2013年9月1日日曜日

8月書評の1

8月は11作品。スポーツもの、ホームズもの、また怪奇?シリーズなどバラエティに富んだ感じがする。年間トータルで100冊を突破した。では行くぜっ〜レッツゴー〜♪

ジュリアン・シモンズ
「知られざる名探偵物語」

イギリス推理小説の重鎮である筆者が、シャーロック・ホームズ、ネロ・ウルフ、ミス・マープル、エラリー・クイーン、メグレ警視、エルキュール・ポワロ、フィリップ・マーロウといった7人の名探偵についてのサイド・ストーリーを創作して集めた一冊。日本では昭和62年、1987年の発行である。

シャーロック・ホームズは、「冒険」の一編になぞらえてあり、他にもパスティーシュが書かれてあるものは比較的面白かったりしたが、全体には眠い本であった。この本を読んでいる時期はこの半年で最も体力を使って仕事をしていた頃だったのですぐ眠気が来たのかも知れないが。

ホームズはもちろん、エラリー・クイーンやポワロは若い頃よく読んだのである程度おなじみさんである。またメグレ警視は.、映画「仕立屋の恋」の原作だったので好感情があるが、他はほぼノータッチ。パスティーシュでなくて研究的な創作であれば眠くなるのも無理はないかと思う。

まあ、東京時代に神田神保町の推理小説専門の古本屋で買ったもので、まだ手をつけてないうちの一冊だったから、読了してちょっとほっとした。

日々野真理「凛と咲く なでしこジャパン30年目の歓喜と挑戦」

女子ワールドカップにリポーター・インタビュアーとして帯同した筆者が語るなでしこジャパン優勝の軌跡。

筆者は長年女子サッカーを取材していて、また女性同士、ということもあり、選手インタビューの答えは、真に迫っていると思う。

これだけ実績を残しても、女子サッカーの環境は、とてもいいとは言えない。だからこそ、好きでなければ、やる気が無ければ、続けられないとも言えるのだが。

女性らしさもあり、すごく綺麗な一冊だった。

奥田秀朗「サウスバウンド」

2004年、「空中ブランコ」で直木賞を受賞した奥田英朗が、その次に刊行した小説である。私も、本当にたくさんの読書仲間から、奥田英朗はいい、と聞かされ続け、ここに来て初めて読んだ。

東京に住む小学6年生、二郎は変人で偏屈な父に振り回される生活を送っている。嫌なことはあったが概ね良好だった日常に事件が起こり、父が引っ越し先に選んだのは、はるか南の島だったー。

久しぶりに日本の現代長編小説に戻った。まあこの作品が連載されていたのは10年前だが。正直な感想は、ホンマに面白かった、だ。

10年前というとロハスとかスローライフという言葉が流行っていた頃であろうか。この作品は、そんなニーズを批判もしているようで、逆に応えている、と思える。

二郎の父の生き方は、現代社会で鬱屈のたまった我々に、明らかに一石を投じているように見える。それにしても、次から次へと事が起こるので、最後まで飽きさせないし、訳の分からないハチャメチャの展開も微笑ましく、楽しめる。正直深さがあるとはもう一つ思えないが、次も読んでみよう、と思わせる。まだ作家的な特徴は分からないが、楽しみだ。

相場英雄「震える牛」

大ヒットした、社会派警察小説。警視庁刑事で迷宮入りしそうな強盗殺人事件の再捜査を指示された田川。調べを進めて行くうちに、日本を揺るがす真相に突き当たる。

ほぼ1日で読んでしまった。なるほど面白い。日本の食品全般に警鐘を鳴らす作品と言えるだろう。誰もがうっすら分かっていながら日常に流されている事実に目を向けている。そう、真相が分かって行く捜査の過程も面白いが、新聞などで取り上げられても社会的には意図的に目を背けられて来たことに、シンプルに斬りこんでいる感じがいいのではないか。

ストーリーはもちろん作った物語だが、中身は濃厚である。オチはあれれ、となったし、ではそうならないためには、という代案提起も無いが、充分に面白かった。

道尾秀介「月と蟹」

やっと出た、待っていた文庫化。2011年の直木賞作品である。それにしても、経歴紹介を読むと華々しい。ファンが多いという「カラスの親指」で日本推理作家協会賞を、「光媒の花」で山本周五郎賞を取っている。「このミス」ベストワンの「向日葵の咲かない夏」それから「ソロモンの犬」と、私的にはイマイチだったものの、特殊な筆致も感じ、また評判もいいので、期待が大きかった。

感想は、小手先ではなく真っ向勝負の作品、という感覚だ。ただし表現は抑えてなく、直接的だと思う。そして、やはり暗い。とっても。

小学生が抱く感情や行動は、納得できるものがある。もちろん全面的にでは無いが、そこには丁寧な、考え抜かれた表現を目指す姿勢がある。今回は、危うさを漂わせながらも、極端な壊れた行動は無かった。そう思わせて、読んだ後どこかホッとできる自分がいた。どこかで、こんなに小学生が考えた行動や言動ができるものかは、とも思うが、濃厚な作品だったことは間違いない。

長谷部誠「心を整える」

誠、は私の祖父と同じ名前である。息子を名付けてしまってから気がついたのだが、苗字に座りが良く、中身もあって、正直言って新撰組もイメージできて、いい名前だと思う。長谷部も誇りに思っているということで、嬉しくなった。

さて、こ存じ、日本代表キャプテン、長谷部誠選手が、テーマを持って書いた本。彼の真面目でクレバー、博識な部分が溢れんばかりの作品になっている。

これまで沢山の自伝を読んだし、選手が直接書いているものにこだわったりした。ドゥンガ、レオナルド、ストイチコフ、ベンゲル、トゥルシエ、中村俊輔、遠藤保仁。

今回ほどプロフェッショナリズムについて考えさせられる本は他に無い。ビジネスをしている人なら、仕事に際し、準備と人に対する接し方を考えると思うが、サッカーのプレーやゲン担ぎの部分だけでなく、こうまで具体的に準備したり考えているのか、と思わされたのは初めてだ。

思うに、どれほど突き詰めて思考しているか、がよく表れている、という事だろう。ただ最近の流行りなのかな、あまり特殊な立場で一般ビジネスの場を相対化しない方が良いかと思う。

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