせられた。

そして東京。これがまた暑かった。帰りに大阪に着いたらまた生ぬるい空気が出迎えた。30度近くまで上がるのはそろそろやめにして欲しいのだが、いつまで暑いんだろう。バテバテだ。

しかし出張が多いと読書が進む。特にここのところ読みやすい作品が多いせいか、今月は、6日間で5冊。まあここからは本格派の小説や上下巻が控えているので、おそらく月末にはいつもくらいになるだろうが、それにしても早い。

寝かしつけの時の話、イザナキ、イザナミの話をしようとしたら、「それはもう聞いた。桃太郎・完結編にしてくれる?」とリクエストが。

ここまで、桃太郎の話を飛躍させて、犬猿キジだけだなく、猪に熊にムササビにカブトムシなどを加えたり、鬼と来れば、で頼光四天王に請われて渡辺綱の家来になったり、鬼も酒呑童子やいくしま童子や茨木童子に色んな性格付けをしたりエピソードをたくさん作ったりとバラエティに富んだ話をその場で作って来た。しかし確か・・

「桃太郎はもう2回完結したぞ」
「じゃあシーズン3のスタートね。」

ああ言えばこう言う。今回は、10歳で鬼ヶ島に行った桃太郎、2回目で渡辺綱に付き従ったのが20歳、そして今回はさらに20年経って、元のお姫様と結婚した桃太郎は持ち帰った鬼の財宝のおかげで裕福に暮らしているが、子宝には恵まれなかった。ある秋の日に桃太郎が散歩していると、川の上流から大きな梨と大きなイガ栗が流れてきて、年はとっても力持ちの桃太郎は両方拾って持ち帰り、梨の中からは可愛らしいお姫様が、イガ栗の中の2つの実からは2人の男の子が産まれた、という話。

成長した梨姫は過去と未来を見通す能力を持ち、栗太郎と栗次郎は両方とも力持ちで賢く、栗太郎は物書きが、栗次郎は算術が得意という特徴を持つ。噂を聞いた老碓井貞光が、最近暴れ出した鬼の退治のために、3人を迎えに来る、という設定にした。このへんで息子は夢の世界に行ってしまった。

さあこれからどう展開して行こうか。少しは考えとこうかな。きょうはこれまで。それにしても、夜も蒸し暑いこと。せめて写真だけでも涼しげに。

2013年10月1日火曜日

9月書評の2

週末は、暑い中運動会で朝から午後まで日なたに座っていた。昔の私の小学校みたく、地区ごとにテントを張ってこの中で見てね、という感じにはならないもんだろうか。あとは、離れたところに喫煙所を設けた方がいいと思う。無いとマナーが悪くなる。

食の細い息子もお弁当のおにぎりはやはり美味しいのか、普通サイズのを3つほぼ完食。パパと同じくらい食べた。

翌日は岡山に出掛けて外仕事。30度近くまで上がっただろう。また焼けたかな。ちょっとバテた。

さてでは後半スタート。記念すべき年間100作品目は、アッコちゃんでした。

三浦しをん
「まほろ駅前多田便利軒」

調子のいいタイトルだが、れっきとした直木賞受賞作だ。東京都から神奈川に突き出した形の地方都市、まほろ市で便利屋を営む多田のところに、ある日、高校の同級生で、何を考えてるか分からない行天が転がり込む。2人は依頼を通じて、さまざまな問題に突き当たる。

三浦しをんは、ここまで「舟を編む」「風が強く吹いている」と読んだが、マンガチックだなあ、という感想だった。タイトルからして、同様の展開を予想していたが、確かにそうではあるものの、こちらは石田衣良にも似た、街の事件簿のようなもので、深刻な過去がやがて浮き彫りにされる。

昔、「イカ天」で、セックス、ドラッグ、バイオレンスでロックンロール、とのたまった女ヴォーカルがいたが、そこを地で行っている感じだ。都合の良さも垣間見えるが、ここに来て初めて、三浦しをんの変幻自在ぶりが分かったような気もしている。

「まほろ」には、作品を超えたパワーがあるのは確かだ。ちなみに、まほろ市はあそこじゃないかな、と思ったら、解説にそんなことも書いてあった。もう一作、続編の「番外地」もあるそうだからいずれ読んでみよう。

道尾秀介「カラスの親指」

ともに哀しい過去を持つ、詐欺師コンビのタケさんとテツさん。2人の住まいへ、ひょんなことから18才のまひろが同居することに。さらにおかしな同居人が増えて、共通の敵に向かい、大掛かりな復讐作戦が発動される!

映画化された、芝居がかった物語。日本推理作家協会賞受賞作品。人情ものでもある。

道尾秀介といえば、暗い、が定番で序盤はコミカルな中にも、かなり暗いエッセンスが多く散りばめられている。サスペンス感も、ミステリー感も、人情ものの感じも、コミカルな雰囲気も、すべて内包した作品と言えるだろう。そういった意味では、これまで読んだ作品とはまた違う、人生観をも問うストーリーだ。

オチをどう評価するか。私的にはあまりにも大掛かり過ぎて納得するのが難しい。まあ物語だから、とも、作者持ち前の暗さを逆に活かした形になってるな、とも考えられる。思い切った、異色の作品であることは間違いないだろう。退屈はしない。

柚木麻子「ランチのアッコちゃん」

身長173センチ、営業部長のアッコさんと、フラれたばかりの派遣社員、三智子。アッコさんは、三智子が作るお弁当に目を留め、1週間、自分とランチを交代することを命じる。

「終点のあの子」で好感を持っていた柚木麻子。この作品はすでに10万部を売り上げ、ベストセラーになっている。大阪・梅田阪急の12Fレストランでは、この本に出てきた料理を出しているという。

私には珍しく、どうしても今すぐ欲しくなってハードカバーで買ってしまった。4編の短編が詰まっている。当初は8編にする予定だったとのことで、第2巻が出るのではないかと踏んでいる。表紙のお弁当写真は、デザイナーの手作りだそうだ。

マンガのような小説で、ストーリーも、そんなにうまく行くかいな、と冷静に思ったりするが、でも、でもね、これは傑作だ。出てくる食べ物も美味そうだが、東京の街が生き生きと描かれているのも見事な彩りとなっている。

何より活気がある。読後感が抜群にいい。柚木麻子、見込んだ通り、只者ではない。

乾ルカ「メグル」

大学学生部の不思議な女性、ユウキ。アルバイトを紹介する係の彼女は、時に強引に学生にアルバイトを引き受けさせ、最後にこう言う「あなたは行くべきよ。断らないでね。」そして学生には数奇な運命が待つ!

「あの日にかえりたい」が直木賞候補になったことで興味を持った乾ルカ。しかし最初に読んだ「蜜姫村」でいたく失望し、この本も買わないでおこうか迷ったが、おそらく、今回はこの作家の本質の一部に迫ることが出来たかな、と思う。

さらりとした筆致で、不思議で、おどろおどろしくもある現象を描く。ベースには、主人公に潜むドラマがある。舞台は北海道だが、さりげなさすぎる程の土地感覚しか表現が無い。不思議な部分には解決も説明もないが、今回はボトムに温かさ、滑稽さがあるため、絶妙のバランスが好感を与える。

これがシリーズになったら、また買っちゃいそうだ。「月光」も「あの日にかえりたい」も、読んでみたくなった。

アンソニー・ホロヴィッツ
「絹の家」

シャーロック・ホームズの正統派パスティーシュ。いや今回はパスティーシュと言っていいのかどうか。ホームズ物語は、56の短編と4つの長編から成っているが、「絹の家」はコナン・ドイル財団から正式に、シャーロック・ホームズ61番目の物語、として初めて認定されている。

ホームズへの依頼人をアメリカから追ってきたというギャングについての捜査中、ベイカー街イレギュラーズのメンバーが惨殺される。責任感を胸に、ホームズはあくまで戦うことを決意するが、相手は途轍もない組織だった・・!

アンソニー・ホロヴィッツの名前は聞き覚えがあったので、持っているパスティーシュ集を探してみたが一つも無かった。重厚にして長大な、迫力のあるホームズ物語。ホームズのセリフを含めて力強いものとなっている。最後まで飽きさせない仕掛けを含め、パスティーシュには珍しく、浮ついたところがあまり無い、パワーのある作品となっている。

冷静な目で見ると、発想の飛躍が見られる気もするし、やはり聖典と比べると丁寧では無いと思う。また、なんというか、ドイルは二重の仕掛けはあまり用いず、読者が絵、もしくはアニメ、もしくは映像として思い浮かぶシーンの構築に長けていたこともあり、ちょっと異質なものも感じる。

ただ、濃厚で傑作と言える、手応えのある、会心の一冊ではあった。最後は見事な展開かと思う。推理小説としてもいい出来である。