ブックオフでも欲しい本がなくスカな日だな、と思うことがある。でも普通の本屋ばかりで買ってると、財政的に破綻するし、古本屋めぐりの良さも味わえない。積ん読も少なくなってきたし、またブックオフ行こうっと。たくさん買う気になる、いい日もあるんだから。
熊谷達也「銀狼王」
いやー好きな熊谷達也。やっぱりいいねえ。
得意の狩猟もの。
もと仙台藩白石領主のお抱え猟師、二瓶(にへい)は、明治維新後、蝦夷地開拓民として北海道へ移り住んだ。今は単独で羆(ヒグマ)や狼を狩って生活費を得ている。新冠(にいかっぷ)に住むアイヌの古老から銀色をした大きな狼の目撃談を聞き、仕留めようと山へ入る。
賢く強いカリスマの銀狼と場数を踏んだ老獪な猟師との対決。ストーリーの図式はある意味単純だが、熊谷達也が持つ狩猟のディテール、それを伝える文章、自然と動物への細かい観察と狩人の本懐、さらには命と人生、さらに歴史への考え方が滲んで重厚な話となっている。
クライマックスはドラマ調とも言えるが、対決の迫力にはさすがだと思う。熊谷達也は山本周五郎賞と直木賞を確か史上初めてダブルで取った「邂逅の森」に感嘆した。読んだ年の、文句のないナンバーワンだった。この作品も熊との対決が醸し出す迫力に圧倒されるが、今回も味わえた。
短めの話なので、熊谷達也の世界をお手軽に楽しみたい時にはオススメかも。
原田マハ「でーれーガールズ」
少女マンガの世界だが、妙なリアル感があって、最後ちょっとだけホロッ。作者の自伝的小説だそうだ。
売れっ子漫画家の小日向アユコは母校である岡山の女子高から、講演会の依頼を受け、承諾する。27年ぶりに会う同窓生たち。親友だった武美とも、意外な形で再会する。アユコ〜鮎子の想いは、16歳の、あの頃に飛ぶ。
女子の友情については、それ自体作品のテーマや大事な要素になるくらい特別、と認識している。今回は全開のストーリーだ。うーん、好みではないな。作中のふられる男の子、ちょっとかわいそう。(笑)。オトコ目線である。
解説によれば、原田マハは作中のお嬢さま女子高のモデルになった高校に通っていたとか。岡山市内の描写など、愛情があってリアルである。自分はどうしていたか、あまり思い出せないが。
最近同窓生たちによく会うこともあり、ちょっとだけ感じ入ってしまった。
黒田博樹「決めて断つ」
昨年、数十億円のメジャー契約ではなく、カープのひとケタ億円の契約を選んだ姿は「男気」と称えられた。この本の中には、黒田投手がなぜ広島を選んだか、がはっきりと書いてある。
もちろんその理由は単純ではなくて、広島入団時からのことから読む必要があるのだが、なんと言ってもメジャーリーグでの7年間の活躍がひと際輝く。中4日、時差も長距離移動もあり、日本と違って「上がり」の文化がない中で1年間ローテーションを守る事の過酷さが切々と記されている。この間の、メンタリティーや球種に関する変化も面白い。
阪神タイガースは昨年、カープ投手陣にはやられてしまっていた。黒田のピッチングは圧巻で、球種が豊富、シンカーなんか、なんであんなに沈むのか、とても打てない、と思ったものだ。
それだけに、なぜ昨シーズン終わりでまた「引退」を口にしたのか不思議だったが、読んでみてよく分かった。
男らしい黒田投手の活躍が今季も楽しみだが、痛し痒しでもある。甲子園では、好投して、負けて、いや勝たないでね(笑)。
鳥谷敬「キャプテンシー」
多少構成と文章の妙はあろうが、こういう本を読むと、その選手が何を考えているのか、指向する内容についめ、ちょっと分かる気がする。
阪神タイガースの野手キャプテン、ベテランの鳥谷選手が書いた本。「覇気がない」「気持ちが出ない」と言われることに関しての考え方、その説明で始まっている。
アマチュア時代の歩み、プロになってからの野球の捉え方、自分はどういう選手か、メジャー挑戦の表明、キャプテンシーとは、などなどについて語られている1冊。今回は、ラストまでうまく流れるような構成だな、と思った。
中身に関しては、まさに独自の理論が展開されているな、という感じである。ストイックというか、結論に早くたどり着こうとする思考方法、とでも言えばいいのか、第一線で活躍し続けるために、シンプルに、自分に合った方法を実践している、という感じだ。
昨年は金子千尋投手の本を読んだが、長く確実にプレーするためには、ということに関して皆自分なりに考え抜く、という事が似通っているように思える。成績を残している人はそれが徹底されているのだろう。
超変革は、キャプテンも。鳥谷がどう変わるのか、楽しみだ。
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