2022年1月22日土曜日

1月書評の4

ミュシャの続き。ヌードはチョイス間違ったかも。お腹が不自然に大きいかな。赤系の色に惹かれたんだけど。クリムトもそうだけど、オリジナリティあふれる装飾がすごい!


◼️ シャルル・ペロー「長靴をはいた猫」

「赤ずきんちゃん」「眠れる森の美女」、シンデレラ、そして表題作と珠玉の童話集によい色合いがついている。

まったく知らなかった。これらの有名な童話たちは17世紀、グリム兄弟やマザー・グースに先駆けてフランスのペローが民間伝承をまとめたものだそうで、はじめての児童文学とも言われているとか。グリムと結末が違ったりするのも面白い。

「猫の親方あるいは長靴をはいた猫」
「赤頭巾ちゃん」
「仙女たち」
「サンドリヨンあるいは小さなガラスの上靴」
「捲き毛のリケ」
「眠れる森の美女」
「青髯」
「親指太郎」
「驢馬の皮」

が収録されている。

全般的に先を見通す力や魔法の力を持った「仙女」がよく出てくる。最初の訳は昭和48年らしいがちょっと澁澤龍彦氏の言葉にこだわりと時代性を感じたりして。

また立派な家の主人や王女さままでが実は人食い鬼だった、という設定も面白みを加えている。トミー・ウンゲラーの絵本「ゼラルダと人喰い鬼」を思い出したりして。

シンデレラはいつも灰の上に座らされているので継母のイジワルな姉たちにキュサンドロン(灰だらけのお尻さん)、サンドリヨン(灰だらけさん)なんて呼ばれていて語感に惹かれるものを感じたりして。

「眠れる森の美女」では100年眠る姫を寂しくさせまいと下僕や食べ物までフリーズさせてしまってなんかSFっぽい。「青髯」は猟奇的、親指太郎はその上にミョーに耽美的な匂いもする。

表紙の絵は、この物語訳出を掲載したのはanan創刊号からだそうだ。挿絵を担当した片山健氏が描くダヤン将軍のような猫の絵を澁澤氏はとても気に入って、本にする時にも起用したとか。ふんだんな挿絵は物語を超えてエロティックで倒錯的。シュールレアリスムかっていうくらいこの本が醸し出そうとしている世界を補完・強調している。


1600年代のフランス伝承説話の世界が見えてなかなか興味をチクチクとつつかれた本でした。


◼️ 「自分の心をみつけるゲーテの言葉」

知の巨人・ゲーテ。読むと興味が出てくる。

実家は祖父の代からの家で、姉が小さい頃にはまだ未婚・学生の叔父叔母が一緒に住んでいた。私が生まれ物心つくころにはすでにいなかったのだが、姉が使っていた部屋には叔母の年代ものの両開き本棚が中身ごと残されていて、世界の名作が文庫でずらっとあった。高校生の私はその中から「ファウスト」を選んで読んで、よく分からなかった。劇の脚本は生まれて初めてだったと思う。

ゲーテは1749年に生まれて82歳まで生きた。同時代人はモーツァルトやナポレオン。著書多数で多言語を操り、鉱物や色彩にも詳しい。ワイマール共和国に招かれ政治もやった事があり、恋多い人生をおくった。「若きヴェルテルの悩み」「ファウスト」のほか沢山の作品を残している。

そんなゲーテの言葉、たくさん紹介されている。心に残ったものだけを。

「我々は正しいものをつかまないで、とらえ慣れているものをつかむ」

「日々は迷いと失敗の連続だが、時間を積み重ねることが成果と成功をもたらす」

「生活は、したいのにできない、できるのにしたくないの二つから成り立っている」

「人間は現在をどのように生かしていいのか知らないから未来に期待や憧れを持ったり、過去に媚を送ったりする」

「愚かな者も賢い者もどちらも害にはならない。半分ばかな者と半分賢い者がもっとも危険である」

どれもなかなか痛いことばかり。経験はあるとなしでは大違い。でもなくてもトライはしなければいけない、とは仕事をする上で旨となっている。

たしかホームズの「緋色の研究」で、ホームズがスコットランドヤードの警察を評してワトスンに、小才の効くばかほどやっかいなばかはない、と言っていた。これも実感と反省が湧く。

未来への過剰な期待と、過去への媚は言い得て妙だなと。

ふむふむと読んだ。


ファウスト、もう1回通読したくなった。若きヴェルテルや、「鉄の手のゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン」もおもしろそう。まあおいおい読んでいこうかな。"疾風怒涛"の話も興味あるな。

また折に触れチョイスするジャンルの数が増えたかな。

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