晴れて最高気温は15度とかまで上がるけど、北風が冷たい週末。半袖Tに薄ーいユニクロパーカー、その上にユニクロライトダウンを来てちょうどいい感じ。出る時はネックウォーマーに手袋必須。
Bリーグは今節終われば天皇杯ブレイクを挟んで残り10節。西地区4位エヴェッサ大阪は3位名古屋に連勝、3位となりプレーオフ圏内に浮上した。東地区4位で応援している富山は2位千葉に1勝1敗。東地区は下位まで差が少ないのでこれからがまさに落とせない勝負。
ショパンコンクールの本を読んで、たくさんショパンを聴いている。「子猫のワルツ」やコンチェルト。2015優勝、端正なチョ・ソンジンと3位のロマンティック派、ケイト・リウを聴き比べると面白い。ケイトのコンチェルトには泣いてしまった。一方で、ファイナリストに人気のグリゴリー・ソコロフのショパンを聴くと、若手の演奏は軽く思える。
でも張り詰めた緊張感の中、おそらくコンステタントたちが研いで削ってしてきたショパンを聴くのはコンクールならでは。充実してるな〜。
◼️ 葉室麟「墨龍賦」
迫力ある龍の水墨画で有名な絵師・海北友松(かいほうゆうしょう)その生涯。
実を言うと4年前に京都国立博物館(京博)で海北友松展があり、そこで初めてこの絵師を知った。なんといっても龍の絵。もう迫力あるなんてものじゃない。鬼気迫る感じ。
昨秋は四条河原町や祇園にほど近い建仁寺に行ってきた。雲龍図の管理は京博に寄託していて、建仁寺にあるのは精巧なレプリカ。しかし、何かの魂がこもったような絵から発散される直接的な力と、妖力ともいうべき内的な強い、黒いものは伝わってくる。もはや瘴気すら想像させる。
晩年に豊臣秀吉や春日局に認められたのは間違いないが、実は海北友松の生涯は謎に包まれているそうな。今回は史実をもとに創造したエンタテインメントと言えるだろう。
戦国時代末期、浅井家の家臣の家に生まれた三男の海北友松は、十代に東福寺に僧として入れられることになった。やがて画才が認められ、狩野永徳に弟子入りする。逞しい偉丈夫に成長した友松は武家の誇りを胸に還俗しようかとも思うが、絵師のまま、明智光秀やその部下の斉藤利三、毛利氏の代理人・安国寺恵瓊とも付き合いを深め、戦国の動乱に否応なく巻き込まれていくー。
老成の絵師ということをうまく利用する形で、戦国末期の有名人と友松とをうまく絡ませたエンタテインメント色の強い物語である。正直で愚直、やや頑固な主人公像は芯が通っているようで魅力がある。土佐の長宗我部元親や「我に七難八苦を与えたまえ」と天に祈ったという英傑、山中鹿之助との邂逅もなかなか面白い。
不思議なくらい危地がなく、日本史の最も人気のある部分を俯瞰して見ることが出来ている、のにはやはり違和感があるかな。
なぜ龍なのか、どうして気魄と妖しさが塊となっているような絵なのか、も分かるようになっている。ただまあやっぱ軽さは否めないか。エンタメだし。
狩野派は上品できっちりした、豪奢な作品が特徴。弟子だった友松にも同様の作品はあるが、好対照な荒ぶる水墨画に、やはり惹かれてしまう。狩野派はまた長谷川等伯とか若冲とか有名絵師とやたら絡みが多いこと。
海北友松展の年に上梓された作品で着眼点とタイミングはとても嬉しありがたかった。もう少し有名になってもいい絵師のような気がする。
◼️青柳いづみこ「ショパン・コンクール」
読んで動画を観て。本当に面白かった。ピアノコンクールものは永遠の定番かも。
図書館でふっと手にした本。前回2015年ショパン国際コンクールを取り上げているらしい。5年に1度だから、去年、さすがになかっただろうから、今年。そうか!と。
2010年の優勝者ユリアンナ・アヴデーエワはNHK交響楽団とのコンチェルトをテレビで観た。でも2015年の情報は知らず、最新の情報を得たくなり、借りてきた。動画もたくさん観て、没入しましたね〜。
序盤の方に衝撃的な事実が。2010年のコンクール、アヴデーエワは事前のDVD審査で落ちていて審査員の1人が異議を申し立てて復活した、と。結果的にアヴデーエワだけではなく同ランクの55人もと通過者が再召集されたのだが、大変な混乱ぶりだと、素人にも伝わってくる。
ピアノの音が精緻な部分まで問われる審査に、画質・音質に技術力、環境が左右されるDVDは難しそうだ。
ちなみにこの年は、せっかくDVD審査に通っても、予備予選の時期にアイスランドの火山が大爆発してしまって飛行機が飛ばず、コンテスタントたちは移動に大変な苦労を強いられたとか。
ともかく、事務局の不手際と参加者の立場の弱さに疑問を持ったピアニスト&ピアノ教師の著者はプレスパスを取り、2015年のコンクールを予備予選から現地取材することにしたとのこと。
ピアノコンクールのみならず、ショパン・コンクールだけでも漫画「ピアノの森」他で題材として多く取り上げられている。しかしやはり、多くの実力と個性あるコンテスタントたちが世界で一番といってもいい華やかな舞台で、自分の音楽性を披露し、少しずつ絞られ、最終的にグランドファイナルで優勝が決まる、という流れは読み手が否応なく惹きつけられるコンクールものの最大の魅力。
青柳いづみこさんはドビュッシーの研究で博士号を取得、著書も多く、楽譜にも精通している。さらには表現の幅とジャーナリスティックな目線も併せ持つ。そんな彼女が現地で多くの演奏を生で聴き、ピアニストとしての専門的な感想を綴り、歴史的な系譜も踏まえて疑問点を分析的に展開する本書はゾクゾクするような感覚を喚起してくる。
実際にコンテスタントや審査員にも積極的に取材を敢行していて、臨場感がいや増している。
そもそもショパン・コンクールは、「ショパン」と「コンクール」どちらに力点が置かれるかというと、圧倒的に前者のイメージだ。上手いけれど、ショパン的、ショパニスティックでない、というセリフが語られているようなイメージが先行する。実際2010年大会の審査委員長は、
「これはショパンの音楽を専門とするコンクールですから、各参加者のショパン作品の演奏能力に基づいて審査しなければなりません」
とスピーチしたらしい。
青柳さんは、「楽譜に忠実派」か「ロマンティック派」か?という点を、1810年生まれのショパン本人が遺したものとその後の流れをも材料に、本当のショパニズムとは、まで考察しつつ探究している。
アヴデーエワのコンチェルト1番をテレビで聴いた感想は、音の粒立ちは素晴らしく、美しい。しかしロマンティックさ、楽しさ、がない、というものだった。クラシック友は、作曲家の解釈について、コンクールではコンテスタントの自由を認めない傾向にあるのでは、と話していた。この本を読むと、私の感想はあながち外れでもないような受け止め方をされていたように思える。
しかし、青柳さんの分析によれば、2015年はロマンティック派が主流を占めつつある部分もあったらしく、なかなか興味深い。
グランドファイナルのコンチェルトはもちろん、コンテスタントに人気だったという「子猫のワルツ」(子犬のワルツは知っていたが子猫もあるとは初めて聞いた)などを優勝者の演奏動画などで改めて聴き、青柳さんの感想と比べるのはとても楽しい。
日本人で唯一のファイナリスト、小林愛美は「強靭なバネを武器に、モノに憑かれたように弾くと、理屈ではない音楽がほとばしり出る」とか。本戦では少し大人の弾き方になっていたらしいが、ぜひ聴いてみたい。プロの録音と比べても、出場者たちには独特の、張りつめた若さ、素の響きを感じる。
ファイナリストたちが挙げる好きなピアニスト、ほとんどにグリゴリー・ソコロフという人が入っているのはへえ、だった。聴いたことない。これもゼヒモノ。アルゲリッチを挙げた小林愛美が審査員のアルゲリッチに、私もアイミはとても好きよ、とエールを送られていたエピソードにはたまらなく微笑ましい気分にさせられた。
今回日本人コンテスタントの上位進出が少なかったのはコンクールが重なり、北村朋幹、反田恭平ら海外の出場者と争える実力者が出なかったから、という観測もある。反田恭平はいま一番ホットな若手ピアニストだし、北村くんはなんと先日ラフマニノフの2番の演奏をホールで聴いた。本読んで、うわーともきくん、今年の大会出ないかなあーなんてすっかり勝手にお友だち^_^
次の大会、本戦は10月。web配信されているようなので、聴きたいな。すでにアプリをインストールした舞い上がりやすい私には大満足な読書だったのでした。
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