2018年2月4日日曜日

1月書評の2




月食の日は、筋トレも休むと決意を固めて万全の厚着をして、ずっと外で観ていたのに沈没。関東ではきれいに観れたとか。最近寒いからか、また息子がベッドに来るように。狭いから私が子供部屋へ行くことも多い。でもめんどくさい時とホントに寒い日とか、暖かく有効なのは確か。

ジェイムズ・パトリック・ホーガン

「ガニメデの優しい巨人」


相変わらず理屈っぽいが、やっぱり面白い。「星を継ぐもの」続編。ガニメアンとの遭遇。


木星の衛星ガニメデで発見された2500万年前の宇宙船を調査しているヴィクター・ハント博士たちの前に未確認飛行物体が現れる。やがて基地に接近、着陸した宇宙船に乗り込んだ地球人側が目にしたのは、予想再現図通りの姿をした巨人ガニメアンだったー。


「星を継ぐもの」は素晴らしいSF大作だった。生物学的なアプローチから、5万年前に月に居た地球人そっくりの「ルナリアン」、ガニメデで発見された2500年前の巨人人種「ガニメアン」という不可解状況を理論により解き明かしていく。その途上で2人の科学者の邂逅や、天文ファンなら心に描いたことのある壮大な光景を絡ませていた。


しかしすべての謎が解けたわけではない。ガニメアンが出現するこの第2作でも、理論的な展開は遺伝子学におよび展開される。2500万年前に現代の人類よりも遥かに進歩した科学技術を持っていたガニメアンの性質は、スウィフト「ガリバー旅行記」最後の国、フウイヌムの住人の馬たちに謙虚冷静さを足したような感じだな、と思っていた。こちらのほうがかなり生物学的な理屈付けがあるが。


今回も、面白い。宇宙船も超光速で飛ぶし、動力源もSFっぽい。現代の物理学的常識ががらりと変わることも期待してしまったりする。ちょっとだけ読むのに時間がかかるけど。


理屈の部分が長いのは、このシリーズならではというか、そういう本。でも、だから展開は面白い。第3作はガニメアンが主役のお話らしい。忘れないうちくらいには読みたいな。


万城目学「悟浄出立」


いつもの、なにやら怪しげでコミカルな物語かと思ったら全然違った。古代中華の話に題材を得た、武骨な短編集。


沙悟浄は師父の三蔵法師、孫悟空、猪八戒とともに西へ向けて旅をしていた。途中妖怪が仕掛けたまやかしの館を見た一行は近くの洞窟に落ち着くが、悟空が托鉢に出た際、八戒が理屈をこねて皆で館に向かい、妖魔にあっさり捕まってしまう。縛られている時、悟浄は八戒に、天蓬元帥であったころのことを問う。

(悟浄出立)


西遊記、はどれかというと短編集の性格付けをするもので、「三国志」「史記」に題材を取った渋い、時に劇的な短編が続く。最後の「父司馬遷」は著者が好きだったという中島敦「李陵」をヒントに史記の作者司馬遷を描いている。


張飛、諸葛亮孔明、趙雲、項羽の四面楚歌の話、「荊軻刺秦」の話など有名な人物、そのエピソードをベースした物語たちにはなかなかワクワクした。


私はこちら方面をあまり読んだことがなく、三国志も知識的に欠落している分野なのだが、ちょっと興味が出たかな。中島敦も読んでみたくなった。


高校3年のホームルームの時間の時、英語の先生だった担任が、「これから物語を読む。寝てもいいから静かにしててくれ」と言って短編を読んだ。日本の時代ものだったような気がしていたが、テイストは直接的ではなく、文章の綴り方で人間の微妙な感情を考えさせる感じのもので、死生感もあって、今回の短編と似ていた。ひょっとして中島敦だったんじゃないかと、この本を読んで思った。


望月麻衣「京都寺町三条のホームズ8

                       見習い鑑定士の奮闘」


安定のシリーズ。今回はあまり京都市内は出てこない。京都八幡市の石清水八幡宮からー。


京大大学院を修了したホームズこと家頭清貴と高校を卒業し、京都府大に入学した真城葵。清貴は骨董品店「蔵」オーナーの祖父の命で、石清水八幡宮近くの松花堂庭園・美術館へ修行に出ることになる。葵が美術館へ様子を見に行った際、思わぬ事件が発生するー。


日本の文化ラノベをほわほわと読むのもいいものだ。巻により、緊張感があったりやさぐれた事件があったりとそれなりに波があったが、今回はまあ、新展開の紹介、といった感じで罪のない出来事ばかりかな。かつて参拝どころとして古典にもよく出てくる石清水八幡宮には行ったことがないので興味が出た。


葵の親友が、清貴のお父さんに恋をする。いいなあ、オレも女子大生に恋されてみたい!←あほです笑。


あさのあつこ「東雲の途」


あさのあつこのクセのある時代劇「弥勒の月」シリーズ集大成のような一冊。だからか、いつもとちょっと違うなと。


若い商人の斬死体が川から上がる。同心木暮信次郎はその男が侍だと見抜き、さらに傷口から瑠璃の欠片を取り出す。瑠璃を見て欲しいと頼まれた小間物問屋の遠野屋清之介は、自分が武家にいた頃世話をしてくれた老女すげにもらったお守りにも瑠璃が入ってるのを見つけた。そして、木暮と岡っ引きの伊佐治に身の上を包み隠さず話すのだったー。  


過去のある商人・遠野屋清之介、天才的な探偵で性格にクセのある同心木暮信次郎、岡っ引きの伊佐治が絶妙のバランスを見せるこのシリーズ。今回はやたらと、本筋以外の、人の想いを長々と描いているところが多い。また、劇的に物事を動かすために、いつもよりはストーリーが不自然な気もする。立ち回りも今回多い。


が、暗く、闇を意識していたり、ちょっとアダルトな要素が入っていたりして相変わらずなんというか、普通とちょっと違って上手い感じだ。女性的な香りもする。


オチがなかなか明らかにされず、ハタと手を打つ感じだ。条件からすると当然読み手も思い至らなければ、と考えさせた。私だけだろうか笑。


集大成的、エンド的だったからこれでFinかと思ったらまだ続編あるらしい。楽しみだ。


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