2018年2月26日月曜日

如月末





写真は今週食べた天丼セット。美味しい居酒屋さんのランチ。なかなかGOODな昼休み。


忙しいためか2月は過ぎるのが早い。あっという間に月末。最高気温は上がってきたが、最低気温は真冬並み。朝晩はダウンにネックウォーマー、毛糸の帽子がかかせない。


平昌オリンピックも後半。スピードスケート女子パシュートの金メダルを見る。最初は負けていて、逆転勝ち。最後は行け行けー!と応援した。これで高木美帆は金銀銅メダルコンプリート。すごいなあ。菊池彩花はかわいい。


女子フィギュアは先輩が現地に観に行ってるとか。近いし行かなきゃ損と思う気持ちも分かる。さて、日本勢はほぼ実力を出し切り予想通りの順位。神戸の17歳、坂本花織は6位、京都出身の宮原知子は4位。銅メダルのオズモンドの方がやはり上に見えた。宮原は、出来ることを全てして相手にプレッシャーをかけて、といういいシチュエーションではあったが、女子はノーミスの流れが途切れなかった。


坂本は、はたから見ても足りないものが分かる。柔らかさ、芸術性。宮原は教科書的、優等生的だった一時期から大人になった。演技も工夫されていて表現力が高い。今後は自分の新たな魅力を探すべきだろうと思う。


ザギトワは表現力の才能、ジャンプの精度と美しさ、バレエ的な柔らかさ、さらに小顔美人、手足の長さとなにもかも揃っている。それはメドベージェワもだが、表現がなんというか、正統的でない気がする部分があって、ジャッジのウケが悪いのかも。見る方としては面白いのだが。またジャンプの入りに、不器用そうなところも見受けられる。2人のフリーの得点は同じ。ショートプログラムの1.31点差がそのまま勝負の分かれ目となった。


ザギトワはこれからも成長するだろうが、キム・ヨナのような絶対的な表現力、強さはまだ感じない。演技以上のものがまだ見えないので、今後の勢力地図はまだまだ流動的だと思う。15歳でオリンピック金メダル。その意味合いを本当にわかる今後の4年間になるだろう。


土曜日、髪チョキチョキ。床屋の女性に「だいぶ痩せましたよね~なんかやってるんですか~?」と言われ喜ぶ。もう合計10年くらい通ってるし気安い。100円ショップで落書き帳買って帰る。シャーロック・ホームズの挿絵の模写をしようと思ったからだけど、この週末はしなかった。


夜はオリンピック。スピードスケートマススタート、高木菜那金メダル。一瞬の勝負のあや。スリリングな金メダルだった。高木家金3つ、メダル合計5個ってどういう幸せ家族?(笑)


そしてカーリング。そもそも冬季オリンピックはゴーグルしてたり、ジャンプにしても滑降にしても距離が遠くて顔がよく見えないものが多い。カーリングは競技が始まれば2時間くらい、近くのカメラで何もつけない顔がずっと映って、声もはっきり聞こえるから、感情移入しやすい競技だと思う。試合数も多いし。


で、観れる限りは観ていたから、今回感慨があった。2016年の世界選手権では銀メダルだったらしいが、あれだけ取り上げられるわりには、今回が初めてのオリンピック決勝トーナメント進出。準決勝は勝てる試合を僅差で負け、3位決定戦は有利不利がよく入れ替わる試合となった。相手はイギリス。イギリスのミュアヘッドは世界を代表する投げ手だとか。たしかに貫禄がある。


8エンド終わりで日本が同点。イギリスは9エンド後攻。無得点で流されたら先攻後攻は入れ替わらないから、最終10エンドはイギリスが後攻で1点取って逃げ切る展開が考えられた。日本は8エンドで2点取って逆転出来なかったため、ここで不利となった。これだけ先攻後攻で有利不利が極端な競技もあまりない。しかし、9エンド、なんと日本がスチールで1点をリードしてしまう。4-3。イギリスは最終エンド、有利な後攻で、最低1点取って延長戦に持ち込めば、という展開だった。しかし3-3のまま10エンドを迎える、という目算が外れ、微妙なプレッシャーがイギリスにかかったと思う。


そして10エンド日本最後の一投、藤澤五月は相手のストーンにピタリとつけられないミスショット。イギリスは1点負けているから、日本のストーンを弾き、ナンバー1とナンバー2を作って2点、逆転サヨナラを狙う。投げ手はミュアヘッド。


ストーンは微妙な配列をしており、簡単なものではなかった。しかし藤澤は自分がミスった時点で「負けた」と思ったという。


ミュアヘッドが投じたストーンが当たる。何回かの衝突音が響き、最も近くに残ったのは、日本のストーンだった。日本スチールで5-3。イギリスのミスショットで日本が銅メダルを獲得した。


よかったよかった。11試合もやった後に何も残らないのは避けたかったからね。形が残ったのは非常に大きいと言える。それにしても、テクニカルな競技だ。


土日とも春夏物スーツをクリーニング屋に出す。早ければ再来週くらいから必要になるかも知れない。春への準備。


日曜はブックオフ。最高9度というところだったが朝は寒く、分厚いダウンを、おそらくは着納めと思って出かける。読むものはたまっていて、今回は薄くて軽いものを何冊か、という考えだったが、7冊も買っちゃった。


阿刀田高「新約聖書を知っていますか」

井上靖「わが母の記

ナサニエル・フィルブリック

白鯨との闘い

夏目漱石「文鳥・夢十夜」

初野晴「初恋ソムリエ」

村上春樹「1973年のピンボール」


阿刀田氏のシリーズは去年旧約聖書版を読んで大いに啓発された。こんだキリスト以後の世界である。


井上靖、最近映画になったとか。フィルブリック、1820年の実話であの「白鯨」にインスピレーションを与えたとか。夏目漱石は周りの本読み軒並み好きなので私は入りやすい短編からと。初野晴はハルチカシリーズの第2弾。ハルキは「風の歌を聴け」からの第2弾。このへんがいちばん面白かったという読書家さんも多い。楽しみだ。でも積ん読多いなあ~。本屋行ったら欲しくなるし。


気のせいか家から聴こえる小鳥のさえずりの声も大きく、おそらくはコゲラ、キツツキがドラミングという、それこそ木をつつく音も聴こえる。春の訪れを告げる音。ワンコを連れて山の方へ散歩。レオンは一時の不調から脱して元気。クッキーは最近また太ってきて歩きたがらない。


クッキーはきょうバッグに入れてやって、これがまた嬉しそうに入るのだが、抱えた。その方が散歩が進むし。1時間の散歩。こないだ息子と卓球したときにも感じたが、どうも運動すると、これまで感じたことのない疲れが出る。トシだなあ~。


ちょっと自分の都合で息子にあたって反省。

2018年2月18日日曜日

向春







姉がフィギュアスケートを習っていて、「銀色のフラッシュ」というマンガを読んでいた。長内リサという主人公が、かつて母も使い活躍した「逆スパイラル」という技を武器に国際大会にチャレンジしていく物語。とても印象に残っている。姉と一緒に、テレビでオリンピックのフィギュアを観ていたのは大事な思い出だ。よく言うが、ビールマンスピンの生みの親、デニス・ビールマンさんのビールマンスピンは現代の誰よりもすごかった。


朝晩寒いが、先週よりだいぶ暖かくなった。出勤の時ダウンにネックウォーマーに毛糸の帽子は変わらないが、9時ごろにはもう暖かい。そろそろ春に向かっている時期で、冬が名残惜しく、春が待ち遠しく、夏は来ないで欲しいと思う笑。でも春の次がまた冬だったらイヤだ。


波の激しい週だったが、嬉しかったことを書くと、「痩せたな」と数回言われたことかな。血液検査結果を聞く用があったので医務室に行って体重測ったら、秋までに達成しようと思っていた目標にすでに到達していた。


ひと月前に仲間うちで撮った写真を見て、「あれ、おれだいぶ顔痩せてる」と思ったが、この2ヶ月で2.5キロほどぐっと落ちた。

これで最も重かった時期から1年で6キロ減。筋トレ初めて3キロ減ってしばらく踊り場だったが、年末から負荷を多くした。すると増やした腹筋が当たったみたいで最近多めに落ちたという感じだ。急に落ちた、痩せたように見えるタイミングなのかも。


金曜には女子に「首回りスッキリしましたねー。身体もなんでそんなにペタンコなんですかー羨ましい」と言われイイ気分である(笑)。


ペタンコとは生まれて初めて言われたな。確かに落としたかったおへそ周り、脇腹、背中がちょっと締まった感はある。あまり痩せると貧相なので、究極目標があとマイナス2kg、ウエストあとワンサイズってとこかな。


土曜日は学校の文化祭?でパパお留守番。外は雪もチラつく寒さ。平昌オリンピックの女子カーリング中国戦を観る。延長負け。韓国戦はプレッシャーをかけながら相手のミスを引き出したが今回は勝てる試合を落とした感じだった。まだまだ先は長いので頑張ってほしい。


フィギュアスケート男子フリーを見る。羽生は最後の4回転以降スタミナが切れてジャンプがよれたが最後まで転倒だけはせず、フリー2位で見事金メダル。オリンピック2連覇を達成した。宇野昌磨は最初の4回転でハデに転んだが、ミスはここだけだったのでかえって印象が良かった。銀メダル。日本男子が冬季オリンピックで同時に表彰台に上がるのは史上初。もちろん金銀なんて初めて。加えてオリンピック2大会連続金メダル。さすがに鳥肌が立った。こんなことがあるのか。。


競技としては、実はあまり面白くないものだった。ネーサン・チェンがフリーは素晴らしい出来で1位だったものの、SPで大ミスをした影響は大きく全体4位。羽生や宇野にとって強力なライバル不在のコンペティションだった。


時差もないし出来るだけ競技は観ている。スピードスケートも勝負のあやを感じ、日本勢の頑張りに感動したが、やっぱりオリンピックはいいなあ、と思うな。スノーボードも結構好きだ。スロープスタイルなんかすっごい壮大だし。


ブカツがあるはずだったので、日曜は南京町の春節祭をのぞいて映画でも観ようと思っていたら急遽お休みだという。


バッティングセンター行きたいというので連れてって、バーチャル菊池雄星、藤浪晋太郎を2回ずつ打たせた。スイングの基本を教えたこともあって?また1年近くスポーツ部活をしたこともあり、だいぶ強く打ち返せるようになった。まだまだだけどね。卓球では途中からスコアをつけ始めた。勝負となるとパパは手を抜かない。コテンパンにして差し上げた。11点マッチで3-0の完勝。


エディオン行ってゲームを見て、となりのブックオフで中古ソフト買って、近くのラーメン屋で神戸牛しぼり塩ラーメンを食べる。初めて入ったが、甘口でなかなかイケる。息子も「ふつうにウマい」と評価。ちょっと注文してから待たせすぎだけどねー。


近くの住宅展示場の露店でフライドポテトを買って帰る。風が吹くとかなり寒いが、日も照っていい感じ。駅に着いたら遅れたバスがちょうど来て、走って乗り込み。朝から出て2時には帰着。やっぱ午前から動かないとねー。


午後はのんびり。志賀直哉の短編集読んで、阪神のキャンプ、日ハム戦を観た。清宮はファーストの守備で8回から初出場。コーヒー入れてママ手作りのチョコケーキをいただく。夕方ワンコの散歩行った。出る時珍しくレオンが嬉しそうにしっぽを振っていた。ちょっとだけ鷲林寺のほう行ってみるが今回はすぐ引き返す。また今度ね。ワンコ元気。


息子は帰ってから夕食まで爆睡。起こす。


夜は当然のようにスピードスケート女子500m。小平奈緒すごかった。距離が短い競技なのに、2位に0.4秒も差をつけて、唯一の36秒台でオリンピック新記録、低地での世界新記録で金メダル。スピードスケート女子初の金。今大会はホント歴史を体験している感じだ。500m金メダル、1000m銀メダル。おめでとう、ありがとう!


かなわんな。でも今オリンピックはよく観れている。いい冬だ。

2018年2月13日火曜日

オリンピックイヤーの3連休2018





この週はなかなか体力を削られた。私は冬が好きだけど、寒さももうそろそろいいわ、というくらい続いている。疲れに追い討ち、てな感じだ。ある日暖かいバスから降りて山道を歩いたら外気が冷たくて肺が痛くなった。カナダあたりの冬、家から出てすぐそうなることもあると聞いたことはあるが、体感したな。


だもんで、出来るだけ早く温かく寝ることを心がけた。いつもだらだらと12時半くらいまで起きていてやや寝不足気味だけれど、11時には床に入って電気を消すよう動いた。面白いもので、こうなると息子も早く寝る雰囲気になるらしく、家族揃って消灯が早かった。靴下を履いて、パジャマの上からトレーナーを着て、寝る。暑くなって脱ぐこともあったがともかく風邪を呼び寄せないこと。この早寝のパターンいいな。これからもそうしよう。


冷たい雨の土曜日はやれやれと日がな自室でだらだら。朝それなりに早く起きて平昌オリンピックの開会式ハイライト観ながら朝ごはん食べて歯を磨いて、また寝る。きのうのおでん温めたもので昼食、すぐまた自室でぬくぬく、おやつとコーヒー、また自室、てな感じ。


室生犀星の小説が読みたいと思っている。幼少の頃からこのペンネームにはどこか憧れがあるが、作品はほとんど読んだことがない。


金沢の寺の住職、室生氏の養子となった本名照道は、金沢の犀川の近くで育ったから犀星と名乗ったとか。


私なら博多の春日の、いや筑紫地区の・・。博星、いや福岡だから福星、春日だから春星、筑紫だから筑星、紫星とか。


私自身は父の職場が福岡市から南にしばらくの太宰府だったこともあり、博多というよりは筑紫地区の人間という意識が強い。加えて宰星。宰に一般的な意味が出てきそうだ。


博星はなんとなく偉そうだが、落選。福星はノホホンと見えて却下。春星・・春日の星というよりはスプリングスターに見えるなあ。筑星は悪くないかな。でも犀星に比べもひとつ自然に流れない。紫星は色を表すよね。こう考えるとペンネームも難しいもんだ。


どうでもいいよね。笑 こんな遊びもゆっくり休む日ならでは。


日曜日は図書館。萩原朔太郎「猫町」返して、室生犀星「或る少女の死まで」借りてくる。点鼻薬が切れそうだったので、今回バスで阪神西宮まで行ってマツモトキヨシで買って、珍しくも阪神電車で香櫨園まで行って図書館に行った。


風は冷たいが気温が高めの日で、歩いていたら汗がどっと出てきた。真冬にも気温の上下があってやりにくい。午後からは家でのんびり。ワンコを散歩に連れ出す。夜はソチオリンピック女子モーグル観てたら遅くなった。


深夜に「応仁の乱」読了。ベストセラーにしてはそんなに特徴がなく、意外に小難しい本だった。奈良がこんなに関わっていたことに少々びっくり。権力の中心だった興福寺には今度行ってみようかな。


月祝。休みでもゴミ出しはある。引き続き朝ごはん食べて出かける。これが寒い。昨日とえらい違いだ。ここを抜けたら春に近づく予報だが、その前の強寒波。また日本海側大雪になっている。


脈絡がないが、最近妻がお気に入りの大福餅を買ってきてたので、息子と、パパもあの、エディオンブックオフの向かいにある小さい和菓子屋で今度何か買ってこようかなーとこないだ話していた。息子も私とあのへんよく行ってるから知っている。私は柏餅と草餅が好きだ。店頭には行ったことがあるがまだ買ったことはない。


さて、ブックオフで本を売り、寒いから急いで駅方面に帰っていてふと見ると、小さな和菓子屋は看板が外されシャッターが閉まっていた。もともとプレハブみたいな作りだったから、まるで蝉の抜け殻のように見え、まったく生気がなかった。1回くらい買えばよかった。


ガーデンズのユニクロでワイシャツ、スーパーノンアイロンを買い、帰る。「或る少女の死まで」面白い。室生犀星は長いこと読みたかったが、清冽な筆致だ。こちらに来たころ、九州の人間、北に憧れがあって、金沢に2度ほど旅行した。また行きたいな。。


昼ごはん食べてたらバーッと雪。早めに帰宅してよかった。


阪神キャンプ中継観て、オリンピック観る。女子スケート1500mは最終組滑走の高木美帆が銀メダル。速かったがわずか0.2秒及ばず。でもまだレースは続く。がんばれ!


女子ジャンプノーマルヒルは高梨沙羅銅メダル。泣いた前回、不調の今季打ち破ってみせた。ラージヒルもがんばれ。


あれこれあって寝るのが遅くなる。さて、こちらも頑張ろうかね。

2018年2月4日日曜日

1月書評の3




写真はおやつ、ダークチョコレートのラズベリー味。なかなか美味しい。この前に柿ピー小袋と芋けんぴ少々。平日はお菓子類ほとんど食べないが、土日はけっこう食べる。

1月は12作品15冊。作品数は1月としては少なく、冊数としては例年並みくらい。ここのところ上下巻以上ものを見送っていたが、スティーブン・キング「11/22/63」上中下、シャーロッキアンもの上下を読破した。まあ読まないとね。


土曜はブックオフ行って売って買った。三浦しをん「月魚」白石一文「一瞬の光」。なんかふつうの現代小説が読みたい気分だった。それから図書館に行って「おやすみなさい、ホームズさん」を返却。萩原朔太郎「猫町」パロル出版のやつを借りてきた。家ではラフカディオ・ハーン「怪談・奇談」を読みふける。湿った雪が降った。


日曜日もまた、朝一番のブックオフ。で、また買う。太宰治「きりぎりす」志賀直哉「清兵衛と瓢箪・小僧の神様」そして夏目漱石「坊ちゃん」んーどうも偏ってるような。家に帰ってハーン読了し、ワンコの散歩行っておやつ食べて、「猫町」読みふける。80ページで絵が多い。なるほど幻想的。挿入画も効果大。大人の絵本という感じだった。


さて前フリが長くなったが、では今月のシメ、行ってみましょう!


アガサ・クリスティ

「ブルートレイン殺人事件」


本に歴史が見える時は、ちょっと敬虔な気分になったりして。軽快な、列車の絡んだミステリー。上手く掘ってるな、という印象。


大富豪ヴァン・ホールディング氏は娘のルーズに、「ハート・オブ・ファイア」という名の大きなルビーを贈る。また彼女と夫、デリク・ケタリングとの離婚を推し進める。多額の遺産を手にした女性・キャサリン・グレイは、南仏ニースに向かうブルートレインでルースに悩みを打ち明けられる。翌日、ルースは無惨な死体で見つかったー。


1928年の作品で「アクロイド殺し」で有名になってまもなくの作品か。「オリエント急行」と並ぶ列車もの。どこか描写などつながりがあるような気がして楽しい。


裕福な老婦人のコンパニオンとして遺産を受け継いだ控えめな女性、キャサリン・グレイに焦点を当て、ポアロはこだわってみせる。どう見ても関わり合いが薄く、ぼやっとして印象に描かれている彼女に何が・・というのがポイントだ。


動機のある犯人、隙がないと思われる推理の流れと少しずつ明らかになる真実、落ち着いたかと思ったら、新たなフィクサーの登場と楽しめる。ポアロの尊大さも、よく出来た執事も、この作品の雰囲気を上手く作っているし、フランス人、イギリス人、そしてギリシャ人という捉え方もアガサ特有で興味深い。


メカニカルに一段奥がある構成としていて興味深いが、惜しむらくはちょっと犯人意外すぎて脈絡が上手くピタリとはまらないところがあるかな。


さる方の高校時代の愛読書ということで昭和58年発行版をお貸しいただいた。同じ本が時を超えていま私をワクワクさせているというのは不思議だな、と思いながら読んだ。


有島武郎「小さき者へ 生れ出づる悩み」


ふううむ。文学。悲しく悩み深い主題ではありながらも活き活きとした筆致が光る。


札幌に住んでいた「私」のもとに、不機嫌そうで、背が伸びきらないといったような少年が、自分の描いた手を見てもらいたいとやって来る。大変いい、と褒めたりひとしきり批評したあと、少年はまた見てくださいと言って帰ったまま来なかった。10年後に東京へ移った「私」に手紙が届き、北海道へ行った際に会う段取りをつける。やがて逗留先に吹雪の中を「巨人」が訪ねてきた。

(生まれ出ずる悩み)


1918年の作品である。結核で妻を失った有島武郎が執筆に専念し始めてからまもなくの時期だそうだ。「小さき者へ」はパパを失った3人の子供たちに宛てて書いた文章、「生まれ出ずる悩み」は絵画への情熱を胸に現実に生きる若い友人のことをおそらく空想も込みで書いたものだ。


とくに、「生まれ出ずる悩み」の友人の生業を描写した部分が表現の嵐でリアル、北海道の厳しい冬の模様が生々しく伝わってくる。またその後の自殺のことを考えるシーンも空想的であるから余計にインパクトを与える。主題が明確だから描写が活きるのかも知れない。


それにしても、著者の想像という体をとった長い文章、というのはあまりなくなかなか新鮮だった。説得力のない向きも感じないことも無かったが、これも一つの形であろう。あまりこだわらないが、表現が続く場面はちと読むスピードが落ちた。


初有島。解説を読むとハズレもありそうだが、「カインの末裔」なんかには興味あるな。


キャロル・ネルソン・ダグラス

「おやすみなさい、ホームズさん」上下


表紙の少女マンガ的テイストに似合わず、シャーロッキアンものとして興味深かった。


失業し住む所も無くしたペネロピー・ハックスリー、ネルは駆け出しのオペラ歌手アイリーン・アドラーと出会い、ロンドンでの生活を共にする事になる。ピンカートン探偵社の紹介でアメリカの宝石業者であるティファニーから、マリー・アントワネットゆかりのダイヤモンド探しという依頼を受けたアイリーンとネルは持ち主の息子で弁護士のゴドフリー・ノートンの身辺を探る。一方、シャーロック・ホームズも同じ依頼を受けて動いていたー。


最初は表紙があまりにも少女マンガチックで、うわーこりゃだいぶ原作とかけ離れたパロディちゃうかーと敬遠していた。しかし今回読んで「ボヘミアの醜聞」の経緯および原典の裏側を描いた作品と知りなかなか興味深く読んだ。


読了直後に原典「ボヘミアの醜聞」を読み返してみた。なるほど、アイリーンサイドのこのパロディと細かいところまで意識して符合していて味わい深い。良きシャーロッキアンものだ。


「ボヘミアの醜聞(スキャンダル)」は皇太子だったボヘミア国王がワルシャワで会ったプリマドンナのアイリーンと昵懇になり、2人で写した写真を渡してしまい、北欧の王室から正室を迎えるにあたり、その写真をアイリーンが先方に送付すると脅してきたから取り返して欲しい、と国王自らベイカー街に来て依頼する話である。どうやって取り返すのか、というところも芝居がかっていて面白いが、これはホームズの失敗譚である。


しかし、ホームズが初めて登場した長編「緋色の研究」、また続編の長編「四つの署名」がそこそこの評判しかとらなかったのに対し、ストランドマガジン18917月号に掲載された初めてのこの短編は爆発的な評判を博し、以後のホームズ人気に火をつけたものとして知られる。「おやすみなさい、ホームズさん」はこの事案で、男装しホームズの後を尾行したアイリーンが、ベイカー街の住まい入り口にいるホームズとワトスンにかけた象徴的な言葉だ。


上下巻で、ダイヤモンドの依頼から、どのようにノートンと知り合ったのか、ホームズとの絡み、またオペラ歌手としてのアイリーンの足跡と、ボヘミア皇太子の寵愛を受けた下り、逃避行などが描かれている。ワトスン役としてネルに語らせており、ホームズパロディとして気持ちいい設定となっている。当時の女性の立場や法律、習慣もよく出ていると思う。脇の甘い国王がホームズに説明した内容とちょっとした矛盾があるのもなかなか好ましい。アイリーン・アドラーは機知に富んだ自立した女性として描かれている。


パロディとして、同時代の有名人、他のパロディにもよく出てくるオスカー・ワイルド、「吸血鬼ドラキュラ」の作者ブラム・ストーカー、作曲家アントニン・ドヴォルザークほかなども出演させ、この手のものらしくにぎにぎしい。


以前「まだらの紐」の真相、的なパロディを読んで面白いと思ったものだが、もっとこんなの出ないかな、などと思うな。女性嫌いで結婚はしない、というホームズが唯一「あの女性(ひと The  woman)」と呼び、短編「オレンジの種五つ」のホームズの台詞ー「失敗は四度ありましたよ。三度は男に、一度は女に出し抜かれました。」の一度の女、アイリーン・アドラー主人公の話はまずまず楽しかった。


続編もあるのでまた読むだろう。


スティーブン・キング「11/22/63」上中下


JFK暗殺阻止。久しぶりに、読みがいのある長さだった。京極夏彦「姑獲鳥の夏」高村薫「レディジョーカー」以来かな。


2011年、メイン州の高校教師ジェイク・エピングは成人向けのハイスクール同等課程で、脚を引きずる校務員ハリー・ダニングの作文に感銘を受け、A+の評価を与える。ある日ジェイクは、行きつけのハンバーガーショップ店主で余命僅かとなったアル・テンプルトンから、1958年への通路を教えられ、ヴェトナム戦争を防ぎ、アメリカが良い方向へ変わるために1963年のケネディ暗殺を阻止するよう説得される。ジェイクは、ハリーの脚の原因となった父親の暴力を止めようと過去へと向かう。


壮大で注目を集めるテーマのタイムトラベルもの。ケネディ暗殺はゴルゴ13では読んだが、興味を惹いた。大半は著者の青春時代とかぶるという、1950~60年代のアメリカの田舎町での出来事である。


最初は試しにと行ってみたというジェイクに、JFK暗殺阻止を決意させる流れは上手で、大事な核となる、セイディーとの恋愛の下りは夢のように素晴らしい感をよく出していると思う。別れも、その後も胸に迫るものがある。


社会状況とその日に向けての盛り上げ方、疾走感もまずまず興味深い。変えられたくないという意思を持つ「過去」の妨害も粘っこくていい味だ。


あいまいな部分を残すのはキングの持ち味でもあるそうだが、一つの大きな注目点である、全てを終えた後ジェイクが帰り着いた2011年の世界は・・詳細は書かないが、私的にはもうひとつだったかな。も少し理論的にほう、と言わせて欲しかったってとこだろうか。アメリカ人は納得なのかな。


古典ではないので、もとの世界がほぼ現代と同じ、という感覚で読めた。次は、の展開に引き込まれる。読み切った感を味わえた。

1月書評の2




月食の日は、筋トレも休むと決意を固めて万全の厚着をして、ずっと外で観ていたのに沈没。関東ではきれいに観れたとか。最近寒いからか、また息子がベッドに来るように。狭いから私が子供部屋へ行くことも多い。でもめんどくさい時とホントに寒い日とか、暖かく有効なのは確か。

ジェイムズ・パトリック・ホーガン

「ガニメデの優しい巨人」


相変わらず理屈っぽいが、やっぱり面白い。「星を継ぐもの」続編。ガニメアンとの遭遇。


木星の衛星ガニメデで発見された2500万年前の宇宙船を調査しているヴィクター・ハント博士たちの前に未確認飛行物体が現れる。やがて基地に接近、着陸した宇宙船に乗り込んだ地球人側が目にしたのは、予想再現図通りの姿をした巨人ガニメアンだったー。


「星を継ぐもの」は素晴らしいSF大作だった。生物学的なアプローチから、5万年前に月に居た地球人そっくりの「ルナリアン」、ガニメデで発見された2500年前の巨人人種「ガニメアン」という不可解状況を理論により解き明かしていく。その途上で2人の科学者の邂逅や、天文ファンなら心に描いたことのある壮大な光景を絡ませていた。


しかしすべての謎が解けたわけではない。ガニメアンが出現するこの第2作でも、理論的な展開は遺伝子学におよび展開される。2500万年前に現代の人類よりも遥かに進歩した科学技術を持っていたガニメアンの性質は、スウィフト「ガリバー旅行記」最後の国、フウイヌムの住人の馬たちに謙虚冷静さを足したような感じだな、と思っていた。こちらのほうがかなり生物学的な理屈付けがあるが。


今回も、面白い。宇宙船も超光速で飛ぶし、動力源もSFっぽい。現代の物理学的常識ががらりと変わることも期待してしまったりする。ちょっとだけ読むのに時間がかかるけど。


理屈の部分が長いのは、このシリーズならではというか、そういう本。でも、だから展開は面白い。第3作はガニメアンが主役のお話らしい。忘れないうちくらいには読みたいな。


万城目学「悟浄出立」


いつもの、なにやら怪しげでコミカルな物語かと思ったら全然違った。古代中華の話に題材を得た、武骨な短編集。


沙悟浄は師父の三蔵法師、孫悟空、猪八戒とともに西へ向けて旅をしていた。途中妖怪が仕掛けたまやかしの館を見た一行は近くの洞窟に落ち着くが、悟空が托鉢に出た際、八戒が理屈をこねて皆で館に向かい、妖魔にあっさり捕まってしまう。縛られている時、悟浄は八戒に、天蓬元帥であったころのことを問う。

(悟浄出立)


西遊記、はどれかというと短編集の性格付けをするもので、「三国志」「史記」に題材を取った渋い、時に劇的な短編が続く。最後の「父司馬遷」は著者が好きだったという中島敦「李陵」をヒントに史記の作者司馬遷を描いている。


張飛、諸葛亮孔明、趙雲、項羽の四面楚歌の話、「荊軻刺秦」の話など有名な人物、そのエピソードをベースした物語たちにはなかなかワクワクした。


私はこちら方面をあまり読んだことがなく、三国志も知識的に欠落している分野なのだが、ちょっと興味が出たかな。中島敦も読んでみたくなった。


高校3年のホームルームの時間の時、英語の先生だった担任が、「これから物語を読む。寝てもいいから静かにしててくれ」と言って短編を読んだ。日本の時代ものだったような気がしていたが、テイストは直接的ではなく、文章の綴り方で人間の微妙な感情を考えさせる感じのもので、死生感もあって、今回の短編と似ていた。ひょっとして中島敦だったんじゃないかと、この本を読んで思った。


望月麻衣「京都寺町三条のホームズ8

                       見習い鑑定士の奮闘」


安定のシリーズ。今回はあまり京都市内は出てこない。京都八幡市の石清水八幡宮からー。


京大大学院を修了したホームズこと家頭清貴と高校を卒業し、京都府大に入学した真城葵。清貴は骨董品店「蔵」オーナーの祖父の命で、石清水八幡宮近くの松花堂庭園・美術館へ修行に出ることになる。葵が美術館へ様子を見に行った際、思わぬ事件が発生するー。


日本の文化ラノベをほわほわと読むのもいいものだ。巻により、緊張感があったりやさぐれた事件があったりとそれなりに波があったが、今回はまあ、新展開の紹介、といった感じで罪のない出来事ばかりかな。かつて参拝どころとして古典にもよく出てくる石清水八幡宮には行ったことがないので興味が出た。


葵の親友が、清貴のお父さんに恋をする。いいなあ、オレも女子大生に恋されてみたい!←あほです笑。


あさのあつこ「東雲の途」


あさのあつこのクセのある時代劇「弥勒の月」シリーズ集大成のような一冊。だからか、いつもとちょっと違うなと。


若い商人の斬死体が川から上がる。同心木暮信次郎はその男が侍だと見抜き、さらに傷口から瑠璃の欠片を取り出す。瑠璃を見て欲しいと頼まれた小間物問屋の遠野屋清之介は、自分が武家にいた頃世話をしてくれた老女すげにもらったお守りにも瑠璃が入ってるのを見つけた。そして、木暮と岡っ引きの伊佐治に身の上を包み隠さず話すのだったー。  


過去のある商人・遠野屋清之介、天才的な探偵で性格にクセのある同心木暮信次郎、岡っ引きの伊佐治が絶妙のバランスを見せるこのシリーズ。今回はやたらと、本筋以外の、人の想いを長々と描いているところが多い。また、劇的に物事を動かすために、いつもよりはストーリーが不自然な気もする。立ち回りも今回多い。


が、暗く、闇を意識していたり、ちょっとアダルトな要素が入っていたりして相変わらずなんというか、普通とちょっと違って上手い感じだ。女性的な香りもする。


オチがなかなか明らかにされず、ハタと手を打つ感じだ。条件からすると当然読み手も思い至らなければ、と考えさせた。私だけだろうか笑。


集大成的、エンド的だったからこれでFinかと思ったらまだ続編あるらしい。楽しみだ。


2018年1月書評の1




年が改まり初の月書評。ちょっと忙しい週だった。寒さはそこそこ。1月31日の皆既月食は、半分欠けたところで雲が出て見れなくなった。7月に期待だな。写真はチョコレートタルト手作り。


馬場あき子「鬼の研究」


鬼は好きだ。この著者もまた、違う意味で深く好んでいるようだ。それにしても、時間のかかる書物だった。


出雲国風土記、堤中納言物語ほかの各種文献を引きながら、歴史的な鬼の誕生、鬼の完成系のイメージ、時代背景、また、盗賊、土蜘蛛、雷電、天狗、般若、山姥までを網羅した鬼の研究書である。源頼光四天王の1人、渡辺綱と茨木童子の有名な話から、牛方と山姥まで、さらに知らなかった鬼関連の話がたくさん盛り込んである。


底流を流れるのは、鬼は人であるという考え方のもと、時代と立場、どんな人たちのことをそう言ったか、鬼と呼ばれた人たちの心情を汲み取ろうとする姿勢である。抵抗勢力、女性、その他の面からアプローチを試みている。


著者の馬場あき子さんは歌人であり、能も造詣が深く、秩序立てて、多方面からの考察をなされている。は、いいのだが、ちょっと書き方が、多くの要素をいっぺんに考えるせいか、ポンポン飛ぶイメージで、ここ何について読んでたっけ、というのがよく混乱した。またちょっと人の情に肩入れし過ぎのような感も覚えた。トータルでは面白かったが、こんなに時間がかかったのは久しぶりである。


ただ、鬼については興味が出てきたところだったので、本格的な書を読んで、色々考えることが出来た。読みたかった本読了、だ。


子供が幼少の頃、よく寝る前の話をねだられた。そこで編み出したのが「桃太郎外伝シリーズ」である(笑)。桃太郎に続く者たちを創造し、渡辺綱と絡ませたり、西遊記の魔物や西洋の悪魔と戦わせたりした。


その中でもちろん、茨木童子を中心に鬼もたくさん登場させたが、鬼とはなにか、と考えた時、人の世に怨みや歪みがある限り、無限に生まれてくるもの、しかし、部分的には害をなすものの、人間に決定的なダメージは与えず、敗れていくもの、滅びていくもの、ではないか、などと想像が至ったりしていた。


高橋克彦氏の鬼シリーズも、多くは人が関係している。私は、どちらかというと鬼や天狗は手塚治虫氏が「火の鳥 太陽編」で描いているような、化外の存在、特殊な能力を持ち、人間とは異世界に住みながら共存しているような関係の描き方が好きだ。


しかし、この「鬼の研究」にも描かれているように、菅原道真の左遷や藤原氏の栄華への反発、また高橋氏の小説にあるように平将門の乱など荒れた世相の中、寂れた、どこか不安要素が膨れあがったような京の都に現れる鬼、といった風情も好きである。


次はこれをテキストとして鬼については体系的にまとめてみたい気もするな。


ウィリアム・L・デアンドリア

「ホッグ連続殺人」


楽しみに読みました。ほう、そう来たか、でした。


ニューヨーク州スパータの冬。新聞記者のビューアルは、前を走っていた車に標示板が落下した事故に遭遇、乗っていた女の子たちの救助に当たる。警察の調査で標示板の留め具に、人為的に切ったあとが見つかり、ビューアルに「ホッグ」と名乗る犯人から犯行声明が届く。さらに人が死に、犯行声明が連続するにあたってイタリアから名探偵、ベイネデイッティが捜査に乗りだす。


まずは醸し出される不可解さに◯マル。情況が混沌としている中で謎自体は分かりやすい。事件、捜査の進展の過程もストレートだと思う。


キャラクター造形も好感が持てる。名探偵はそれなりにクセを持ちキャラが立っていて信じられる。


長編の推理小説は、捜査が難航する場面がありものだが、その外れ方とか、やがて明らかになる、ちょっとした要素とか細かいところもなかなか興味深かった。トリックは意外かつシンプル。理はまったくすっと通る。そう来たか、という感じだった。


よく出来た推理小説だなあ、という感じである。「HOG」の定義も最後にキマる。


推理小説は、ストーリーの進展とともに謎の解決をするものだが、物語という点では、2つのカップルの微妙な対称のかげんや垣間見られる時代社会の様子が面白かったかな。

謎の解決、というところでは、名探偵が最後の結論に至った過程がいささか不明だが、動機付けがしっかりしてて好感。


1979年の作品で、日本では1981年に翻訳・出版されている。デアンドリアに関しては極端に情報が少ないそうだ。このキャストのシリーズでもういくつか読みたいところだけどね。


やっと読めて満足。図書館で借りたものは、すっごいボロボロだった。これも思い出だね。


朽木ゆり子

「ゴッホのひまわり 全点謎解きの旅」


映画を観たことで興味が出たゴッホ。面白かったし、ひまわりをよく観察することができた。


次はボストン美術館展と、巡回待ちの京都ゴッホ展かな。


ゴッホの「ひまわり」は、花瓶に入っていない4点と、花瓶に入った7点。花瓶のもののうち、1点は個人蔵とだけ分かり、65年以上も人前に出て来ていない。また1点は「芦屋のひまわり」と呼ばれ、日本にあった。そして日本の損保企業が購入したひまわりには贋作疑惑がー。


タイトルの通り、ゴッホの11のひまわりについて、現在と所蔵歴、いわく、ゴッホが描いた背景と意味合いなどについて解き明かしていく本である。世界で最も有名で人気のある作品の一つ、ひまわりについて周辺知識も含めてまとめてある。


私は、東京のひまわりを、損保企業が落札した数年後に、新宿で観たことがある。鮮烈だった。ゴッホは、「星月夜」などの表現は素晴らしいと思うが、全体にどぎつく、あまり観に行く気が起きないでいた。


しかし、年末に「ゴッホ~最期の手紙」という、俳優の演技を撮影してそれをもとに多くの画家がゴッホ風にアニメーション化、背景も全てゴッホの作品のモチーフから描いてアニメ化した映画を観て、いまちょうど興味が湧いているところ。


神戸で開催中のボストン美術館展ではヒゲの郵便配達人の絵が来ているし、今月から京都国立博物館でゴッホ展がある。ちょっとハマってみようかな、と思っている。


柴崎友香「ビリジアン」


記憶を辿る、散文的な作品。大阪のリアル、って感じかな。


京都の大学を受験した帰り、電車の中で女子高生の山田解はキリスト教会で働くカナダ人、ピーター・ジャクソンに話しかけられる。名刺には日本のともだちに考えてもらったという名前が載っていた。「美ー多ー弱損」(ピーターとジャニス)


10才から高校3年生までの記憶が散りばめられている作品。ところどころ文芸的な表現やイメージの発露、コミカルな出来事が見られるが、ストーリー立てやオチはあまりない。アメリカの映画スターや歌手が脈絡なく登場する。大阪(関西)あるある、の類いも含まれている。ビリジアン、深緑色というタイトルは、それだけではないだろうが大阪中心部を流れる川の印象が強いかな。


柴崎友香は「その街の今は」を読み、この作品を京都のセレクトブックショップで見かけて、著名な作家さんが激賞している、という宣伝文句が踊っていたのでいずれはと思っていた。


「その街」は若いストーリーがあったがこちらにはない。すぐに読めるしほんのりと浸れるような作品ではあるがまあ私的におススメというほどではなかったかな。