2015年9月28日月曜日

シルバー




ゴールデンウイークは昔から耳なじみがあるけど、シルバーウイークってどうも慣れないな・・。後の3日間が休み。

一日はゆっくり休養で阪神−ヤクルトの長い負けゲームを見て過ごした。この日は誕生日。ワインと自宅焼肉で祝ってもらいました。

翌日は甲子園球場へ。この夏の高校野球を熱心にテレビ観戦していた息子が、甲子園ってどんなところかな〜っと言っていたので、まずは初級コース。

阪神甲子園駅降りて、グッズショップに寄って、タイガースのレプリカキャップを購入。これも前から欲しそうなことを言っていた。

甲子園はなにやらものものしい。どうやらチューブの甲子園コンサートがあるようで、大掛かりなセッティングをしている。これはと危惧を抱きつつ、レフト側の甲子園歴史館入り口へ。ありゃーやっぱり、バックスクリーンからグラウンドを見るバックスクリーンビューは閉鎖だそうな。あーあ。

まあいいかと入場。ここはおとなこどもで900円ととても良心的。息子は昨年夏の大阪桐蔭の優勝シーンなどなどを見て興奮。野球マンガが壁一面に描かれているコーナーでは、アニメチャンネルで流れている「タッチ」と、もちろん「ダイヤのA」に喜ぶ息子。パパは入り口の「ドカベン」をはじめとする水島新司ものと「プレイボール」の大壁画に感無量。

帰りは西宮北口でエディオンとブックオフ。本は麻耶雄嵩「隻眼の少女」が安かったのでこれのみ購入。ちょっと熊谷達也「相克の森」を買おうが迷ったが見送った。息子はゲームのカードを1枚1枚見ていたのでゆっくり本を見ることができた。駅近の本屋でゲームの攻略本買って帰る。夜は岩城けい「さようなら、オレンジ」を一気読み。異色作に感心しきり。

最終日はシルバーウイークの宿題の消化日であった。ので何もしていない。夜ミュージックステーションスペシャルを見ていたところ、Xジャパンの「紅」を聴いて息子がいきなり「これ知ってる!」と。よく高校野球のブラバンで使われているからですね。今夏はよく見ていたし。

明けて木曜日は以前からのお誘いがあり、バッティングセンターへ。100球ほど打ったが、この日は会心の当たりが少なかった。途中から強いスイングを心掛けたこともあって、もう左手動かず、右手は指が痛い、腰と両脚も痛いとボロボロ。軽くご飯食べて帰る。

阪神は12連戦1勝6敗。こりゃ優勝どころか3位も危ないな、となり、監督解任報道も出る。しかし、金曜の試合は広島に3-0勝ち。この広島3連戦に3連敗だったら4位転落だった。しかし広島も連敗してきて、この日阪神に負けたことで3.5ゲーム差となり、CS進出がかなり厳しくなった。

潮目が変わるチャンスかも、と直感。阪神には3位確保、あわよくば2位という明確な目標がある。広島は悲壮感が漂う。阪神が3連戦残り2試合を勝って、直接対決で巨人がヤクルトに連敗したら2位3位が入れ替わる。次のマエケンを打てるかが全てだ。

・・しかし、打てなかった土曜日。初回に1点を先制したが、それだけ。また、エルドレッドに打たれて逆転される。後はマエケンに手も足も出ず。今季結局この投手に1勝も出来ず。自分でヒット打って激走、決勝点のホームを踏んだマエケン。これがエースだ、という働きだった。2位巨人が首位ヤクルトに勝ち、かくして巨人とは3.5ゲーム差に開き、広島には2.5ゲーム差に詰められ、残り5試合。

翌日曜日はこれも今年勝ってない防御率1位ジョンソン対岩崎。また1回に1点のみ先制するも、岩崎はそのウラ、1番丸に同点ホームランを浴び、菊池にヒット盗塁、そしてまた、また、エルドレッドレフトオーバーの逆転タイムリーツーベースを打たれる。さらに打たれて1-3。はっきりともうダメだというタイミング、わずか2/3での交代。

おまけに再三のチャンスを生かせず、2-5で敗戦。巨人が負けて3.5差は変わらずだが、広島に1.5差に迫られ残り4試合。いよいよ負けが許されなくなってきた。12連戦は29日までだが、ここまで10戦2勝8敗。せめて五分ならだいぶ違ったものを。もはや3位を守るだけ、だ。

はやストーブリーグやドラフトの話題も多い。阪神がロッテのセカンド、クルーズを狙っていると記事が出ていてなかなかだな、と思った。2試合しか見てないが、彼はものすごくうまいセカンドだと思った。打力はまあ、バルディリスくらいだからクリーンアップは厳しいかもだが、いいチョイスかなと思う。阪神には珍しい。

夜この日、9月27日は、十五夜、中秋の名月。旧暦の8月15日近辺の満月のちょっと前の月。旧暦では7、8、9月が秋で秋の真ん中だから中秋。屋上テラスから観たが、秋のうろこ雲が出ている中に満月が光って、空のスケールを感じてちょい感動した。夜の雲は平面に見える。夜ならではの雲の印象的な見え方があって、なにか絵画の一風景のようだ。もう涼しい。

明日へ向けていい風景を見る事が出来た。さあ久々のフルウイークだ。

2015年9月20日日曜日

秋の歩みは






ゆっくりだ。朝晩涼しくなって良いなとは思うが、毎年ながら秋から冬へはゆっくりと進行すると思う。11月に寒波がやってきていきなり気温が下がるのが毎年のパターンだ。

しかし私にとって秋の月日は短い。夏前の多忙が去ってホッとしたのもつかの間、最も多忙な日々が11月の下旬まで続く。特に今年は仕事も多い。

木曜日は連れられて久々に日本橋の方まで飲みに行った。めったに行かない。最後に行ったのは確か若い頃ビデオ機器を買いに行って以来?焼酎の種類が豊富な店で、ミニグラスにロックで飲んでいたら杯を重ねていた。おかげで久しぶりに二日酔いだった。

翌日金曜日の昼ごはん、後輩が近くに出来たカレー屋に行こうというので一緒に入った。ちょい辛で唇は暑いけど、なぜかフルーティな味わいもしてまあまあ。野菜トッピング付きで650円。辛さの刺激で2、3回しゃっくりが出て二日酔いが醒めた。

帰りにイノシシに遭う。イノシシも秋は食いだめをするとか。狭い道だが、よく観察して、知らんぷりをして通り過ぎればまあだいじょぶ。後ろの人がついて来てた。

土曜日は晩飲みに行った。最近珍しく呼ばれることが多い。普段の仲間ともあまり行かない。たくさん話をして、楽しかった。

日曜日も仕事。昼はやや暑かったが夜はもう長袖でちょうどいいくらい。すっきりと終わり、残りのシルバーウイーク3連休中。ただ一つの心残りは、日にちを間違えて、ラグビーワールドカップの日本ー南アフリカを観られなかったこと。くそ〜。まあいいや・・とにかく休み。

中島要「しのぶ梅」早見和真「ひゃくはち」読了。3連休中も、読もう。

2015年9月15日火曜日

あっという間に台風




先週月曜は業務引継ぎのため上京。この3年それなりに通った御茶ノ水。一つの区切り。単独で行くことはもはやあるまい。時間調整に使える近くの結婚式場のレストランも引き継ぎ終える。

ここのところ書店に行っても買いたい本がなく、読書欲もどうも減退していたが、新大阪の書店で見ると、久しぶりにあれも欲しい、これも読みたい、になってしまった。前からそう思っていたが、新幹線駅の書店は不思議な魅力を持ってる法則。出張車中は読書の時間。この日西加奈子「ふくわらい」読了。

火曜日は休みで、午前中は爆睡。午後さっそくいつもの書店で、朱川湊人「サクラ秘密基地」、早川和真「ひゃくはち」購入。ここのところ新刊文庫を連続購入。ぼちぼちブックオフにも行って安く仕入れないと。

ユニクロ行って、ジーンズ様とチノパン様の、ストレッチ生地のスリムジーンズ購入。2本買えば安くなるやつ。ジーンズは昨年買ったのだが、カタすぎて、しばらく履いても柔らかくならなくて、こちらにした。ストレッチは黒のも持っているが、大変重宝している。仕事的に、外が多く膝も普通に付くだけに、パンツは消耗品と割り切っている。数あれば便利だ。

裾カットの待ち時間に再び本屋へ。シャーロック・ホームズの新たなパスティーシュを発見、即購入。最近は外書はとても高い。本読みとしては本気で、他の文庫本並みにして欲しい。高い!ブックオフ行かねば。台風の雨の中帰る。

この日は涼しかったので、Tシャツに薄いトレーナーを着て行ったが、特に帰りは蒸し暑かった。台風接近前は蒸す。って、おととい発生したという台風がもう明日の朝には上陸するだなんて、早すぎるなあ。九州行ったりもしてるけど、関西絡みって、やっぱ多いよね。今回はなんでこっち?とか思ってしまうし。まあ運命は明日に委ねよう。出社できるかな。休めないし。須賀しのぶ「雲は湧き、光あふれて」読了。胸が熱くなる。

起きてみると弱くない雨。風も少しある。東海はけっこうな雨が降ったようだ。JRの遅れを心配して、1本早めのバスで行ったが、道が混んでちょっと到着が遅れただけで、JRなんの異常もなし。午後は陽が射してきて、台風終了。明日は早起きして東京。これもだいじょぶかな。

翌日関西は雨も降らず、何事もなく上京。昨夜の仕事遅く朝早かったから眠い。前日も、台風が気になったのか寝付きが悪かったのでさらに眠い。

最近息子は、私が遅くなっても起きて待っている。1人で寝室に入り、マンガを読んでいる。11時過ぎに帰宅して、出てこないので部屋に行くと、電気をつけたまま、力尽きていた。(笑)マンガを片付けて、電気消して、風呂入って寝ると、深夜にパパのベッドに潜り込んできた。パパのベッドは前から好きなようだが、狭いので通常は息子の、シングルの寝台下からガラガラと出すとダブルになるベッドで一緒に寝ている。昨夜は息子は気持ちよさそうだったが、私は狭くて眠りにくく、よけい寝不足。

でも新幹線ではめったと寝ないので眠い。あまりスキを見せたくないのと、イビキを気にしてるから。とはいえ特に帰りの車内は本読みながらオチてしまうことも多いんだけど。(笑)帰ったら早く寝よう。

行く途中、曇りなのに雪のない富士山が見えた。雪がないと微妙に小さく見える。東京は強めの雨。午後には止んだ。久々に日比谷線から六本木ヒルズ。家族でいっぱい来たのが懐かしすぎる。午前の仕事が押して、いつの間にかいわゆるメシ押し。昼ご飯食べずに午後の打合せに突入。幸い早く済み、15時までランチやってる中華へ飛び込み鴨肉チャーハンセットを食べた。

家族で来ていた時、小さかった息子にはチャーハンを与えていれば手っ取り早かったから、よく中華に行った。けっこう東京はどこでもだけど、特に六本木ヒルズは中華のイメージだな。

帰り、栃木茨城あたりが大変なことになっている。堤防が切れて大水害。深刻だ。

早めに帰り着いてこの日はよく寝る。朱川湊人「サクラ秘密基地」読了。翌日朝はとても涼しかった。日中は気温上がるからと半袖シャツだけで行ったが、朝から女子新入社員にダメ出しされる始末。やはり昼は暑く、日陰や風が吹くと涼しい。あまり不自由は感じなかった。

土曜日、1日休み。ひたすら休む。昼は阪神2ー2広島延長12回引き分けを見て、双方の決定力の無さに少々呆れる。

今年のセ・リーグは、そこそこ強いチームの背比べで、力強さを感じない。

タイガースはまとまってはいるが、控えとスタメンの差が激しく、長打力をコンスタントに発揮できる打者がいない。左の代打も居ない。投手陣も、福原、安藤、オスンファン以外はいまいち、いま2。この終盤の連戦に数少ない頼りになるベテランたちを使い倒してて勝てるのだろうか。

スワローズは、打線は川端、山田、畠山が中心で力強さを感じるが、どうも投手陣がもうひとつ。館山の復活は大きそうだが、先発も手薄、リリーバーも頼りにならない感じである。クローザーのバーネットのみ、というイメージだ。

巨人は、やはり力はある。ポレダ、マイコラスはいずれもいい先発。抑えの澤村もまずまずだが、実績のある投手でもやはりセットアッパー系がもうひとつ。山口、マシソンと名前だけはなかなかなのだが。打線は阿部を中心にそこそこ打つが、そこそこ以上感じない。意外にクセものは居るので工夫のしようはありそうだが・・。

広島カープはなんつっても投手陣の充実が特徴。マエケン、黒田に好調ジョンソンのラインナップは12球団でも1、2を争うと思う。リリーフも今村、大瀬良、抑えに中崎と若くていい投手が居る。問題は打線で、打ちきれないことが多い。大物打ちもエルドレッドのみ。丸に菊池の1、2番がもっとかき回せれば上位に行くかもだ。緒方監督の采配力ももうひとつ弱いと感じている。

ソフトバンクの強さは異常の域に入っているが、セももっと出来るだろう。交流戦での弱さは偶然でなく必然か。

日曜。阪神−広島。先発マエケン。金曜は黒田にコテンパン。昨日は2点のみ、そしてきょう・・。エルドレッドにやられ過ぎだよなーと思っていたら1打席目から先制のホームラン、こないだフォースボークまがいのホームスチールやられたよなー・・。左投手1、3塁でまたやられてしまった・・。マエケンに7回2安打0点。最後まで打線は火を吹かず。手も足も出ないとはまさにこのこと。なんつっても打線が弱すぎる。こおりゃ優勝はないかなーの涼しい週末でしたー。

2015年9月6日日曜日

秋はホロリ





親しかったわけではないが、入社以来の知り合いの女子が会社を辞めた。シングルマザーで、娘さんが東京の大学を志望していて、一緒に住むという。コンビニでたまたま会って、お互いに「元気で。話せて良かった。」と言えた。

若い頃は男女を過剰に意識してしまっていたが、この歳になると戦友だ。もう二度と会うことはあるまい。秋は心のホロリから始まった。

なんしか細かい用があったり、夜だったり早かったりの仕事でコンディション保つのがちと難しいか。朝涼しかったりするし。どうも、夏の多忙を過ぎたので、やることはあるんだけれど、身体がモラトリアムしたがってて、うまく出来ない。社会人生活ももう長くやってるが、こういうコンディションはなかなか克服できない。

最近男飯っぽいのが多かったんだけど、写真は久々に行ったイタリアン。小エビとズッキーニとおジャガ、ニンニクをピューレソースで。めちゃ美味かった。

土曜は休みで、「ダイヤのA」の最近買った10巻ばかりをゆっくり読み直す。やっぱスポーツ漫画は何回も読むな。たまに見逃してた意味合いがあったりするし。永遠のワンパターンかもしれないが、主人公が進歩するところは気持ちよくて何度も読んでしまう。

文字の本は「守り人」シリーズを2巻一気に読了。シリーズものは早い。

女子バスケ、アテネ以来のオリンピック出決定!アジア1枠を見事優勝してみせた!ちょっと中国が弱過ぎたのに拍子抜け。でも良かった!前回は世界最終予選の最終ゲームまで残ったのに、勝てる試合を落としてしまい出場出来なかった。その虚しさを吹き飛ばしてくれた。本当におめでとう!

日曜は外で夜の仕事。ちょっと早く出て、本屋で次の本を買う。どうも惹かれるものが無かったんだけど、パッと見た西加奈子「ふくわらい」と高校野球ものを購入。直感は強い。

帰りは雨。涼しい。明日は久々の東京。気分を変えて臨みたいな。

2015年9月2日水曜日

8月書評の2




ミステリーの名作を読破、再読していくのも楽しいが、若い頃読んだ古典や有名作品を、ほとんど憶えてないのも困ったもんだ。

アガサの一連の作品でなんとなく筋の記憶があるのは「そして誰もいなくなった」「オリエント急行殺人事件」「ABC殺人事件」。エラリー・クイーンはたくさん読んだのにまったく憶えてない。カーの「火刑法廷」もさっぱり。ヴァン・ダインは「カナリヤ殺人事件」にハッとしたくらいでやはりうーむ。

来年はこのへんかな。では後半どうぞ。


カトリーヌ・アルレー「わらの女」

悪女サスペンスの古典。しかし結末よりは中身に惹かれる?

ハンブルクで翻訳の仕事をしている天涯孤独の34才の女・ヒルデガルデ。彼女は新聞広告で、大富豪が妻に迎える女性を募っていることを知り、応募する。ヒルデガルデは見事その権利を手中にするが、大きな陰謀が隠されていた。

先に書いたように、ミステリーというよりはサスペンス。陰謀の中を泳ぐ普通の女、ヒルデガルデに焦点が当たっている。結末はちょっと考えさせられるが、内容、成り行きから発せられる面白みを楽しむ本だ。

1958年に日本で翻訳され、古典として、映画や、日本版のドラマの原作に採用されている作品。なるほどいかにも古典で、映像化される理由も分かる。

悪女書きのアルレー、結末が余計に虚しさを掻き立てる一作だ。

横山秀夫「臨場」

うーん、大人の読み物って感じだな。まさに。

倉石義男はL県警の捜査一課調査官。鑑識畑一筋の52才。「終身検死官」という異名を持ち、ヤクザのような風貌に歯に衣着せぬ物言いから上には受けが悪いが、その鋭さにシンパは数多い。変死事案では真っ先に声がかかる倉石は、きょうも死体と現場を見聞する。

2004年の発行のいわゆる連作短編集である。テレビドラマ化もされた。

横山秀夫といえば、現代を代表する売れっ子作家の1人と言っていいだろう。でも私はあまり読んでない。ここまで、「ルパンの消息」「第三の時効」だけかな。

「ルパンの消息」は長編で、主人公も不良上がりの一般人でかなり面白かった。「第三の時効」は警察もの短編集で評価は高いものの、どうもその切れすぎなところ、短編のうまく収まりすぎなところが肌に合わなかった。

今作も、「第三」によくテイストが似ている。必ず色気があって、いい大人同士の角突き合いがあって、切れが良すぎる感じ。倉石の人物設定等も、まあハードボイルドで痛快といえば痛快なのだろう。

切れがいい短編は、夢中になってあっという間に読めるのは確か。そういう意味で興味深かった。

柄刀一
「御手洗潔対シャーロック・ホームズ」

再読。日本人が書くホームズものは、日本人読者向けとして気が利いている。これはパロディでもあり、本格推理小説でもある。結構好きな一冊。

御手洗潔と言えば島田荘司作品の探偵。今回は別の作者が書き、御手洗潔のパスティーシュありながら、シャーロック・ホームズのパロディという策を弄した作品になっている。2004年刊行、2008年文庫化。東京時代に、文庫が出てすぐ買った。

最初に御手洗潔のパスティーシュ2本。「シリウスの雫」は幻想的で、いかにも本格推理小説で、御手洗もの特有のエキセントリックさも効いている。その後はホームズものパロディが2本。そして「巨人幻想」でホームズ&ワトスン、御手洗&石岡という両探偵と両伝記作家が邂逅を果たす。最後にワトスンと石岡のお笑い書簡交換が島田荘司の手により挿入されている。

んなバカな、というのを上手く創っていくのが本格ミステリだが、今回は痛快なくらい徹してして、楽しめる。一部どうも納得できかねるところもあったが、まあスルーで。巨人伝説、というものに対する島田荘司の思い入れも活かしているようだ。次は「暗闇坂の人喰いの木」を読んでみよう。

それにしても、島田荘司はホームズものに対してあれこれ言うものの、だから余計愛情が際立つというのは、変わらない。

瀬戸内寂聴「夏の終わり」

売れない作家と8年愛人を続けた女の物語。深いような、奇矯なような・・。

売れない作家、慎吾とちょうど週の半分を暮らす染色家の知子。知子はかつて離婚する原因になった昔の愛人・涼太と再会し、付き合っていた。やがて涼太と別れた知子は、慎吾との関係も清算しようとする。

1963年の作品である。登場人物が同じ短編を並べ直し、別の短編も所収したもの。女流文学賞を受賞している作品。

何かやはりつかみにくい部分がある。純文学の香りもするが、これが書かれた時代に、放蕩で経済力のある女性というのは社会的にも少なかっただろう。昭和30年代には、違和感と驚きを持って迎えられたかも知れない。

作者自身が北京で暮らし、幼い子供を残して出奔という経験があり、それをなぞったような物語。

んー、難しいかな、と思ったが、積み重ねられた習慣が、そこから抜け出すことを難しくする、というのには頷けた。

8月書評の1




8月は、ミステリー特集を7冊+もう1冊で、8作品8冊だった。忙しかったわりにはまあまあかな。。

ではスタート!

東野圭吾「禁断の魔術」 

8月はミステリー特集。ガリレオシリーズ最新文庫。嫌いじゃないんだけど、どこかなんか不足感。サクサクっと読み終わった。

都内一流ホテルスイートに独りで泊まる、若い女。翌朝女は多量の出血とともに見つかる。一方ガリレオ先生こと湯川は、高校の、物理研究会で指導をした後輩が帝都大学に受かったと聞き、喜んでいた。

ガリレオシリーズは最初の短編集がなかなか斬新かつ衝撃的で、あっという間にドラマになった。「容疑者Xの献身」は直木賞を獲得した。「真夏の方程式」も映画化、人気を呼んだ。

で、ほぼ全部読んでいるのだが、最初が科学現象で斬新、容疑者Xや真夏の方程式は、ミステリー度が濃く、推理に重きを置いて実験が犯罪に関係ないタイプ。今回は、科学が中心だが、正直あまり新しい展開はなく、容疑者Xと同じように、湯川が心を苛まれるストーリーである。

上手なエンタテインメントを読んだかな、という、東野圭吾にはお決まりの手応えはあれど、なんかスッと入ってスッと抜けていった一冊だった。

ジョン・ディクスン・カー
「皇帝のかぎ煙草入れ」

8月はミステリー特集。第2弾はカー!どこへ行き着くかと思ったら、お見事的解決でした。

おそらくは1930年代、フランスの避暑地。若い婦人イブ・ニールは隣に一家で住むローズ家のトビイと婚約した。しかしある日深夜に合鍵で押し入った前夫のネッド・アドウッドと押し問答をしていた際、トビイの父サー・モーリスが殺された事が発覚し、やがてイブは容疑者にされてしまう。

私はかつて推理小説が好きになった時期があったのだが、最初に読んだカーがおどろおどろしい、幽霊が出て来るようなテイストのもので、それからちょっと敬遠してしまった。なので今回のカーは新たな一面を発見したような思いである。

1942年の作品。トリック、というものに特化して描いた、どこか映画的な、カーの代表作である。アガサ・クリスティーが絶賛した、というキャッチコピーにつられて買ったが、いやお見事、でしょう。非常に人間的な、陥りやすい理由が組み込まれてあり、納得出来る。途中探偵役がその後の暗合ともいえる整理をしているが、うまく引き締めの要素となっている。

物語の要素も仕掛けも申し分がなく、クライマックスの仕掛けも好きな感じだ。真犯人の末路、その気持ちがもうひとつ不明と言えば不明だし、メロドラマや人物設定がどこか空振っているような気もするが、まあそこは良しとしよう。

名作。カーはも少し読んでみようかな。

小峰元「アルキメデスは手を汚さない」

8月ミステリー特集第3弾。ふた昔前の江戸川乱歩賞ベストセラー。青春推理もので、当時の社会が見える。

亡くなった女子高校生、柴本美雪は病死とされていたが、実際は子宮外妊娠が元でのものだった。柴本の父親は相手を知ろうと独自に調べ始めるが、美雪が通っていた高校で弁当に毒が混入される事件が起きる。

昭和48年、西暦で1973年の小説である。復刊され、東野圭吾がこの本を読んで小説家を志した、というキャッチコピーに惹かれて購入。

舞台は大阪府豊中市。主役はニヒリズム漂う男女高校生。学生運動の余韻があり、社会問題も重要な要素となっている。豊中だが、関西弁はほとんど出て来ない。私はいつも思うのだが、この時期の小説にしろ映画にしろ、本当にこんな事を話してるのだろうか、と考えてしまう。科白が演出になりきってないか、口調も内容もどうも実際とかけ離れているように思える。

ただ、それは、この時代特有の青春劇には不思議と似つかわしい。この作品はそういった色を楽しむもので、あまり本格派の推理ものではない、というあとがきには賛成だ。

ピカレスク小説、と言われる、日本推理小説界の古典「アルキメデス」。確かに独特の良いクセを持ったものではあった。

泡坂妻夫「11枚のとらんぷ」

8月ミステリー特集4作め。こちらも日本推理小説のもはや古典。ただちょっと趣きが違う。

地方の奇術クラブによるショーのフィナーレ。仕掛けの中から飛び出すはずの志摩子が行方不明となり、やがて会場近くにある自宅マンションで死体となって見つかった。

「アルキメデス」が退廃的な匂いが特徴のピカレスク推理小説だったのに比べ、こちらは奇異な感じはありながら、「この犯罪は、なぜ、この時、この形で起きなければならなかったか」をある程度すっきりと示したミステリーだろう。

解説には、松本清張らの社会派ミステリーが溢れていた頃、虚構でも推理小説的な設定、ネタに焦点を当てたもの、という評価がしてある。奇術ショーを舞台裏も含めて丹念に描き、謎多き殺人、作中作品の登場、世界国際奇術家会議、殺人の謎解き、と彩りも豊富。泡坂氏独特の柔らかさも見える。

泡坂妻夫は「しあわせの書」に続き2作め。乾くるみ「イニシエーション・ラブ」で、推理小説好きの彼氏が彼女に薦める場面を読んで以来覚えていた。

泡坂氏は小説より先に奇術の方に興味を持ち、「蔭桔梗」で獲得した直木賞の授賞式でも手品を披露した作家さん。本作は昭和51年の長編第一作めで、名作とされ、復刻版も出ている。

彩りは豊富ではあれどサスペンスみたいにドキドキワクワクの場面が続くわけではなく、奇術に興味の無い人はちょっと退屈かもな、とは思った。