もう朝から暑すぎる。涼しいバスで、きょうはいつもより遠くの駅で降りよう、と思って行くと、事故でバス来ない。人生こんなもんだ。8月1日土曜日朝。
梨木香歩「雪と珊瑚と」
梨木香歩の作品はいつも、続編読みたいな、と思うな・・。
珊瑚は21歳。結婚して離婚し7ヶ月の娘、珊瑚と暮らしている。働くために雪を預けようとするが、公立保育所や民間の託児所には全て断られ、途方に暮れていたところ「赤ちゃん、お預かりします。」という張り紙を出していた年配の婦人、くららと出会う。
物語は以前のアルバイト先のパン屋で働き始めた珊瑚がくららの薫陶を受けて食べ物の大切さを思い、惣菜カフェを開きたいと考える成り行きだ。自然植物系が得意分野の梨木香歩なので期待してしまうが、それもありつつ珊瑚と雪を取り巻く環境と人間関係、珊瑚の気持ちに焦点が当てられている。
梨木香歩は独特の、純和風ファンタジーのような話、「家守奇譚」を読んで続編出ないかなあ、と思っていたところ、「冬虫夏草」が出たので、早く買った友人に借りて狂喜して読んだ。昨年末には、遅まきながら名作「西の魔女が死んだ」を読み唸らされた。自然系、生活の知恵などの知識は本当に感心した。
トントントン、と話が進み、うまく行き過ぎている感が強い。そこが気になるところだが、予想通りというか、豊潤な話である。
この物語も、カフェ経営と人間関係と子育ての間で揺れる珊瑚の物語が、途中で終わっている気がする。続編きっと出すよね、そして、もっと自然系の知識をバンバン盛り込んで、美味しそうな料理が出てくるよね、と思いたい。
珊瑚が雪の夜泣きで苦しんでるところは、思い出したな〜。つらかったー。
朝井まかて「ぬけまいる」
女3人、ユーモアとスリル溢れる、痛快なお伊勢詣りの旅。まずまず面白かった。
若い頃は「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれたお以乃、お志花、お蝶。アラサーのいま、お以乃は何をやっても続かず、行き遅れで親の一膳飯屋手伝い、お志花は下級役人の妻に、お蝶は婿をもらって実家の小間物屋を切り回している。ある日顔を合わせた3人は、その場から「抜け詣り」に出発する。
解説によると、伊勢神宮の財政が逼迫したことから、従来町人の移動を厳しく禁じていた江戸幕府は、お伊勢参りに限っては通行手形を容易に出すようにしたため、ブームのようなものが起こった。お伊勢参りなら、勤め先や家の者に無断でいきなり旅に出ても許されたという。へ〜である。
まあ、旅ならではのトラブルあり、人助けあり、激しい恋あり、切った張ったありのエンタテインメントだ。意識してか、お色気も混ぜている。
お以乃、お志花、お蝶それぞれの性格と今の状況が、現代に被らないでもない。女子が、のびのびと描いた感がある作品だった。
重松清「とんび」
ごつくて、荒っぽくて、涙もろくて、不器用、照れ屋で情の深い父親。
広島・備後。通運会社に勤める20代後半のヤッさん。大好きな妻の美佐子との間に息子のアキラが生まれ、幸せに暮らしていた。しかしある日曜、会社の荷捌きの仕事を片付けようと家族を連れて行った時、事故が起きてしまう。
重松清は、ツンツンと、我々世代の胸を刺す作家、というイメージだ。あまりツンツンされたくないな、という思いを抱いたこともあり、読まなかった時期もあった。これは意外に同じ感想を持つ人もいた。
昨年は「青い鳥」に泣かされたが、今回は、ヤッさんと一緒に悲しんで、照れて、笑って泣いて、という話。何回か軽く吹いてしまった。昭和30年代からの設定も郷愁をそそる。
貸してくれた子持ちのママは、泣いて泣いて・・と言っていたが、逆に言われていたせいか、同じ息子持ちだけど、あまり泣きはしなかった。山も谷もある、悲しくも微笑ましい、人生劇場。ほんのりと楽しめたかな。
0 件のコメント:
コメントを投稿